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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。従来型バインダー材料を代替するリチウムイオン2次電池用新型高性能バインダーの開発に成功
従来型バインダー材料を代替するリチウムイオン2次電池用
新型高性能バインダーの開発に成功
ポイント
- 従来型バインダー材料であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を代替し得る特性を有するリチウムイオン2次電池用新型高性能高分子バインダーの開発に成功した。
- 本バインダー材料を用いた系ではPVDFを用いた場合よりも約1.5倍高い放電容量が観測された。
- 本バインダー材料を用いた系ではPVDF系で顕著であった電解液の電気分解が抑制された。
- 充放電サイクル後に、本バインダー材料を用いた電池系ではPVDF系と比較して大幅に低い内部抵抗が観測された。
- 電極―電解質界面抵抗を低減できる高性能バインダーとして、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教(当時)らはリチウムイオン2次電池*1における電極―電解質界面抵抗*2を大幅に低減し、PVDFを代替し得る高機能性高分子バインダーの開発に成功した。 リチウムイオン2次電池用バインダー (図1)としては、長きにわたってポリフッ化ビニリデン(PVDF)が広範に用いられてきた。活発な基礎研究が展開されてきた正極・負極、電解質等の部材に常に脚光が当たってきた一方で、バインダーに関しては近年論文数は向上しているものの、十分に検討されていなかった。 |
<今後の展開>
セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつける。
電極―電解質界面抵抗を大幅に低減できる機能性高分子バインダーとして、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、金属―空気電池等)への応用が見込まれる。
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| 図1.Liイオン2次電池における負極バインダー | 図2.BIAN型高分子バインダーの設計概念 |
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| 図3.EC、PVDF及びBIAN型高分子バインダーのHOMO、LUMOエネルギー準位 | |
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| 図4.BIAN型高分子(左)及びPVDF(右)を用いて構築したハーフセルのサイクリックボルタモグラム | |
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| 図5.BIAN型高分子及びPVDFを用いて構築したハーフセルの充放電サイクル後の内部インピーダンススペクトル | |
<用語解説>
1.リチウムイオン2次電池
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
2.電極―電解質界面抵抗
エネルギーデバイスにおいては一般的に個々の電極の特性や個々の電解質の特性に加えて電極―電解質界面の電荷移動抵抗がデバイスのパフォーマンスにとって重要である。交流インピーダンス測定を行うことによって個々の材料自身の特性、電極―電解質界面の特性等を分離した成分としてそれぞれ観測し、解析することが可能である。
3.HOMO
電子が占有している分子軌道の中でエネルギー準位が最も高い軌道を最高被占軌道(HOMO; Highest Occupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
4.LUMO
電子が占有していない分子軌道の中でエネルギー準位が最も低い軌道を最低空軌道(LUMO; Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
5.サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム)
電極電位を直線的に掃引し、系内における酸化・還元による応答電流を測定する手法である。電気化学分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。
平成29年8月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/08/17-1.html最高水準のリチウムイオン輸率を示す液状電解質の開発に成功 ― 次世代高容量電極への活用に期待 ―
最高水準のリチウムイオン輸率を示す液状電解質の開発に成功
― 次世代高容量電極への活用に期待 ―
ポイント
- 高イオン伝導度と0.9以上の高リチウムイオン輸率を併せ持つ高性能リチウムイオン輸送性電解質の開発に成功した。
- 本電解質は電気化学的安定性においても優れ、実際にハーフセル(Li/電解質/Si)を構築し充放電試験を行ったところ、可逆的な充放電挙動と共に非常に高い放電容量(>2500mAh/g)を示した。
- 安全志向の高性能電解液として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教らはリチウムイオンを90%以上高選択的に輸送する液状電解質の開発に成功した。 |
<今後の展開>
セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつける。
安全志向の高性能電解液として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、マグネシウム電池、金属―空気電池等)への応用が見込まれる。

図1.
(a) イオン液体/メシチルジメトキシボラン体積比とリチウムイオン輸率の関係
(b) イオン液体/メシチルジメトキシボラン系(v/v = 1/2)の直線走査ボルタモグラム
(c) Li/電解質/Si型セル[1-アリル-3メチルイミダゾリウム FSI/メシチルジメトキシボラン(v/v = 1/2)]の充放電曲線 (0.3 C)
(d) Li/電解質/Si型セル[1-アリル-3メチルイミダゾリウム FSI/メシチルジメトキシボラン(v/v = 1/2)]の充放電における各サイクルのクーロン効率
<用語説明>
リチウムイオン2次電池:
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
リチウムイオン輸率:
系内におけるすべてのイオン種の移動において、リチウムイオンが移動する割合。系内を移動するイオンがすべてリチウムイオンである場合には1となる。
電位窓:
電解質材料を安定に使用可能な電位の範囲。電池の作動電圧よりも広い電位窓を有する電解質が求められる。高電圧の電極系の発達に伴い、より広い電位窓を示す電解質材料が求められつつある。
平成29年7月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/07/04-1.html学生の平田さんが第66回高分子学会年次大会において優秀ポスター賞を受賞
学生の平田雄大さん(博士前期課程2年、物質化学領域・松見研究室)が第66回高分子学会年次大会において優秀ポスター賞を受賞しました。
高分子学会年次大会優秀ポスター賞は高分子学会年次大会で優れたポスター発表を行った発表者を表彰し、さらなる研究発表を奨励しつつ高分子科学ならびに高分子学会の発展に資するために設けられています。高分子学会年次大会の運営委員会内に優秀ポスター発表賞の選考委員会が設置されており、発表の予稿原稿をもとに第一次審査、ポスター発表をもとに第二次審査が行われ、選考委員会の審議により受賞者が決定されます。
■受賞年月日
平成29年6月21日
■ポスタータイトル
RuOxおよびWOxを複合させたTiO2ナノチューブを用いた光電気化学的水分解
■ポスター概要
水素エネルギーは発電時のエネルギー変換効率が高く、燃料として使用してもCO2などの温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして注目されています。しかし、水分解に必要な反応開始電圧が高いため、広範な実用化には未だ至っていません。本研究では陽極に合成したTiO2ナノチューブ上にRuOxおよびWOxを同時に担持させることで効率的な電荷分離を促進させ、より反応開始電圧の低い光触媒電極の開発に成功しました。
■受賞にあたって一言
この度は高分子学会年次大会におきまして、このような栄誉ある賞を頂き大変嬉しく思います。本研究において熱心にご指導して頂いた松見教授、Raman助教、ならびに研究室の皆様に深く感謝いたします。


極めて低い白金担持量で高酸素還元反応性触媒の開発に成功
極めて低い白金担持量で高酸素還元反応性触媒の開発に成功
ポイント
商用の酸素還元反応性触媒よりも大幅に低い白金担持量で商用系に匹敵する性能を示す酸素還元反応触媒の開発に成功した。本研究は、アルコール類などの犠牲試薬を一切用いない光還元法により白金ナノ粒子を炭素/TiO2上に析出させた最初の例であり、白金ナノ粒子系酸素還元反応触媒のグリーンな合成法としても特色を有している。今回作製した材料は、商用系の1/15から1/20ほどの白金担持量であるにもかかわらず、特定反応比活性(specific activity)※1 において商用系を上回る電気化学触媒活性を示した。
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教、ラージャシェーカル バダム博士、及び田中貴金属工業株式会社(岡谷一輝氏、松谷耕一氏)の共同研究グループは極めて低い白金担持量で商用系触媒に匹敵する高酸素還元性を示す低コスト型電気化学触媒の開発に成功した。 論文タイトル:Sacrificial Reducing Agent Free Photo-Generation of Platinum Nano Particle over Carbon/TiO2 for Highly Efficient Oxygen Reduction Reaction <今後の展開> |

