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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。可視光応答型光触媒を用いた環境水浄化:研究開発の飛躍的加速へ
可視光応答型光触媒を用いた環境水浄化:研究開発の飛躍的加速へ
ポイント
- 光触媒試験を飛躍的に加速する技術の開発
- 環境水浄化のための光触媒の一括スクリーニング
- 環境水中で高活性を発揮する可視光応答型光触媒を開発
| 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・寺野稔、石川県能美市)物質化学フロンティア研究領域の谷池俊明教授らは、可視光応答型光触媒を利用した環境水浄化に関するハイスループット実験[*1]技術を開発しました。 水質汚染は、現代社会における重要な問題の一つです。有機汚染物質の中でも染料は、その多様性や濃度の高さから環境への影響が大きく、発展途上国を中心に深刻な問題となっています。これらの有機汚染物質を効果的に除去する方法として、可視光応答型の光触媒反応が注目されています。しかし、現在の光触媒は高濃度の汚染物質に対して十分な活性を示すことができず、また実用的な環境下での研究や応用に関する知見も不足しています。特に、環境水中に含まれるさまざまな無機イオンが光触媒反応に影響を与えることが知られており、これらの環境条件を考慮した効果的な触媒の開発が急務となっています。 本研究では、光触媒反応を132並列で実施可能なハイスループット実験技術を新たに開発し、大規模な実験から、可視光応答型光触媒を用いた環境水浄化[*2]に関する有用な知見を導くことに成功しました。また、環境水中の特定のイオンが触媒の活性を有意に低下させることを明らかにしました。さらに、工業廃水において効果的な触媒を開発するため、15種類の貴金属ナノ粒子を光触媒に担持した結果、AuやPtなどの高仕事関数と酸化耐性を併せ持つ金属ナノ粒子が、環境イオンを活性種に変換し、高活性を示すことを明らかにしました。 この研究は、開発されたハイスループット実験技術の有効性を示すものです。今後は、この技術を改良することで、水分解や二酸化炭素還元など他の光触媒反応の研究を可能にする見通しです。 本成果は、2023年11月17日に学術雑誌「Environmental Pollution」(Elsevier社)のオンライン版に掲載されました。なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業(探索加速型)「超広域材料探索を実現する材料イノベーション創出システム(JPMJMI22G4)」(研究代表:谷池俊明)の支援を受けて行われました。 |
開発ハイスループットスクリーニング装置 (a)とスクリーニング結果 (b)
【論文情報】
| 掲載誌 | Environmental Pollution (Elsevier) |
| 論文題目 | High-throughput experimentation for photocatalytic water purification in practical environments |
| 著者 | Kyo Yanagiyama, Ken Takimoto, Son Dinh Le, Nhan Nu Thanh Ton, Toshiaki Taniike |
| 掲載日 | 2023年11月17日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1016/j.envpol.2023.122974 |
【用語解説】
実験の回転速度をスループットと呼ぶ。ハイスループット実験技術とは高度な並列化や自動化によって実験のスループットを劇的に改善する技術を指す。
太陽光や人工光を利用して水中の汚染物質を分解する技術で、環境に優しく持続可能な水浄化の方法として注目されている。光触媒はこのプロセスで重要な役割を果たす。
令和5年12月8日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/12/08-1.html学生の中島さんが日本太陽光発電学会第20回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムにおいてInnovative PV奨励賞を受賞
学生の中島寛記さん(博士後期課程3年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が第20回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウム(第3回日本太陽光発電学会学術講演会)においてInnovative PV奨励賞を受賞しました。
日本太陽光発電学会は、太陽光発電に関連する学術分野の研究の促進ならびに成果の普及に関する事業を行い、将来の脱炭素社会の実現とその発展に寄与することを目的としています。
同シンポジウムは、国内の太陽光発電にかかわる研究者や技術者が一堂に会し、分野の垣根なく議論する場として開催されています。
Innovative PV奨励賞は、同シンポジウムにおいて発表された、太陽光発電ならびにその関連分野の発展に貢献しうる優秀な講演論文を発表した35歳以下の同会若手会員に対し授与されるものです。
