研究進捗どんな感じ?
研究進捗は人それぞれ
研究の進み具合は本当に人それぞれであるとしか言いようがありません。
研究の進み方は,テーマや手法,学生の得意不得意によっても大きく違ってきます。
研究していく中で,「あの人はすごく進んでいる気がする」「自分は一番遅れているのではないか」と心配になってくることも当然あると思います。
その心配を研究を進める糧にできる人であれば問題ないですが,その心配が焦りにつながり,空回りしたり,手が止まってしまう人も少なからずいると思います。
大学院には優秀な人がたくさんいます。その一方で,その優秀な人たちと自分を比較して落ち込む人はさらにたくさんいます。
大学院や研究がつらくなってくる要因の一つは,周囲の人と自分を比較して,できていない自分を責めてしまうことにあります。なので,人は人,自分は自分と割り切って,自分のペースで<着実に>研究を進めることを意識するのがオススメです。
ゆっくりでも,進められたら自分を褒めましょう。着実に進められるというのはなによりも大事なことです。
ここでは,研究進捗のことで不安になってしまう人のために,<最低限の>進捗目安を参考程度に残しておきますので,スケジュールのページと合わせてご覧ください。
これらを目安にして,より計画的に,より早めに動くことを強くおススメします。
ここで示しているのは,あくまでもギリギリ修了できそうなペースです。ギリギリで修論をやるのは誰だってツラいです。なので,本当にあくまでも,ご自身の進捗ペースの参考にご覧ください。
焦りを感じやすい人はとりあえず落ちついてください。今自分はどこにいるのかを確認して,必要なら焦ってください。必要ないのに焦ることはありません。最低ラインでも<着実に>進められていればおそらく修了はできます。焦って急にペースを乱さないよう気を付けましょう。
※進捗は全然問題ないという人は読まないでください。
余裕が出るとだらけてしまう人も中にはいるかもしれないので,進捗に問題ない人はこの先は読まずにどんどん研究を進めていってください。
(M1)入学~研究室配属前
研究室配属前はほとんど研究をしていない,始まっていない状態の人がほとんどです。
入学したばかりのM1は,この時期,初めて受ける大学院の講義で忙しくしていることでしょう。
スタートダッシュで差をつける人は,この時点ですでにやりたい研究テーマや希望研究室はほぼ決まっていて,文献調査などを始めているかもしれません。
研究室に事前内定している人は,もしかしたら先生から何らかの指示を出されて動き出しているかもしれません。
しかし,それも研究室や先生の方針によるので,事前内定していても特に何も言われない場合もあると思います。
一方,興味のあることはあるけど,研究テーマは全然決まっていない,研究室も決まっていないという人もこの時期は結構います。
その場合は,まず「自分が興味を持っていること」について具体的に考えてみましょう(考え方のヒントはこちら)。
次は,考えたことをもとに,自分の疑問を解決できそうな研究室をいくつかピックアップしてください。
そして,それぞれ研究室訪問に行き,先生に自分の興味についてたっぷり語ってきてください(面談では具体的な興味の内容について聞かれます)。
この期間では,希望研究室が決められればOKです。
(M1)研究室配属後
研究テーマが決まっていないと,文献調査などもなかなか進まないと思うので,研究室に配属されたらとりあえず「自分がやりたいことや知りたいことは何なんだろう?」と考え始める感じでよいと思います。
次のステップである研究計画書の提出までには約9か月間あります(知識科学の学位を目指す人は,配属から約5か月後に研究計画書の仮提出があります)。
この9か月間(または5か月間),すなわちM1のうちにやるべきことは大きく分けると以下の通りです。
- 自分がやりたいこと・知りたいことは何なのかを模索する
- 研究テーマついて指導教員の先生とよく相談する
- 論文の読み方を学ぶ(文献調査する)
M1のうちは多くの人が漠然とした研究テーマしか考えられていません(研究したいことがあって入学してきた人でさえそうです)。なので,研究室に入った時点で研究テーマが定まっていないことに対して焦る必要はとりあえずありません。
研究室に配属されて早速研究だー!と駆け出したくなる人も多いでしょうが,一旦落ち着いてください。
研究テーマを定めるというのは想像以上に時間と手間がかかります。入門者が短期間でできることではありません。
