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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。多機能ナノ粒子を用いて、無傷のリソソームを迅速かつ高純度に単離する手法を開発
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国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 国立大学法人東北大学 |
多機能ナノ粒子を用いて、無傷のリソソームを迅速かつ高純度に単離する手法を開発
ポイント
- 磁性―プラズモンハイブリッドナノ粒子を哺乳動物細胞のリソソーム内腔へエンドサイトーシス*1経路で高効率に送達することに成功
- ハイブリッドナノ粒子の細胞内輸送過程をプラズモンイメージング*2によって精確に追跡することで、高純度にリソソームを磁気分離するための最適培養時間を容易に決定可能
- リソソーム内腔にハイブリッドナノ粒子を送達後、細胞膜を温和に破砕し、4℃で30分以内にリソソームを磁気分離することで、細胞内の状態を維持したままリソソームの高純度単離に成功
| 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長:寺野 稔、石川県能美市) 先端科学技術研究科 前之園 信也 教授、松村 和明 教授、平塚 祐一 准教授の研究チームは、東北大学(総長:大野 英男、宮城県仙台市)大学院生命科学研究科の田口 友彦教授と共同で、磁気分離能(超常磁性)とバイオイメージング能(プラズモン散乱*3特性)を兼ね備えた多機能ナノ粒子(磁性―プラズモンハイブリッドナノ粒子)を用いて、細胞内の状態を維持したままリソソームを迅速かつ高純度に単離する技術を世界で初めて開発しました。 |
【背景と経緯】
リソソームは60を超える加水分解酵素とさまざまな膜タンパク質を含む細胞小器官(オルガネラ)で、タンパク質、炭水化物、脂質、ヌクレオチドなどの高分子の分解と再利用に主要な役割を果たします。これらの機能に加えて、最近の発見では、リソソームがアミノ酸シグナル伝達にも関与していることがわかってきています。リソソーム機能障害に由来する疾患も数多く存在します。そのため、リソソームの機能をより深く理解することは基礎生物学においても医学においても重要な課題です。
リソソームの代謝物の探索は、近年急速に関心が高まっている研究分野です。たとえば、飢餓状態と栄養が豊富な状態でリソソームの代謝物を研究することにより、アミノ酸の流出がV-ATPaseおよびmTORに依存することが示されました(M. Abu-Remaileh et al., Science, 2017, 358, 807)。このように、外部刺激に応答したリソソームの動的な性質を調べるためには、リソソームを細胞内の状態を維持したまま迅速かつ高純度に分離する必要があります。
一般的に、リソソームの単離は密度勾配超遠心分離法*4によって行われていますが、密度勾配超遠心分離法には二つの大きな問題があります。まず一つ目の問題として、細胞破砕液にはほぼ同じ大きさと密度を持ったオルガネラが多種類あるため、得られた画分にはリソソーム以外の別のオルガネラが不純物として混ざっていることがよくあります。したがって、リソソーム画分のプロテオミクス解析を行っても、完全な状態のリソソームに関する情報を得ることができません。二つ目の問題として、分離プロセスに長い時間がかかるため、リソソームに存在する不安定なタンパク質は脱離、変性、または分解される可能性があります。この問題も、リソソームに関する情報を得ることを大きく妨げます。
これらの問題を克服するために、リソソームを迅速に単離するための他の技術が開発されました。たとえば、磁気ビーズを用いた免疫沈降法*5によってリソソームを迅速に分離できることが示されました(M. Abu-Remaileh et al., Science, 2017, 358, 807)。しかし、この手法では、ウイルスベクターのトランスフェクションなどによって抗体修飾磁気ビーズが結合できるリソソーム膜貫通タンパク質を発現させる必要があります。この方法は、密度勾配超遠心分離法よりも高純度のリソソーム画分が得られますが、リソソーム膜のタンパク質組成とその後のプロテオミクス解析に悪影響を与える可能性が指摘されています(J. Singh et al., J. Proteome Res., 2020, 19, 371-381.)。
【研究の内容】
本研究では、無傷のリソソームを迅速かつ効率的に分離する新たな単離法として、アミノデキストラン(aDxt)で表面修飾したAg/FeCo/Ag コア/シェル/シェル型磁性―プラズモンハイブリッドナノ粒子(MPNPs)をエンドサイトーシス経路を介してリソソームの内腔に集積した後、細胞膜を温和に破砕し、リソソームを磁気分離するという手法を開発しました(図1)。リソソームの高純度単離のためには、エンドサイトーシス経路におけるaDxt結合MPNPs(aDxt-MPNPs)の細胞内輸送を精確に追跡することが必要となります。そこで、aDxt-MPNPsとオルガネラの共局在の時間変化を、aDxt-MPNPsのプラズモンイメージングとオルガネラ(初期エンドソーム、後期エンドソームおよびリソソーム)の免疫染色によって追跡しました(図2)。初期エンドソームおよび後期エンドソームからのaDxt-MPNPsの脱離と、リソソーム内腔へのaDxt-MPNPsの十分な蓄積に必要な最適培養時間を決定し、その時間だけ培養後、リソソームを迅速かつマイルドに磁気分離しました。細胞破砕からリソソーム単離完了までの経過時間(tdelay)と温度(T)を変化させることにより、リソソームのタンパク質組成に対するtdelayとTの影響をアミノ酸分析によって調べました。その結果、リソソームの構造は細胞破砕後すぐに損なわれることがわかり、リソソームを可能な限り無傷で高純度で分離するには、tdelay ≤ 30分およびT = 4℃という条件で磁気分離する必要があることがわかりました(図3)。これらの条件を満たすことは密度勾配超遠心分離法では原理的に困難であり、エンドサイトーシスという細胞の営みを利用して人為的にリソソームを帯磁させて迅速かつ温和に単離する本手法の優位性が明らかとなりました。
本研究成果は、2022年1月3日(米国東部標準時間)に米国化学会の学術誌「ACS Nano」のオンライン版に掲載されました。
【今後の展開】
本手法はリソソーム以外のオルガネラの単離にも応用可能な汎用性のある技術であり、オルガネラの新たな高純度単離技術としての展開が期待されます。

図1 磁性―プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いたリソソームの迅速・高純度単離法の概念図

| 図2 COS-1細胞におけるaDxt-MPNPsの細胞内輸送。 (A)aDxt-MPNPsの細胞内輸送の概略図(tは培養時間)。 (B)aDxt-MPNPsとリソソームマーカータンパク質(LAMP1)の共局在を示す共焦点レーザー走査顕微鏡像 (核:青、aDxt-MPNPs:緑、リソソーム:赤)。 aDxt-MPNPsはプラズモンイメージングによって可視化。 スケールバーは20 µm。 |