| 図1. | (A)Photo-Pt- Graphite-TiO2、Photo-Pt-CNT-TiO2 のサイクリックボルタモグラム (B)サイクリックボルタモグラムから算出したECSA(電気化学有効表面積)値と商用材料との比較 (C)Photo-Pt-Graphite-TiO2、Photo-Pt-CNT-TiO2 の直線走査ボルタモグラムと商用材料との比較 (D)各材料系の質量比活性(mass activity)及び特定反応比活性(specific activity) |
<開発の背景と経緯>
燃料電池などのエネルギーデバイスのカソード電極材料において、現状では不可欠となっている白金/炭素系材料の作製においては、ポリオール系犠牲試薬や界面活性剤の使用、高温反応条件の適用など、比較的環境的負荷の大きな手法の適用が一般的となっている。これらの状況を踏まえて、水をメディアとしたグリーンな手法でこれらの材料群を作製する手法の開発は工業的に魅力的である。
加えて、商用系には一般に相当量の白金が含有されており、白金を担持させる炭素材料種を検討することにより白金の導入量を低減させることが検討されてきた。
本研究では光還元的析出法を検討することで、水中において疑似太陽光のみを光源として炭素/TiO2上への白金ナノ粒子の析出が可能であることが見出された。犠牲試薬や界面活性剤を利用しない本手法は白金ナノ粒子本来の高い電気化学触媒活性を発現させ、少量の白金担持量において高酸素還元反応性が達成された。
<合成方法・評価方法>
まず、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンオキシド等の各炭素材料を脱イオン水中で約2時間超音波照射し、均一分散液を調整した。分散液に市販のアナターゼ型TiO2を加え、さらに15分間超音波照射した。その後、塩化白金酸水溶液を加え、攪拌条件下で疑似太陽光を5時間照射した。得られた分散液を濾過した後、脱イオン水で洗浄して常温下で真空乾燥した。
作製した各コンポジット材料における白金含有量をICP-MSにより測定したところ、1.6-4.3wt%であった。また、各材料の透過型電子顕微鏡(TEM)による分析により、各系において白金ナノ粒子が均一に分散していることが示唆された。炭素材料として伝導度の高いカーボンナノチューブを用いた場合には白金ナノ粒子の平均サイズは1nmほどであり、特にサイズの小さい白金ナノ粒子がTiO2部位から遠距離の部分まで分布することが分かった。一方、官能基密度が高く伝導度が低いグラフェンオキシドが炭素材料として用いられた場合には、白金ナノ粒子はほぼTiO2上にのみ分布し、その粒径も比較的大きかった (2-6nm)。
得られた各材料をXPSにより分析したところ、とりわけTiO2/カーボンナノチューブ系に白金ナノ粒子を析出させた系においてPt 4fピークの顕著なシフトが観測され、強い金属―基盤間の相互作用が存在していることが示唆された。
電気化学評価は回転ディスク電極を用いたサイクリックボルタンメトリー※4、直線走査ボルタンメトリー※5により行った。0.1M HClO4 aq.を電解液とし、グラッシーカーボン電極上に作製した電気化学触媒をコートしたものを作用極、白金を対極、RHE (reversible hydrogen electrode)電極を参照極とした。窒素雰囲気下において 50mVs-1の掃引速度で測定を行い、回転ディスク電極の回転速度は400-3600rpmの範囲とした。
<今回の成果>
本系では水をメディアとし、疑似太陽光照射により炭素/二酸化チタン上に犠牲試薬を用いずに簡便に白金ナノ粒子を析出させる新手法の開発に成功した。本手法では水系反応メディアのpH調整も必要なく、常温での短時間の反応により作製が可能であり、工業的に魅力的である。また、炭素材料系の伝導性に応じて白金が析出し分布する基礎的に興味深い知見を得ることができた。
本材料系で達成された電気化学触媒活性は、特定反応比活性(specific activity)において比較対象の商用材料を上回るなど、トータルな特性として既存の最善の商用材料に匹敵する性能を示した。このような特性が商用系の1/15~1/20の白金含有量で達成されたことは特筆に値し、低コスト型エネルギーデバイスの開発にとって意義深い成果であると考えられる。
| ※1 | 特定反応比活性:Pt単位面積あたりの酸素還元電流密度。 |
| ※2 | ECSA(電気化学有効表面積):水素吸着によるピークの積算電荷量を白金の単位活性面積当たりの吸着電荷量で除するこ とで活性白金表面積を求め算出する。 |
| ※3 | 質量比活性:Pt単位重量あたりの酸素還元電流密度。 |
| ※4 | サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム):電極電位を直線的に掃引し、系内における酸化・還元による応答電流を測定する手法である。電気化学分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。 |
| ※5 | 直線走査ボルタンメトリー:電極電位を連続的に変化させ、流れる電流値を測定する。サイクリックボルタンメトリーのような電位の往復を伴わない測定法。 |
平成28年11月15日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/11/15-1.html「ポリマー材料フォーラム」ゴム技術フォーラム/高性能天然由来マテリアル開発拠点共催
本フォーラムは、ゴム技術フォーラムと本学のエクセレントコア「高性能天然由来マテリアル開発拠点」の共催です。エクセレントコアの教員を中心に、ポリマー材料(バイオポリマー、ナノコンポジット、ゴム)に関する最先端の研究発表をお届けするフォーラムです。参加は無料となっておりますので、奮ってご参加下さい。
| ■ 日 時 | 2016年11月14日(月) 13:00~17:30 |
| ■ 場 所 | マテリアルサイエンス系講義棟1階 小ホール |
| ■ 参 加 |
無料(参加申込・予約は不要です。直接会場にお越しください。) |
| ■ プログラム |
| 時 間 | 内 容 |
| 13:00-13:10 | 開会の挨拶 |
| 13:10-13:25 | 大学紹介-塚原 俊文 教授(マテリアルサイエンス系学系長) |
| 13:25-14:10 | 講演1-金子 達雄 教授(高性能天然由来マテリアル開発拠点長/環境・エネルギー領域) 「エキゾチックな未利用バイオ分子を用いたスーパーエンプラの開発」 |
| 14:10-14:55 | 講演2-谷池 俊明 准教授(高性能天然由来マテリアル開発拠点/物質化学領域) 「リアクターグラニュール技術を用いた新規ポリオレフィン系ナノコンポジットの開発」 |
| 14:55-15:10 | 休憩 |
| 15:10-15:30 | 講演3-桶葭 興資 助教(環境・エネルギー領域) 「界面不安定性による超高分子多糖類のマクロ空間認識」 |
| 15:30-15:50 | 講演4-Chammingkwan, Patchanee 助教(高性能天然由来マテリアル開発拠点/物質化学領域) 「In-Situ Grafting of Nanoparticles Through End-Funtionalized Polypropylene for High-Performance Nanocomposites 」 |
| 15:50-16:10 | 講演5-Ali, Mohammad Asif 博士研究員(環境・エネルギー領域) 「Environmentally degradable biobased plastics from renewable itaconic acid and their composites with montmorillonite 」 |
| 16:10-16:20 | 休憩 |
| 16:20-16:50 | 技術紹介-滝澤 俊樹(ゴム技術フォーラム(ブリヂストン・フェロー)) 「タイヤ用エラストマーの開発事例」 |
| 17:20-17:30 | 開会の挨拶 |
| ■ 連絡先 | 研究推進課 研究施設支援係(E-mail:sien) |
非正多角形細孔を持つ多孔高分子材料の開拓に成功
非正多角形細孔を持つ多孔高分子材料の開拓に成功
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域の江 東林教授らの研究グループは、非正多角形細孔を有する高分子材料の開拓に成功した。 |
| 1. 研究の成果 | |||
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今回研究開発された新種の多孔性高分子は2次元高分子注1) である。2次元高分子は、規則正しい分子骨格構造を有し、無数の細孔が並んでいるため、二酸化炭素吸着、触媒、エネルギー変換、半導体、エネルギー貯蔵など様々な分野で活躍され、新しい機能性材料として大いに注目されている。江教授らは、世界に先駆けて基礎から応用まで幅広い研究を展開し、この分野を先導してきた。
これまでの2次元高分子は、他の多孔性材料と同様に、正多角形を有する細孔だった(図1の1)。例えば、正六角形や正方形、正三角形などを有する2次元高分子が開発され、その細孔サイズや環境を制御することで、様々な機能が発現されている。しかし、規則正しい構造を有し、かつ非正多角形細孔を作り出す2次元高分子は皆無だった。非正多角形を有する細孔は、形が合った特定の分子だけに対して吸着能を示し、また、特定の基質だけに対して触媒するなど特異な形状に基づいた機能の発現が期待されているが、その開発が困難であった。 ![]() 図1.1)従来の正多角形細孔を有する高分子の設計。2)今回開発した非正六角形細孔を有する多孔材料の設計。3)今回開発した非正方形細孔を有する多孔材料の設計。 また、六角形の場合、3組の対辺を長さの異なる2種類の成分で構築することに成功した(図1の2)。この場合、対辺の比率を1:2あるいは2:1に合わせ ることが重要なポイントとなる。いずれの場合も、規則正しい配列構造を有し、サイズの異なる非正六角形細孔を設計してつくることができるようになった。 さらに、本研究では、六角形に加え、四角形にも適用できることを実証した(図1の3)。四角形の場合、対辺が2組になるため、長さの異なる2種類の成分と分岐点の1成分からなる3成分で重合することで、非正方形細孔を有する多孔材料の合成に成功した。 以上の設計原理は、長さの異なる成分に限られることがなく、機能の異なる成分にも適用できることを実証した。例えば、電子ドナーとアクセプターを組み合わせて、特異な電子配列構造を作り出せる。この場合、正多角形材料に比べて、非正多角形材料の電気伝導が1800倍も高くなったことが分かった。これらの多孔性高分子は1グラムで、2000平米という巨大な表面積を持っており、ガス吸着と分離への応用が期待されている。 多成分から構成された多孔性材料は、構造に複雑性をもたらしている。また、材料の多様性にも大きく寄与する。例えば、六角形の場合、従来の正六角形では、分岐点1成分と辺10成分の組み合わせでは、最大10種類の異なる多孔材料が合成できる。これに対して、多成分設計原理を用いれば、何と210種類の異なる多孔材料を作ることが可能となった。 |
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| 2. 今後の展開 |
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今回の研究成果は、2次元高分子分野に新たな設計原理を確立し、これまでになかった新種の多孔材料の誕生に繋がった。今後、これらの特異な多孔構造をベースに、ガス吸着や分離、触媒、光・電子などの機能に関して、様々な革新的な材料の開発がより一層促進される。
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| 3. 用語解説 |
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注1) 2次元高分子:共有結合で有機ユニットを連結し、2次元に規定して成長した多孔性高分子シートの結晶化による積層される共有結合性有機構造体。
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| 4. 論文情報 |
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掲載誌:Nature Communications
論文タイトル:Multiple-component covalent organic frameworks(多成分共有結合性有機骨格構造体) 著者:Ning Huang(北陸先端科学技術大学院大学博士研究員), Lipeng Zhai(北陸先端科学技術大学院大学特別研究学生), Matthew Addicoat (ドイツ ライプツィヒ大学博士研究員), Thomas Heine (ドイツ ライプツィヒ大学教授), Donglin Jiang(北陸先端科学技術大学院大学教授) 掲載予定日:7月27日18時にオンライン掲載 DOI: 10.1038/NCOMMS12325 |
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平成28年7月27日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/07/27-1.html欠陥修復した酸化グラフェンから優れた電気特性をもつバンド伝導の観察に成功
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大阪大学 北陸先端科学技術大学院大学 名古屋大学 公益財団法人科学技技術交流財団 あいちシンクロトロン光センター |
欠陥修復した酸化グラフェンから
優れた電気特性をもつバンド伝導の観察に成功
~高結晶性グラフェン薄膜のスケーラブル製造への道筋を開拓~
| 研究成果のポイント | ||
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| <概要> 大阪大学大学院工学研究科の根岸良太助教、小林慶裕教授、北陸先端科学技術大学院大学の赤堀誠志准教授、名古屋大学大学院工学研究科の伊藤孝寛准教授、あいちシンクロトロン光センター渡辺義夫リエゾン副所長らの研究グループは、還元過程において微量の炭素源ガス(エタノール)を添加した高温(1100℃以上)加熱還元処理により欠陥構造の修復を促進させることで飛躍的に酸化グラフェンの結晶性を向上させ、還元処理をした酸化グラフェン薄膜においてグラフェン本来の電気伝導特性を反映したバンド伝導の観察に初めて成功しました。(図1)
このバンド伝導の発現により、還元処理をした酸化グラフェン薄膜としては現状最高レベルのキャリア移動度(~210cm2/Vs)を達成しました。 本成果によって、酸化グラフェンは、還元処理によりグラフェン薄膜の生成が可能なため、グラフェンを利用した電子デバイスやセンサーなど様々な応用が期待されています。 本研究成果は、日本時間 7月1日(金) 午後6時に英国の科学オープンアクセス誌「Scientific Reports (Nature Publishing Group)」に公開されます。 ![]() 図1 酸化グラフェンの還元法に対する(a)従来法と(b)本手法との比較。(c)低結晶性と(d)高結晶性グラフェンにおける電子・ホールの流れる様子の違い。処理温度の異なるエタノール還元処理後の酸化グラフェン薄膜の伝導度における観察温度存性(e)900℃、(f)1130℃。伝導機構モデルに基づく伝導度の温度依存性解析から、1130℃の高温エタノール加熱還元処理した酸化グラフェン薄膜では観察温度が室温~40Kの範囲においてバンド伝導が観察されている((f)のグラフ)。 |
| <研究の背景> | |||
図2 高配向性グラファイト(HOPG)と酸化グラフェンからのグラフェン薄膜形成方法の比較その発見者であるガイム、ノボセロフはその重要性から2010年にノーベル賞を受賞しています。大量合成可能な酸化グラフェンは、還元処理によりグラフェンを形成させることが可能なため、グラフェンの合成における出発材料として、世界中で大変注目されています。 しかしながら、酸化グラフェンは非常に多くの欠陥構造を有するため、還元処理後に得られるグラフェン薄膜のキャリア移動度(トランジスタ性能の指標となり、物質を伝搬する電子・ホールの速さ:速いほどトランジスタ性能が良い)はせいぜい数cm2/Vsに留まっていました。 現在、最も結晶性の高いグラフェンの合成方法は、HOPG(高配向性のグラファイト)からスコッチテープで一枚ずつ剥離して基板へ転写する方法です。しかしながら、この方法では得られるグラフェン片のサイズは数μm程度と小さい上に、小さなフレークを幾重にも重ねてデバイスとして利用可能な薄膜にしなければなりません。これは至難の作業です(図2(a))。 一方、酸化グラフェンは親水性のため水によく分散させることができるので、その水溶液を基板上に滴下して水分を飛ばし還元するだけで、容易に厚さ1-3層分の薄いグラフェン薄膜を形成させることが可能となります(図2(b))。そのため、グラフェンを大量に合成する原料として、酸化グラフェンの合成法や還元法が世界中で研究されています。