なので,まずはこのM1の9か月間を研究テーマをじっくり考える期間だと思ってください。
そして,この期間で重要なのは進級要件にもなっている研究計画書の作成だと思いがちですが,実は最も重要なのは研究テーマについて先生とよく話し合うことです。
漠然としたイメージだけでは承認される研究計画書は書けません。その漠然としたイメージを具体的な形にしていく過程で必要になるのが指導教員の先生との複数回にわたるミーティングです。
大学院生にもなると,なんでも一人でやる,先生に頼るのは甘えていると思いがちです。もちろん自分の研究なので,一人でやることが必要な場面もありますが,研究は基本的に先生と二人三脚で進めていくことになります。なので,逐一先生と足並みを確認して進めていくのがふつうです。
わからないこと,困ったことを先生に相談するのは恥ずかしいことでもなんでもありません。むしろ,聞かないと先に進めないことも多いです。
そういうわけで,研究室配属後は先生と面談するクセが付けられればOKです。
先生との面談を通して研究テーマを固めることを目標にしましょう。
(M1)研究計画書の提出時
先生とのミーティングが順調に重ねられていれば,研究計画書を提出するころには,漠然としていた研究のイメージも何となくこんな感じかな?くらいには固まってきます。
そして,その固まってきたイメージを研究計画書の作成を通して言語化していきます。
漠然としたイメージの時はもちろん,頭の中でイメージが固まってきても,それを他の人に説明するのは実は結構難しいです。
その理由は,頭の中に必要なパーツは揃っているけど,それらのつなぎ合わせ方を自分がまだわかっていないからです。
研究計画書の作成は,頭の中のパーツをきれいにつなげて,他の人にお披露目するための作業だと考えてください。
漠然としたイメージは,一度形にすることでぐんと解像度が上がります。研究計画書の作成には自身の考えをまとめてくれるという役割もあるのです
先生との面談を重ねてきている人は,自分の考えを言語化することの難しさにも気づいてきている+言語化する訓練も同時にされているはずなので,多少はスムーズに計画書が書けるようになっているかもしれません(たぶん)。
しかし,研究計画書は1回ではきれいに書けません。習字と同様に,一枚書くたびに先生から添削を受け,書いては直しを何度も繰り返して,一番よくできているものを提出するのが普通です。
ですので,一発勝負で通ろうという考えは早めに捨てておきましょう。そんなにうまくは行きません。何度も何度も書いているうちに,どんどん自分が言いたいことが鮮明になってくると思います。
研究計画書の提出時には,自分は何をしたいのかを自分のことばで説明できるようになっていればOKです。
(M2)研究計画書提出後~中間発表時
研究計画書の提出から中間発表までは約5か月間あります。
M2の初めのうちはまだ就職活動に忙しく,研究がストップしている人も多いです。
この時期には,就活が終わった人から順次研究の方に戻ってくるという感じになっています。就活と並行して研究できるなら問題はないですが,両方に手を付けてしまったことでどちらも中途半端になり,留年してしまう人もいたりしますので,十分に気を付けてください。
研究の進捗が順調な人であれば,中間発表までに予備調査や予備実験を行って何かしらの結果を得ていたりします。
研究の進捗がいまひとつの人であっても,中間発表までには実際に修論で発表する研究の方向性がほぼ固まってきています。
M1の時に提出した研究計画書とは内容が違っている人がほとんどなので,より具体的な計画になったと喜びましょう(逆にここで何の計画もできてない場合はかなりヤバイと思った方がよいです)。
半分近くの人が中間発表の時点で具体的な研究計画の発表という状態ですので,「計画はこんな感じで,これから本気出します!」といった感じの発表も少なくありません(私もそんな感じでした)。
なので,予備調査,予備実験ができていないという状態であっても極端に慌てる必要はないです(何かしらの結果を得ているのが理想ではありますが)。
ですので,中間発表時には,修論研究を進めていく最低限の準備は整いましたということを言えればとりあえずOKです。
(M2)中間発表後~学位申請時
中間発表から学位申請までには,約4か月ほどあります(9月修了の人は1か月前倒しで学位申請)。