| 図3 単離されたリソソームのウエスタンブロッティングおよびアミノ酸組成分析の結果。 (A)ネガティブセレクション(NS)およびポジティブセレクション(PS)画分。 (B)PS画分の共焦点レーザー走査顕微鏡画像(緑:aDxt-MPNPs、赤:LAMP1)。 (C)NSおよびPS画分、および細胞破砕液のウエスタンブロット結果。 (D)異なる温度でtdelayを変化した際に得られたリソソーム画分のアミノ酸含有量の変化。 水色(4℃、tdelay = 30分)、青(4℃、tdelay = 120分)、ピンク(25℃、tdelay = 30分)、 および赤(25℃、tdelay = 120分)。 |
【論文情報】
| 掲載誌 | ACS Nano |
| 論文題目 | Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanoparticles (磁性―プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いた完全な状態のリソソームの迅速かつ温和な単離) |
| 著者 | The Son Le, Mari Takahashi, Noriyoshi Isozumi, Akio Miyazato, Yuichi Hiratsuka, Kazuaki Matsumura, Tomohiko Taguchi, Shinya Maenosono* |
| 掲載日 | 2022年1月3日(米国東部標準時間)にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1021/acsnano.1c08474 |
【用語説明】
*1.エンドサイトーシス:
細胞が細胞外の物質を取り込む過程の一つ
*2.プラズモンイメージング:
プラズモン散乱を用いて、光の回折限界以下のサイズの金属ナノ粒子を光学顕微鏡(蛍光顕微鏡や共焦点顕微鏡など)で可視化すること
*3.プラズモン散乱:
金属ナノ粒子表面での自由電子の集合振動である局在表面プラズモンと可視光との相互作用により、可視光が強く散乱される現象
*4.密度勾配超遠心分離法:
密度勾配のある媒体中でサンプルに遠心力を与えることで、サンプル中の構成成分がその密度に応じて分離される方法
*5.免疫沈降法:
特定の抗原を認識する抗体を表面修飾したビーズ用い、標的抗原が発現したオルガネラを細胞破砕液中から選択的に分離する免疫化学的手法
令和4年1月5日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/01/05-2.htmlナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる! ~ ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発により実現 ~
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国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
ナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる!
~ ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発により実現 ~
ポイント
- 液体金属に生体分子を吸着させた複合体へのガンマ線照射によりコア-シェル型の構造を持つナノ粒子の作製に成功
- ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子がEPR効果により腫瘍に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都 英次郎准教授とセキ ウン大学院生(博士前期課程)は、量子科学技術研究開発機構(理事長・平野 俊夫、千葉県千葉市)、高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部(群馬県高崎市)の田口 光正上席研究員(「生体適合性材料研究プロジェクト」プロジェクトリーダー)、木村 敦上席研究員と共同で、量子ビーム(ガンマ線*1)架橋技術を用いて、ガリウム-インジウム合金から成る液体金属*2 表面に様々な生体高分子(ゼラチン、DNA、レシチン、牛血清蛋白質)がコートされ、安定な状態を保つことができるコア-シェル型*3 のユニークな構造を有すナノ粒子の作製に成功した(図1)。得られたゼラチン-液体金属ナノ粒子は、EPR効果*4 によって大腸がんを移植したマウス体内の腫瘍内に集積し、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5 により、がん患部の可視化と光熱変換による治療が可能であることを実証した。さらに、マウスがん細胞とヒト正常細胞を用いた細胞毒性試験と生体適合性試験を行い、いずれの検査からもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。当該ナノ粒子と近赤外レーザー光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出が期待される。 |
【研究背景と内容】
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温で液体の金属(液体金属)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけナノ粒子化した液体金属をバイオメディカル分野に応用する研究に大きな注目が集まっている。研究チームでも、液体金属をがん患部に送り込むことができれば、生体透過性の高い近赤外レーザー光を用いることで、患部の可視化や光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療が実現できるのではないかと考え、研究をスタートさせた。
液体金属をナノ粒子化するためには煩雑な合成プロセスが必要であり、ナノ粒子化した液体金属の構造や機能を溶媒中で安定的に保持させることは難しい。そこで、研究チームは、液体金属をがん患部まで送り、がん細胞内に取り込ませるために、液体金属表面に生体高分子(ゼラチン、DNA、レシチン、牛血清蛋白質)を吸着させたコア-シェル型ナノ粒子の作製を試みた。Ga/In液体金属と生体分子の混合物に超音波照射することで、コア-シェル型ナノ粒子を形成できることを見出したが、そのままではナノ粒子の構造を水中で安定的に維持させることはできなかった。
この問題を解決するために、ナノ粒子表面の生体高分子がバラバラにならないよう、量子ビーム(ガンマ線)架橋反応を利用すれば、架橋剤などの細胞毒性を有する薬剤を用いることなく、生体高分子の特性を保持したまま安定化できると考えた。この方法でガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子は、30日以上の粒径安定性を有していること、細胞に対し高い膜浸透性を有し毒性が無いこと、近赤外レーザー光照射により発熱が起こることが確認できたため、がん患部の可視化と治療効果について試験を行った。
大腸がんを移植して10日後のマウスに、ゼラチン-液体金属ナノ粒子を投与し、4時間後に740~790 nmの近赤外光を当てたところがん患部だけが蛍光を発している画像が得られ、当該ナノ粒子がEPR効果によりがん組織に取り込まれていることが分かった(図2(左))。そこで、当該ナノ粒子が集積した患部に対して808 nmの近赤外レーザー光を照射したところ、光熱変換による効果で26日後には、がんを完全に消失させることに成功した(図2(右))。
さらに、ゼラチン-液体金属ナノ粒子の細胞毒性と生体適合性を評価した。2種類の細胞[マウス大腸がん由来細胞(Colon-26)、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞(MRC5)]を培養する培養液中に、ゼラチン-液体金属ナノ粒子を、添加量を変えて投与・分散させ、24時間後に細胞内小器官であるミトコンドリアの活性を指標として細胞生存率を測定した結果、細胞生存率の低下は見られず、細胞毒性はなかった(図3)。また、ゼラチン-液体金属ナノ粒子をマウスの静脈から投与し、生体適合性を血液検査(1週間調査)と体重測定(約1ヵ月調査)により評価したが、いずれの項目でもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した生体高分子のナノ粒子コーティング技術が、革新的がん診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジー、光学、量子ビーム工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2021年12月20日に先端材料分野のトップジャーナル「Applied Materials Today」誌(Elsevier発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、日本学術振興会科研費(基盤研究A)及び総合科学技術・イノベーション会議 官民研究開発投資拡大プログラム(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograM:PRISM)の支援のもと行われたものである。

図1. ガンマ線を利用した生体分子-液体金属ナノ複合体の合成と当該ナノ粒子を活用した光がん療法の概念。
LM: 液体金属、NIR: 近赤外、FL: 蛍光。

図2. ナノ粒子をがん患部に集積・可視化(左)し、光照射によりがんを治療(右)。

図3. CCK-8法によるゼラチン-液体金属ナノ粒子の細胞毒性評価。
赤:マウスの大腸がん細胞、グレー:ヒトの正常細胞、
RIPA: Radioimmunoprecipitation Buffer(細胞や組織の溶解に
使用される緩衝液、本実験の陽性対照に利用)
【論文情報】
| 掲載誌 | Applied Materials Today |
| 論文題目 | Sonication- and γ-ray-mediated biomolecule-liquid metal nanoparticlization in cancer optotheranostics |
| 著者 | Qi Yun, Atsushi Kimura, Mitsumasa Taguchi, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2021年12月20日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1016/j.apmt.2021.101302 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)、がん光細菌療法の新生(2021年2月16日JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
量子科学技術研究開発機構(QST)、先端機能材料研究部プロジェクト「生体適合性材料研究」では、量子ビーム微細加工技術による先端医療デバイスの創製の一環として、これまでに、診断や創薬における微量検体の分析性能が数10倍に!(2019年6月25日 QSTからプレス発表)、平面状の細胞シートが立体的に!細胞が自分の力でシートを3次元化(2021年7月14日QSTからプレス発表)などの機能性材料作製技術を開発している。
【用語説明】
*1 ガンマ線
ガンマ線とは、放射性同位元素(コバルト60など)の崩解によって放出される量子ビームの一種。
*2 液体金属
室温以下あるいは室温付近で液体状態を示す金属のこと。例えば、水銀(融点マイナス約39℃)、ガリウム(融点約30℃)、ガリウム-インジウム合金(融点約15℃)がある。
*3 コア-シェル型
コアは核、シェルは殻を意味し、一つの粒子で核と殻の素材が異なるものをこのように呼ぶ。
*4 EPR効果
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみがん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
*5 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和3年12月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/12/21-1.html新型コロナウイルスの重症化に関与するタンパク質ORF8の特異な性質を発見
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石川県公立大学法人 石川県立大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 |
新型コロナウイルスの重症化に関与するタンパク質ORF8の特異な性質を発見
| 新型コロナウイルスの重症化に関与するタンパク質ORF8は、過酷な環境下でも高い安定性、復元力を保つという特異な性質を持つことを発見しました。ORF8は、70度においても天然状態を保持し、70度以上で変性させても、温度が下がると天然状態に戻ること、酸性条件で変性するが、弱アルカリ条件にすると天然状態に戻ることを明らかにしました。 |
【概要】
石川県立大学 森正之准教授が中心となり、今村智弘講師、東村泰希准教授、松本健司教授および北陸先端科学技術大学院大学 生命機能工学領域の大木進野教授と共同で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重症化関与タンパク質ORF8の特異な性質を発見しました。本研究成果は、速報誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に公開されました。
SARS-CoV-2が引き起こす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、基礎疾患や肥満の罹患者が重篤化しやすく、全世界で大問題となっています。新型コロナウイルスが持つORF8タンパク質は、SARS-CoV-2において特徴的なタンパク質です。これまでの解析により、ORF8は、免疫機能に重要な役割を持つMHCクラスIタンパク質の働きを抑え、細胞障害性T細胞を介した免疫応答を損なう働きがあることが報告されております。さらに、ORF8遺伝子領域が欠失したSARS-CoV-2株や1つのアミノ酸残基が変異したORF8(L84S)を持つウイルス株では、重症化しにくいことが報告されています。このことから、ORF8タンパク質は、COVID-19の重症化に関与することが示唆されています。
ORF8タンパク質は分子内に3か所のジスルフィド結合(S-S結合)を持ち、さらにS-S結合で二量体になる複雑なタンパク質です。そのため大腸菌での均一なORF8の合成は極めて困難です。しかし、我々は、タバコ培養細胞(タバコBY-2細胞)を用いて均一なORF8タンパク質の大量合成に成功しました(図1)。
タンパク質は一般的に、熱や酸、アルカリの影響を受けると、ひもが絡まったような変性という状態になって沈殿します。通常は、生卵が加熱されるとタンパク質が変性しゆで卵になるように、いったん変性したタンパク質は元の状態に戻りません。ORF8タンパク質がどのような条件で変性するかはその機能を知るうえで重要です。そこで、本研究では、タバコBY-2細胞で合成した野性型ORF8と変異型ORF8(L84S)の温度およびpHを変化させORF8の状態変化を核磁気共鳴(NMR)装置で解析しました。その結果、ORF8は耐熱性がとても高く70度付近まで天然状態を保持し、70度以上で変性しました。しかし、一般的なタンパク質と異なり、温度を下げると天然状態に戻ることがわかりました(図2)。またORF8は、弱酸性条件で変性してしまうこと、中性条件に戻すと元の天然状態に戻ることがわかりました。これらの結果は、ORF8が特別安定なタンパク質であることを意味します。また、興味深いことに、変異型ORF8(L84S)はORF8に比べて熱および酸への耐性がより高いことがわかりました(図2)。これらの特異な性質は、OFR8の機能と関係していることが予想されます。今後、この知見をもとにした解析を行うことにより、COVID-19の重症化をおさえる治療法が確立する可能性が期待されます。
【発表論文】
| 論文タイトル | Similarities and differences in the conformational stability and reversibility of ORF8, an accessory protein of SARS-CoV-2, and its L84S variant |
| 論文著者 | Shinya Ohki; Tomohiro Imamura; Yasuki Higashimura; Kenji Matsumoto; Masashi Mori |
| 雑誌 | Biochemical and Biophysical Research Communications |

