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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。ベタレイン色素の新たな生合成経路を解明 ― ゴムフレニンI合成酵素 cDOPA6GT を世界で初めて発見 ―
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石川県公立大学法人 石川県立大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 |
ベタレイン色素の新たな生合成経路を解明
― ゴムフレニンI合成酵素 cDOPA6GT を世界で初めて発見 ―
ポイント
- ツルムラサキおよびセンニチコウから、ゴムフレニンI生合成に関わる新規糖転移酵素cDOPA6GTを発見
- タバコ培養細胞を用いたゴムフレニンIの人為的大量生産系の構築に成功
- ゴムフレニンIが、ベタニンより高い熱安定性を示すことを発見
| 石川県立大学の重久亮太 修士課程学生、森正之 教授、今村智弘 准教授、高木宏樹 教授、北陸先端科学技術大学院大学 大木進野 教授、山口拓実 准教授らの研究グループは、ベタレイン色素を生産するツルムラサキ(Basella alba)およびセンニチコウ(Gomphrena globosa)を用いて、ゴムフレニンI生合成に関わる新規糖転移酵素cDOPA6GTを発見し、ベタレイン色素の新たな生合成経路を明らかにしました。 本研究成果は、植物科学分野の国際研究誌「New Phytologist」に掲載されました。 |
研究背景と概要
ナデシコ目植物の多くがベタレイン色素*1 を生産し、赤色系のベタシアニン*2 と黄色系のベタキサンチンに大別されます。ベタシアニンは、基本骨格であるベタニジンにグルコースが付加されることで形成されます。この修飾では、分子内の5位または6位にグルコースが付加されることが知られており、5位に付加したものをベタニン型、6位のものをゴムフレニン型と呼んでいます(図1)。ベタレイン生産植物の多くはベタニン型ベタシアニンを生産しますが、ゴムフレニン型を生産する植物は限られています。
それぞれのタイプを決定する酵素について、ベタニン型では、ベタニジンの5位にグルコースを付加する酵素(Betanidin 5-O-glucosyltransferase、B5GT)と、ベタニジンの前駆体であるシクロドーパの5位にグルコースを付加する酵素(cyclo-DOPA 5-O-glucosyltransf-erase、cDOPA5GT)が報告されています(図1右)。一方、ゴムフレニン型については、ベタニジンの6位にグルコースを付加する酵素(Betanidin 6-O-glucosyltransferase、B6GT)は、これまでに1例しか報告されていませんでした(図1左下)。そのため、ゴムフレニン型ベタシアニンの生合成機構の全体像は未解明のままであり、20年以上にわたり未解決の課題となっていました。
本研究では、ゴムフレニン型ベタシアニンを生産していることが知られているツルムラサキ*3 とセンニチコウ*4 を対象として、ゴムフレニンI*5 の生合成に関わる酵素遺伝子の探索を行いました。両植物はゲノム情報が公開されていなかったため、RNA-seq*6 解析によって取得した遺伝子発現情報から転写産物の配列を再構築し、候補遺伝子を抽出しました。まず、これまでに報告されているB6GTのアミノ酸配列を手がかりに候補遺伝子を選抜し、ベンサミアナタバコを用いたアグロインフィルトレーション法*7 によって機能解析を行いました。しかし、ゴムフレニンIを合成する酵素は見いだせませんでした。この結果は、ツルムラサキとセンニチコウにおいて、ゴムフレニンIの生合成に未知の酵素が関与している可能性を示していました。
そこで、私たちは、これまで報告のなかったベタニジンの前駆体であるシクロドーパの6位にグルコースを付加してゴムフレニンIを合成する新たな経路の存在を想定し、その反応を担う酵素(cyclo-DOPA 6-O-glucosyltransferase、cDOPA6GT)の探索を行いました(図1左上)。ベタニン型ベタシアニンでは、複数の植物種でcDOPA5GTが報告されていることから、キヌアのcDOPA5GTのアミノ酸配列を手がかりに、相同性解析を行いました。その結果、ツルムラサキから2つ、センニチコウから1つの有力な候補遺伝子を見いだしました。これらの候補について、機能解析を行った結果、ツルムラサキ由来のBacDOPA5/6GT1およびBacDOPA5/6GT2は、ベタニンとゴムフレニンIの両方を生産すること、一方でセンニチコウ由来のGgcDOPA6GTはゴムフレニンIのみを生産することが明らかとなりました(図2)。これにより、長年未解明であったゴムフレニン型ベタシアニンの生合成において、世界で初めてcDOPA6GT経路の存在を実証しました。
次に、ゴムフレニンI合成活性を示した遺伝子を、他のベタシアニン生合成遺伝子とともにタバコ培養細胞(BY-2細胞)へ導入し、ゴムフレニンIの人為的生産系の構築を行いました。その結果、遺伝子を導入した培養細胞は赤色を呈し、蓄積した色素を精製し、NMR*8 による構造解析を行ったところ、ゴムフレニンIであることが確認されました(図3)。さらに BacDOPA5/6GT1、BacDOPA5/6GT2およびGgcDOPA6GTを導入した培養細胞では、ゴムフレニンIが高濃度で蓄積していることが確認されました。これらの結果から、ゴムフレニンIの人為的生産系の構築に成功しました。
さらに、タバコ培養細胞で生産したゴムフレニンIとベタニンを用いて、それぞれの熱安定性を評価しました。その結果、ゴムフレニンIは、ベタニンに比べて有意に高い熱安定性を示しました(図4)。そこで、両色素の分子構造シミュレーション*9 解析を行った結果、ゴムフレニンIではグルコース部分と色素骨格との間に、ベタニンには見られない分子内水素結合が形成される可能性が示されました(図4)。この分子内水素結合が、ゴムフレニンIの高い熱安定性に寄与していると考えられます。
本研究により、長年未解明であったゴムフレニン型ベタシアニンの生合成機構が明らかとなり、世界で初めてcDOPA6GT経路の存在が実証されました。本成果は、ベタレイン色素の生合成機構の理解に貢献するとともに、熱に強い天然色素の開発や利用技術の高度化、新たな機能性天然色素の創出につながることが期待されます。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(科研費)の支援を受けて実施されました。また、本研究の一部は、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM)の支援を受けて実施されました。

図1 ゴムフレニン型およびベタニン型ベタシアニンの生合成経路
・本研究により、世界で初めてcDOPA6GT(黄色)の経路を実証した。

| 図2 ベンサミアナタバコを用いたアグロインフィルトレーション法による候補遺伝子の機能解析 (a,b)ツルムラサキ由来のBacDOPA5/6GTsの活性評価(c, d)センニチコウ由来のGgcDOPA6GTの活性評価 ・BacDOPA5/6GTsおよびGgcDOPA6GTがゴムフレニンIの合成に関与することが明らかとなった。 |

| 図3 タバコ培養細胞によるゴムフレニンIの人為的生産系の構築 (a,b)ツルムラサキ由来のBacDOPA5/6GTsを用いた生産系の構築(c,d)センニチコウ由来のGgcDOPA6GTを用いた生産系の構築 ・タバコ培養細胞を用いたゴムフレニンIの安定的な人為的生産系を構築することに成功した。 |

