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マーケティング研究を中心に経済交換の鋭い洞察に根を張った議論が展開されるなかで,サービスは従来の「タダ」や「モノではないもの」といった捉え方を越え,広義に提供者と受容者の価値共創のプロセスとして捉えられるようになりました.これにより,これまで別々に議論されてきた有形・無形の特徴を持つgoodsservicesを価値共創の手段として一体化し,イノベーション(慣行軌道の変更)を目指す議論が加速しています.モノづくりの要素の中にサービスの考え方を導入し,新たな価値を創出して経済成長の原動力を築こうとする製造業のサービス化の議論はこの特徴的な例です.こうした,さらなる経済成長のための視点としてサービスの考え方を導入しイノベーションを実践して行くことは私たちの研究テーマの1つです.

この一方で,サービス経済は単に経済規模の拡大を追求する段階から,より質的に社会・環境の発展・持続可能性をも射程にいれた変革的サービス経済
(Transformative Service Economy)を目指す必要があります.サービスは提供者と受容者相互がwin-win関係であることが価値共創プロセスの質を高め,より良い結果をもたらすと考えられてきました.しかしながら,両者の間の情報格差や経済状況格差によってその関係性は容易に崩れうるといえるでしょう.

視点を広げ人間と自然の価値共創関係を見れば,
win-win関係は人間のみを対象としており,自然は経済的搾取の対象として扱われていることが多いといえます.人間のサービス活動の発展こそが環境負荷の大本であるという議論は,サービスの持続可能性という新しいテーマの出発点になっています.こうした,成長という概念の下で顕在化してこなかったwin-win関係の崩壊を指摘し,成熟したサービス経済が次にどのような価値を社会に対して訴求していくことが重要なのかを我々は問い,解を示していく必要にも迫られています.

このような背景のもと,私たちはこの価値共創関係を拡大し,人間と自然の価値共創に注目しそれをサービスの持続可能性の議論に展開させています.養蜂業をサービスとして捉えれば人間とハチの共創が見いだせるように,我々はもっと広い視野でサービス活動を見直す必要があると考えています.そして,「サービス経済が成熟するなかサービスこそが環境に負荷を与えており,我々は価値共創の質の持続可能性・持続的成長を考えなければならない」このメッセージをもとに,私たちは,欧米の研究者を含めた国際的サービス研究ネットワークのなかでこの考えを提案し協同で形にしています.