※参考:日本太陽光発電学会ホームページ
■受賞年月日
令和5年8月31日
■論文タイトル
硝酸アルミニウム酸化処理により形成した p+反転層のピラミッドテクスチャ n 型結晶 Si 表面での有効性
■研究者、著者
中島 寛記、Huynh Thi Cam Tu、大平 圭介
■受賞対象となった研究の内容
n型結晶Si太陽電池のp+エミッタ層に利用されているB拡散層の形成には、1000 °C程度の高温加熱処理が必要となり、これが太陽電池製造のスループットを低下させている。さらに、Si中に拡散したBは、欠陥準位を形成し、太陽電池特性の劣化を引き起こす。そこで、本研究では、Si基板を硝酸アルミニウムの水溶液に浸漬するだけという非常に簡便なプロセスで、Si基板表面に超極薄のAlドープSiOx膜を形成し、その膜によって誘起されるp+反転層が、n型結晶Si太陽電池のエミッタ層として機能することを実証した。本公演では、AlドープSiOx膜に誘起された負の固定電荷がピラミッドテクスチャ形状を有するSi表面で増強され、良好な表面パッシベーション性能と太陽電池セル特性が得られたことについて報告し、簡便な湿式処理だけで、高効率・低コストの結晶Si太陽電池を製造できる可能性を示した。
■受賞にあたって一言
この度は、日本太陽光発電学会Innovative PV奨励賞に選定いただきましたこと大変光栄なことと感じております。今後も本技術の実用化を目指し、研究に邁進する所存です。日頃よりご指導いただいております大平圭介教授、HUYNH, Tu Thi Cam特任助教をはじめとした大平研究室の皆様に心より感謝申し上げます。なお、本研究は、JST次世代研究者挑戦的研究プログラムの助成を受けて実施されたものです。この場をお借りして御礼申し上げます。
令和5年9月22日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2023/09/22-1.html化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の開発に成功
化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の開発に成功
ポイント
- 天然の紅色光合成細菌の細胞表面を簡便に化学修飾可能な手法を開発
- 作製した化学修飾細菌は、免疫細胞の効果的な賦活化のみならず、高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現可能
- 当該化学修飾細菌の特性と近赤外レーザー光を組み合わせた、新たながん光免疫療法を開発
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、光と化学修飾細菌を使ってマウス体内のがん診断・治療を可能にする技術の開発に成功した(図1)。 |
図1. 化学修飾細菌を利用するがん光免疫療法の概念
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用したがん標的治療に注目が集まっている。しかし、従来のがん細菌療法は、基本的には抗がん剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステムの概念を出ない。また、薬効も十分であるとはいえない。さらに、従来のがん細菌療法は、抗がん活性を発現するためには、遺伝子工学を用いた微生物の操作・改変が必須である。米国や欧州ではヒトへの臨床試験が行われ第3相試験に進んでいる例もあるが、使用される細菌は、多くの場合、遺伝子組換えによって弱毒化したサルモネラ菌やリステリア菌であり、体内で再び強毒化するリスクを常に伴っている。
本研究では、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光*1によって様々な機能を発現する非病原性かつ天然の紅色光合成細菌*2の表面化学修飾法を開発した。また、当該化学修飾細菌の特性を活用することで体内の腫瘍を高選択的に検出し、効果的な免疫細胞(特にT細胞*3)の賦活化、および標的部位のみを効果的に排除することが可能ながん光免疫療法を開発することに成功した。
本研究を実現するために、がん細胞に対する傷害性の高いT細胞を賦活化可能な免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体*4)および生体適合性の高いポリエチレングルコール(PEG)脂質から成る機能性高分子複合体と、紅色光合成細菌を生理食塩水中で30分間混合し、洗浄するだけで、免疫賦活化作用と腫瘍標的能を有し、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光によって近赤外蛍光と熱を発現する化学修飾細菌を開発した(図2A)。また、当該細菌のこれらの特性を活用し、近赤外レーザー光照射と組み合わせることで、体内の腫瘍(大腸がん由来)を高選択的に検出し、光発熱作用と免疫の力によって標的部位を効果的に排除することが可能ながん光免疫療法を構築した(図2B、2C)。さらに、マウス大腸がん細胞、マウスマクロファージ細胞、ヒト正常肺細胞を用いた細胞毒性試験、ならびにマウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査など)を行った結果、いずれの検査からも化学修飾細菌そのものが生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した簡便な細菌の表面化学修飾法が、がん光診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、界面化学、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを期待させるものである。