| 図4 ゴムフレニンIの熱安定性評価(a)熱処理前のゴムフレニンIおよびベタニン (b)熱処理後のゴムフレニンIおよびベタニン(c)熱処理後のゴムフレニンIおよびベタニンの残存率(%)(d, e)分子構造シミュレーションによるゴムフレニンIとベタニンの構造解析。黄矢印は分子内水素結合を示す。 ・ゴムフレニンIはベタニンに比べて熱安定性が高いことが示された。また、ゴムフレニンIでは、ベタニンには見られない分子内水素結合が形成される可能性が示された。 |
【用語の説明】
ナデシコ目植物に含まれる水溶性の植物色素。赤紫色のベタシアニンと黄色のベタキサンチンに大別される。
ベタレイン色素の一種で、赤色から赤紫色を示す色素群。ビートやツルムラサキ、センニチコウなどに含まれる。
熱帯アジア原産のつる性野菜。若葉や茎が食用として利用され、赤紫色のベタレイン色素を蓄積する。
熱帯アメリカ原産の観賞植物。色鮮やかな苞を長期間維持することから広く利用されている。ベタレイン色素を蓄積する代表的な花卉である。
ベタシアニンの一種。ベタニンと同じ分子式を持つが、グルコースの結合位置が異なる位置異性体。本研究の中心となった色素であり、ベタニンより高い熱安定性を示す。
次世代シークエンサーを用いて、細胞内で発現しているmRNAを網羅的に解析し、どの遺伝子が働いているかを調べる技術。
植物細胞に遺伝子を導入する性質を持つ土壌細菌であるアグロバクテリウムを利用して、植物葉内に目的遺伝子を一時的に導入し、その機能を評価する実験手法。
原子核スピンの共鳴現象を利用して、分子構造を高精度に解析する分析手法。化合物の構造決定に広く利用されている。
コンピューター上で分子の立体構造や分子内の相互作用を予測・解析する手法。本研究では、ゴムフレニンIとベタニンの構造を比較し、熱安定性の違いに関与する可能性のある分子内水素結合を解析した。
【発表論文】
| 論文タイトル | A cyclo-DOPA 6-O-glucosyltransferase-mediated route for gomphrenin I biosynthesis in Basella alba and Gomphrena globosa |
| 論文著者 | Tomohiro Imamura*,†, Ryouta Shigehisa†, Akio Miyazato, Nami Matsumura, Kaisei Miyaki, Tenta Segawa, Masahide Yoshizumi, Hiroki Takagi, Takumi Yamaguchi, Shinya Ohki, and Masashi Mori* (*:責任著者、†:共同筆頭著者) |
| 雑誌 | New Phytologist |
| DOI | 10.1111/nph.71340 |
| 掲載日 | 2026年6月7日 |
令和8年6月19日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/06/19-1.html生命の「代謝」を真似た機能性ハイドロゲル材料を開発 ―自律運動や光エネルギー変換を実現する人工材料―
生命の「代謝」を真似た機能性ハイドロゲル材料を開発
―自律運動や光エネルギー変換を実現する人工材料―
ポイント
- 心拍や呼吸(異化)、光合成(同化)といった生体代謝を模倣した機能性の高分子ハイドロゲル材料「代謝模倣ハイドロゲル」開発に成功
- 高分子ゲルが、化学反応の単なる「入れ物」ではなく、化学反応と一体となって機能を生み出す能動的主体として働くことを初めて提示
- ソフトロボティクスや人工光合成によるエネルギー技術など応用に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の桶葭興資准教授と、東京大学大学院工学系研究科の吉田亮教授の研究グループは、生体の「代謝」機能に着想を得て、化学反応回路と高分子ネットワークを統合した新しい機能性ハイドロゲル*1材料「代謝模倣ハイドロゲル」を開発しました。 生体は外界と物質・エネルギーを交換する「開放系」であり、体内では複数の化学反応が連携して進行することで生命活動が維持されています。こうした代謝は、エネルギーを取り出し心拍や呼吸のように自律的な運動を引き起こす「異化」と、光合成のように外部エネルギーを利用して物質を合成する「同化」に大別されます。本研究では、この2つの機能を高分子ハイドロゲルを用いて、人工材料として再現しました。 具体的には、外部刺激なしに周期的な膨潤・収縮を示す「自励振動*2ゲル」と、光エネルギーを化学エネルギーへ変換する「人工光合成*3ゲル」を開発しました。前者は、異化反応を模したもので、化学振動反応(BZ反応)を利用し、化学エネルギーを機械運動へと変換します。後者は、水分解に関わる反応系を高分子ネットワーク内に組み込むことで、光合成のような同化反応で見られる効率的な電子移動を実現しています。 本研究は、高分子ゲルを単なる反応の場ではなく、反応と一体化して機能を発現する材料として位置づけ、「化学反応回路×高分子ネットワーク」という新たな材料設計指針を提示するものです。今後は、自律して動く人工筋肉などのソフトロボティクスや、人工光合成によるエネルギー変換、さらには環境応答型スマート材料などへの応用が期待されます。 本成果は2026年5月5日、英国王立化学会の学術誌「Chemical Communications」に掲載されました。 |
【研究の背景】
生体は外界と隔絶された閉じた系ではなく、物質やエネルギーを外界と交換しながら機能する「開放系」です。このような開放系において、生体内では多数の化学反応が同時かつ協調的に進行し、それによって生命活動が維持されています。こうした一連の反応の体系は「代謝」と呼ばれます。
代謝機能は大きく二つに分類されます。第一に、物質を分解してエネルギーを取り出す異化反応(例:呼吸)、第二に、外部エネルギーを利用して物質を合成・蓄積する同化反応(例:光合成)です。例えば、異化反応ではTCA回路に代表される循環型の反応ネットワークによってエネルギーが生成され、心拍や呼吸といった周期的な生命現象が支えられています。一方、同化反応では、植物の葉緑体において光エネルギーが捕集され、カルビン・ベンソン回路を通じてブドウ糖などの高エネルギー物質へと変換されます。
これらの代謝機能は、単なる分子反応の集合ではなく、それらを取り囲む生体膜や高分子ネットワークといった「柔軟で動的な媒体(ソフトメディエーター)」と一体となって実現されています。
一方、材料科学においても刺激応答性を有する高分子ゲルが広く研究されてきましたが、化学反応回路と高分子ネットワークが一体となって機能を発現する材料設計は、これまで十分に検討されていませんでした。
【本研究の成果】
本研究では、生体の代謝機能に着想を得て、化学反応回路と高分子ネットワークを統合した新しい機能性ハイドロゲル材料を開発しました。具体的には、以下の2種類の材料を実現しています。
① 自励振動ゲル(異化反応の模倣)
本材料は、生体の異化反応に対応し、外部刺激なしに周期的な膨潤・収縮を繰り返す自律振動挙動を示します。これは、BZ(Belousov-Zhabotinsky)反応と呼ばれる化学振動反応を高分子ゲル内部に組み込み、化学エネルギーを力学的運動へと変換することで実現されました。
② 人工光合成ゲル(同化反応の模倣)
本材料は、生体の同化反応に対応し、光エネルギーを化学エネルギーへ変換する機能を有します。水分解反応に関わる複数の機能分子や触媒を高分子ネットワーク内に組み込むことで、電子移動を効率的に促進し、光合成に類似したエネルギー変換を実現しました。
これらの材料は、生体の代謝機能を「反応回路 × 柔軟媒体」という観点から再構成し、人工材料として実装したものです。
【社会的意義・今後の展開】
本研究の意義は、従来の材料設計の枠組みを拡張し、「化学反応回路 × 高分子ネットワーク」を一体化するという新しい設計指針を提示した点にあります。
高分子ゲルは単なる反応の場ではなく、反応と一体化して機能を発現する材料であり、その構造変化(相転移など)を通じて、化学反応や電子移動を能動的に制御・加速できることが示されました。また、分子レベルからマクロスケールに至る階層的な設計が可能であり、複数の機能が相互作用する「創発的機能」を持つ材料としての可能性が示されています。
こうした特性を踏まえ、本研究で開発された「代謝模倣ハイドロゲル」は、以下のような展開が期待されます。
(1)自律駆動型ソフトロボティクス
自励振動ゲルは外部電源なしで動作する人工筋肉やソフトアクチュエータとして利用可能であり、柔軟なロボットへの応用が期待されます
(2)人工光合成によるエネルギー・環境技術
人工光合成ゲルは、水素生成などのエネルギー変換に応用可能であり、カーボンニュートラル技術への貢献が見込まれます。
(3)環境応答型スマート材料
環境に応じて機能を変えるスマート材料として、高機能センサーへの展開が期待されます。
本研究は、材料を受動的な存在から、エネルギー変換・運動・応答を内包した動的システムへと拡張するものであり、次世代材料科学の基盤となる可能性を有します。
今後は、精密重合や自己組織化と組み合わせることで、より高度な機能材料の創製が期待されます。さらに、精密重合や自己組織化技術と組み合わせることで、より高度で進化的な機能を持つ材料の創製が期待されます。また、生体の代謝機能の理解にも新たな視点を提供するものです。