図1 タバコ培養細胞を用いたORF8タンパク質の大量生産
タバコBY-2細胞で生産したORF8タンパク質は全て二量体を形成する。(A) ORF8タンパク質を合成するタバコBY-2細胞 (B)タバコBY-2細胞の大量培養 (C)培養液中に放出されたORF8タンパク質 (D)精製しNMR解析に用いたORF8タンパク質。WT:野生型ORF8タンパク質、L84S: 変異型ORF8タンパク質、矢じり:ORF8タンパク質、M:分子量マーカー

図2 ORF8 (wild type)とその変異体L84Sの各温度での1H-NMRスペクトルのメチル基領域の拡大図 *印は、昇温後に再びその温度に戻したことを表す。
ORF8、L84Sともに70度くらいまではスペクトルに大きな変化が見られない。これは、立体構造が保持されていることを示している。ORF8では70度、L84Sでは75度のときにピークが広幅化し、特に0 ppm付近ではピークが消失しかかっている。これは、試料が多量体化もしくは会合により熱変性状態になったことを示している。ところが、両試料ともに温度を下げたときのスペクトルは実験開始時のスペクトルと一致している。これは、変性状態の試料が天然状態に戻ったことを示している。
【用語説明】
細胞傷害性T細胞:リンパ球T細胞の一種。異物となる異常細胞(ウイルス感染細胞、がん細胞など)を認識し、それらを攻撃して破壊する細胞。
MHCクラスIタンパク質:免疫応答に関わるタンパク質。細胞内のタンパク質に由来するペプチド断片を細胞表面に輸送し、細胞障害性T細胞に提示するタンパク質。
ジスルフィド結合(S-S結合):2つのシステインによって形成される共有結合で、タンパク質の立体構造形成に重要な役割をはたす。
二量体:2個のタンパク質が、物理的・化学的な力によって形成した分子。
核磁気共鳴(NMR)装置:強力な磁場中に置いた試料に電磁波を照射して応答信号を得る装置。信号を解析することで、試料の構造や運動性を知ることができる。
令和3年6月9日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/06/09-1.html新型コロナウイルスのアクセサリータンパク質ORF8大量合成に成功

新型コロナウイルスのアクセサリータンパク質ORF8大量合成に成功
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新型コロナウイルスのORF8タンパク質について、タバコ培養細胞を用いた植物ウイルス大量合成システムにより、均一なORF8タンパク質を大量に合成することに成功しました。
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石川県立大学 森 正之准教授、今村 智弘特任講師、東村 泰希准教授が中心となり北陸先端科学技術大学院大学 生命機能工学領域の大木 進野教授と共同で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のアクセサリータンパク質ORF8について、独自に開発したタンパク質大量合成システムを用いて均一に大量合成することに成功しました。本研究成果は、「Plant Cell Reports」に公開されました。
SARS-CoV-2が引き起こす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、現在世界で猛威を振るっております。COVID-19の克服には、SARS-CoV-2のもつタンパク質の機能解明が必須であります。SARS-CoV-2のゲノム配列の解読により、SARS-CoV-2は、少なくとも16種類の非構造タンパク質、4種類の構造タンパク質、少なくとも6または7種類のアクセサリータンパク質を感染細胞で合成することが明らかとなっております。この中で、アクセサリータンパク質の1つであるORF8タンパク質は、近縁ウイルスのORF8タンパク質と比べ相同性が低く、SARS-CoV-2において特徴的なタンパク質であります。ORF8は、免疫や炎症に関わるタンパク質に結合する可能性が報告されております。さらに、ORF8遺伝子領域が欠失したSARS-CoV-2株は、重症化しにくいことが報告されております。このことから、ORF8タンパク質は、COVID-19の重症化に関与していることが示唆されてきております。しかし、OFR8タンパク質の機能は解明されておりません。
ORF8タンパク質の機能解明には、均一なORF8タンパク質を大量に合成することが必要です。しかし、ORF8タンパク質は分子内に3か所のジスルフィド 結合(S-S結合)を持ち、さらにS-S結合で2量体になる複雑なタンパク質です。そのため大腸菌での均一なORF8の合成は極めて困難であります。そこで、我々は、これまでにタバコ培養細胞(タバコBY-2細胞)を宿主として独自に構築した大量タンパク質合成システムを用いてORF8タンパク質の大量合成を試みました。この合成システムの特徴は、薬剤(エストラジオール)の添加によって、S-S 結合をもつ複雑な目的タンパク質を同調的に大量合成することができます(図1)。この生産システムを用いてORF8タンパク質の合成を試みたところ、培養液1 LあたりORF8タンパク質を約10 mg合成することに成功しました(図2)。合成したORF8タンパク質を核磁気共鳴(NMR)装置により解析を行ったところ、均一な構造を持つORF8タンパク質が生産されていることが明らかとなりました(図3)。
本研究成果によって、タバコBY-2細胞を用いて、均一なORF8タンパク質の大量合成に成功しました。今後、本システムで合成したORF8を用いて、ORF8の機能が明らかになることが期待されます。さらに、ORF8をターゲットにした治療薬の開発が期待できます。
【論文情報】
| タイトル | Production of ORF8 protein from SARS-CoV-2 using an inducible virus-mediated expression system in suspension-cultured tobacco BY-2 cells |
| 著者 | Tomohiro Imamura, Noriyoshi Isozumi, Yasuki Higashimura, Shinya Ohki, and Masashi Mori |
| 雑誌名 | Plant Cell Reports |
図1:植物ウイルスを利用した薬剤誘導型ORF8タンパク質合成システムの概略図
①薬剤活性型転写因子(XVE)の発現。②薬剤(エストラジオール)添加によるXVEの活性化。③XVEによるトバモウイルス-ORF8融合遺伝子の発現。④リボザイムによるmRNA3'末端の切断。⑤サブゲノムRNAのmRNAの増幅。⑥ORF8タンパク質の翻訳。⑦ORF8タンパク質の細胞外への移行。ORF8タンパク質は、二量体を形成する。
図2:タバコ培養細胞を用いたORF8タンパク質の合成
(A) ORF8タンパク質を合成するタバコBY-2細胞 (B)薬剤誘導処理を行ったタバコBY-2細胞 (C) 培養液中に放出されたORF8タンパク質。矢じり:ORF8タンパク質、M:分子量マーカー
図3:ORF8タンパク質のNMRスペクトル
(A) ORF8タンパク質の1H NMRスペクトル (B) 15NラベルをしたORF8タンパク質の二次元NMRスペクトル(1H-15N HSQC)
令和3年1月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/01/07-1.html物質化学領域の松村研究室の論文が国際学術誌の表紙に採択
物質化学領域の松村研究室の論文が英国王立化学会(RSC)刊行のJournal of Materials Chemistry B誌の 表紙(inside front cover)に採択されました。
本研究成果はタイ王国チュラロンコン大学との協同教育プログラムによるものです。
■掲載誌
J. Mater. Chem. B, 2020, 8, 7904-7913 掲載日2020年8月13日
■著者
Wichchulada Chimpibul(松村研修了生), Tadashi Nakaji-Hirabayashi, Xida Yuan(松村研博士後期課程2年)and Kazuaki Matsumura*
■論文タイトル
Controlling the degradation of cellulose scaffolds with Malaprade oxidation for tissue engineering
■論文概要
再生医療では、幹細胞を体外で培養し機能化を行った後に再度移植し疾患を治療する際に細胞培養用の足場材料を使用します。一般的には動物性のコラーゲンや合成高分子などが利用されていますが、安全性や機能性に改善の余地があると言われています。
本研究では、自然界に豊富にあるセルロースを酸化することで生体内分解性を付与することに成功し、安全かつ高機能な細胞培養足場材料として再生医療分野での利用を提案しています。
表紙詳細:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2020/tb/d0tb90155e#!divAbstract
論文詳細:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2020/tb/d0tb01015d#!divAbstract