酸化グラフェンからグラフェンを生成するためには還元処理が必須となりますが、一般的な化学還元や真空・不活性ガス(アルゴンなどカーボンと化学反応を起こさないガス)中での加熱還元処理では、酸化過程で形成した欠陥構造が還元後も多く残るため、これまで薄膜のキャリア伝導機構は電子が局在したホッピング伝導※7を示すことが知られていました。 ![]() 図3 処理温度の異なるエタノール還元処理後の酸化グラフェン薄膜およびグラファイト(HOPG)からのX線吸収微細構造スペクトル。1130℃の高温エタノール還元処理では非占有準位であるπ*とσ*のピーク強度比が900℃処理よりも完全結晶であるグラファイトで観察された強度比に近い値を示しており、酸化グラフェンの高結晶化に伴いバンド(電子)構造が理想的なグラフェンに近づいていることが分かる。 図1(c),(d)の伝導機構に対する模式図で示すように、薄膜内に欠陥構造が多い場合(図1(c))、欠陥構造がキャリア(電子・ホール)の流れに対して大きな壁となります。キャリアは熱エネルギーの助けを借りてこの障壁を乗り越えるようにホッピング伝導します。これは、キャリアにとって大きなエネルギーを必要とし、著しい移動度の低下を引き起こします。一方で、欠陥構造の領域が減少すると障壁の高さが低下し(図1(d))、キャリアの流れはスムーズになり、グラフェンの結晶性を反映したバンド伝導を示すことが期待されます。 |
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| <研究の内容> | |||
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本研究グループは、1-3層(厚さ:~1nm)からなる極めて薄い酸化グラフェン薄膜をデバイス基板上へ塗布し、エタノール添加ガス雰囲気で1100℃以上の高温加熱還元処理を行うことにより(図1(b))、高移動度の薄膜形成に成功しました。還元処理をしたグラフェン薄膜における電気伝導度の温度特性解析から、バンド伝導が観察されました。低結晶性を示す低温(900℃)でのエタノール還元処理では、電子の流れ(図1(e)のグラフ:Y軸)は観察温度Tの-1/3乗(X軸)に対して線形に変化しており、この振る舞いはホッピング伝導モデルで説明することができます。一方、高結晶性を示すグラフェン薄膜が生成される高温条件(1130℃)では、観察温度が室温から40Kの範囲で伝導度(図1(f)のグラフ:Y軸)がTの-1/3乗に対して非線形的変化を示し、バンド伝導モデルで説明することができます。これは、カーボン原材料となるエタノールガスの添加により、酸化過程で生成した欠陥構造の修復が効率的に促進し、グラフェンの結晶性が飛躍的に向上していることを意味しています。実際、バンド伝導の発現を裏付けるデータとして、X線吸収微細構造スペクトル※8 を実施して電子構造※9 の視点からもこの物性を実証しました(図3)。さらに、ミクロ領域の構造解析法である透過型電子顕微鏡※10 観察からも、結晶性の向上を明らかにしました(図4)。
図4 処理温度の異なるエタノール加熱還元処理後の酸化グラフェン薄膜の透過型電子顕微鏡像(a)900℃、(b)1100℃。処理温度1100℃では炭素原子の蜂の巣構造を反映した輝点が周期的に配列しており、結晶性が飛躍的に向上していることが分かる。 |
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| <本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)> | |||
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酸化グラフェンは、還元処理によりグラフェン薄膜の生成が可能なため、グラフェンを利用した電子デバイスやセンサーなど様々な応用が期待されています。本研究の成果は、グラフェンの優れた物性を活用したスケーラブルな材料開発の進展において重要なマイルストーンとなります。
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| <特記事項> | |||
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本研究成果は、日本時間 7月1日(金) 午後6時に英国の科学オープンアクセス誌「Scientific Reports (Nature Publishing Group)」に公開されます。
タイトル:"Band-like transport in highly crystalline graphene films from defective graphene oxides" 著者名:R. Negishi, M. Akabori, T. Ito, Y. Watanabe and Y. Kobayashi なお本研究は、JSPS科研費PJ16K13639, 26610085, JST育成研究 A-STEP No. AS242Z02806J, AS242Z03214M, 大阪大学フォトニクス先端融合研究センター、「低炭素研究ネットワーク」京都大学ナノテクノロジーハブ拠点、北陸先端科学技術大学院大学ナノテクノロジープラットフォーム事業の一環として行われ、京都大学 大学院理学研究科 倉田博基教授、大阪工業大学教育センター 山田省二教授、大阪大学大学院理学研究科 髙城大輔助教、あいちSRセンター 仲武昌史氏、北陸先端科学技術大学院大学 村上達也氏の協力を得て行われました。 |
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| <用語説明> | |||
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※1 欠陥構造
グラフェンは炭素原子が蜂の巣状(ハニカム状)に結合したシート状の物質であり、欠陥構造とはこのハニカム状の構造の変形や、カーボンそのものが欠損した穴、カーボンがそれ以外の元素(酸素など)と結合した状態等を指す。 ※2 酸化グラフェン
酸化処理によりグラファイトから化学的に剥離させた厚さ1原子層分のシート状の材料。水や有機溶媒に溶け、液体として取り扱うことができるため、任意基板へ塗布するだけでグラフェン薄膜を容易に大面積で作成することができる。しかし、酸化処理により多くの欠陥構造や酸素含有基を含むため、その伝導特性は高配向性グラファイト(HOdivG)から得られるグラフェンと比較して著しく低い。このことが酸化グラフェン材料のデバイス応用に向けて大きなボトルネックとなっている。 ※3 バンド伝導
キャリアが周期的電子構造を持つ固体結晶内を波として伝搬する伝導機構。 ※4 キャリア移動度
固体物質内におけるキャリア(電子・ホール)の動きやすさを表わし、トランジスタ性能の基本的な指標となる。 ※5 還元処理
グラファイトの酸化処理により合成された酸化グラフェンは多くの酸素含有基を含むため絶縁性を示す。電子デバイスへの応用には、これら酸素含有基を取り除くための還元処理が必須となる。 ※6 スケーラブル
製造プロセスやネットワークシステムなどにおいて現時点では小規模なものであるが、リソースの追加により大規模なものへ拡張できる能力。 ※7 ホッピング伝導
キャリアが固体結晶内の欠陥構造などに起因した局在電子準位を熱エネルギーの助けを借りて移動する伝導機構。 ※8 X線吸収微細構造スペクトル
X線を物質に照射するとX線の吸収に伴い観察対象となる原子の電子が放出し、周辺に位置する原子によって散乱・干渉が起きる。このようなX線の吸収から原子の化学状態や電子構造を調べることができる。 ※9 電子構造
固体内の原子・分子の配置に起因した電子の状態。周期的な結晶構造を持つ物質では、物質中の電子のエネルギーと運動量の関係が物質間の相互作用のためにエネルギー状態が帯状に広がったバンド構造を持つ。 ※10 透過型電子顕微鏡
観察の対象となる物質に電子を照射し、それを透過してきた電子を観察する顕微鏡。原子スケールで固体結晶の構造解析が可能。 |
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平成28年7月1日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/07/01-1.html蛍光を放つ2次元高分子の開拓に成功
蛍光を放つ2次元高分子の開拓に成功
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域の江 東林教授らの研究グループは、蛍光を放つ2次元高分子材料の開拓に成功した。蛍光材料は、有害な化学物質、生体分子の検出やイメージングなどの分野に幅広く応用される。これまでに開発された2次元高分子は、積層構造のため光励起エネルギーが熱として散逸してしまい、蛍光を出すことが困難であった。これに対して、本研究は、2次元高分子の構築に新しい蛍光発光機構を導入し、積層した構造でも強く光ることが可能となった。 本研究は、米国化学会誌 J. Am. Chem. Soc.に平成28年4月24日に公開された。 |
| 1. 研究の成果 | |||
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| 2. 今後の展開 |
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今回の研究成果は、蛍光性2次元高分子設計の原理が確立され、これまでになかった新種の蛍光性物質が誕生したというもので、新しい光物性の開拓が期待される。今後、様々な蛍光性2次元高分子が開発されると同時に、化学センサーや生体分子センサー、イメージング、励起エネルギー移動、光捕集、レーザー発振、光デバイスなどの応用が期待される。 |
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| 3. 用語解説 |
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注1)2次元高分子:共有結合で有機ユニットを連結し、2次元に規定して成長した多孔性高分子シートの結晶化による積層される有機構造体。 |
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| 4. 論文情報 |
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掲載誌:J. Am. Chem. Soc.(米国化学会誌) |
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平成28年4月28日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/04/28-1.htmlナノ粒子の三次元結晶構造を明らかにする格子相関解析を開発 ― 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の構造決定に成功 ―
ナノ粒子の三次元結晶構造を明らかにする格子相関解析を開発
― 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の構造決定に成功 ―
【ポイント】
- 高分解能透過電子顕微鏡法とデータ科学手法を組み合わせた格子相関解析を開発
- 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の三次元結晶構造の決定に成功
- 多様な結晶構造をとり得る金属オキシ水酸化物ナノ粒子の構造解明に役立つと期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市) ナノマテリアル・デバイス研究領域の麻生浩平講師、大島義文教授、宮田全展講師 (研究当時)、同大学ナノマテリアルテクノロジーセンターの東嶺孝一技術専門員、日本製鉄株式会社 技術開発本部の神尾浩史主幹研究員らの研究グループは、高分解能透過電子顕微鏡法とデータ科学手法を組み合わせた格子相関解析を開発しました。これにより、従来のX線回折法(XRD)*1などでは困難だった、欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の結晶構造を決定することに成功しました。メタチタン酸ナノ粒子は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)構造を基本骨格とするものの、TiO2層とTi(OH)4層が交互に積層した構造であることを明らかにしました。酸素と金属で構成される金属酸化物や、さらに水素が加わった金属オキシ水酸化物は、多様な結晶構造をとり、それに応じて多彩な物性を発現することが知られています。格子相関解析は、このような材料の構造解明に弾みをつける新たな手法であり、多彩な物性の理解に貢献すると期待されます。 本研究成果は、2025年4月28日 (英国標準時間)に科学雑誌「Communications Chemistry」誌のオンライン版で公開されました。 |
【研究の背景及び概要】
酸素と金属で構成される金属酸化物ナノ粒子や、水素が加わった金属オキシ水酸化物ナノ粒子は、現代社会に欠かせない触媒、エネルギー変換、吸着材として注目されています。これらのナノ粒子は、組成が同じでも異なる構造をとり、異なる物性を示します。つまり、物性を真に理解する上で、合成されたナノ粒子の形状や構造の解明は欠かせません。典型的な構造解析として、X線回折法やラマン分光法*2があります。しかし、サイズが数ナノメートル (nm, 十億分の一メートル) 程度のナノ粒子の場合、ピークが明瞭でないため解析が困難です。また、今回の研究対象とした、金属オキシ水酸化物のひとつであるメタチタン酸は、欠陥を多く含むため構造解析がより困難となっていました。一方、透過電子顕微鏡 (TEM)*3や走査TEM (STEM)*4は、原子配列を可視化できますが、得られる情報は投影した二次元像です。
そこで、三次元の結晶構造を明らかにするため、多数のメタチタン酸ナノ粒子のTEM像を異なる様々な方位から取得しました。様々な方位から多数の像を得るのは、生物分野で利用される単粒子解析と類似していますが、本研究では異なる解析手法を採用しています。単粒子解析では、対象物の形状が均一であると仮定し、多数の像を観察方位ごとに分類して足し合わせることで、像の質を高めます。しかし、メタチタン酸ナノ粒子の場合、形状が均一ではないため、従来の方法をそのまま応用することはできませんでした。そこで、今回開発した手法では、像の足し合わせではなく、周期性や格子定数に敏感な結晶格子の間隔や異なる格子間の角度に着目しました。本手法は、間隔や角度の相関を統計的に解析することで、結晶構造の特徴を抽出しようとした点に新規性があります。
メタチタン酸ナノ粒子は、TEM試料用の支持膜上にランダムな方位を向いて分散するので、様々な方位からの粒子の原子分解能TEM像が得られます (図1a)。得られたTEM像から、画像処理によって個々のナノ粒子を検出し (図1b)、そのナノ粒子にガウス関数のマスクをかけて高速フーリエ変換 (FFT) パターンを得ました(図1c)。FFTパターンで観察されるスポットは、ナノ粒子の結晶格子の周期を反映します。異なるスポットの配置から、格子の間隔や角度の相関 (格子相関) が分かります。この処理を、500枚のTEM像で撮影された1300個のナノ粒子に対して行うことで、メタチタン酸ナノ粒子がもつ特徴的な格子相関を統計的に得ることが出来ました (図1d)。異なる観察方位に対する格子相関を組み合わせて解析することで、構造に関する三次元情報が得られます。
解析の結果、メタチタン酸ナノ粒子は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)構造を基本骨格とするものの、TiO2層とTi(OH)4層が交互に積層した構造であることを明らかにしました(図1e)。この構造は、密度汎関数理論による計算*5でも安定であることが確認されました(図1f)。また、原子の個数や原子番号をより直接的に反映する環状暗視野STEM像*6(図1g)とも整合しており、提案する構造は妥当であると判断しました。
本研究で開発した格子相関解析は、従来と比べて1/20から1/500程度の低い電子線照射量で、三次元的な結晶構造の解明を可能とします。今後は、電子線に敏感なため解析が困難だった、金属オキシ水酸化物ナノ粒子や有機物を含むナノ材料への展開が期待されます。新規材料探索は理論計算による研究が多いなかで、本手法は解析の自動化が可能であり、実験による新たなアプローチを提示できると考えています。これにより、より適切な材料設計や高性能デバイスの開発に弾みがつくと期待されます。