図 「代謝機能」をまねたハイドロゲル材料
【論文情報】
| 掲載誌 | Chemical Communications (The Royal Society of Chemistry) |
| 論文タイトル | Design of metabolism inspired hydrogels driven by emergence of function |
| 著者 | Kosuke Okeyoshi, Ryo Yoshida |
| DOI | 10.1039/d5cc06562c |
| 掲載日 | 2026年5月5日付、オンライン版(オープンアクセス) |
【関連情報】
高分子ネットワークで人工光合成(2024.11.6 プレスリリース)
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/11/06-1.html
精密な高分子設計による能動的電子輸送が終始可能に
-高分子が触手のように電子を授受-(2023.12.14 プレスリリース)
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/12/14-1.html
高分子の"伸び縮み"で「人工光合成」を加速する!
-電子伝達を制御する高分子の相転移(2019.6.12 Academist Journal)
https://academist-cf.com/journal/?p=11128
高分子の相転移を利用した人工光合成に成功
-可視光エネルギーによる高効率な水素生成を達成-(2019.5.15 プレスリリース)
https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/05/15-1.html
【用語解説】
水を含んで膨潤した三次元網目構造の総称。天然または合成ポリマーの三次元ネットワークであり、大量の水または生体液を吸収する。特に、高分子ゲルの構造や機能は多種多様で、天然のハイドロゲルの身近な例として、コンニャク、寒天、ゼラチンなどがある。合成のハイドロゲルでは、その高分子主鎖だけでなく多様な架橋構造が開拓されている。
その系自体の特性により系内部で非振動入力が振動に変換されて引き起こされる振動現象のこと。例えば、生体のTCA回路を模したベロウソフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応)と呼ばれる化学振動反応系がある。
光合成を人為的に行う技術のこと。自然界での光合成は、水・二酸化炭素と、太陽光などの光エネルギーから化学エネルギーとして炭水化物などを合成するものであるが、広義の人工光合成には太陽電池を含むことがある。自然界での光合成を完全に模倣することは実現していないが、部分的には技術が確立している。可視光エネルギーによる水の分解もその代表例である。
令和8年5月12日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/05/12-1.html電池材料の電極界面ごとの"イオンの流れ"を初めて分離 ―電池材料の性能向上に新たな指針―
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北陸先端科学技術大学院大学 東京理科大学 |
電池材料の電極界面ごとの"イオンの流れ"を初めて分離
―電池材料の性能向上に新たな指針―
ポイント
- 電池材料の電極界面ごとに、イオン(プロトン)の流れを分離・定量する手法を開発
- 酸化物界面と金属・炭素界面の輸送特性を定量化することに初めて成功
- 電池材料の性能向上に新たな設計指針を提示し、燃料電池や水電解などの性能向上に貢献
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の阿部雄介大学院生(博士前期課程)(研究当時)、青木健太郎助教、Athchaya SUWANSOONTORN研究員(研究当時)、長尾祐樹教授らは、カナダ・カルガリー大学および東京理科大学 創域理工学部の四反田功准教授らとの共同研究により、電池材料の電極を構成する高分子電解質*1薄膜における「イオン(プロトン)」*2輸送を、界面*3ごとに分離・定量する新たな計測手法を開発しました。電池材料の性能向上に新たな指針を与える成果です。 燃料電池や水電解などの電池材料では、電極と高分子電解質が接する「界面」における「プロトン」の流れが性能を大きく左右します。しかし実際の電極では、酸化物、白金、炭素など複数の界面が混在しており、従来の測定ではそれらの輸送が重なって観測されるため、どの界面がどの程度プロトン輸送に寄与しているのか、プロトン伝導度*4を直接測定することができませんでした。このため、電池材料の性能向上に向けた界面設計の指針が得られないという課題がありました。 そこで本研究では、電極構造(くし形のインターディジテッド電極*5)の設計と低周波領域まで拡張したインピーダンス測定*6を組み合わせることで、これまで分離できなかった界面ごとのプロトン輸送を初めて分離・定量する手法を開発しました。その結果、電池材料の電極における酸化物界面と白金・炭素界面で最大で2倍程度異なるプロトン輸送特性を示すことを明らかにし、それぞれの役割を個別に評価できることを実証しました。本成果により、電極界面ごとのプロトン輸送の律速要因を明確に把握することが可能となり、電池材料の選択や界面設計をより合理的に進めることができるようになります。燃料電池に加え、水電解や二次電池、センサなど、さまざまな電気化学デバイスの性能向上に貢献することが期待されます。 |
【研究の背景】
燃料電池や水電解など、次世代エネルギー技術の高効率化に向けて、電極と電解質が接する「界面」におけるプロトンの流れの理解が重要となっています。特に近年、脱炭素社会の実現に向けて、燃料電池や水電解装置の性能向上への期待が高まっており、その鍵を握る界面設計の高度化が求められています。
燃料電池や水電解では、高分子電解質(アイオノマー)が電極表面を覆い、その界面を通じてプロトンが移動しています。しかし、実際の材料では、白金、炭素など複数の界面が混在しており、従来の測定ではそれらすべての寄与が一つに重なって観測されていました。そのため、どの界面でプロトンがどの程度流れているのかを区別することができず、界面設計の指針が得られないという課題がありました。
このように、界面ごとのプロトン輸送を分けて評価する手法が存在しないことが、電極材料や界面構造の最適設計を進める上で大きなボトルネックとなっていました。
【本研究の成果】
本研究では、電極構造(くし形のインターディジテッド電極)の形状を精密に制御するとともに、低周波まで拡張したインピーダンス測定を組み合わせることで、これまで一つに重なって観測されていたプロトン輸送の成分を分離・定量する新たな手法を開発しました。これにより、電極界面ごとのプロトンの流れを個別に評価することに初めて成功しました。その結果、測定信号に含まれる複数の抵抗成分が、それぞれ異なる界面に由来することを明確にし、
・高周波側の抵抗成分は酸化物(SiO2)界面のプロトン伝導
・低周波側の抵抗成分は白金および炭素界面のプロトン伝導
に対応することを明らかにしました。

| 図1 本研究の概念図と結果の概要。左図は、ナフィオン薄膜中をプロトンが電極界面に沿って移動する様子を示しています。SiO2基板界面(σ1)と、炭素または白金電極界面(σ2)で異なる輸送経路が存在します。従来はσ2を正確に得ることができていませんでした。右図は、電極パッド長(Long / Short)を変えても、それぞれの界面に対応する伝導度(σ1, σ2)がほぼ一致することを示しています。これは、測定された伝導度が電極構造の影響ではなく界面固有の値であり、σ2が高い精度で定量できていることを示します。 |
さらに、電極パッドの長さを変えても同じ伝導度が得られることから、これらの抵抗成分が電極構造ではなく「界面そのもの」の性質に由来することを実証しました。これにより、従来は一つの値としてしか評価できなかったプロトン伝導度を、界面ごとに分けて定量できることを初めて示しました。
本成果は、これまで"混ざって見えていたプロトンの流れ"を界面ごとに分解して捉えることを可能にした点で、電極界面におけるプロトン輸送の理解を大きく前進させるものです。