本成果は、2023年8月14日(現地時間)にナノテクノロジー分野の世界最高峰「Nano Today」誌(エルゼビア社発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。

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図2.(A) 化学修飾細菌の調製方法
(B) がん患部における化学修飾細菌の可視化(近赤外蛍光を検出) (C) 化学修飾細菌の抗腫瘍効果 |
【論文情報】
| 掲載誌 | Nano Today(エルゼビア社発行) |
| 論文題目 | Cancer immunotheranostics using bioactive nanocoated photosynthetic bacterial complexes |
| 著者 | Sheethal Reghu, Seigo Iwata, Satoru Komatsu, Takafumi Nakajo, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2023年8月14日 |
| DOI | 10.1016/j.nantod.2023.101966 |
【用語説明】
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
近赤外光を利用して光合成を行う細菌。水の分解による酸素発生は行わない。
免疫を担うリンパ球の一種。活性化したT細胞は、サイトカイン(細胞同士の情報伝達を行うタンパク質の総称)を分泌するヘルパー細胞や、がんや感染細胞を殺傷するキラー細胞などのエフェクター細胞に分化する。
細胞上のPD-1に結合してPD-1とPD-L1あるいはPD-L2との結合を阻害し、T細胞の活性化を維持する抗体のこと。
令和5年8月29日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/29-1.html液体金属ナノ粒子を活用するがん光免疫療法の開発に成功
液体金属ナノ粒子を活用するがん光免疫療法の開発に成功
ポイント
- 免疫賦活化作用を有する多機能性の液体金属ナノ粒子の開発に成功
- 当該液体金属ナノ粒子がEPR効果により腫瘍に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、免疫賦活化ならびに光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授の研究グループは、液体金属ナノ粒子*1を活用した新しいがん光免疫療法の開発に成功した(図1)。 |
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温で液体の金属(液体金属)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけナノ粒子化した液体金属をバイオメディカル分野に応用する研究に大きな注目が集まっている。都准教授の研究チームでも、免疫賦活化作用のある物質を液体金属に組み合わせ、がん患部に選択的に送り込むことができれば、免疫による高い抗腫瘍作用の発現が期待できるだけでなく、生体透過性の高い近赤外光*2を用いることで、患部の可視化や光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療が実現できるのではないかと考え、研究をスタートさせた。
図1. 近赤外光が液体金属ナノ粒子に当たり、免疫細胞
(T細胞と樹状細胞)を活性化している様子(イメージ)
研究チームは、液体金属をがん患部まで送り、免疫細胞を賦活化させるために、液体金属表面に免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体*3)、免疫調整薬(イミキミド*4)、蛍光試薬(インドシアニングリーン*5)、ポリエチレングリコール-リン脂質複合体*6を吸着させたナノ粒子の作製を試みた。Ga/In液体金属、イミキミド、インドシアニングリーン、ポリエチレングリコール-リン脂質複合体の混合物に超音波照射後、抗PD-L1抗体を添加し、一晩培養するだけで、球状ナノ粒子の構造を水中で安定的に維持可能な簡便なナノ粒子を形成できることを見出した。この方法で調製した液体金属ナノ粒子は、10日以上の粒径安定性を有していること、細胞に対し高い膜浸透性を有し毒性が無いこと、近赤外光照射により発熱が起こることが確認できたため、がん患部の可視化と治療効果について試験を行った。