| 図1 (a) HRTEM像。暗いコントラストで示されるメタチタン酸ナノ粒子が見られる。(b) 画像処理によって粒子領域を検出した図。粒子ごとに色分けして塗りつぶしている。(c) b中の中央下、白い丸とバツでマークされた粒子のFFT図形。(d)格子相関マップの一例。ここでは(004)面と(110)面、(002)面と(110)面の組み合わせがスポットとして現れている。(e)解析から提案された結晶模型。(f)結晶模型について計算した環状暗視野STEM像。(g)メタチタン酸ナノ粒子の環状暗視野STEM像。 |
【論文情報】
| 雑誌名 | Communications Chemistry |
| 論文名 | Three-dimensional atomic-scale characterization of titanium oxyhydroxide nanoparticles by data-driven lattice correlation analysis |
| 著者 | Kohei Aso, Koichi Higashimine, Masanobu Miyata,Hiroshi Kamio,and Yoshifumi Oshima |
| 掲載日 | 2025年4月28日 |
| DOI | doi.org/10.1038/s42004-025-01513-2 |
【用語説明】
物質の平均的な結晶構造を調べる代表的な技術。X線を試料に照射してプロファイルを取得し、回折ピークの配置を解析することで試料の平均的な結晶構造が得られる。
物質にレーザー光を照射し、散乱された光の波長変化(ラマン散乱)を解析することで、物質の化学結合や結晶構造を得る手法。
電子線を試料に透過させ、得られた投影像から結晶構造を観察する手法。電子線を使うことを除いて、原理的には一般的な光学顕微鏡と同様。
0.1 nm程度に絞った電子線を試料上で走査し、試料各点からの信号によって結像する手法。
原子や分子の電子状態を理論に基づき計算する手法。ここでは、結晶構造のサイズ(格子定数)や原子位置をわずかに変化させながら計算を繰り返し、構造の安定性を評価した。
STEMのうち、前方散乱された電子をマッピングした像。原子番号や厚みの違いをより直接的に反映した像が得られる。
令和7年4月30日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/04/30-1.html磁石と光で機能制御可能なナノ粒子の開発に成功! -高性能がん診断・治療に向けて-
磁石と光で機能制御可能なナノ粒子の開発に成功!
-高性能がん診断・治療に向けて-
【ポイント】
- 磁性イオン液体とカーボンナノホーンから成る複合体の作製に成功
- 当該ナノ粒子の磁場応答性とEPR効果により標的とする腫瘍内に効果的に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、抗がん作用、光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授らは、カーボンナノホーン*1表面に磁性イオン液体*2、近赤外蛍光色素(インドシアニングリーン*3)、分散剤(ポリエチレングリコール-リン脂質複合体*4)を被覆したナノ粒子の作製に成功した(図1)。得られたナノ粒子は、ナノ粒子特有のEPR効果*5のみならず、磁性イオン液体に由来する磁場駆動の腫瘍標的能によって、大腸がんを移植したマウス体内の腫瘍内に効果的に集積し、磁性イオン液体に由来する抗がん作用に加え、生体透過性の高い近赤外レーザー光*6により、インドシアニングリーンに由来するがん患部の可視化とカーボンナノホーンに由来する光熱変換による多次元的な治療が可能であることを実証した。さらに、マウスを用いた生体適合性試験などを行い、いずれの検査からもナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。当該ナノ粒子と近赤外レーザー光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出が期待される。 |
【研究背景と内容】
がんは世界における死亡の主な原因の1つである。世界保健機関 (WHO) によると、2020年には約1,000万人のがん患者が亡くなっている。とりわけ先進国の人口の高齢化と生活習慣の要因により、症例数は引き続き増加すると予想されている。科学、技術、社会の発展が大きく進歩したにもかかわらず、従来の抗がん剤の特異性の低さ、重篤な副作用、転移性疾患に対する有効性の限界などが相まって、がんは依然として重要かつ世界的な健康課題となっている。従って、より効果的かつ安心・安全な先進がん診断・治療技術の開発は急務である。
イオン液体は、低融点、低揮発性、高イオン濃度、高イオン伝導性などの特長を持つ室温で液体として存在する塩であり、コンデンサ用電解液や帯電防止剤、CO2吸収剤などの様々な産業用途に応用されており、とりわけ環境・エネルギー分野で注目されている。また、近年イオン液体に抗がん作用があることが見出されており、上記の分野のみならず医療分野への応用展開も期待されている。
そもそもイオン液体という物質は、陽イオン分子と陰イオン分子という極めてシンプルな2種類の構成要素で成り立っている。つまり、陽イオン側と陰イオン側の両方に多様な可能性があることから、両者の組み合わせとなるイオン液体には、膨大な種類が存在しうることになる。そのためイオン液体は「デザイナー溶媒」と呼ばれている。例えば、陽イオンが1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、陰イオンが塩化鉄であるイオン液体([Bmin][FeCl4])は、ネオジム磁石程度の磁場に応答する「磁性イオン液体」として知られている。磁石に反応する流体としては、この磁性イオン液体の他に、磁性流体という粉末磁石を懸濁させた油などが知られている。しかし、従来の磁性流体は、固体と液体に分離してしまいやすく不安定であった。磁性イオン液体は極めて安定であり、揮発せず、燃えないなどのイオン液体特有の性質を保持している。このため磁性イオン液体は、固体磁石にはできなかった液体磁石の新しい用途に向けて応用が期待されている。しかし、このような磁性イオン液体の高い潜在能力に反して、これまで報告されている磁性イオン液体の応用例は、化学物質の抽出や分離に限られていた。
一方、ナノ炭素材料の一つであるカーボンナノホーン(CNH)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけバイオメディカル分野で大きな注目を集めている。都教授は、CNHが生体透過性の高い波長領域(650~1100 nm)のレーザー光により容易に発熱する特性(光発熱特性)を世界に先駆けて発見し、当該光発熱特性を活用したがん診断・治療技術の開発を推進している(※1)。また、都研究室では、革新的がん診断・治療技術に向けてCNHのさらなる高性能化・高機能化に取り組んでいる(※2)。
(※1) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/08/17_2.html
(※2) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/08/22-1.html
本研究では、磁性イオン液体([Bmin][FeCl4])と光発熱素材(CNH)を複合化した新規ナノ粒子を開発し、がん診断・治療技術への可能性を調査した。より具体的には、[Bmin][FeCl4]、近赤外蛍光色素(インドシアニングリーン)、分散剤(ポリエチレングリコール-リン脂質複合体)を被覆したCNH([Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体)をがん患部に同時に送り込むことで、[Bmin][FeCl4]に由来する磁場応答性と抗がん作用に加え、生体透過性の高い近赤外レーザー光を用いることで、インドシアニングリーンに由来する近赤外蛍光特性を用いた患部の可視化やCNHに由来する光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療の実現を目指した。
当該目標を達成するために、今回開発した技術では、簡便な超音波照射によって[Bmin][FeCl4]、近赤外蛍光色素(インドシアニングリーン)、ポリエチレングリコール-リン脂質複合体をCNH表面に吸着させることで、CNHを水溶液中に分散できるようにした(図1)。この方法で作製した[Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体は、7日以上の粒径安定性を有していること、細胞に対し高い膜浸透性を有し抗がん作用を発現すること、近赤外レーザー光照射により発熱が起こることが確認できたため、がん患部の可視化と治療効果について試験を行った。
大腸がんを移植して約10日後のマウスに、当該[Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体を尾静脈から投与し、医療用バンデージを使って患部に小型のネオジウム磁石を24時間張り付けた後に740~790 nmの近赤外光を当てたところ、がん患部が蛍光を発している画像が得られた(図2A)。また、当該ナノ粒子が、ネオジウム磁石を用いない場合や磁性イオン液体を被覆していないナノ粒子(PEG‒ICG‒CNH複合体)に比較して、がん組織に効果的に取り込まれていることが分かった(図2A)。そこで、当該ナノ粒子([Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体 + 磁場)が集積した患部に対して808 nmの近赤外レーザー光を照射したところ、[Bmin][FeCl4]に由来する抗がん作用に加え、CNHの光熱変換による効果で5日後には、がんを完全に消失させることが判明した(図2B)。
一方、腫瘍内における薬効メカニズムを組織学的評価により調査したところ、とりわけ磁場印可とレーザー照射した[Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体においてがん細胞組織の顕著な破壊が起こることが明らかとなった。
さらに、[Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体をマウスの静脈から投与し、生体適合性を組織学的検査、血液検査、体重測定により評価したが、いずれの項目でも[Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した[Bmin][FeCl4]‒PEG‒ICG‒CNH複合体が、革新的がん診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジーや光学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2025年3月3日に生物・化学系のトップジャーナル「Small Science」誌(Wiley発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、大学発新産業創出基金事業スタートアップ・エコシステム共創プログラム(JPMJSF2318)ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
図1.様々な機能性分子を被覆したナノ粒子の作製と本研究の概念。
CNH: カーボンナノホーン、ICG: インドシアニングリーン、[Bmim][FeCl4]: 磁性イオン液体、
DSPE‒PEG2000‒NH2: ポリエチレングリコール-リン脂質複合体。
図2. ナノ粒子をがん患部に集積・可視化(A)し、光照射によりがんを治療(B)
(赤色の囲いは腫瘍の位置、赤色の矢印は消失した腫瘍の位置をそれぞれ示している)。
【論文情報】
| 掲載誌 | Small Science |
| 論文題目 | Multifunctional magnetic ionic liquid-carbon nanohorn complexes for targeted cancer theranostics |
| 著者 | Yun Qi, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年3月3日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1002/smsc.202400640 |
【用語説明】
飯島澄男博士らのグループが1998年に発見したカーボンナノチューブの一種。直径は2~5 nm、長さ40~50 nmで不規則な形状を持つ。数千本が寄り集まって直径100 nm程度の球形集合体を形成している。とりわけ、薬品の輸送用担体として期待されており、バイオメディカル分野で注目を集めている。
磁気力によってイオンが移動する液体。
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外レーザー光を照射すると近赤外蛍光と熱を発することができる。
ポリエチレングリコールとリンを含有する脂質(脂肪)が結合した化学物質。脂溶性の薬剤を可溶化させる効果があり、ドラッグデリバリーシステムによく利用される化合物の一つ。
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみ、がん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和7年3月6日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/03/06-1.htmlLeafbot:振動機構によって駆動される一体型移動ソフトロボット
Leafbot:振動機構によって駆動される一体型移動ソフトロボット
【ポイント】
- ロボット設計: Leafbotと名付けた機構とボディ一体型(モノリシック*1)シート状ロボットは、シリコン製の本体に振動で駆動する運動機構を組み込み開発されました。
- ロコモーションと地形のナビゲーション: Leafbotは、その形態学的な設計により、平坦や斜面、起伏のある地形や障害物がある複雑な地形での効率的な横断(ロコモーション)を可能としました。
- 最高速度: 高周波による振動にて、Leafbotの最高速度は、平坦な道を最高速度5 BL/s(体長毎秒)を達成しました。
- テラダイナミクスの解析: 本研究では、事前に定義した条件下でLeafbotの地形横断能力を評価しました。またLeafbotに組み込まれる運動機構を3パターン設計し、性能比較を行いました。
- 実験による分析:ロコモーションダイナミクスを解析するため、数学モデルを開発し、実験を行いその検証を行いました。
- 本研究の応用: Leafbotは人間が直感的に操作しやすいため、配管などの狭所や複雑な地形を持つ環境下での検査作業の容易化が期待されます。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長:寺野稔、石川県能美市)ナノマテリアル・デバイス研究領域のHo Anh Van教授が、NGUYEN, Linh Viet大学院生(博士後期課程)、NGUYEN, Khoi Thanh 大学院生(博士後期課程)らの研究チームを率い、柔軟素材を用いた機構とボディ一体型のシート状ソフトロボット「Leafbot」を開発しました。Leafbotは足やボディと一体化し、振動により駆動する画期的な機構を持ちます。これにより効率的な移動と地形ナビゲーションを実現しました。また、本研究により、Leafbotは、斜面や険しい路面を含む複雑な地形を横断する能力が示され、配管など狭所で複雑な環境下での応用の可能性があり、ソフトロボティクスの進歩に大きく貢献することが期待されます。 |
【研究の背景と内容】
柔軟素材を用いたソフトロボットは、その柔軟性と適応性により、硬さを持つ剛体ロボットでは適応が困難な環境への適応を可能とするため、大きく注目されています。ソフトロボットにはこのような利点があるにも関わらず、移動ソフトロボットの分野では、複雑な地形での効率的な移動の実現が未だ根強い課題として挙げられます。現在の移動ソフトロボットの設計は、振動を利用した機構を持つ移動ソフトロボットが得意な平坦な地形での移動に重点を置く傾向が見られます。しかし、それらは、斜面や障害物が存在する道、凹凸のある不規則な地形での移動には限界があります。このような限界は、実世界の条件下で、一体として機能する材料特性や動的設計、ロコモーション戦略(ロボットの運動・移動の計画)を統合することの難しさの起因となっています。
Leafbot(図1)は、複雑な地形での効率的なロコモーションという重要な課題に取り組んだ移動ソフトロボットの分野における画期的な成果です。Leafbotの特徴は、柔軟性・耐久性・適応性を兼ね備えたシリコンゴム製のシート型のソフトボディです。このロボットの核となる機構は、移動を行う環境とダイナミクス(動力学)な動きに相互作用する振動により駆動する機構です。