| 図2 本研究のまとめ。電池内部では、プロトンが複数の「電極界面」を通って移動していますが、従来はそれらが重なって観測されるため、どこが性能のボトルネックか分かりませんでした。本研究では、櫛のような電極構造を用いてプロトンの流れを界面ごとに「仕分け」して測定することに成功しました。その結果、酸化物と金属・炭素の界面でプロトンの進みやすさが最大で2倍程度異なることを明らかにしました。これにより、電池内部の「渋滞箇所」を特定でき、燃料電池や次世代電池の性能向上に向けた設計が可能になります。(本ポンチ絵は、AIにより作成) |
【社会への還元として期待できる内容、今後の展望】
本研究により、電極と高分子電解質が接する界面におけるプロトン輸送を、界面ごとに分離して評価できる手法が確立されました。これにより、どの界面がイオン輸送のボトルネックとなっているのかを明確に特定できるようになり、電極材料の選択や界面構造の最適化を、従来よりも科学的根拠に基づいて設計することが可能となります。特に、燃料電池や水電解装置の開発においては、エネルギー変換効率の向上やコスト低減が重要な課題であり、本手法はその設計指針を与える基盤技術として、材料開発やデバイス設計に直接的に貢献することが期待されます。また、本手法は、燃料電池に限らず、水電解、二次電池、センサなど、電極界面でのイオン輸送が重要となるさまざまな電気化学デバイスに適用可能であり、それらの性能向上に貢献すると考えられます。
今後は、実際の複雑な電極構造への展開や、界面構造とイオン輸送の関係の解明を進め、より高効率で高機能なエネルギー・デバイスの実現を目指します。
本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST(JPMJCR21B3)、日本学術振興会(JSPS) 科研費 新学術研究領域「ハイドロジェノミクス」(JP21H00020)、公益財団法人 村田学術振興・教育財団 研究助成による財政的支援を受けて実施されました。
【論文情報】
| 掲載誌 | ACS Applied Materials & Interfaces |
| 論文タイトル | Decoupling Interfacial Proton Conductivity in Ionomer Thin Films on Pt and Carbon Electrodes |
| 著者 | Yusuke Abe, Kentaro Aoki, Athchaya Suwansoontorn, Kunal Karan, Isao Shitanda, Yuki Nagao* |
| 掲載日 | 2026年5月1日 |
| DOI | 10.1021/acsami.6c04425 |
【用語説明】
イオンを運ぶ機能を持つ高分子材料です。燃料電池などでは、プロトン*2を選択的に輸送する役割を担います。本研究では代表的な高分子電解質であるナフィオンを使用しています。ナフィオンは、プロトンを効率よく輸送できるため、燃料電池などで広く利用されています。
水素原子が電子を失った粒子(H+)で、電気を運ぶ役割を持つイオンです。燃料電池や水電解などは、このプロトンを電子と別々に流すことで動きます。
異なる材料が接している境界のことです。本研究では、ナフィオンとSiO2(酸化物)、白金、炭素との接触部分を指します。
プロトンがどれだけ流れやすいかを表す指標です。値が大きいほど、プロトンが移動しやすいことを意味します。
櫛(くし)の歯のように電極が交互に並んだ構造を持つ電極です。電極間を横方向に流れるイオンの動きを測定するのに適しています。
交流電圧を加えて材料の応答を調べる測定手法で、イオンの動きや電気的な抵抗を周波数ごとに解析することができます。
令和8年5月11日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/05/11-1.html学生のFENGさんがAWPP2025においてBest Poster Awardを受賞
学生のFENG , Ruiqiさん(博士後期課程1年、物質化学フロンティア研究領域、山口政之研究室)が、The 21st Asian Workshop on Polymer Processing (AWPP2025) においてBest Poster Awardを受賞しました。
AWPPは、プラスチック材料・製品分野における技術や情報を交換する場として、アジアの研究者や技術者が一堂に会する国際的なワークショップです。現場の業務を支える基盤技術から最先端の研究成果に至るまで、知識の共有に大きく貢献し、プラスチック業界内における強固なネットワーク構築を促進しています。
第21回となるAWPP2025は、令和7年12月1日~4日まで石川県金沢市の金沢市文化ホールにて開催され、プラスチック分野に関する最新の研究成果ついて、活発な議論が交わされました。
※参考:AWPP2025
■受賞年月日
令和7年12月2日
■研究題目、論文タイトル等
Role of Ethylene-Vinyl Acetate Copolymer in Enhancing Shear-Induced Crystallization of Poly (Lactic Acid)
■研究者、著者
Ruiqi Feng, Masayuki Yamaguchi
■受賞対象となった研究の内容
ポリ乳酸に長鎖分岐高分子であるエチレン・酢酸ビニル共重合体をブレンドしたところ、流動場において生じる結晶化が著しく促進されることが判明した。さらに得られる成形体は、分子配向度が高いために剛性に富むことが明らかになった。
■受賞にあたって一言
I learned many things―not only about polymers, but also about how long I can stand next to a poster without losing my smile. I met amazing people and collected valuable knowledges through meaningful discussion, which are even better than my data. I'm truly grateful for this opportunity.
令和8年1月27日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2026/01/27-2.html令和7年度 第4回 超越バイオメディカルDX研究拠点 ネオ・エクセレントコアセミナー
下記のとおりセミナーを開催しますので、ご案内します。
| 日時 | 令和8年1月23日(金) 15:00~17:00 |
| 場所 | JAISTイノベーションプラザ 2F シェアードオープンイノベーションルーム |
| 講演題目 /講演者 |
15:00-16:00 「濃厚ポリマーブラシ付与ナノ繊維と細胞の自己組織化過程の理解と操作」 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS) 高分子・バイオ材料研究センター 高分子材料分野 表面制御高分子チーム チームリーダー 吉川 千晶 氏 16:00-17:00 「タンパク質・ペプチドアンカーリング科学、生体非応答高分子科学の学術・ 産業基盤の創出を目指して」 富山大学 学術研究部工学系、大学院医薬理工学環、大学院理工学研究科 准教授 中路 正 氏 |
| 使用言語 | 日本語 |
| 参加申込 | ・参加費無料 ・要予約(定員30名) 下記の担当へ前日までにメールにてお申し込みください。 【本件担当・予約申込先】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点 拠点長 松村 和明 (mkazuaki |
学生のSUMALDEさんがPVSEC-36においてBest Oral Presentation Awardを受賞
学生のSUMALDE, Adrian Augusto Mendozaさん(博士後期課程2年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が36th International Photovoltaic Science and Engineering Conference(PVSEC-36)においてBest Oral Presentation Awardを受賞しました。
PVSEC-36は、令和7年11月9日~14日まで、タイ・バンコクのチュラロンコン大学(Chulalongkorn University)にて開催された、太陽光発電システムに関する国際会議です。同会議では、世界中の研究者や技術者が一堂に会し、最先端の研究成果について活発な議論が行われました。
※参考:PVSEC-36
■受賞年月日
令和7年11月14日
■研究題目、論文タイトル等
Development of encapsulant-less vertical crystalline silicon photovoltaic modules with various thermoplastic materials as module base
■研究者、著者
Adrian Augusto M. Sumalde, Kensaku Maeda, and Keisuke Ohdaira
■受賞対象となった研究の内容
Encapsulant-less PV modules were developed to address the recyclability concerns in conventional crystalline silicon (c-Si) photovoltaic (PV) modules. Specifically, these modules were conceptualized for vertical installations for building integration, targeting high urban density areas and/or locations with heavy snowfall conditions. This work evaluated the potential of several thermoplastics as primary material for module base, providing both physical stability and aesthetic appeal. The design utilizes grooves for easy installation and removal of module components, as well as "corner" and "bar" holding structures to minimize partial shading and vertical stability. Mini-modules were 3d-printed using black polycarbonate (PC), translucent polyethylene terephthalate glycol (PETG), and white acrylonitrile styrene acrylate (ASA). Electrical performance was evaluate using 1-sun illuminated J - V characteristics, EQE spectra, and electroluminescence imaging, while an initial 72-hour damp-heat test was conducted to investigate the response of modules to thermo-hygrometric stress. Using corner holding structures in the module base design, performance losses were successfully minimized, kept to as low as 0.36% ηabs for the white ASA modules. The translucency of PETG modules and white colors of ASA modules also resulted in cell-to-module ratios above 90%, with confidence that upscaling will improve these values. Future direction involves upsizing and redesigning for additional physical stability, to be evaluated using moisture ingress and vibration stability tests.
■受賞にあたって一言
I am truly honored to have received the award at PVSEC-36. It validated my efforts throughout the year and motivates me to continue working hard in my research and my PhD studies. I would like to thank Professor Keisuke Ohdaira and Senior Lecturer Kensaku Maeda for their continuous guidance and instilling discipline in my daily research activities in JAIST, as well as to NEDO and Specially Appointed Professor Marwan Dhamrin, The University of Osaka, for their technical support for the fabrication of our solar cells. Lastly, I would also like to thank Associate Professor Kotona Motoyama, Kanazawa University, who strengthened my awareness of responsible research and innovation. Through her, I am always reminded that whenever we communicate our research, the benefit to society is a common language that we all can understand.


令和7年12月9日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/12/09-1.html海洋細菌による新しいがん免疫療法の開発に成功! ~遺伝子改変不要の天然細菌が大腸がんを選択的に攻撃~
海洋細菌による新しいがん免疫療法の開発に成功!
~遺伝子改変不要の天然細菌が大腸がんを選択的に攻撃~
【ポイント】
- 海洋細菌Photobacterium angustumが大腸がんに対して強力な抗腫瘍効果を示すことを世界で初めて発見
- 遺伝子改変を一切行わない天然細菌でありながら、がん組織に選択的に集積し、健康な臓器への影響が極めて少ない
- 細菌による直接的ながん細胞破壊と免疫系の活性化という二つのメカニズムで腫瘍を攻撃
- 従来の細菌療法と比較して優れた治療効果と安全性を確認
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授と宮原 弥夏子大学院生(博士後期課程、JAIST SPRING研究員)らの研究チームは、海洋細菌*1Photobacterium angustum(フォトバクテリウム・アングスタム)が大腸がんに対して顕著な治療効果を示すことを発見しました。 本研究では、複数の海洋細菌株をスクリーニングした結果、P. angustumが遺伝子改変を施さない天然の状態で、がん組織に選択的に集積し、直接的な腫瘍溶解作用と強力な免疫活性化を引き起こすことを明らかにしました。マウスモデルにおいて、静脈内投与されたP. angustumは腫瘍組織に高度に集積する一方、肝臓を除く重要臓器への定着はほとんど認められず、血液学的異常や組織学的毒性も観察されませんでした。 さらに、P. angustumによる治療は、T細胞、B細胞、好中球などの免疫細胞の腫瘍内浸潤を促進し、腫瘍壊死因子α(TNF-α)やインターフェロンγ(IFN-γ)などの炎症性サイトカイン*2の産生を増強しました。また、細菌が産生する天然の外毒素*3により、がん細胞を直接破壊する能力も確認されました。これらの複合的な作用により、治療を受けたマウスの生存期間が著しく延長し、一部の個体では完全寛解が達成されました。 本研究成果は、遺伝子組み換え生物(GMO)*4に依存しない、より安全で生体適合性の高い新しいがん免疫療法の開発につながる重要な知見です。 この研究の詳細は、がん免疫療法分野の国際的トップジャーナルである「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」に掲載されました。 |
【研究背景と内容】
がんは世界的な死因の上位を占めており、免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T細胞療法などの画期的な免疫療法が開発されてきました。しかし、これらの治療法は高額であり、免疫関連の副作用、固形腫瘍における限定的な効果、腫瘍微小環境*5における免疫抑制機構などの課題があります。
細菌を用いたがん治療は150年以上前から検討されてきましたが、近年、特定の細菌種が腫瘍の低酸素環境や免疫抑制環境に選択的に定着し増殖する能力を持つことが明らかになり、注目を集めています。しかし、これまでの研究の多くは遺伝子改変された大腸菌やサルモネラ菌を用いており、安全性の懸念、複雑な製造プロセス、厳格な規制などの課題がありました。
本研究では、遺伝子改変を行わない天然の海洋細菌に着目し、がん治療への応用可能性を探索しました。
【研究の内容】
1. 海洋細菌のスクリーニング
研究グループは、P. angustum、P. phosphoreum、P. aquimaris、A. logei、P. indicumを含む複数の海洋細菌株について、大腸がんマウスモデルにおける抗腫瘍活性を評価しました。その結果、P. angustumのみが顕著な抗腫瘍効果を示し(図1)、生存期間を著しく延長させました。他の細菌株は高い毒性により投与後2日以内にマウスが死亡しました。