中間発表を境に,就活で研究の手が止まっていた人もみんな研究モードに入ります(ここで就活が終わってないとかなりヤバいと思った方がいいです)。
中間発表から学位申請時までは,とにかく研究のスピードを上げてくる人がほとんどです(メインの実験をやったり,本調査をやったり,研究の中身をとにかくやる)。
それまで就活で全く研究していなかった人や中間発表で研究計画しか発表できなかった人も,ここにきてものすごい勢いで追い上げてきます。
その一方で,その勢いに乗ることができなかった人は,中間発表からだいたい2か月後(学位申請のだいたい3か月前)になると,「修了できないかもしれない…」という気持ちになってきます。
修論の完成度にこだわりがあるという人は,この時点で自主的に留年することを考え始めたりします(※留年はできればしないことをおススメします)。
とにかく修了したいけど,この時点での進捗が悪すぎる場合は,本気で何とかしないと修論に書くネタがないので,期限までに修論が仕上がらず留年することになります(あとは実験・分析するだけといった何かしらの結果を出せる見込みすら立っていない,など)。
中間発表のだいたい3か月後(学位申請のだいたい1か月前)には,修論に手を付けている人が多いはずです(早い人はもっと早くから書き始めていますが)。
ここから学位申請までの1か月間は,修論の初稿,第2稿,…,第n稿とひたすら書く→提出→修正→書く→…を集中して続けることになります。
学位申請時には,修論がほぼ完成している状態が望ましいです。学位申請書の提出には指導教員の承認が必要なので,先生がGOサインを出せる(修了できる見込みがある)くらいには修論も仕上がってきていないといけません。
学位申請書自体は,指導教員が承認さえしてくれれば見切り発車で提出することも可能なので,完全に仕上がっていなくてもとりあえずは大丈夫です。ただ,指導教員の承認が得られなければこの時点で留年が確定しますので,十分留意したうえで計画的に修論を執筆してください。
なので,中間発表後から学位申請時までに,主たる実験や調査の結果を出せるよう研究のメインとなる部分を進める,そして修論の大部分が仕上げられていればOKでしょう。
(M2)学位論文提出まで
学位申請書を提出したら,あとは締め切り(約1週間後)までに修論を仕上げるのみです。
他のことは考えずに,とにかく仕上げましょう。
この時点で修論はほぼ完成している状態で,主にこの期間は修論の最終調整をする+修論の概要を書く(修論とは別ファイル)といった感じです。ギリギリまで修論の中身を書くのは精神衛生上大変よくないので,そうならないように気を付けましょう(経験談)。
修論提出前には,主指導教員,副指導教員によるコピペチェックを受けなければいけないので,その時間も考慮したうえで執筆を完了させてください。
副指導の先生には主指導の先生からメールで依頼するのがふつうで,副指導の先生から返信が遅い場合も当然あります。なので,返信が来なくて修論が提出できずに留年といった事態にならないよう,早めに行動してください。
ちなみに,学位申請書が提出できた時点で修論審査の発表プログラムに組み込まれることになります。
指導教員の先生が他の先生に審査委員をお願いしたり,事務方でプログラムを作成したりと,修論審査に向けて一気に事が進みます。
なので,万一学位申請書を提出したのに修論が提出できなかった場合は,学位申請が取り消され,発表プログラムからも抹消され,留年が確定することになります。
最後の最後まで気を抜かずに走り切ってください。
修論が期日までに提出できればOK。
研究進捗に関する悩み
何が研究したいかわからない…
研究テーマの模索は誰しもが経験することだと思います。なので,自身の興味を研究テーマとして固めていく考え方の一例を参考程度に示すので,ぜひこれをヒントに自分の興味を具体的に先生に語ってください。
まず自分は何に興味があるのかを絞りましょう。例えば,以下のような感じで考えていきます。
「自分は<ことば>に興味がある。」
しかし,興味の対象が<ことば>ではとても漠然として広すぎるので,より絞っていく必要があります。
あなたが言う<ことば>とは具体的にどのようなものですか?他の類似した物との違いはなんですか?(研究対象の定義をしましょう)
「人がコミュニケーションの際に使う。動物には基本的にない。紙面に書いたり,身体で表現したものではない。ヒトが口から発する音声を使う。etc」
その<ことば>のどのような現象・機能に興味があるのでしょうか?