図1: (A)リーフボットのコンセプト、(B)Leafbotの設計
Leafbotの足は、曲率と弾力性を追求した形状をしており、凹凸のある地形と相互作用を最適化するだけでなく、非対称な摩擦力を利用して前進するための推進力を得ることができます。この足の設計は、多様な地形への適応性を持つだけでなく、限定された条件下で急斜面を乗り越えることを可能としています。
本研究チームは、手足の数が異なる3つのパターンのLeafbot(Leafbotの手足の数により3、5、9とナンバリング)を開発し、その動作検証を行いました。その結果、手足の数が多いほど摩擦が増加し、地形への適応性が向上しました。その一方で、手足の数が少なければ、より高速の移動が可能となることが示されました。Leafbotは、平坦な地形(道)において、最高速度5 BL/s(体長/秒)を達成します。さらに、このロボットは半円形の障害物のある道や険しい地形、斜面を移動する際にも卓越した性能を発揮しました。これはLeafbotが困難な環境下に適していることを証明しています。加えて、この研究では、Leafbotにロコモーションダイナミクスを解析する数値モデルを設計し、様々な条件下でのパフォーマンスを理解するための枠組みを提供します。

図2: Leafbot-X5は環境の凹凸をナビゲートし、2次元空間で操縦できる
Leafbotは、移動ソフトロボットが持つ行動能力を平坦な地形から拡大することで、この分野に新たな基準を打ち立てます。この技術は、工業検査や狭所の捜索救助活動、整地されていない農地の監視などへの用途で予想されます。さらに、Leafbotの柔軟でフレキシブルな構造は、平らな場所であれば起伏のある地形でも移動することが可能です。この機能は、2次元空間での操縦性を持たせるため、より多くの動力源(振動源)を搭載することで実現しました。また、改良型Leafbot-X5は、形態学的な手足も同様に、Leafbotが環境の凹凸に適応することを可能にしました(図2)。将来的には、より優れたエネルギー効率を実現するため、設計を改良し、また自律的なナビゲーションのために感覚システムを組み込み、多様な環境で耐久性・性能の担保・向上させるために新素材を追求する予定です。
【論文情報】
| 掲載誌 | IEEE Transactions on Robotics (T-RO) |
| 論文題目 | Terradynamics of Monolithic Soft Robot Driven by Vibration Mechanism |
| 著者 | Linh Viet Nguyen; Khoi Thanh Nguyen; and Van Anh Ho |
| 掲載日 | 2025年1月24日 |
| DOI | 10.1109/TRO.2025.3532499 |
【用語説明】
モノリシックとは、Leafbotのように、ロボットのボディに繋ぎ目がなく一体であり、耐久性・柔軟性・適応性が高められていることを指します。
令和7年2月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/02/17-1.htmlJSTのさくらサイエンスプログラムを実施
ナノマテリアル・デバイス研究領域の安東秀准教授のマレーシアとの交流計画が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「国際青少年サイエンス交流事業 さくらサイエンスプログラム」に採択されたことを受け、1月9日~1月18日の日程でマレーシア国民大学(UKM)及びマレーシアマラッカ技術大学(UTeM)並びにマレーシアプトラ大学(UPM)から13名の教員・研究者・大学院生を本学に受け入れました。
「国際青少年サイエンス交流事業 さくらサイエンスプログラム」は、産学官の緊密な連携により、諸外国・地域の青少年を我が国に招へいし、我が国の青少年との科学技術分野の交流を行う事業です。これを通して、
①科学技術イノベーションに貢献しうる優秀な人材の養成・確保
②国際的頭脳循環の促進
③日本と諸外国・地域の教育研究機関間の継続的連携・協力・交流
④科学技術外交にも資する日本と諸外国・地域との友好関係の強化
に貢献し、ひいては、日本及び世界の科学技術・イノベーションの発展に寄与することを目的とします。
参考:https://ssp.jst.go.jp/outline/detail/
本学はアジア諸国の大学・研究機関との学術的交流を強く推進しており、将来的に優秀な学生を受け入れるためにマレーシアにおける大学・研究機関においても交流を進めています。
本交流の趣旨は昨年実施された環境・エネルギー分野に続いてナノマテリアル・デバイス・計測分野にて交流を実施し、本学のマレーシアにおける学術的交流活動をより広く促進する効果を狙った計画となりました。また、今回、本学での学位取得者であるAmbri教授(UKM)とAsyadi教授(UTeM)が実施担当者として来日し、本学と各大学の交流基盤を再構築することができました。プログラム期間中には、本学教員による研究指導等を実施し、最終日には成果報告会が行われました。また、金沢のひがし茶屋街での金箔体験や、ゆのくにの森での蒔絵体験を通して日本的な文化や美にも触れ、さらに、中谷宇吉郎雪の科学館、東京の日本科学未来館を訪問して日本の多様な先端科学技術を紹介しました。
本交流プログラムはこれらの経験を通して招聘者の将来の日本への留学を促し、本学が招聘者の母国やアジアの科学技術の進歩や発展に貢献することを目指しています。
■実施期間
令和7年1月9日~令和7年1月18日
■研究テーマ
ナノマテリアル・デバイス・計測に関する技術交流
■本交流について一言
本計画をサポートいただきましたJSTに御礼申し上げます。また、本学受入教員の村田教授、赤堀准教授、高村由起子教授、廣瀬講師、大島教授、松見教授、上田准教授、篠原准教授、長尾教授に御礼申し上げます。また、降雪の中プログラム実施をサポートして下さった長尾教授、青木助教をはじめとする10名以上の教職員や学生の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。引き続きマレーシアとの交流の発展にお力添えをお願い致します。