令和2年9月18日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2020/09/18-1.html磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いて、従来分離が難しかった細胞小器官(オートファゴソームなど)の新たな分離法の開発に成功
磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いて、従来分離が難しかった
細胞小器官(オートファゴソームなど)の新たな分離法の開発に成功
ポイント
- これまで分離が難しかった細胞小器官を磁気分離するためのプローブとして、粒径約15 nmで単分散なAg/FeCo/Agコア/シェル/シェル型磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を創製した。
- ハイブリッドナノ粒子を哺乳動物細胞に取り込ませ、培養時間を変化させた際、ナノ粒子が細胞内のどの部分に局在するかということをAgコアのプラズモン散乱を利用して可視化することに成功した。
- 培養時間が30分~2時間の間でハイブリッドナノ粒子がオートファゴソームに局在することがわかったため、オートファゴソームをターゲットとして、適切な時間帯で細胞膜を破砕して磁気分離を行うことでオートファゴソームの分離に成功した。
- 単離したオートファゴソームをプロテオミクス/リピドミクス解析に供することで、オートファジーの機能欠損による疾患の創薬へと展開できる可能性がある。
- リガンド結合ハイブリッドナノ粒子を用いた汎用的かつ高選択的な細胞小器官分離技術へと拡張することで、基礎生物学上重要な発見を導く可能性があるほか、肥満や老化を防止する医療技術へと繋がることも期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、物質化学領域の前之園 信也 教授らは、東京大学、金沢大学ほかと共同で、独自開発の磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いてオートファゴソームのイメージングと磁気分離に成功しました。この手法は、これまで分離が困難であった他の細胞小器官へ拡張可能なため、新たな細胞小器官分離法としての応用が期待されます。 2013年のノーベル生理学・医学賞は、「小胞輸送の分子レベルでの解析と制御メカニズムの解明」という功績に対して、米国の3名の研究者に贈られました。また、2016年のノーベル生理学・医学賞は、「オートファジー注1)の分子レベルでのメカニズムの解明」の功績に対して、東京工業大学・大隅 良典 栄誉教授に贈られたことはまだ記憶に新しいところです。これらの研究はいずれも"細胞内物質輸送"に関するものでした。細胞内物質輸送には多種多様な細胞小器官注2)が関与しており、それらの機能は細胞小器官に存在するタンパク質や脂質によって制御されています。従って、細胞小器官の機能を理解するためには、そこに存在するタンパク質/脂質を調べることが必要不可欠です。そのための有力な手段の一つとして、タンパク質/脂質が機能している小器官ごと単離して解析するという方法があります。細胞小器官の一般的な単離法には超遠心分離注3)がありますが、比重に差が無い異種の小器官の分離は困難であることに加え、分離工程が煩雑で手間がかかるほか、表在性タンパク質注4)の脱離や変性が問題となる場合もあるため、新たな分離法の開発が望まれています。 本成果は、アメリカ化学会が発行するオープンアクセスジャーナルであるACS Omega誌に2017年8月25日に掲載されました。 |
<今後の展開>
単離したオートファゴソームをプロテオミクス/リピドミクス解析に供することで、これまでとは異なる視点からオートファジーを俯瞰でき、オートファジーの機能欠損による疾患の創薬へと展開できる可能性があります。また、ハイブリッドナノ粒子表面に所望のリガンドを結合させることによって、目的の細胞小器官への受容体を介したターゲティングが可能なナノ粒子を作製し、そのリガンド結合ナノ粒子を用いて標的細胞小器官を高選択的に単離する技術を確立することで、基礎生物学上重要な発見を導く可能性があります。さらに、肥満や老化を防止する医療技術へと繋がることも期待されます。