図1. 大腸がんマウスモデルにおけるP. angustumの抗腫瘍活性
2. 優れた安全性プロファイル
P. angustum投与後のマウスにおいて、体重減少や血液学的異常は認められませんでした。完全血球計算、生化学的分析、組織学的検査のいずれにおいても、毒性の徴候は観察されませんでした。また、炎症性サイトカインの上昇は毒性株と比較して顕著に低く、24時間後には肝臓を除く重要臓器から細菌が検出されませんでした。
3. 高い腫瘍選択性
静脈内投与されたP. angustumは、腫瘍組織に選択的に集積し、多数のコロニー形成が確認されました。一方、心臓、肺、腎臓、脾臓などの健康な臓器への定着はほとんど認められませんでした。
4. 二重の抗腫瘍メカニズム
P. angustumの抗腫瘍効果は、以下の二つのメカニズムによるものと考えられます(図2):
- 直接的な腫瘍溶解作用:細菌が産生する天然の外毒素(ヘモリシンなど)により、がん細胞を直接破壊
- 免疫系の活性化:T細胞、B細胞、好中球の腫瘍内浸潤を促進し、TNF-αやIFN-γなどの炎症性サイトカインの産生を増強

図2. P. angustumによる抗腫瘍メカニズム
5. 幅広い適用可能性
P. angustumは、炎症誘発性の大腸がんモデルに加え、薬剤耐性のトリプルネガティブ乳がんモデルにおいても顕著な抗腫瘍効果を示しました。これは、本治療法が大腸がん以外のがん種にも応用できる可能性を示唆しています。
【研究の意義と今後の展望】
本研究は、遺伝子改変を必要としない天然細菌が、安全かつ効果的ながん免疫療法として機能することを実証しました。今後は、さまざまながん種での有効性の検証、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の評価、長期的な免疫記憶の詳細な解析などを進める予定です。
また、P. angustumの腫瘍選択的な定着メカニズムや免疫活性化の分子機構をさらに解明することで、より効果的な治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、GMOに依存しない生体適合性の高い細菌療法という新しい治療パラダイムを提示するものであり、将来的には臨床応用に向けた開発が期待されます。
【研究支援】
本研究は、以下の研究資金の支援を受けて実施されました:
日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(A)(課題番号:23H00551)
同 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)(課題番号:22K18440)
同 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(課題番号:JPJS00420230006)
科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(課題番号:JPMJSF2318)
同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2102)
【論文情報】
| 掲載誌 | Journal for ImmunoTherapy of Cancer |
| 論文題目 | Systemic administration of Photobacterium angustum promotes antitumor immunity and direct tumor lysis in murine models of colorectal cancer |
| 著者 | Mikako Miyahara, Teruhisa Takizawa, Matomo Sakari, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年11月19日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1136/jitc-2025-012665 |
【用語説明】
海洋環境に生息する細菌の総称。本研究で使用したPhotobacterium angustumは、特殊な培養条件を必要とせず、通常の海洋培地で培養可能。
細胞間の情報伝達に関与するタンパク質。TNF-αやIFN-γは免疫応答を促進する炎症性サイトカイン。
細菌が体外に分泌する毒性物質。本研究では、P. angustumが産生する外毒素ががん細胞を直接破壊することが示された。
遺伝子工学的手法により遺伝子を改変した生物。本研究で使用したP. angustumは天然株であり、遺伝子改変は行っていない。
がん組織とその周辺の細胞、血管、免疫細胞、シグナル分子などから構成される環境。多くの場合、低酸素状態や免疫抑制状態にある。
令和7年11月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/11/21-1.html令和7年度 第2回 超越バイオメディカルDX研究拠点 ネオ・エクセレントコアセミナー(科研費「新規細胞内氷晶形成測定法の開発と次世代三次元組織凍結保存」共催セミナー)
下記のとおりセミナーを開催しますので、ご案内します。
| 日時 | 令和7年10月24日(金) 13:30~16:55 |
| 場所 | JAISTイノベーションプラザ 2F シェアードオープンイノベーションルーム |
| 概要 | 本セミナーでは、凍結保存の新展開を切り拓く先端センシング技術を紹介します。高分子凍結保護剤の開発から、高磁場DNP-MAS-NMRやダイヤモンド量子センサー、スーパーコンピュータを活用した計算科学、さらにX線・中性子散乱による微細構造解析、液化窒素式機器の開発まで、量子・高磁場・放射光・計算科学の最前線研究を結集し、凍結保存の未来を展望します。 |
| プログラム | 13:30 開始 開会あいさつ 13:35 「高分子凍結保護剤の開発と凍結状態センシングへの挑戦」 松村 和明 教授 (北陸先端科学技術大学院大学) 14:05 「高磁場DNP-MAS-NMR法の装置と方法論の開発」 松木 陽 准教授 (大阪大学) 14:35 「ダイヤモンド量子センサーのバイオ応用概観」 安 東秀 准教授 (北陸先端科学技術大学院大学) 15:05-15:20 コーヒーブレーク 15:20 「JAISTスパコンを活用したデータ駆動型材料研究」 本郷 研太 准教授 (北陸先端科学技術大学院大学) 15:50 「X線/中性子散乱による凍結保存における細胞微細構造センシング」 中田 克 氏 (株式会社東レリサーチセンター) 16:20 「液化窒素式凍結保存機器の開発」 吉村 滋弘 氏 (太陽日酸株式会社) 16:50 終了 閉会あいさつ |
| 使用言語 | 日本語 |
| 参加申込 | ・参加費無料 ・要予約(定員30名) 下記の担当へ前日までにメールにてお申し込みください。 【本件担当・予約申込先】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点 拠点長 松村 和明 (mkazuaki |
学生の井上さんがANTEC® 2025においてBest of ANTEC® 2025に選出
学生の井上貴博さん(博士後期課程3年、物質化学フロンティア研究領域、山口政之研究室)がAnnual Technical Conference(ANTEC® 2025)においてBest of ANTEC® 2025に選出されました。
ANTEC® 2025は、米国プラスチック技術者協会(SPE:Society of Plastics Engineers) が主催し、令和7年3月3日~6日にかけて、米国フィラデルフィアにて開催された国際会議です。
ANTEC® 2025では、プラスチックおよび高分子科学に関する産業界、研究機関、学術機関、そして国際的な研究における最先端の成果が紹介され、新たなプラスチック技術、プロセス、高分子研究、新素材など幅広いテーマが取り上げられる中、今年は特に科学的・技術的・産業的な課題とその解決策に焦点が当てられました。
SPEは、ANTEC® 2025において、特に影響力の大きかった発表を厳選し、「Best of ANTEC® 2025」としてオンデマンドで限定配信しています。このコレクションは、令和7年12月31日までいつでも視聴が可能です。
また、「Best of ANTEC®」に選出された発表者には、"Outstanding Presentation"(優秀発表)の認定証が授与されます。
※参考:ANTEC® 2025
■受賞年月日
令和7年7月15日
■研究題目、論文タイトル等
Enhancement of Polypropylene Crystallization by Addition of Novel Nucleating Agent
■研究者、著者
井上貴博、山口政之
■受賞対象となった研究の内容
新しく開発されたポリプロピレン用結晶核剤の性能を調べ、結晶化温度など核剤性能を評価する指標が既存の材料よりも優れていることを明らかにした。
■受賞にあたって一言
この度は、ANTEC® 2025におきまして、Best of ANTEC®という賞を頂けたことを大変光栄に思います。本研究を遂行するにあたり、日頃よりご指導ご鞭撻いただいている山口政之教授に心より御礼申し上げます。引き続き、研究活動に努めてまいりたいと思います。
令和7年9月1日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/09/09-1.htmlパターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証
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北陸先端科学技術大学院大学 科学技術振興機構(JST) |
パターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証
【ポイント】
- 水の蒸発によって現れるパターン形成「界面分割現象」の新たな特徴を発見
- ポリマー分散液の蒸発界面が複数に分割するとき、「対称性の破れ」が現れることを実証
- 生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に有用
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)サスティナブルイノベーション研究領域のグエン チキムロク大学院生(博士後期課程)、桶葭興資准教授らは、ポリマーが水に分散した粘性流体から現れる散逸構造[用語解説1]「界面分割現象」において、対称性の破れ[用語解説2]を実証した。これまで、界面[用語解説3]で起こる幾何学変形が、時間とともにどう進んでいくかは、不明な点が多かった。今回、明確な境界条件のもと、確率統計を通した解析を進めた結果、分割時に現れる核の位置に、空間的な「対称性の破れ」が生じることが明らかになった。これは、生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に有用である。 |
【研究概要】
自然界には様々な幾何学パターンがあり、例えば雪の結晶の形は、気温と水蒸気の量で多様に変化する。また、乾燥環境は水の蒸発を引き起こし、生物であればその成長過程で非対称なパターンをつくる。これまで、この幾何学性や非対称性について、数理的な解釈がなされてきたものの、物理化学的実験に基づいた再現はなされてこなかった。一方、桶葭准教授らの研究グループはこれまでに、ポリマー水分散系の蒸発界面に着目し、散逸構造「界面分割現象」を報告してきた (※1)。これは、ポリマー水溶液などの粘性流体を明確な境界のある有限空間から乾燥環境下におくと、一つの蒸発界面が複数の界面に分割される幾何学化現象である。ここで、空間軸の一つを1ミリメートル程度の隙間にすることで毛管現象[用語解説4]の物理条件が制御された空間となる。さらに、一定温度下で水の蒸発を一方向になるよう設定すると、蒸発界面直下の濃密なポリマーの密度がゆらぎ、複数の特異的位置でポリマーが析出して界面分割する。具体的には、多糖[用語解説5]の水溶液を乾燥環境下におくと、まるで界面から芽が出るようにセンチメートル単位で多糖が析出し界面が複数に分割される。ここでは、ミクロ構造の秩序化と同時に、マクロなパターンが現れることが分かっていた。しかし、非平衡で開放的な蒸発界面から引き起こされる実際の分割現象は、核形成位置の平均的情報は得られるものの、その不確定さのため複数の核形成メカニズムについては未解明な特徴が多かった。
※1. https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/09/22-1.html