歓迎ミーティング

初雪体験

金沢で金箔貼体験

ゆのくにの森

研究実施風景

成果報告会、終了式
令和7年1月24日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/01/30-1.html量子グレードの高品質・高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンド ~ナノダイヤモンド量子センサの性能向上で超高感度の測定が可能に~
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| 岡山大学 量子科学技術研究開発機構 北陸先端科学技術大学院大学 筑波大学 |
量子グレードの高品質・高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンド
~ナノダイヤモンド量子センサの性能向上で超高感度の測定が可能に~
【ポイント】
- 明るい蛍光イメージングとナノ量子計測法が利用可能な品質等級(量子グレード)を実現しました。
- 従来の蛍光ナノ粉末ダイヤモンド※1に比べて量子特性が10倍以上、温度感度が2桁向上しました。
- ナノダイヤモンド量子センサの性能を大幅に向上させた画期的な成果です。
- 細胞内やナノ電子デバイスの温度や磁場を超高感度で測定可能になることが期待されます。
| 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の藤原正澄研究教授、押味佳裕日本学術振興会特別研究員、同大大学院環境生命自然科学研究科の中島大夢大学院生、大学院自然科学研究科のマンディッチサラ大学院生、小林陽奈非常勤研究員(当時)は、住友電気工業株式会社の西林良樹主幹、寺本三記主席、辻拡和研究員、量子科学技術研究開発機構量子生命科学研究所の石綿整主任研究員、北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアル・デバイス研究領域の安東秀准教授、筑波大学システム情報系の鹿野豊教授らとの共同研究により、従来の10倍以上の優れた量子特性(量子コヒーレンス※2)を持つ高輝度の蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを世界で初めて報告しました。この蛍光ナノ粉末ダイヤモンドは、住友電気工業株式会社との協力によって実現されたもので、高い蛍光輝度で蛍光イメージングが可能で、高品質な量子センサ特性を有しており、温度量子測定においても1桁以上の感度向上が確認されました。 本研究成果は、2024年12月16日に「ACS Nano」のオンライン先行版に掲載されました。蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを用いた量子センシング※3技術は、近年注目を集めている超高感度ナノセンシング技術です。しかし、これまで高い蛍光輝度と様々な量子計測法を行うのに要求される品質等級(量子グレード)の両立は困難とされてきました。本研究により、ナノダイヤモンド量子センサの性能が大幅に向上され、細胞内やナノ電子デバイスの温度や磁場を超高感度で測定できると期待されます。 |
【現状】
蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを用いた量子センシングは、ナノスケールでの温度、磁場、化学環境の変化を高感度に計測できる技術として、生命科学やナノテクノロジー分野で大きな注目を集めています。この技術は、細胞内の微小領域やデバイス内部の構造を精密に計測できることから、将来的には癌の超早期診断や極微量ウイルスの検出などの医療分野や、リチウムイオンバッテリーの状態モニタリングなどのスマートデバイス分野での応用が期待されています。しかし、量子センシングの性能は蛍光ナノ粉末ダイヤモンドの電子スピン特性に大きく依存しており、このスピン特性の向上が技術の成否を左右します。特に、従来の蛍光ナノダイヤモンドでは、蛍光強度とスピン特性の両立が難しく、測定感度が劣化するという課題がありました。
【研究成果の内容】
本研究では、蛍光ナノ粉末ダイヤモンド中のスピン不純物(孤立窒素原子や天然炭素に含まれる約1%の13C同位体)を大幅に減少させ、スピン純度を飛躍的に向上させることに成功しました。また、窒素空孔欠陥中心(NV中心)※4を高効率で生成するためのダイヤモンド成長法およびナノ粒子粉砕法を最適化し、含有されているNV中心が約1 ppm、孤立窒素が約30 ppm、13C同位体が0.01%以下に制御され、平均粒径277 nmの大きさを有するナノ粉末ダイヤモンドを作製しました。その結果、光検出磁気共鳴※5信号(ODMR)が著しく改善され、従来の蛍光ナノ粉末ダイヤモンドと比較して量子コヒーレンス時間が10倍以上延長されました。(図1)