図1 磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を哺乳動物細胞にトランスフェクションした後、培養時間(図中右に行くに従って培養時間が長いことを意味する)とともにナノ粒子の局在が初期エンドソーム(early endosome)、オートファゴソーム(autophagosome)、オートファゴリソソーム(autophagolysosome)へと移行する様子をプラズモン散乱を利用した共焦点顕微鏡イメージングで確認でき、各々の時間帯で磁気分離を行うとそれぞれ異なる種類の細胞小器官を分離することが可能であることを示した図。
<論文>
| 掲載誌: | ACS Omega |
| 論文題目: | "Magnetic Separation of Autophagosomes from Mammalian Cells using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanobeads"(磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を用いた哺乳動物細胞からのオートファゴソームの磁気分離) |
| 著者: | Mari Takahashi,1 Priyank Mohan,1 Kojiro Mukai,2 Yuichi Takeda,3 Takeo Matsumoto,4 Kazuaki Matsumura,1 Masahiro Takakura,5 Hiroyuki Arai,2 Tomohiko Taguchi,6 Shinya Maenosono1* 1北陸先端科学技術大学院大学 2東京大学大学院薬学系研究科 衛生化学教室 3大阪大学大学院医学系研究科 4金沢大学医薬保健研究域医学系 5金沢医科大学産科婦人科 6東京大学大学院薬学系研究科 疾患細胞生物学教室 |
| DOI: | 10.1021/acsomega.7b00929 |
| 掲載日: | 2017年8月25日 |
<用語解説>
注1)オートファジー
オートファジー(Autophagy)は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ。自食とも呼ばれる。酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与している。
注2)細胞小器官
細胞の内部で特に分化した形態や機能を持つ構造の総称。細胞内器官やオルガネラとも呼ばれる。細胞小器官が高度に発達していることが、真核細胞を原核細胞から区別している特徴の一つである。
注3)超遠心分離
数万G(重力加速度)以上の遠心力をかける遠心分離法。
注4)表在性タンパク質
疎水性相互作用、静電相互作用など共有結合以外の力によって脂質二重層または内在性膜タンパク質と一時的に結合しているタンパク質。
注5)超常磁性
強磁性体やフェリ磁性体のナノ粒子に現れる。磁性ナノ粒子では磁化の向きが温度の影響でランダムに反転しうる。この反転が起こるまでの時間をネール緩和時間という。外場の無い状態で、磁性ナノ粒子の磁化測定時間がネール緩和時間よりもずっと長い時、磁化は平均してゼロであるように見える。この状態を超常磁性という。
注6)エンドサイトーシス
細胞が細胞外の物質を取り込む過程の一つ。細胞に必要な物質のあるものは極性を持ちかつ大きな分子であるため、疎水性の物質から成る細胞膜を通り抜ける事ができない、このためエンドサイトーシスにより細胞内に輸送される。
注7)オートファゴソーム
オートファジーの過程で形成される二重膜構造を有した袋状の細胞小器官。他の細胞小器官やタンパク質などを囲い込んだ後、リソソームと融合することで内容物を消化する。
注8)プラズモン
プラズマ振動の量子であり、金属中の自由電子が集団的に振動して擬似的な粒子として振る舞っている状態をいう。金属ナノ粒子ではプラズモンが表面に局在することになるので、局在表面プラズモンとも呼ばれる。
注9)トランスフェクション
人為的にDNAやウイルスなどを細胞に取り込ませる手法。
注10)プラズモン散乱イメージング
局在表面プラズモン共鳴に起因した光散乱を利用したイメージング。共焦点顕微鏡を用いたバイオイメージングでは一般的に蛍光色素が用いられるが、長時間観察では光退色が問題となる。しかし、プラズモン散乱を用いたイメージングでは光退色の心配がない。
注11)蛍光免疫染色
抗体に蛍光色素を標識しておき、抗原抗体反応の後で励起光を照射して蛍光発光させ、共焦点顕微鏡などで観察することによって本来不可視である抗原抗体反応(免疫反応)を可視化するための組織化学的手法。
注12)初期エンドソーム
初期エンドソームは、エンドサイトーシスされた物質を選別する場として機能する細胞小器官である。エンドサイトーシスによって細胞内へと取り込まれた物質は、まず細胞辺縁部に存在する初期エンドソームへと輸送される。初期エンドソームを起点として、分解される物質は分解経路へと、細胞膜で再利用される物質はリサイクリング経路へと選別されていく。
注13)オートファゴリソソーム
オートファゴソームとリソソームの融合によってできる細胞小器官。
注14)ウェスタンブロッティング
電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し、任意のタンパク質に対する抗体でそのタンパク質の存在を検出する手法。
注15)LC3-II
LC3はオートファゴソームマーカーとして広く知られている。オートファジーが開始されると、LC3はプロペプチドとして発現し、直ちにC末端が切断されて細胞質型のLC3-Ⅰとなる。LC3-ⅠのC末端にホスファチジルエタノールアミンが付加され、膜結合型のLC3- IIへ変換する。LC3- IIはオートファゴソーム膜へと取り込まれて安定に結合するため、哺乳動物におけるオートファゴソーム膜のマーカーとして用いられている。
平成29年8月25日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/08/25-1.html学生の加藤さんがNEDOディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)開拓コースに採択
学生の加藤 裕介さん(博士後期課程3年、メディカルサイエンス研究領域、松村研究室)が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「2026年度ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)/開拓コース」に採択されました。
NEP 開拓コースは、NEDOが実施する起業家候補人材の発掘・育成を目的とした支援プログラムです。 ディープテック分野の技術シーズを有する、またはその技術シーズを活用した事業アイデアを有する人材を対象に、事業化支援人材(Supervisor、カタライザー、Accompany-Runner)が伴走し、研究開発型スタートアップの創出に向けた育成を進めます。
■研究課題名
細胞製剤コールドチェーンを変革する凍結保護剤の開発
事業の詳細は、NEDOホームページをご覧ください。
https://nep.nedo.go.jp/kaitaku
令和8年6月17日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2026/06/17-1.html令和7年度 第4回 超越バイオメディカルDX研究拠点 ネオ・エクセレントコアセミナー
下記のとおりセミナーを開催しますので、ご案内します。
| 日時 | 令和8年1月23日(金) 15:00~17:00 |
| 場所 | JAISTイノベーションプラザ 2F シェアードオープンイノベーションルーム |
| 講演題目 /講演者 |
15:00-16:00 「濃厚ポリマーブラシ付与ナノ繊維と細胞の自己組織化過程の理解と操作」 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS) 高分子・バイオ材料研究センター 高分子材料分野 表面制御高分子チーム チームリーダー 吉川 千晶 氏 16:00-17:00 「タンパク質・ペプチドアンカーリング科学、生体非応答高分子科学の学術・ 産業基盤の創出を目指して」 富山大学 学術研究部工学系、大学院医薬理工学環、大学院理工学研究科 准教授 中路 正 氏 |
| 使用言語 | 日本語 |
| 参加申込 | ・参加費無料 ・要予約(定員30名) 下記の担当へ前日までにメールにてお申し込みください。 【本件担当・予約申込先】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点 拠点長 松村 和明 (mkazuaki |
細菌成分をコーティングした酸化グラフェンナノ複合体の創出! -多機能性を発現可能ながん光免疫療法の実現に向けて-
細菌成分をコーティングした酸化グラフェンナノ複合体の創出!
-多機能性を発現可能ながん光免疫療法の実現に向けて-
【ポイント】
- 細菌成分と酸化グラフェンから成るナノ複合体の作製に成功
- 当該ナノ複合体のEPR効果により標的とする腫瘍内に効果的に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、免疫賦活化、抗がん作用、光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授らは、酸化グラフェン*1表面に細菌成分、近赤外蛍光色素(インドシアニングリーン*2)、抗がん剤(カンプトテシン*3)を被覆したナノ複合体の作製に成功した(図1)。得られたナノ複合体は、ナノ複合体特有のEPR効果*4に由来する腫瘍標的能によって、大腸がんを移植したマウス体内の腫瘍内に効果的に集積し、細菌成分による免疫賦活化とカンプトテシンに由来する抗がん作用に加え、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5により、インドシアニングリーンに由来するがん患部の可視化と酸化グラフェンに由来する光熱変換による多次元的な治療が可能であることを実証した。さらに、マウスを用いた生体適合性試験などを行い、いずれの検査からもナノ複合体が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。当該ナノ複合体と近赤外レーザー光を組み合わせた新たながん光免疫治療技術の創出が期待される。 |
【研究背景と内容】
ナノ炭素材料の一つである酸化グラフェン(GO)は、優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけ素材開発の分野で注目を集めている。都教授は、ナノ炭素材料が生体透過性の高い波長領域(650~1100 nm)のレーザー光により容易に発熱する特性(光発熱特性)を活用したがん診断・治療技術の開発を推進している(※1、※2、※3、※4)。
(※1) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/04/23-1.html
(※2) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/08/17_2.html
(※3) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/08/22-1.html
(※4) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/03/06-1.html
一方、腫瘍組織内に細菌が存在していることは古くから知られており、近年の研究では、腫瘍の種類ごとに独自の細菌叢が保有されていることが分かっている。また、このような腫瘍内細菌叢が抗癌剤の補助あるいは阻害の要因になっていることも明らかになっている。しかし、腫瘍内から直接細菌を取り出し、細菌そのものを癌の治療薬として活用する研究は皆無であった。このような経緯の中、都研究室では、マウス生体内の腫瘍組織から数多くの細菌の単離・同定に成功しており、これらの細菌を活用したがん診断・治療技術の開発を進めている(※5)。
(※5) https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/05/08-1.html
本研究では、光発熱素材であるGOと超音波照射によりホモジナイズ*6した腫瘍内細菌(Cutibacterium acnes)成分を複合化した新規ナノ複合体を開発し、がん診断・治療技術への可能性を調査した(図1)。より具体的には、C. acnes(CA)成分、近赤外蛍光色素[インドシアニングリーン(ICG)]、抗がん剤[カンプトテシン(CPT)]を被覆したGO(ICG-CPT-CA-GO複合体)をがん患部に同時に送り込むことで、CAに由来する免疫賦活化作用とCPTに由来する抗がん作用に加え、生体透過性の高い近赤外レーザー光を用いることで、ICGに由来する近赤外蛍光特性を用いた患部の可視化やGOに由来する光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療法の開発に成功した。また、ICG-CPT-CA-GO複合体をマウスの静脈から投与し、生体適合性を組織学的検査、血液検査、体重測定により評価したが、いずれの項目でもICG-CPT-CA-GO複合体が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発したICG-CPT-CA-GO複合体が、革新的がん診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジーや光学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2025年3月21日に炭素系材料の国際専門トップジャーナル「Carbon」誌(Elsevier発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、大学発新産業創出基金事業スタートアップ・エコシステム共創プログラム(JPMJSF2318)ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
図1. 様々な機能性分子を被覆したナノ複合体の作製(超音波処理するだけで簡便に作製可能)。
【論文情報】
| 掲載誌 | Carbon |
| 論文題目 | Hybrid Nanoarchitectonics with Bacterial Component-Integrated Graphene Oxide for Cancer Photothermo-Chemo-Immunotherapy |
| 著者 | Soudamini Sai Vimala Veera Chintalapati, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年3月21日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1016/j.carbon.2025.120252 |
【用語説明】