大腸がんを移植して1週間後のマウスに、液体金属ナノ粒子を投与し、24時間後に740~790 nmの近赤外光を当てたところ、がん患部だけが蛍光を発している画像が得られ、当該ナノ粒子がEPR効果*7によりがん組織に取り込まれていることが分かった(図2A)。そこで、当該ナノ粒子が集積した患部に対して808 nmの近赤外光を照射したところ、免疫賦活化と光熱変換による効果で14日後には、がんを完全に消失させることに成功した(図2B)。

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図2.(A) 液体金属ナノ粒子の標的腫瘍内における蛍光特性
(B) 液体金属ナノ粒子による抗腫瘍効果(腫瘍は完全消失) |
さらに、液体金属ナノ粒子の細胞毒性と生体適合性を評価した。2種類の細胞[マウス大腸がん由来細胞(Colon-26)、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞(MRC5)]を培養する培養液中に、液体金属ナノ粒子を、添加量を変えて投与・分散させ、24時間後に細胞内小器官であるミトコンドリアの活性を指標として細胞生存率を測定した結果、細胞生存率の低下は見られず、細胞毒性はなかった。また、液体金属ナノ粒子をマウスの静脈から投与し、生体適合性を血液検査(1週間調査)と体重測定(約1ヵ月調査)により評価したが、いずれの項目でも液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した液体金属ナノ粒子が、がん診断・免疫療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジー、光学、免疫学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、ドイツの化学・生物系トップジャーナル「Advanced Functional Materials」誌(Wiley社発行)に7月28日(現地時間)に掲載された。なお、本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、文部科学省科研費 挑戦的研究(開拓)(22K18440)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものである。
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Functional Materials(Wiley社発行) |
| 論文題目 | Light-Activatable Liquid Metal Immunostimulants for Cancer Nanotheranostics |
| 著者 | Yun Qi, Mikako Miyahara, Seigo Iwata, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2023年7月28日 |
| DOI | 10.1002/adfm.202305886 |
【用語解説】
室温以下あるいは室温付近で液体状態を示す金属のこと。例えば、水銀(融点マイナス約39℃)、ガリウム(融点約30℃)、ガリウム-インジウム合金(融点約15℃)がある。
800~2500 nmの波長の光。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
免疫チェックポイント阻害剤の一つ。がん細胞や抗原提示細胞が発現するPD-L1に結合することによりT細胞上のPD-1との相互作用を阻害する。この結果、T細胞への抑制シグナル伝達が阻害され、T細胞の活性化が維持され、抗腫瘍作用が発現される。
樹状細胞を活性化させることが知られており、早期の基底細胞皮膚がんや特定の皮膚疾患の治療に用いられる薬物。
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外光を照射すると近赤外蛍光を発することができる。
ポリエチレングリコールとリンを含有する脂質(脂肪)が結合した化学物質。脂溶性の薬剤を可溶化させる効果があり、ドラッグデリバリーシステムによく利用される化合物の一つ。
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみがん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
令和5年8月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/04-1.html抗ガン高分子の分子設計指針に新たな光 ~カチオン性と疎水性の相乗効果で高い細胞障害性が発現~
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| 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 兵庫県公立大学法人兵庫県立大学 |
抗ガン高分子の分子設計指針に新たな光
~カチオン性と疎水性の相乗効果で高い細胞障害性が発現~
ポイント
- 一般的には低分子化合物であることが多い抗ガン剤において、抗ガン効果の高い高分子の分子設計指針を見出した。