| 図. 界面分割現象における「対称性の破れ」: A. 空間軸の一つとしてセル幅を大きくしていくと、分割現象の特徴が現れる概念図。界面がゆらぎ、対称性が破れ、そして水中に分散していたポリマーが析出する核を非同期に形成する。B. 同一条件で得られる異なる分割(二分割、もしくは三分割)と、セル幅に対する核形成位置のデータ。C. 対称性の破れを加味した分岐モデル。核1と核2とは、タイミングがずれて発生する(時間的に同期していない)。 |
そこで今回、ポリマー分散液の一つの蒸発界面が、二つ、もしくは三つに分割される空間条件に焦点をあて、その核形成位置を詳細に検討した(図A)。確率統計論を通した界面科学的な解析から、それぞれの分割数に対して、「対称性の破れ」と「非同期性」が現れ、相互に関係し合う特徴であることが分かった。核の位置については平均化による統計評価ではなく、結果に対する場合分けを通し、特徴的な「ずれ」を評価した(図B)。すると、分割点の位置には偏りがあり、セル幅に対して均等に半分、もしくは均等に三分の一に分割するわけではない、という基本原理が明らかになった。実際、二分割される場合、核はセル幅の中心ではなく、中心からずれた位置に形成される傾向となった。この「ずれ」は、セル幅を少しずつ大きくすると顕著に現れ、三分割される場合、2番目の核形成が起こるタイミングや位置に大きく影響し、非同期性として現れた。この「対称性の破れ」と「非同期性」は、時間発展の現象理解に重要である(図C)。
また、この核間隔は、ポリマー水溶液の液相と空気の界面における毛管長が影響する。今回の実証実験では、粘性流体として多糖キトサン[用語解説6] の水分散系を用いており、5~8ミリメートル程度の間隔であった。これまでにいくつかの多糖でも分割現象は実証されており、研究グループは現在、様々な化学種・物質群への拡張や現象の特徴的メカニズムの解明を進めている。これらを通して、自然界にも通ずるパターン形成の普遍的理解が期待される。
本成果は、2025年6月4日に科学雑誌「Advanced Science」誌(WILEY社)のオンライン版で公開された。なお、本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR201G)、日本学術振興会科研費 基盤研究B(JP23K21136)、日本学術振興会科研費 新学術領域研究(JP22H04532)、および公益財団法人旭硝子財団 若手継続グラントの支援のもと行われた。
【今後の展開】
生物を含め自然界には多様な散逸構造が在り、対称性の破れを明確に扱うことは重要である。パターン形成に関する歴史的研究にはチューリングパターン[用語解説7]などがあり、ソフトマテリアルを題材とした研究例も多い。これは、生物における自己組織化の理解や実空間におけるマテリアル設計に重要なテーマと認識されているためでもある。今回のような実検証を通じたパターン形成の理解が進めば、今後、高分子科学、コロイド科学、界面科学、材料科学、流体力学、非平衡科学、生命科学などの分野への進展に留まらない。実時空間と仮想時空間を通した数理科学、シミュレーション、データサイエンスなどとの融合によって、パターン形成の理解と材料設計に有用と期待される。
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Science (WILEY) |
| 題目 | Symmetry breaking in meniscus splitting: Effects of boundary conditions and polymeric membrane growth |
| 著者 | Thi Kim Loc Nguyen, Taisuke Hatta, Koji Ogura, Yoshiya Tonomura, Kosuke Okeyoshi* |
| DOI | 10.1002/advs.202503807 |
| 掲載日 | 2025年6月4日 |
【用語解説】
令和7年6月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/06/04-1.html学生の鈴木さんがeMEDX-24においてOutstanding Student Poster Awardを受賞
学生の鈴木超さん(博士後期課程1年、物質化学フロンティア研究領域、松村研究室)が、International Symposium on Exponential Biomedical DX 2024(eMEDX-24)においてOutstanding Student Poster Awardを受賞しました。
eMEDX-24は令和6年12月19日~20日にかけて石川県にて開催されたバイオマテリアルとDXの融合に関する国際会議です。同会議では、ウェルビーイングの実現に貢献することに重点を置き、高分子やナノマテリアルなどの材料とコンピューターサイエンスの融合による医療材料研究に関する最新の研究成果について議論が行われました。
※参考:eMEDX-24
■受賞年月日
令和6年12月20日
■研究題目、論文タイトル等
Synthesis and Evaluation of Donor-Acceptor Conjugated Polymers for Thermo-responsive Protein DDS
■研究者、著者
鈴木超、松村和明
■受賞対象となった研究の内容
温度応答性の高分子を用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)のための生体内での発熱源として、近赤外光を吸収して発熱するドナーアクセプター(DA)高分子の合成を行いました。このDAポリマーをナノ粒子化することに成功し、808nmの近赤外光を照射することで速やかな発熱を確認しました。今後はこのポリマーナノ粒子と温度応答性高分子を組み合わせることで、近赤外光に応答した薬物放出可能なDDSの創出に取り組んでいきます。
■受賞にあたって一言
今回、Outstanding Student Poster Awardを受賞することができ、大変光栄です。国内外の研究者、学生の方々から様々な質問をいただき、とても刺激的な機会となりました。これからもより一層研究に励みたいと思います。
令和7年1月31日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/01/31-1.html学生の萩原さんがGel Symposium 2024においてSmart Molecules Best Poster Awardを受賞
学生の萩原礼奈さん(博士後期課程1年、サスティナブルイノベーション研究領域、桶葭研究室)が14th International Gel Symposium(Gel Symposium 2024)において、Wiley社発行のジャーナルSmart MoleculesよりBest Poster Awardを受賞しました。
Gel Symposiumは、高分子ゲルおよび関連する材料科学・工学の基礎研究と実用的応用における最新の課題に焦点を当てた国際会議です。
Gel Symposium 2024は、令和6年11月17日~21日にかけて沖縄県にて開催され、高分子ゲルだけでなく、無溶媒エラストマー、ゴム、その他のポリマーネットワーク、およびアクティブソフトマターに関する研究についても議論が行われました。
※参考:Gel Symposium 2024
■受賞年月日
令和6年11月21日
■研究題目、論文タイトル等
Design of Open Systems Using Aqueous Polymer Solutions Causing Meniscus Splitting
■研究者、著者
萩原礼奈、桶葭興資
■受賞対象となった研究の内容
高分子溶液の乾燥過程で界面の変形が生じる界面分割現象は非平衡現象の一つとして注目されている。多糖類のみで確認されていたこの現象を合成高分子でも実証した本研究は、開口部のデザインにより湿度を調整することで界面変形パターンの制御に成功した。
■受賞にあたって一言
この度はGel Symposium 2024にてSmart Molecules Best Poster Awardを頂戴し、誠に光栄に思います。本研究の遂行にあたり、丁寧なご指導を賜りました桶葭興資准教授及び研究室のメンバーにこの場を借りて心より御礼申し上げます。今後も界面変形の普遍性を明らかにするため、研究を進めていきます。
令和7年1月21日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/01/21-1.htmlOIST-JAIST Joint Symposiumを開催
11月27日(水)、沖縄科学技術大学院大学(以下「OIST」という。) にて、OIST-JAIST Joint Symposiumを開催しました。
OISTと本学(JAIST)は、令和5年度に学術協力に関する基本協定を締結して両大学間の学術協力の強化を進めてきましたが、この度、両大学間の共同研究の発展と促進を目的に共同シンポジウムを開催しました。
"Collaborative Innovation for a Sustainable Future through Advanced Materials Science"をテーマに開催した今回のシンポジウムは、OIST カリン マルキデス 学長及び御手洗 哲司 研究担当ディーンによる開会挨拶後、OIST 細胞シグナルユニット 山本 雅 教授、本学 超越バイオメディカルDX研究拠点 栗澤 元一 教授、OIST パイ共役ポリマーユニット クリスティーヌ ラスカム 教授、本学 マテリアルズインフォマティクス国際研究拠点長 谷池 俊明 教授から、それぞれ先進的な研究についてご講演いただき、OIST エイミー シェン プロボスト及び本学 永井 由佳里 理事(研究振興、社会連携担当)の挨拶をもって閉会となりました。
本シンポジウムが現地のみの開催であったにも関わらず、両大学から約50名の参加がありました。また、質疑応答の時間だけでなく、コーヒーブレイク中にも多くの研究者間で活発な意見交換が行われました。
シンポジウム終了後には、同日OISTと金沢大学ナノ生命科学研究所(NanoLSI)が開催していた8th NanoLSI Symposiumのポスターセッションに本シンポジウム参加者も出席しました。本学からは6名の研究者がポスターセッションにおいて、自身の研究成果を発表しました。同ポスターセッションには、OIST、NanoLSI、本学から総勢80名程の研究者が参加し、多角的な意見交換を繰り広げました。
本シンポジウムの開催は、今後の両大学間での強固な研究連携の構築を目指す上で、大変有意義なものとなりました。本シンポジウムが端緒となり、今後両大学間で新たな研究プロジェクトの発足等、持続可能な共同研究体制が築かれるよう、より一層注力して参ります。