酸化グラフェンとは、黒鉛を酸化させることにより得られ、厚さはおよそ 1 nmのシート状の素材。高い表面積を有し、表面に存在する酸素官能基により親水性や電気絶縁性を示す。
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外レーザー光を照射すると近赤外蛍光と熱を発することができる。
植物のカンレンボク Camptotheca acuminata に含まれるアルカロイドの一種。抗がん作用を示す。
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみ、がん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
均質化すること。特に、生物の細胞や組織などを人工的に破砕、均質化することをさす。眼鏡の洗浄に利用される超音波照射装置が均質化に良く利用される。
令和7年3月27日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/03/27-1.html令和6年度 第3回 超越バイオメディカルDX研究拠点 エクセレントコアセミナー
下記のとおりセミナーを開催しますので、ご案内します。
| 日 時 | 令和7年3月13日(木) 15:30~16:50 |
| 場 所 | JAISTイノベーションプラザ 2F シェアードオープンイノベーションルーム |
| 講演者 | 金沢医科大学医学部解剖学Ⅰ,医学博士 八田 稔久 教授 金沢医科大学総合医学研究所 島崎 猛夫 准教授 |
| 講演題目 | 島崎准教授(15:30~16:10) バイオデジタルツインを目指した生体模倣システムと細胞加工技術 八田教授(16:10~16:50) 生物標本透明化技術の開発とその社会実装に向けた取り組み ※講演要旨は別添フライヤーのとおり |
| 参加申込 | ・参加費無料 ・要予約(定員30名) 下記の担当へメールにてお申し込みください。 【本件担当・予約申込先】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点長 松村 和明(mkazuaki@jaist.ac.jp) |
第4回 金沢大学・北陸先端科学技術大学院大学 共同シンポジウム with 第16回ライフサイエンス研究交流セミナー
本学と金沢大学は、平成30年度より融合科学共同専攻における分野融合型研究を推進してきましたが、昨年度からは融合科学共同専攻にとどまらず、両大学間の共同研究の発展と促進を目指すことを目的に、共同シンポジウムを開催しています。
第4回である今回のテーマは『健康長寿』です。また当日は、金沢大学のライフサイエンス研究交流セミナーとの合同開催によるポスターセッションと懇談会も開催します。多数のご参加をお待ちしています。
| 開催日時 | 令和7年2月3日(月)13:30~18:00 |
| 会 場 | 金沢大学自然科学系図書館棟1階大会議室(金沢市角間町) ※第1部(共同シンポジウム)のみWebexにて同時配信 |
| テーマ | 健康長寿 |
| プログラム | ≪第1部:共同シンポジウム≫ 13:30~ オープニング(本シンポジウムの趣旨説明等) 13:35~ 開会挨拶 金沢大学 和田 隆志 学長 13:40~14:20 ≪講演1≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:栗澤 元一 教授 (本学 物質化学フロンティア研究領域、超越バイオメディカルDX研究拠点) 講演タイトル:難治性疾患治療を変える薬効増幅型緑茶カテキン・ナノ粒子の開発 14:25~15:05 ≪講演2≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:鈴木 健之 教授(金沢大学 がん進展制御研究所長) 講演タイトル:がん悪性進展におけるエピゲノム・エピトランスクリプトーム制御の解明に向けて 15:25~16:05 ≪講演3≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者:都 英次郎 教授 (本学 物質化学フロンティア研究領域、超越バイオメディカルDX研究拠点) 講演タイトル:光細菌を利用したがん診断・治療技術 16:10~16:50 ≪講演4≫ *講演:30分、質疑応答:10分 講演者: 城村 由和 教授(金沢大学 がん進展制御研究所) 講演タイトル:革新的な健康寿命延伸法創出に向けた老化細胞多様性の包括的解明 16:50~16:55 閉会挨拶 北陸先端科学技術大学院大学 寺野 稔 学長 ≪第2部:ライフサイエンス研究交流セミナー≫ ※対面限定 17:00~18:00 ポスターセッション・懇談会 ※ポスターセッションの詳細は追ってお知らせします(1月以降公開) |
| 参加申込 | 下記申込用フォームからお申込みください。≪事前登録必須≫ https://forms.office.com/pages/responsepage.aspx?id=0g6hxA4YVkSXJwaXjM06YImL-UB_gg5Hr98loCM5w1pURTQ1S0tXVFFLMlZXNTVGRkdJOVQxQUExUC4u&route=shorturl ※〆切:2025年2月2日(日)まで |
| 備 考 | ・会場での参加、オンライン参加ともに事前申込みが必要です。 ・オンライン参加の方には、登録されたメールアドレスへ後日Webexの接続情報をお送りします。 ・来客用駐車スペースの利用可。 |
| 本件 問合せ先 |
研究推進課 学術研究推進係 TEL:0761-51-1907 E-mail:suishin@ml.jaist.ac.jp |
10月9日(水)~11日(金) BioJapan 2024に本学が出展
10月9日(水)~11日(金)の3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて世界で最も歴史のあるバイオテクノロジー展である「BioJapan 2024」が開催されます。
本学からは松村 和明教授および山口 拓実准教授が参加し、ブース出展およびプレゼンテーションを行います。
ご来場の際には来場登録のうえ、ぜひお立ち寄りください。
(来場案内)https://jcd-expo.jp/ja/visitor.html
※事前登録:無料(当日の来場登録:5,000円)
| 日 時 | 10月9日(水)~10月11日(金) 各日 10時00分~17時00分 |
| 会 場 | パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1) |
| ブース出展 | 【ブース名】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 【小間番号】A-30 |
| 【ブース名】ARIM次世代バイオマテリアルハブ拠点 名古屋大学 【小間番号】B-21 ※本拠点のスポーク機関として本学が参画 |
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| プレゼンテーション | 【日 時】10月11日(金)10時55分~11時25分 【場 所】Presentation Stage A 【テーマ】ARIM 次世代バイオマテリアル 『材料からバイオまで。大学の最先端設備で研究開発しませんか?』 【講演者】山口 拓実(JAIST)、大住 克史(名古屋大学) |
| 【日 時】10月11日(金)13時50分~14時20分 【場 所】Presentation Stage A 【テーマ】北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点 『超越バイオメディカルDX研究~細胞・タンパク質の保護マテリアル』 【講演者】松村 和明 |
詳細はこちらをご覧ください。
・BioJapan 2024 公式サイト
ダイヤモンド結晶中の色中心から飛び出す準粒子を発見
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| 国立大学法人筑波大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 慶應義塾大学 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) |
ダイヤモンド結晶中の色中心から飛び出す準粒子を発見
電子と結晶格子の振動をまとめて一つの粒子とみなしたものをポーラロン準粒子と呼びます。色中心と呼ばれる不純物を導入したダイヤモンド結晶に超短パルスレーザー光を照射し、その反射率の変化を精密測定した結果、ポーラロンが色中心の周りに飛び出して協力しあうことを発見しました。
| ダイヤモンドの結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがあります。この窒素と空孔が対になったNitrogen- Vacancy(NV)中心はダイヤモンドの着色にも寄与し、色中心と呼ばれる格子欠陥となります。NV中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性を高空間分解能・高感度なセンサー機能として利用することが期待されています。NV中心の周りの結晶格子の歪み(ひずみ)により、NV中心の電子のエネルギー準位が分裂することが分かっていますが、電子と格子歪みの相互作用メカニズムなど詳細については、ほとんど解明されていませんでした。 本研究では、純度の高いダイヤモンド結晶の表面近傍に、密度を制御したNV中心を極めて薄いシート(ナノシート)状に導入しました。そのシートにパルスレーザーを照射し、ダイヤモンドの格子振動の様子を調べた結果、NV中心の密度が比較的低いにもかかわらず、格子振動の振幅が約13倍に増強されることが分かりました。そこで、量子力学に基づく計算手法(第一原理計算)でNV中心の周りの電荷状態を計算したところ、正負の電荷が偏った状態になっていることが分かりました。 電子と結晶格子の振動をまとめて一つの粒子とみなしたものをポーラロン準粒子と呼び、これにはいくつかのタイプがあります。ダイヤモンドでは、約70年前にフレーリッヒが提案したタイプは形成されないと考えられていましたが、今回の解析結果は、フレーリッヒ型のポーラロンがNV中心から飛び出してナノシート全体に広がっていることを示しています。本研究成果は、ポーラロンを利用したNV中心に基づく量子センシング技術の新たな戦略への道筋を開くものです。 |
【研究代表者】
筑波大学 数理物質系
長谷 宗明 教授
市川 卓人 大学院生(当時)
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域
安 東秀 准教授
慶應義塾大学 電気情報工学科
ポール フォンス 教授
【研究の背景】
ダイヤモンドは炭素原子のみからなる結晶で、高い硬度や熱伝導率を持っています。その特性を生かし、研磨材や放熱材料などさまざまな分野で応用されています。
そして、最近注目されているのが量子センサー注1)としての働きです。ダイヤモンド中の不純物には窒素やホウ素などさまざまなものがあります。その中でも、不純物原子で置換された点欠陥注2)に電子や正孔が捕捉され発光を伴う種類のものは、ダイヤモンドを着色させるため「色中心」と呼ばれ、量子準位の変化で温度や電場を読み取る量子センサーとして用いられています。量子センサーの中でも、ダイヤモンドに導入した窒素―空孔(NV)中心注3)と呼ばれる複合欠陥を用いたセンサーは、高空間分解能・高感度を必要とする細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーへの応用が期待されています。
NV中心の周りの炭素原子の格子にはヤーン・テラー効果注4)により歪みが生じていることが分かっており、この格子歪みに伴いNV中心の電子状態が分裂し、NV中心からの発光強度などに影響を与えることが知られています。しかし、その格子歪みに関しては、ポーラロン注5)の存在が示唆されるものの、電子と格子振動の相互作用の観点からは十分な解明がなされていませんでした。
【研究内容と成果】
本研究では、極めて不純物が少ない高品質のダイヤモンド結晶に窒素イオン(14N+)を4種類の線量(ドーズ)で注入することで、NV中心の密度を制御しながら表面近傍40ナノメートルの深さに導入し、そのナノシートにおける炭素原子の集団運動(格子振動:フォノン注6))の様子を調べました。
フェムト秒(1000兆分の1秒、fs)の時間だけ近赤外域の波長で瞬く超短パルスレーザー注7)を、NV中心を導入した高純度ダイヤモンド単結晶に照射し、ポンプ・プローブ分光法注8)によりダイヤモンド試料表面における反射率の変化を精密に計測しました。その結果、ポンプパルス照射直後(時間ゼロ)に見られる超高速に応答する電気・光学効果注9)の信号に加え、結晶中に発生した40テラヘルツ(1012 Hz)の極めて高い周波数を持つ位相がそろった格子振動を検出することに成功しました(図1)。さらにNV中心の密度を変化させて計測を行ったところ、14N+ドーズ量が1x1012/cm2のときに、格子振動の振幅(波形の縦軸方向の幅)が約13倍にも増強されることが分かりました(図2)。
通常の固体結晶では、格子欠陥を導入すると欠陥による格子振動の減衰が大きくなるため、格子振動の振幅は小さくなることが知られており、約13倍もの増強は固体物理学の範疇では説明できません。そこで第一原理計算注10)を用いて、NV中心の周りの電荷状態を計算したところ、正負の電荷が偏った状態になっていることが分かりました。これは、NV中心の周りに分極が発生しており、ヤーン・テラー効果によるポーラロンとは全く異なるフレーリッヒ型ポーラロン注11)がNV中心の周りに存在していることを示唆しています。また、約13倍もの格子振動の増強は、フレーリッヒ型ポーラロンがNV中心近傍から飛び出してナノシート全体に広がり、互いに協力し合っていることを示しています(図3)。一方、さらにドーズ量が増加すると、今度は欠陥による減衰により格子振動の振幅が小さくなることも分かりました(図2)。よって、ドーズ量が1x1012/cm2の時に増強と減衰がつり合い、最も協力現象が起こりやすいことが示されました。
【今後の展開】
本研究グループではこれまで、ダイヤモンド結晶にNV中心を人工的に導入し、ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで、2次の非線形光学効果である第二高調波発生(SHG)が発現することを報告しました。SHGは結晶にレーザー光を照射した際に、そのレーザー周波数の2倍の周波数の光が発生する現象です。今回の成果は、これらの先行研究に基づいたものです。
今回明らかにした物理的メカニズムは、レーザーパルスの強い電場下で起こるNV中心近傍のフレーリッヒ相互作用による協力的ポーラロンの生成と、それによるダイヤモンド格子振動の増強を示唆しています。また、今回観測したダイヤモンドの格子振動は、固体材料の中で最も高い周波数を持っています。つまり、これらの結果は、40テラヘルツという極めて高い周波数の格子歪み場による電子と格子振動の相互作用(ポーラロン準粒子)を利用したNV中心に基づく量子センシング技術の開発に向けた新たな戦略への道筋を開くものと言えます。
【参考図】