図1:細胞内の量子グレード蛍光ナノ粉末ダイヤモンドとそのスピン特性
さらに、これらの蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを細胞内に導入し、従来の蛍光ナノ粉末ダイヤモンドに比べてより高感度にODMR信号が検出できることを実証しました。また、バルク結晶のみで実現されていた量子計測法の1つである、超高感度温度測定法「サーマルエコー」も観測することに成功しました。これにより、従来のナノダイヤモンド温度量子センシングに比べて1桁以上感度が向上することを確認しました(図2)。ナノダイヤモンド量子センサの実用に道を開く画期的な成果です。

図2:サーマルエコー法による超高感度温度測定と従来に比べた測定感度の向上
【社会的な意義】
本研究は、生命科学やナノテクノロジー分野におけるナノスケールセンシング技術の大きな進展をもたらす可能性を秘めています。蛍光ナノ粉末ダイヤモンドは、優れた光安定性と生体適合性を持ち、既に一部で商用化が始まっている有望な蛍光イメージング材料です。ナノダイヤモンド量子センサの応用が進展すれば、癌などの超早期診断や極微量ウイルス検出といった新しい診断技術の開発が期待されます。また、ナノメートルからマイクロメートルの微小領域で温度や磁場を検出する技術は、リチウムイオンバッテリー内部の状態モニタリングなど、スマートデバイスの革新的な性能向上にも貢献すると期待されています。本研究を通じて量子センシング技術が進展することで、蛍光ナノ粉末ダイヤモンドのバイオ医療やスマート電子技術分野での幅広い商用化が期待されます。
【論文情報】
| 論文名 | Bright quantum-grade fluorescent nanodiamonds |
| 邦題名 | 「高輝度量子グレード蛍光ナノ粉末ダイヤモンド」 |
| 掲載紙 | ACS Nano |
| 著者 | Keisuke Oshimi, Hitoshi Ishiwata, Hiromu Nakashima, Sara Mandić, Hina Kobayashi, Minori Teramoto, Hirokazu Tsuji, Yoshiki Nishibayashi, Yutaka Shikano, Toshu An, Masazumi Fujiwara |
| DOI | 10.1021/acsnano.4c03424 |
| URL | https://doi.org/10.1021/acsnano.4c03424 |
【研究資金】
- 独立行政法人日本学術振興会「科学研究費助成事業」
‣基盤A・24H00406,研究代表:藤原正澄
‣基盤A・20H00335,研究代表:藤原正澄
‣国際共同研究強化(A)・20KK0317,研究代表:藤原正澄
‣特別研究員奨励費・23KJ1607,研究代表:押味佳裕 - 国立研究開発法人科学技術振興機構
「先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)次世代のためのASPIRE」
(JPMJAP2339,研究代表:鹿野豊(筑波大学) - 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「官民による若手研究者発掘支援事業」
(JPNP20004,研究代表:藤原正澄) - 国立研究開発法人日本医療研究開発機構「ムーンショット型研究開発事業」
(JP23zf0127004,研究代表:村上正晃(北海道大学)) - 国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業 「共通基盤」領域 本格研究
(JPMJMI21G1,研究代表:飯田琢也(大阪公立大学)) - 国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ
(JPMJPR20M4,研究代表:鹿野豊(筑波大学)) - 国立研究開発法人科学技術振興機構 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業
(JPMJFS2128, 研究代表:押味佳裕(岡山大学))
(JPMJFS2126, 研究代表:マンディッチサラ(岡山大学)) - 公益財団法人 山陽放送学術文化・スポーツ振興財団「研究助成」(研究代表:藤原正澄)
- 公益財団法人 旭硝子財団「研究助成」(研究代表:藤原正澄)
- 文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」(JPMXP09F21OS0055)
- 国立研究開発法人科学技術振興機構 創発的研究支援事業
(JPMJFR224K,研究代表:石綿整(QST)) - 公益財団法人 村田学術振興・教育財団「研究助成」(研究代表:石綿整(QST))
【補足・用語説明】
ダイヤモンド中に存在する窒素欠陥中心によって赤い発光を示す、ナノメートルサイズのダイヤモンド粉末粒子。褪色がなく安定した蛍光を半永久的に示す蛍光材料。生体毒性も低く、バイオイメージングなどに利用されている。
量子力学において量子状態が外部からの影響を受けずに一貫性を保ちながら情報を保持できる性質。温度測定の場合、ダイヤモンド窒素欠陥中心の電子スピン状態が温度情報を感じることのできる時間であり、コヒーレンスが失われると温度測定の精度が低下する。
量子力学の原理に基づいてさまざまな物理量を超高感度に計測することができる。特に蛍光ナノ粉末ダイヤモンドでは、窒素欠陥中心が有する電子スピン状態を、量子力学の原理に基づいて操作・検出することで、さまざまな物理量(磁気・温度・電気)を超高感度に計測することができる。
ダイヤモンドの炭素格子中に含まれる結晶欠陥の1つ。窒素原子と隣接する空孔から構成され、緑色の光を吸収して赤い蛍光を示す。この蛍光は、光検出磁気共鳴を示し※5、これが磁場や温度によって影響されるため、蛍光を通したセンシングが可能。超高感度計測が可能な量子センサとして注目され、生体内での温度や磁場の計測、量子情報技術などで注目されている。
光検出を通して電子スピンとマイクロ波の共鳴を観測する手法。蛍光ナノ粉末ダイヤモンドの場合、2.87 GHz付近のマイクロ波を照射すると、電子スピン共鳴が生じ、それが蛍光輝度の減少に表れる。
令和6年12月23日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/12/23-1.html学生のZHOUさんがICAMT 2024にてBest Poster Awardを受賞
学生のZHOU, Jiabeiさん (博士後期課程3年、物質化学フロンティア研究領域、山口政之研究室) がInternational Conference on Advanced Materials and Technology (ICAMT 2024)にてBest Poster Awardを受賞しました。
ICAMT2024は、令和6年10月9日~12日にかけて、ベトナム(ハノイ)にて、ハノイ工科大学の材料工学部設立を記念して開催された国際会議です。同会議では、さまざまな先端材料分野の専門家が集まり、材料科学・工学に関する最新の研究成果について議論が行われました。
■受賞年月日
令和6年10月10日
■研究者、著者
Jiabei Zhou(周 佳貝), Kenji Takada, Tatsuo Kaneko and Masayuki Yamaguchi
■研究題目、論文タイトル等
Enhanced mechanical performance of high thermoresistance polybenzimidazole film by pore-construction
■受賞対象となった研究の内容
スーパーエンジニアリングプラスチックの中でも特に高性能材料に位置づけられるポリベンズイミダゾール(以下、PBI)は、優れた耐熱性と耐薬品性を備えているため、様々な分野で関心を持たれている。金属と比して遥かに軽量であるPBIはバイオベースプロセスでも合成できるため、省・再生エネルギーの目標の実現や、軽量化社会構築に大きく貢献すると期待されている。ただし、キャスト法で得られたPBIフィルムは、特徴的なパターンの形成による不均質化が生じ応用範囲が限られていた。本研究では、PBIフィルムの不均質化の改善に着目し、ナノ粒子分散かつポア形成という手法で改善することに成功した。
■受賞にあたって一言
この度は、ICAMT 2024国際会議におきまして、このような賞をいただけたことを大変光栄に思います。本研究の遂行にあたり、日頃よりご指導をいただいている山口政之教授、研究室の皆さんにこの場をお借りして心より御礼を申し上げます。さらに、多くのご助言をいただきました研究室のメンバーに深く感謝いたします。