開会の挨拶をするOIST マルキデス学長(左)と御手洗研究担当ディーン(右)

講演① "Development of a New
Methodology of Cancer Chemotherapy"
山本 雅 教授(OIST 細胞シグナルユニット)

講演② "Enhancing Healing Power with Green Tea Nanomedicine for Treatment of Intractable Diseases"
栗澤 元一 教授(本学 超越バイオメディカルDX研究拠点)

講演③ "Dual-catalytic Reactions to Promote Previously Inaccessible Reactions"
クリスティーヌ ラスカム 教授
(OIST パイ共役ポリマーユニット)

講演④ "Streaming Materials Discovery by High-Throughput Experimentation and Machine Learning"
谷池 俊明 教授(本学 マテリアルズインフォマティクス国際研究拠点)


閉会の挨拶をするOIST シェンプロボスト(左)と本学 永井理事(右)

OIST、NanoLSI、本学のポスターセッション
令和6年12月6日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2024/12/06-2.html学生の加藤さんがSLTB2024においてPoster Awardを受賞
学生(JAIST-Spring研究員)の加藤裕介さん(博士後期課程2年、物質化学フロンティア研究領域、松村研究室)が、60th Anniversary Meeting of the Society for Low Temperature Biology (SLTB2024)において、Poster Awardを受賞しました。
本研究成果は、次世代研究者挑戦的研究プログラム(JAIST-SPRING)の支援のもと行われたものです。
SLTB2024は、令和6年9月11日~13日にかけてイギリスのマンチェスター大学にて開催された低温生物学に関する国際会議です。今回は低温生物学会(SLTB)60周年の記念会議となり、特に低温生物学会の歴史と持続可能なバイオバンクについて焦点が当てられ、生物、物理、化学など様々な分野からのアプローチによる低温環境での生物の生命現象に関する最新の研究成果について議論が行われました。
※参考:SLBT2024
■受賞年月日
令和6年9月12日
■研究題目、論文タイトル等
Cryopreservation with intracellularly introduced polymeric cryoprotectants and extracellular non-permeable small molecule cryoprotectants
■研究者、著者
加藤裕介、松村和明
■受賞対象となった研究の内容
細胞や組織の凍結保存を達成するためには、細胞内の氷晶形成を抑制することが重要と言われている。この研究では、その目的のために凍結保護高分子を細胞内に導入することにより、細胞外保護剤との相乗的保護効果を得ることに成功した。
■受賞にあたって一言
このたびはSLTB2024にてPoster Awardを戴き、大変光栄に存じます。本研究の遂行にあたり、丁寧なご指導を賜りました松村和明教授に、この場を借りて心より御礼申し上げます。また、多くのご助言をいただきました研究室の皆様に、深く感謝いたします。
令和6年10月31日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2024/10/31-1.html学生の山崎さんが第75回コロイドおよび界面化学討論会においてポスター賞を受賞
学生の山崎隼佑さん(博士後期課程1年、バイオ機能医工学研究領域、濱田研究室)が第75回コロイドおよび界面化学討論会においてポスター賞を受賞しました。
第75回コロイドおよび界面化学討論会は、公益社団法人日本化学会コロイドおよび界面化学部会が主催し、「先端計測・解析が切り拓くコロイド・界面の新展開」をテーマとして、令和6年9月17日〜20日にかけて東北大学にて開催されました。
ポスター賞は、35歳以下の大学生(学部生、大学院生)、大学や研究所、企業等の研究員、助教などによるポスター発表のうち、特に優れた発表を行った発表者に対し授与されるものです。
※参考:第75回コロイドおよび界面化学討論会
■受賞年月日
令和6年9月18日
■研究題目、論文タイトル等
ジャイアントリポソームによる膜相分離の安定性解析-浸透圧による誘導とポリマーブラシによる抑制競合-
■研究者、著者
山崎隼佑、水野志野、濱田勉
■受賞対象となった研究の内容
生体膜における相分離現象の外部刺激応答及びその制御機構の理解に向けて研究を行っている。本研究では、生体膜モデルとしてポリマーブラシを膜面に持つ人工膜リポソームを作成し、浸透圧による相分離誘起について研究を行った。ポリマー密度や温度、リポソームサイズを変化させた際の相分離変化を解析することで、脂質2分子膜の相分離を制御する物理化学的パラメータを明らかにした。
■受賞にあたって一言
この度は、ポスター賞を受賞でき、大変うれしく思っています。日々、熱心に指導してくださる濱田勉准教授及び研究室のメンバーに深くお礼申しあげます。今後も、膜の挙動についての研究を進めていきます。
令和6年10月25日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2024/10/25-1.html夢のマイホームを細菌が手に入れたら・・・細菌の抗がん性能が劇的に向上することを発見
夢のマイホームを細菌が手に入れたら・・・
細菌の抗がん性能が劇的に向上することを発見
【ポイント】
- 水槽用ろ過材を使って細菌を培養すると細菌の薬剤耐性乳腺がんモデルマウスに対する抗がん活性と生体適合性が劇的に向上することを発見
- ろ過材に含まれる微量の光触媒(酸化チタン)が細菌の抗がん性能を高めることを発見
- 酸化チタンを内包した多孔質高分子複合材料を基材とするAUNの簡便な培養方法の樹立に成功
- 大動物を用いた安全性評価によってAUNの高い生体適合性を実証
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授と宮原 弥夏子大学院生(博士後期課程、JAIST SPRING研究員)らは、ろ過材を使って培養した細菌の薬剤耐性乳腺がんモデルマウスに対する抗がん活性と生体適合性が向上することを発見した。また、ろ過材に含まれる微量の光触媒(酸化チタン)が細菌の抗がん性能を高めるというメカニズムを見出したことで、酸化チタンを内包した多孔質高分子複合材料を基材とするAUNの簡便な培養方法の樹立に成功した。さらに、大動物を用いた安全性評価によってAUNの高い生体適合性を実証した。 |
【研究背景と内容】
人生で一番大きな買い物といえば、家を思い浮かべる方が多いだろう。もしこの夢のマイホーム(水槽用ろ過材)を細菌に与えてみると抗がん作用がどうなるのか、本研究は、そんな遊び心からスタートした。
アクアリウム愛好家の間では、金魚や熱帯魚の飼育における水槽内の水質浄化にろ過材を使用することが多い。ろ過材の役割とは、水質を汚染するアンモニアを分解する細菌の繁殖を助ける"住処(家)"を提供することであり、様々な形や種類のろ過材がペットショップ等で安価に入手することができる。なお、これまでろ過材を使用して培養した細菌を水質浄化以外の目的で利用されることは本研究を除いて未だかつて報告がない。