「<ことば>には通じる場合と通じない場合がある。そういう現象に興味がある。」
その現象・機能についてあなたはどうなったら(何がわかる,できると)うれしいですか?
「<ことば>が通じない場合でも,通じる方法があるかもしれないことがわかるとうれしい。」
ここにあげたのはほんの一例なので,実際に先生と密に話をして自分の興味がどこにあるのか,何を知りたいのかを探っていくことになります。
研究が進まない…
特に博士前期課程で研究が進まない原因は圧倒的に指導教員の先生とのミーティング回数不足だと思います。どうしたらいいかわからない状態の時こそ先生とのミーティング機会を作ってください。
面倒見のよい先生であれば先生の方からちょくちょく声をかけてくれることもあるかもしれませんが,声をかけてくれる先生ばかりではありません。
「進んでないから怒られるのでは…?」と思うかもしれませんが,進んでいない時こそ先生に相談すべきなのです!
現在何をしているのか,なぜ進んでいないのかを先生に報告するだけで30分は話ができます。なぜ進んでいないのかは,研究上の困難(論文が見つからない,分析方法がわからないなど)だけではなく,生活上の困難(集中できない,やる気が起きないなど)でも相談しましょう。
進んでいない状態を放っておくと,心を病んだり,留年や最悪退学にまでつながります。
指導教員の先生に相談しづらい場合は,研究室の先輩や副指導・副テーマの先生に相談することもできますし,周囲の人に相談しづらい場合は学生相談室で相談してください。
自分を含めた周囲を見たところ,やはり相談回数が多い人ほど進みが早いですし,回数を増やした人は研究が加速し始めるようです。
進んでないなーと思ったときには,まずは先生にミーティングのアポを取りましょう。
休まずに研究をやるべきだろうか…?
研究進捗が悪いと,休みを惜しんででも研究を進めたいと思う人も多いでしょう。
これは,研究が楽しすぎて休むことを忘れてしまうのとはわけが違います(どちらも休みに研究はやっていますが真反対の状況です)。
特に,寝る間も惜しんでずっと研究しているはずなのに進む気配がないという人は,とりあえず寝てください。それは明らかに作業効率が落ちているか,努力の方向が間違っています。
そして,昼間はいないけど夜間に休まず研究している,なのに進まないという人は,研究室に人がいる明るい時間が活動の中心となるよう生活を改善しましょう。
夜間に研究してちゃんと進められているならいいですが,進められていないのであればおそらくたった一人で研究に向かっているのではないでしょうか?
夜間に一人で研究を進めていると,声をかけてくれる先生もいなければ,研究室のメンバーもいないかもしれません。この状況は非常に問題で,わからないことがあったときにすぐに聞ける人がいない,方向性が間違っているときにすぐ指摘してくれる人がいないといったことが起こります。
「人とはできるだけかかわりたくない!」「誰の指図も受けん!」という姿勢で研究するのもいいですが,修了は間違いなく遠のきます。研究を進めるには人とのコミュニケーションが不可欠です。
コミュニケーションが苦手だという人は研究を通して学んでください。就職先でもそのスキルは必ず役に立ちます。