令和6年11月19日
高密度なイオン液体構造を持つ新高分子材料の創出
高密度なイオン液体構造を持つ新高分子材料の創出
ポイント
- バイオベース化合物であるポリフマル酸の高分子反応により、高密度にイオン液体構造を有する高分子化イオン液体の合成に成功しました。
- 作製したアノード型ハーフセルは、リチウムイオン二次電池における1Cにおいて297 mAhg-1、ナトリウムイオン二次電池において60 mAg-1で250 mAhg-1の放電容量を示しました。
- いずれの電池系も高い耐久性を示し、リチウムイオン二次電池では750サイクル後に80%、ナトリウムイオン二次電池においては200サイクル後に96%の容量維持率を示しました。
- 高密度イオン液体構造を有するバインダーは、リチウムイオン二次電池系の急速充放電能において適性を示し、5CにおいてPVDF系の約2倍の85 mAhg-1を示しました。
- また、同バインダーは、ナトリウムイオン二次電池のハードカーボン負極バインダーとして、ナトリウムイオンの負極における拡散を改善しつつ、PVDF系の約2倍の放電容量を発現させました。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授、Amarshi Patra大学院生(博士後期課程)は、バイオベースポリマーであるポリフマル酸から高密度にイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を開発しました。開発した本高分子材料をリチウムイオン二次電池[*1]用グラファイト負極バインダーとして適用することにより、急速充放電能が促されました。また、ナトリウムイオン二次電池[*2]用ハードカーボン負極バインダーとして適用することにより、PVDFバインダー系の2倍の放電容量を観測しました。これらは、いずれも本バインダーが負極内における円滑な金属カチオンの拡散を促した結果です。また、構築した電池系はいずれも高い耐久性を示しました。 高分子化イオン液体は極めて多様な応用範囲を有する材料群であり、高密度なイオン液体構造を有する新材料の創出は、多様な分野における研究を活性化させる可能性を有しています。 |
【研究背景と内容】
今日、高分子化イオン液体は、各種エネルギーデバイス向けの材料や生医学用材料、センシング用材料、環境応答性材料、触媒の担持体等の広範な分野で、極めて活発に研究されている重要な機能性材料となっています。
本研究では、バイオベースポリマー[*4]であるポリフマル酸の高分子反応によって、高密度にイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を合成しました。また、得られた材料をリチウムイオン二次電池及びナトリウムイオン二次電池の負極バインダーとして適用しました。その結果、負極内の金属イオンの拡散が促進され、それぞれの電池系の特性の改善につながることを見出しました。
本高分子化イオン液体の合成においては(図1)、まずフマル酸[*3]エステルをAIBNを開始剤としてラジカル重合し、ポリフマル酸エステルを得ました。その後、ポリマーをKOH水溶液で100oCにおいて12時間処理し、透析を行うことでポリフマル酸を得ました。一方、アリルメチルイミダゾリウムクロリドをAmberlite樹脂によりイオン交換することで、アリルメチルイミダゾリウムヒドロキシドを調整し、これを常温でポリフマル酸と中和させることにより、高密度なイオン液体構造を有する高分子化イオン液体(PMAI)を合成しました。ポリマーの構造は、1H-、13C-NMR及びIR等により決定しました。
まず、本ポリマー(PMAI)のグラファイトとのコンポジット(PMAI/Gr)、ハードカーボンとのコンポジット(PMAI/HC)について、銅箔への接着性を引き剝がし試験により評価したところ、いずれの系もPVDFとのコンポジット系よりも大幅に改善された接着力を示しました。PMAI/Grは10.9 Nを要し、PMAI/HCは11.0 Nを要し、いずれもPVDF/Grの9.8 N、PVDF/HCの9.9 Nを上回りました。
次に、本ポリマー(PMAI)のリチウムイオン二次電池用負極バインダーとしての性能を評価しました。アノード型ハーフセル[*5]における電荷移動界面抵抗はPMAI/Grにおいて21.9Ωであり、PVDF/Gr系の125.9Ωを大幅に下回りました。これは、高密度なイオン液体構造が負極内におけるLiイオン拡散を促す結果と考えられます。また、PMAI/Gr系においてはSEI抵抗も11.08Ωと低く、PVDF/Gr系の29.97Ωよりも顕著に低いことがわかりました。(図2)。
さらにLi+拡散係数をインピーダンススペクトルにおける低周波数領域から解析したところ、PMAI/Gr系では1.03 x 10-10 cm2/s、PVDF/Grでは3.08 x 10-12 cm2/sとなり、前者において著しく低くなりました。結果として、作製したアノード型ハーフセル(図2)はリチウムイオン二次電池における1Cにおいて297 mAhg-1の放電容量を示し、750サイクル後に80%の容量維持率を示しました。また、本バインダー系は、急速充放電能において適性を示し、5CにおいてPVDF系の約2倍の85 mAhg-1を示しました。
本ポリマー(PMAI)のナトリウムイオン二次電池用負極バインダーとしての性能に関しても評価しました。アノード型ハーフセルにおける電荷移動界面抵抗はPMAI/HCにおいて31.38Ωであり、PVDF/HC系の83.09Ωを大幅に下回りました。さらにNa+拡散係数をインピーダンススペクトルにおける低周波数領域から解析したところ、PMAI/HC系では3.35 x 10-13 cm2/s、PVDF/HCでは1.01 x 10-13 cm2/sとなり、前者において3倍以上の拡散性を示しました。ナトリウムイオン二次電池の負極ハーフセルにおいて、60 mAg-1で250 mAhg-1の放電容量を示し、200サイクル後に96%の容量維持率を示しました。結果としてPVDF系の約2倍の放電容量を発現させました。
また、充放電後の負極をSEM観察したところ、PVDF系と比較して大幅に負極マトリックス上のクラックが少なく、安定化している様子が観察されました。(図3)
本成果は、Advanced Energy Materials(WILEY - VCH)(IF 24.4)のオンライン版に9月12日に掲載されました。
【今後の展開】
本高分子材料においては、種々なカチオン構造の改変が可能であり、さらなる高性能化につながると期待できます。
今後は、企業との共同研究(開発パートナー募集中、サンプル提供応相談)を通して、将来的な社会実装を目指します。(特許出願済み)。また、高耐久性リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池の普及を通して、社会の低炭素化に寄与する技術への展開が期待できます。
集電体への接着力が高く、高耐久性を促すバインダー材料として、広範な蓄電デバイスへの応用展開が期待されるほか、新たな高分子化イオン液体材料として、エネルギーデバイス以外の広範な分野における応用も期待できます。

図1.高密度高分子化イオン液体の合成法
図2.PMAI/Gr、PVDF/Gr系の充放電サイクル特性(リチウムイオン二次電池、負極型ハーフセル) (a) 1C(800サイクル)(b) 5C(1000 サイクル);SEI抵抗の電圧依存性(RSEI vs. V) (c)リチウム挿入反応中の電圧 (d)リチウム脱離反応中の電圧

図3.(a)(d) PMAI/HC、PVDF/HC 系の充放電前のSEM像;(b) PMAI/HC (e) PVDF/HC系の充放電後のTop View像;(c) PMAI/HC (f) PVDF/HCの充放電後の断面像
【論文情報】
| 雑誌名 | Advanced Energy Materials |
| 題目 | Densely Imidazolium Functionalized Water Soluble Poly(ionic liquid) Binder for Enhanced Performance of Carbon Anode in Lithium/Sodium-ion Batteries |
| 著者 | Amarshi Patra and Noriyoshi Matsumi* |
| 掲載日 | 2024年9月12日 |
| DOI | 10.1002/aenm.202403071 |
【用語説明】
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池。従来型のニッケル水素型二次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
電解質中のナトリウムイオンが電気伝導を担う二次電池。従来型のリチウムイオン二次電池と比較して原料の調達の利便性やコスト性に優れることから、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車への適用が期待されている。
フマル酸は無水マレイン酸(バイオベース無水マレイン酸を含む)を原料として工業的に生産されるが、糖類に糸状菌を作用させて製造することも可能である。さらに、最近ではCO2を原料とした人工光合成によりフマル酸を生産する技術も脚光を浴びている。CO2もしくは糖類、バイオベース無水マレイン酸から誘導可能なフマル酸を用いた高付加価値な化成品の製造は、カーボンニュートラルへの貢献において魅力あるアプローチといえる。
生物資源由来の原料から合成される高分子材料の総称。低炭素化技術として、その利用の拡充が期待されている。
例えば、ナトリウムイオン二次電池の場合には、アノード極/電解質/Naの構成からなる半電池を意味する。
令和6年9月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/09/17-1.html学生のLIUさんがICT/ECT 2024においてThe ICT2024 Outstanding Poster Prizeを受賞
学生のLIU, Ruianさん(博士後期課程3年、サスティナブルイノベーション研究領域、小矢野研究室)が40th International & 20th European Conference on Thermoelectrics (ICT/ECT 2024)においてThe ICT2024 Outstanding Poster Prizeを受賞しました。
国際熱電学会とヨーロッパ熱電学会が後援するICT/ECT 2024は、第40回国際熱電会議と第20回ヨーロッパ熱電会議の合同会議で、AGHクラクフ大学が主催し、ポーランド(クラクフ)にて令和6年6月30日~7月4日にかけて5日間にわたり開催されました。
国際熱電会議(ICT)は、理論とモデリング、物理現象、新素材、測定技術、熱電デバイス、システム、アプリケーションなどあらゆる側面を網羅するトピックを取り扱う、熱電変換技術に関する最も主要な国際会議であり、化学、物理学、材料科学の分野における新しいアイデアや発見、また熱電変換の進歩に寄与する産業およびエネルギー分野における実用的な応用について議論する場を提供しています。
ICT/ECT 2024では約300件のポスター発表があり、その中から優れた発表を行った8件の発表者に対してThe ICT2024 Outstanding Poster Prizeが授与されました。
参考:ICT/ECT2024
ICT/ECT2024参加レポート
■受賞年月日
令和6年7月3日
■研究題目、論文タイトル等
Investigation of lattice anharmonicity in Se-doped Bi2Te3 based on temperature-dependent Raman spectroscopy
■研究者、著者
劉鋭安(LIU, Ruian)、宮田全展、小矢野幹夫
■受賞対象となった研究の内容
SeドープのBi2Te3は、高性能なn型熱電材料としてインターネット光通信レーザーの温度制御などに広く応用されており、その熱電物性はよく調べられている。しかしながらこの機能性材料の低熱伝導率の原因であるフォノン散乱過程に関する実験はほとんど行われていない。私は、Seのドープ量を系統的に変化させたBi2Te3-xSex材料を合成し、ラマン散乱ピークの半値幅の温度依存性の解析から、結晶歪みやSe置換量による格子の非調和振動の変化を詳細に調べた。その結果、3次の非調和項の寄与が支配的である一方、4次以上の非線形的な非調和振動項はほとんど寄与しないことを明らかにした。いままでこの物質の低い熱伝導率は高次の非調和格子振動によるものと考えられていたが、私の実験結果はその考え方に修正をもたらすものであり、より現実的な低熱伝導率の原因の解明につながる重要な成果である。
■受賞にあたって一言
この度は、国際熱電会議よりThe ICT2024 Outstanding Poster Prizeを拝受しましたこと、誠に光栄に存じます。この表彰は私個人の力だけではなく、日々ご指導を賜りました小矢野幹夫教授、宮田全展講師(現産業技術総合研究所)をはじめ、研究室の皆様のお陰です。この場をお借りして心より深く感謝を申し上げます。また、渡航諸費用にご支援を頂いた丸文財団にも厚く御礼申し上げます。


令和6年7月26日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2024/07/26-1.html