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用したがん標的治療に注目が集まっている。都教授の研究グループは、腫瘍組織から強力な抗腫瘍作用のある複数の細菌[A-gyo(阿形)、UN-gyo(吽形)、AUN(阿吽)と命名]の単離に世界にさきがけて成功している[プレスリリース(阿吽の呼吸で癌を倒す!-灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた-)https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/05/08-1.html]。なかでもAUN(A-gyoとUN-gyoからなる複合細菌)は、様々ながん腫に対して高い抗腫瘍活性を示すことを見出している。将来の臨床試験を見据えて、当該複合細菌AUNの簡便な培養方法の構築が必要不可欠である。
本研究では、当該腫瘍内複合細菌AUNの抗がん性能を高めるべく、異なる表面構造を有する複数の多孔質ろ過材[セラミック、ガラス、麦飯石、ポリプロピレン(PP)]を使用した細菌培養を試みた。なお、AUNの培養には、構成細菌の一つであるUN-gyoが光合成細菌であるため、ハロゲンランプ等を用いる光照射が必須である。
各種ろ過材を用い、光照射下で培養したAUNを、薬剤耐性乳腺がん細胞株(EMT6/AR1)を背面に移植したマウスの尾静脈に投与したところ、セラミックス製ろ過材で培養したAUNが顕著な抗がん作用と有意なマウス生存率を示すことがわかった。一方、他のろ過材(麦飯石、ガラス、PP)で培養したAUNとろ過材を用いない従来のAUNでは、3日以内にマウスが死亡した。また、コントロール群(AUN未投与群)は経時的に明らかな腫瘍体積増加を示し、すべてのマウスが13日以内に死亡した。
材料表面上の材質や多孔質構造が、細菌の活動を含む細胞生理機能に影響を与えることがよく知られているものの、「いったい何故、セラミックス製ろ過材だけがAUNの抗がん作用や生体適合性を高めるのか」、本研究では、その謎の解明に迫った。
まず、4種類のろ過材の元素分析を行ったところ、無機材料で構成されるろ過材(セラミックス、麦飯石、ガラス)では、元素組成が良く似ており、主成分が二酸化ケイ素(SiO2)であることがわかった。一方、PP製のろ過材は91%割合のPPで構成されていた。また、セラミックス製のろ過材と麦飯石には、細菌やウイルスといった病原性微生物を排除するのによく利用される光触媒[酸化チタン(TiO2)]が微量に含まれていることがわかった。従って、「このTiO2がAUNの抗がん性能の向上に寄与しているのではないか」、という仮説を立てた。
本仮説を検証するために、TiO2を内包する多孔質のポリジメチルシロキサン(PDMS)(TiO2-PDMS)から成るろ過材を調製した。予想した通り、TiO2-PDMSろ過材を用いて培養したAUN(AUN@TiO2-PDMS)は、セラミックス製ろ過材を用いて培養したAUNと同様に単回投与で腫瘍が完全に消失した(図1A、1B)。比較対象として TiO2を含有していないPDMS 製の足場材料で培養した AUN では、2日以内にマウスが死亡することがわかった。一方、コントロール群(AUN未投与群)は腫瘍退縮や生存率の改善に全く効果が見られなかった。また、AUN@TiO2-PDMSの優れた抗がん作用により、マウスの生存率も有意に延長された(図1C)。以上の結果から、光触媒TiO2を内包した多孔質高分子複合材料によってAUNの抗がん性能を大幅に改善できることがわかった。
図1.AUN@TiO2-PDMSの抗腫瘍効果に係る写真(腫瘍が完全消失)(A)、
腫瘍体積の経時変化(B)、ならびにマウス生存率(C)。
次に、何故、TiO2-PDMS複合材料がAUNの治療機能を向上できるのか、そのメカニズムを明らかにするために各種ろ過材でAUNを培養した後の細菌濃度を比較検証した(図2A)。この結果、TiO2-PDMSは、5日間培養した後のAUNの濃度を有意に減少させた。実際、TiO2を含有する3種類のろ過材(TiO2-PDMS、セラミックス製ろ過材、麦飯石)は、ハロゲンランプの光を3時間照射したところ細菌を弱体化させる効果のある活性酸素種(ROS)を検出した(図2B)。以上の結果をまとめると、光照射したTiO2-PDMS複合材料から発生するROSは、AUNの生体機能に影響を与えるため、毒性の低減化を引き起こしていると考えられる。
図2. 各種ろ過材で培養した5日後の細菌濃度(A)と各種ろ過材から発生したROS(B)
次に、このようなAUNの高い抗腫瘍メカニズムを解析するために定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイ、フローサイトメトリー解析、および免疫組織化学(IHC)染色を用いてAUN@TiO2-PDMSを静脈内投与した24時間後の固形腫瘍内の免疫細胞やサイトカインの挙動を調査した。この結果、AUN@TiO2-PDMSを投与すると腫瘍内の炎症性サイトカインTNF-αが増加し、T細胞、NK細胞、およびマクロファージが活性化されることが明らかになった(図3A、3B)。また、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色では、非治療群と比較して、AUN@TiO2-PDMSの強力な抗がん効果による腫瘍組織の破壊も確認された(図3C)。さらに、AUN@TiO2-PDMS投与後の腫瘍切片におけるアポトーシスマーカー(カスパーゼ-3および末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ[TdT]を介した2'-デオキシウリジン、5'-三リン酸[dUTP]ニックエンドラベリング[TUNEL])およびTNF-α染色により、腫瘍内では大規模なアポトーシスが発現しており、強い炎症反応が誘発されていることもわかった(図3C)。以上の結果より当該薬効メカニズムを図3Dにまとめる。最後に、大型動物モデル(ビーグル犬)を用いたAUN@TiO2-PDMSの安全性評価(血液学的、組織学的検査)を実施したところ、複合細菌AUN投与による重篤な副作用は無いことがわかった。
図3. 免疫細胞と炎症系サイトカインの発現挙動に係るqPCRの結果(A)と
フローサイトメトリーの結果(B)、ならびに組織学的染色の結果(C)。(D)薬効メカニズム。
本研究は、将来の悪性乳癌の臨床治療に向けて光触媒を内包したろ過材がAUNの機能増強のための有望な材料の一つに成り得ると期待している。
本成果は、2024年10月7日に生物・化学系のトップジャーナル「Chemical Engineering Journal」誌(エルゼビア社発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(未来創造イノベーション研究者支援プログラム)(JPMJSP2102)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
【論文情報】
| 掲載誌 | Chemical Engineering Journal(エルゼビア社発行) |
| 論文題目 | Photocatalytic scaffolds enhance anticancer performances of bacterial consortium AUN |
| 著者 | Mikako Miyahara, Yuki Doi, Naoki Takaya, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2024年10月7日にオンライン版に掲載 |
| DOI | https://doi.org/10.1016/j.cej.2024.156378 |
令和6年10月9日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/10/09-1.html