図1 本研究で行なった実験の概要図
NV中心なし、およびNV中心ありのダイヤモンド試料で得られた時間分解反射率信号。挿入図はNV中心の局所構造(楕円)およびポンプ・プローブ分光法の概要を示している。挿入図中の紫色の球が窒素(Nitrogen)を、点線で描かれた円が空孔(Vacancy)を示す。ポンプパルスを照射したのち、プローブパルスを照射するまでの時間を遅延時間(単位はfs)と呼ぶ。

図2 実験で得られた位相がそろった格子振動信号のドーズ依存性
NV中心なし、および4種類の窒素イオン(14N+)のドーズ量におけるダイヤモンド試料の時間分解反射率変化信号。黒線は、位相がそろった格子振動の信号を減衰型の正弦波(sin関数)によりフィットした結果である。ドーズ量が1x1012 N+cm-2の時に、位相がそろった格子振動の振幅がNV中心なしの場合と比較して約13倍に増強されていることが分かった。

図3 NVダイヤモンドにおける協力的ポーラロニック描像の模式図
図中のτは、パルスレーザー(ポンプパルス)照射後の経過時間(単位はfs)を表す。(a) 励起前のNVダイヤモンドの電荷状態を示す。NV中心は負に帯電したNV-状態(赤色の電荷分布)と電荷が中和されたNV0状態(緑色の電荷分布)が混在し、それぞれは局在している。挿入図はイオン化ポテンシャルINVを示し、rはイオン半径である。 (b) 光励起により、NV中心はポンプ電場Epumpによってイオン化される。 (c) 光励起直後、電荷は強く非局在化され、NV中心間の距離にわたって広がり、非線形分極PNLを形成する。 (d) 非線形分極PNLによりコヒーレントな(位相のそろった)格子振動が駆動される。
【用語解説】
量子化したエネルギー準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測する手法のこと。
結晶格子中に原子1個程度で存在する格子欠陥を指す。原子の抜け穴である空孔や不純物原子で置換された置換型欠陥などがある。
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)中心」は、ダイヤモンドの着色にも寄与する色中心と呼ばれる格子欠陥となる。NV中心には、周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。このため、NV中心を持つダイヤモンドは「量子センサー」と呼ばれ、次世代の超高感度センサーとして注目されている。
固体中において、電子的に縮退した基底状態を持つ場合、結晶格子は変形する(歪ませる)ことによりエネルギーが低く安定な状態になる。このような効果をヤーン・テラー効果という。1937年にイギリスのハーマン・アーサー・ヤーンとハンガリーのエドワード・テラーにより提唱された。
結晶中の格子振動と電子が相互作用すると、結合して相互作用の衣を着た素励起である準粒子、すなわちポーラロンが生成される。ポーラロンの存在は1933年にロシアの物理学者レフ・ダヴィドヴィッチ・ランダウによって提案された。フレーリッヒが提案したタイプのポーラロン注11)はこれまで極性をもつ半導体や誘電体など(分極を有する材料)で報告されているが、ダイヤモンドは極性材料ではないため、フレーリッヒ型ポーラロンは観測されていなかった。
原子の集団振動を格子振動と呼ぶ。格子振動を量子化したものをフォノンと呼ぶ。
パルスレーザーの中でも特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒以下の極めて短いレーザーのこと。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
強い励起パルス(ポンプパルス)により試料を励起し、時間遅延をおいて弱い探索パルス(プローブパルス)を照射し、プローブ光による反射率変化などから試料内部に励起された物質の応答を計測する手法のこと。
物質に電場を印可すると、その強度に応じて屈折率が変化する効果のこと。
「もっとも基本的な原理に基づく計算」という意味で、量子力学の基本法則に基づいた電子状態理論を用いて電子状態を解く計算手法である。物質の光学特性などの物性を求めることができる。
電子と縦波光学フォノンの間の相互作用をフレーリッヒ相互作用と呼ぶ。1954年にドイツの物理学者ヘルベルト・フレーリッヒにより提唱された。この相互作用により生じたポーラロンがフレーリッヒ型ポーラロンである。
【研究資金】
本研究は、科研費による研究プロジェクト(22H01151, 22J11423, 22KJ0409, 23K22422, 24K01286)、および科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(研究代表者:長谷 宗明)(JPMJCR1875)の一環として実施されました。
【掲載論文】
| 題名 | Cooperative dynamic polaronic picture of diamond color centers. (ダイヤモンド色中心の協力的な動的ポーラロニック描像) |
| 著者名 | T. Ichikawa, J. Guo, P. Fons, D. Prananto, T. An, and M. Hase |
| 掲載誌 | Nature Communications |
| 掲載日 | 2024年8月30日 |
| DOI | 10.1038/s41467-024-51366-x |
令和6年9月2日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/09/02-1.html統合失調症の認知機能障害を回復する新薬候補 -脳移行性の皮下投与型ペプチドナノ製剤を開発-
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| 国立大学法人 国立大学法人広島大学 国立大学法人大阪大学 国立大学法人筑波大学 一丸ファルコス株式会社 |
統合失調症の認知機能障害を回復する新薬候補
-脳移行性の皮下投与型ペプチドナノ製剤を開発-
【ポイント】
- 統合失調症の発症に関係する神経ペプチド受容体VIPR2に対する選択的な阻害ペプチドKS-133と脳移行性のLRP1結合ペプチドKS-487を同時に搭載するナノ粒子を創製し、 皮下投与型のペプチド製剤として開発
- 本ペプチド製剤の皮下投与は、VIPR2の過剰な活性化によって引き起こされた動物モデルの認知機能の低下を正常レベルまで回復可能
- 本ペプチド製剤は、既存薬とは全く異なるメカニズムをもつため、統合失調症の新しい治療法の開発につながることが期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の都英次郎准教授、広島大学(学長・越智光夫、広島県広島市)大学院医系科学研究科の吾郷由希夫教授、大阪大学(総長・西尾章治郎、大阪府吹田市)大学院薬学研究科の中川晋作教授、筑波大学(学長・永田恭介、茨城県つくば市)医学医療系の広川貴次教授、一丸ファルコス株式会社(社長・安藤芳彦、岐阜県本巣市)の坂元孝太郎開発2課長らの研究グループは、統合失調症の認知機能障害を回復する新薬になり得る脳移行性の皮下投与型ペプチドナノ製剤の開発に成功した(図1)。 |
図1. 本研究の概念図
統合失調症は、幻覚や妄想などの陽性症状、意欲の低下などの陰性症状、そして注意・集中力の低下や記憶力・判断力の低下といった認知機能障害などを特徴とする精神疾患で、人口の約1%に発症し、その罹患者は日本では約80万人、全世界では2000万人以上いると言われている。既存薬は、神経伝達物質の調節に関わるメカニズムを有するもののみであり、その治療効果は限定的であり、特に認知機能障害に対する効果が乏しい。近年、神経ペプチド受容体VIPR2の過剰な活性化が統合失調症の発症に関与することが臨床研究および非臨床研究で明らかとなり、新たなメカニズムの統合失調症治療薬につながることが期待されている。本研究グループは、これまでにVIPR2を選択的に阻害するペプチドKS-133を見出していたものの(FrontPharmacol 2021,12:751587)、脳への移行性が低いことが課題であった。
本研究では、KS-133を脳に送り届けるためのナノ製剤化を検討した。血液脳関門に発現するLDL受容体関連タンパク質のLRP1は、物質を血中から脳組織に移行させる働きがある。本研究グループは、これまでにLRP1に結合するペプチドKS-487を見出していた(Biochem Biophys Rep 2022,32:101367)。そこで、1.LRP1とKS-487の複合体の構造解析を分子動力学シミュレーションで実施、2.その構造を元にKS-487を表面に提示するナノ粒子をデザイン、3.バイオイメージング試験で皮下投与されたKS-487提示ナノ粒子が脳に移行することを確認、4.KS-487提示ナノ粒子にKS-133を内包させたペプチド製剤を調製し、その効果を動物モデルで確認した。これらの結果、KS-133とKS-487を同時に搭載するナノ粒子が、KS-133を脳に効果的に移行させ、動物モデルの認知機能障害を健常レベルまで回復させることが分かった(図2)。