- カチオン性高分子に疎水性分子を導入することで抗ガン活性が向上し、高い細胞障害性を発現することが明らかになった。
- 分子動力学シミュレーションなどの手法により、合成高分子とガン細胞の細胞膜の相互作用が抗ガン効果の重要なメカニズムであることを確認し、今後の新規高分子抗ガン剤の分子設計の指針となることが期待される。
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市) 物質化学フロンティア研究領域の松村和明教授、ラジャン ロビン助教、サスティナブルイノベーション研究領域の本郷研太准教授、兵庫県立大学大学院工学研究科の遊佐真一准教授らは、精密高分子設計の技術と分子動力学シミュレーションなどの手法を用いて、抗ガン活性の高い高分子化合物の分子設計の指針を見出すことに成功しました。 一般的には、抗ガン剤は、低分子化合物であることが多く、その副作用や水溶性など多くの問題が挙げられます。高分子化合物の抗ガン剤はこれまで研究例があまりなく、また、細胞毒性のあるカチオン性高分子を利用した研究が行われてきました。 本研究では、このカチオン性高分子に疎水性部位を導入することで飛躍的にガン細胞への障害性が向上することを確認し、そのメカニズム解明の一端として、合成高分子とガン細胞の細胞膜への相互作用の向上を分子動力学シミュレーション等で明らかにしました。この研究結果は、今後の新しい高分子抗ガン剤の分子設計の指針となることが期待されます。 本研究成果は、英国王立化学会発刊のJournal of Materials Chemistry Bのオンライン版に1月6日に掲載されました。 |
【研究の背景】
日本人の三大疾病の第一位を占めるガンに対し、治療薬としての抗ガン剤の研究は重要な役割を担っていますが、まだ副作用も大きく、新たな作用機序に基づく効果の高い抗ガン剤の開発が待ち望まれています。
抗ガンペプチドのように、高分子化合物による細胞膜障害を利用した抗ガン剤の研究も行われており、高分子抗ガン剤の研究は、ガンの治療に新しい選択肢を提供するために重要です。
ガン細胞は、細胞膜表面にホスファチジルセリン[用語説明]というマイナスに帯電したリン脂質が発現していることが多いため、正常の細胞に比べて表面電位がマイナスに帯電しているといわれています。そこで、プラスに帯電したカチオン性高分子による細胞膜破壊作用をその機序として抗ガン高分子や抗ガンペプチドの研究が行われてきました。
今回の研究では、合成高分子によるガン細胞への障害性の向上に向けた分子設計の指針を見出しました。
【研究の内容】
研究グループは、4級カチオンを側鎖にもつ高分子(図1)に、ブチルメタクリレートやヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレートなどの疎水性のアルキル鎖を持つモノマーを共重合することで合成した疎水性導入カチオン高分子化合物(図2)が、肝臓ガン細胞や結腸ガン細胞、悪性黒色腫細胞に対して、高い障害性を持つことを明らかにしました(図3)。図3(a)は、カチオン性ポリマー中のブチルメタクリレートのモノマー比が大きくなるほど細胞毒性が高くなり、(b)では、アルキル基の炭素数が大きくなるほど強い細胞毒性を持つことが示されました。つまり、カチオン性基と疎水性基による相乗効果が認められました。
次に、研究グループは、この疎水性部位を導入したカチオン性高分子とガン細胞の細胞膜の相互作用について、パルス磁場勾配核磁気共鳴法(Pulsed-filed gradient Nuclear Magnetic Resonance : PFG-NMR)[用語説明]や分子動力学(MD)シミュレーション[用語説明]など様々な手法を用いて実験と計算の両面から確認しました。
PFG-NMRの測定結果から、疎水性モノマーであるブチルメタクリレートを導入したカチオン性高分子の拡散係数が、細胞膜を模した脂質二重膜と同時に存在するときに小さくなることが確認されました。この結果は、合成高分子が脂質分子と相互作用することで分子の運動性が抑制されていることを示しており、相互作用の向上が示唆される結果となりました。
また、MDシミュレーションでは、疎水性側鎖の導入により10 nsにおけるポリマーとリン脂質膜のコンタクト原子数が、疎水部位の導入前より2倍程度大きな値を示しました(図4)。この相互作用の向上の要因について考察するため、ポリマーの吸着構造の比較を行ったところ、疎水性部位の存在下では、ポリマー主鎖配向が細胞膜の分子配向に対してより平行であることが示されており、ガン細胞の細胞膜への吸着及び膜内へ侵入しやすい主鎖配向を持つことがわかりました(図5)。これにより、ガン細胞の細胞膜構造をより破壊しやすいと考えられます。
以上のことから、「細胞膜障害性」という新たな機序を持つ高分子抗ガン剤の分子設計指針として、カチオン性と疎水性のバランスが重要であることを示しました。
今後はその抗ガン剤高分子にガン細胞選択性などの機能をさらに追求することで新しい抗ガン剤の開発につなげていきます。
本研究は、科研費「学術変革領域研究(A)公募研究(課題番号:21H05516および21H05535)」の支援により実施されました。
本研究成果は、令和5年4月に北陸先端科学技術大学院大学に新設予定の超越バイオメディカルDX研究拠点所属教員らによる先行事例です。