図2. 統合失調症モデルマウスでの認知機能を評価する試験。マウスは新しい環境や物体を積極的に探索する習性をもつ。マウスに二つの新しい物体AとBを探索させて、記憶させる。24時間後に既知物体であるBを新しい物体Cに置き換えて、マウスが物体Cをどれだけ探索するかを計測することで、マウスの物体認知、学習・記憶能力を解析する。物体AとCの総探索時間のうち、どれだけ物体Cを探索していたかを調べる識別指数を用いて評価する。数値が高いほど認知機能が高いことを意味する。統合失調症モデルマウスの識別指数は、VIPR2選択的阻害ペプチドKS-133を内包し、中枢移行性ペプチドKS-487を提示するナノ粒子の投与によって、正常マウスと同等レベルに回復する。
本研究成果は、アメリカ化学会発行の生物・化学系のトップジャーナル「JACS Au」(アメリカ化学会発行)のオンライン版に2024年6月20日に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、基盤研究(B)(20H03392)、挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)(JPMJTR22U1)、AMED橋渡し研究プログラム(JP22ym0126809)、創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)(JP18am0101114、JP23ama121052、JP23ama121054)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに北陸先端科学技術大学院大学超越バイオメディカルDX研究拠点、生体機能・感覚研究センター、広島大学トランスレーショナルリサーチセンターの支援などのもと行われたものである。
【今後の展開】
本ペプチド製剤は、VIPR2阻害という既存薬とは全く異なるメカニズムを有しており、アンメットメディカルニーズである統合失調症の認知機能障害を対象とした新薬になることが期待される。今後、細胞や動物モデルなどを用いた更なる検討、そしてヒトでの臨床試験によって、本ペプチド製剤の有効性と安全性を確認し、統合失調症の新しい治療薬として開発を進めていく。
【論文情報】
| 掲載誌 | JACS Au (アメリカ化学会誌) |
| 論文題目 | Cyclic Peptide KS-133 and KS-487 Multifunctionalized Nanoparticles Enable Efficient Brain Targeting for Treating Schizophrenia |
| 著者 | Kotaro Sakamoto*, Seigo Iwata, Zihao Jin, Lu Chen, Tatsunori Miyaoka, Mei Yamada, Kaiga Katahira, Rei Yokoyama, Ami Ono, Satoshi Asano, Kotaro Tanimoto, Rika Ishimura, Shinsaku Nakagawa, Takatsugu Hirokawa, Yukio Ago*, and Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2024年6月20日 |
| DOI | https://doi.org/10.1021/jacsau.4c00311 |
令和6年6月27日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2024/06/27-1.html化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の開発に成功
化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の開発に成功
ポイント
- 天然の紅色光合成細菌の細胞表面を簡便に化学修飾可能な手法を開発
- 作製した化学修飾細菌は、免疫細胞の効果的な賦活化のみならず、高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現可能
- 当該化学修飾細菌の特性と近赤外レーザー光を組み合わせた、新たながん光免疫療法を開発
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、光と化学修飾細菌を使ってマウス体内のがん診断・治療を可能にする技術の開発に成功した(図1)。 |
図1. 化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の概念
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用したがん標的治療に注目が集まっている。しかし、従来のがん細菌療法は、基本的には抗がん剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステムの概念を出ない。また、薬効も十分であるとはいえない。さらに、従来のがん細菌療法は、抗がん活性を発現するためには、遺伝子工学を用いた微生物の操作・改変が必須である。米国や欧州ではヒトへの臨床試験が行われ第3相試験に進んでいる例もあるが、使用される細菌は、多くの場合、遺伝子組換えによって弱毒化したサルモネラ菌やリステリア菌であり、体内で再び強毒化するリスクを常に伴っている。
本研究では、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光*1によって様々な機能を発現する非病原性かつ天然の紅色光合成細菌*2の表面化学修飾法を開発した。また、当該化学修飾細菌の特性を活用することで体内の腫瘍を高選択的に検出し、効果的な免疫細胞(特にT細胞*3)の賦活化、および標的部位のみを効果的に排除することが可能ながん光免疫療法を開発することに成功した。
本研究を実現するために、がん細胞に対する傷害性の高いT細胞を賦活化可能な免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体*4)および生体適合性の高いポリエチレングルコール(PEG)脂質から成る機能性高分子複合体と、紅色光合成細菌を生理食塩水中で30分間混合し、洗浄するだけで、免疫賦活化作用と腫瘍標的能を有し、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光によって近赤外蛍光と熱を発現する化学修飾細菌を開発した(図2A)。また、当該細菌のこれらの特性を活用し、近赤外レーザー光照射と組み合わせることで、体内の腫瘍(大腸がん由来)を高選択的に検出し、光発熱作用と免疫の力によって標的部位を効果的に排除することが可能ながん光免疫療法を構築した(図2B、2C)。さらに、マウス大腸がん細胞、マウスマクロファージ細胞、ヒト正常肺細胞を用いた細胞毒性試験、ならびにマウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査など)を行った結果、いずれの検査からも化学修飾細菌そのものが生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した簡便な細菌の表面化学修飾法が、がん光診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、界面化学、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを期待させるものである。
本成果は、2023年8月14日(現地時間)にナノテクノロジー分野の世界最高峰「Nano Today」誌(エルゼビア社発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。

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図2.(A) 化学修飾細菌の調製方法
(B) がん患部における化学修飾細菌の可視化(近赤外蛍光を検出) (C) 化学修飾細菌の抗腫瘍効果 |
【論文情報】
| 掲載誌 | Nano Today(エルゼビア社発行) |
| 論文題目 | Cancer immunotheranostics using bioactive nanocoated photosynthetic bacterial complexes |
| 著者 | Sheethal Reghu, Seigo Iwata, Satoru Komatsu, Takafumi Nakajo, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2023年8月14日 |
| DOI | 10.1016/j.nantod.2023.101966 |
【用語説明】
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
近赤外光を利用して光合成を行う細菌。水の分解による酸素発生は行わない。
免疫を担うリンパ球の一種。活性化したT細胞は、サイトカイン(細胞同士の情報伝達を行うタンパク質の総称)を分泌するヘルパー細胞や、がんや感染細胞を殺傷するキラー細胞などのエフェクター細胞に分化する。
細胞上のPD-1に結合してPD-1とPD-L1あるいはPD-L2との結合を阻害し、T細胞の活性化を維持する抗体のこと。
令和5年8月29日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/29-1.html阿吽の呼吸で癌を倒す! -灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた-
阿吽の呼吸で癌を倒す!
-灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた-
ポイント
- 腫瘍組織から強力な抗腫瘍作用のある複数の細菌(A-gyo、UN-gyo、AUNと命名)の単離に成功
- なかでもAUN(A-gyoとUN-gyoからなる複合細菌)は、様々な癌腫に対して高い抗腫瘍活性を示すだけでなく、近赤外光を照射すると、標的とする腫瘍内で強い蛍光を発現
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、マウス体内の腫瘍組織から強力な抗腫瘍作用のある複数の細菌の単離に成功した。 |
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用した癌標的治療に注目が集まっている。しかし、従来の癌細菌療法は、基本的には抗癌剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステムの概念を出ない。また、薬効も十分であるとはいえない。さらに、従来の癌細菌療法は、抗癌活性を発現するためには、遺伝子工学を用いた微生物の操作・改変が必須である。なお、米国や欧州ではヒトへの臨床試験が行われ第3相試験に進んでいる例もあるが、使用される細菌は、多くの場合、遺伝子組換えによって弱毒化したサルモネラ菌やリステリア菌であり、体内で再び強毒化するリスクを常に伴っている。
一方、腫瘍組織内に細菌が存在していることは古くから知られており、近年の研究では、腫瘍の種類ごとに独自の細菌叢が保有されていることが分かっている。また、このような腫瘍内細菌叢が抗癌剤の補助あるいは阻害の要因になっていることも明らかになっている。しかし、腫瘍内から直接細菌を取り出し、細菌そのものを癌の治療薬として活用する研究は皆無であった。
本研究では、マウス生体内の大腸癌由来腫瘍組織から主に3種類の細菌の単離・同定に成功し、これらの細菌にA-gyo(阿形;Proteus mirabilis*1)、UN-gyo(吽形;Rhodopseudomonas palustris*2)、そしてAUN(阿吽;A-gyoとUN-gyoから成る複合細菌)とそれぞれ命名した(図1)。これらの細菌を、大腸癌を皮下移植した担癌モデルマウスの尾静脈に投与したところ、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ高い抗腫瘍効果を示すことを発見した。とりわけ、AUNは、単回投与にも関わらず、A-gyoとUN-gyoの協奏作用により細胞障害性の免疫細胞を効果的に賦活化し、大腸癌、肉腫(サルコーマ)、転移性肺癌、薬物耐性乳腺癌といった様々な癌種に対して強力な抗腫瘍活性を示すことが明らかとなった(図2A)。また、AUNは、生体透過性の高い近赤外光*3によって標的とする腫瘍内で近赤外蛍光を発現することが分かった(図2B)。さらに、マウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査、細菌コロニーアッセイなど)を行った結果、いずれの検査からもAUNそのものが生体に与える影響は極めて少ないことが分かった。
これらの成果は、今回発見した細菌を用いた癌の診断・治療法の基礎に成り得るだけでなく、細菌学や腫瘍微生物学などの研究領域への新しい概念の創出として貢献することを期待させるものである。
本成果は、学際的オープンアクセスジャーナル「Advanced Science」誌(Wiley社発行)のオンライン版に2023年5月8日に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
図1. AUN(A-gyoとUN-gyoから成る複合細菌)がまさに
"阿吽の呼吸"によって癌細胞を倒している様子(イメージ)

図2. (A) AUNによる抗腫瘍効果(腫瘍は完全消失)
(B) AUNの標的腫瘍内における蛍光特性
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Science(Wiley社発行) |
| 論文題目 | Discovery of Intratumoral Oncolytic Bacteria Toward Targeted Anticancer Theranostics |
| 著者 | Yamato Goto, Seigo Iwata, Mikako Miyahara, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2023年5月8日 |
| DOI | 10.1002/advs.202301679 |
【用語解説】
酸素の存在下および不在下の両方の環境で生存可能な腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌(通性嫌気性菌)。運動性、鞭毛を有する数マイクロメートルの棒状の形態を有する。寒天培地上では、Swarming(群化)により独特の波状のコロニー(白色)を形成する特性がある。
酸素の有無に関わらず生存可能な通性嫌気性の紅色非硫黄細菌に属し、運動性のある数マイクロメートルの棒状のグラム陰性桿菌。また、バクテリオクロロフィルから成る光捕集タンパク質を介した光合成を行う。
800~2500 nmの波長の光。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和5年5月8日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/05/08-1.html