【論文情報】
| 雑誌名 | Journal of Materials Chemistry B |
| 題目 | Mechanistic insights and importance of hydrophobicity in cationic polymers for cancer therapy |
| 著者 | Nishant Kumar, Kenji Oqmhula, Kenta Hongo, Kengo Takagi, Shinichi Yusa, Robin Rajan, Kazuaki Matsumura |
| WEB掲載日 | 2023年1月6日(英国時間) |
| DOI | 10.1039/D2TB02059A |

図1 合成4級カチオン性高分子 (PAMPTMA)

| 図2 疎水性付与合成4級カチオン性高分子 (a)ブチルメタクリレート共重合体(PAMPTMA-r-BuMA) (b)ヘキシルメタクリレート共重合体(PAMPTMA-r-HexMA) (c)オクチルメタクリレート共重合体(PAMPTMA-r-OctMA) |

| 図3 肝ガン細胞(HepG2)に対する抗ガン高分子の細胞毒性試験。縦軸は細胞生存率。
(a)ブチルメタクリレート(BuMA)の導入量の影響。P3:カチオン性高分子(PAMPTMA),
P6:PAMPTMAに対するBuMAの導入モル比5%, P7: 10%, P8: 20%, P9: 30% (b)アルキル基の長さの影響。P7: BuMA 10%, P10: HexMa 10%, P11: OctMa 10%
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図4 リン脂質膜とポリマーのコンタクト数。
BuMA10%導入ポリマー(赤)の方が10ns時点において2倍程度大きなコンタクト数を示す。

| 図5 MDシミュレーションにおけるスナップショット。
(a)PAMPTMA (b) PAMPTMA-r-BuMA
(b)ではポリマー主鎖配向が膜の分子配向に対してより平行であり、
細胞膜への吸着及び膜内へ侵入しやすい主鎖配向を持つ |
【用語説明】
細胞膜のアニオン性の細胞内リン脂質成分であり、通常は、細胞膜の内側に主に存在しています。しかし、ガン細胞では細胞膜表面に高頻度に発現しているといわれています。
核磁気共鳴(NMR)技術の一種で、磁場勾配を利用して、物質中の空間的な分布を可視化することができます。また、液体中の分子の拡散移動速度を測定する方法の一つです。
分子レベルで物質の構造や動きを計算するためのコンピュータシミュレーション手法です。原子や分子間の力を計算し、物質の構造や動きを時間発展させることができます。
令和5年1月30日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/01/30-1.html学生の新保さんが第19回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムにおいてInnovative PV 奨励賞を受賞
学生の新保 俊大朗さん(博士前期課程2年、サスティナブルイノベーション研究領域、大平研究室)が第19回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウム(第2回日本太陽光発電学会学術講演会)においてInnovative PV 奨励賞を受賞しました。
「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムは、国内の太陽光発電にかかわる研究者や技術者が一堂に会し、分野の垣根なく議論する場として、平成16年の第1回から毎年1回開催されており、昨年からは令和2年10月に発足した日本太陽光発電学会が主催しています。
Innovative PV 奨励賞は、同シンポジウムにおいて発表された太陽光発電ならびにその関連分野の発展に貢献しうる優秀な講演論文を発表した35歳以下の同学会若手会員に対して、理事会での審議を経て授与されます。
今回、第19回「次世代の太陽光発電システム」シンポジウムは、令和4年6月28日~29日にかけて金沢市文化ホールおよびオンラインにてハイブリッド開催されました。
■受賞年月日
令和4年8月30日
■論文タイトル
封止材無しp型結晶Si太陽電池モジュールの電圧誘起劣化におけるセルとガラスの接触の影響
■研究者、著者
新保俊大朗, Huynh Thi Cam Tu, 大平圭介
■受賞対象となった研究の内容
現在ほとんどの太陽電池(PV)モジュールでは封止材を使用しているが、部材同士が強固に接着さ れており、分別してのリサイクルが困難である。また、封止材が電荷やNaイオンの移動経路となり電圧誘起劣化(PID)が発生する、汎用の封止材であるエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)とバックシートより浸入する水との反応で生成される酢酸により電極が腐食される、などの問題もある。これらの問題を解決するために、封止材を使用しない結晶 Si (c-Si) PVモジュールの開発に取り組んでいる。
今回の講演では、ポリカーボネート製ベースを用いた封止材無しp型結晶Si PVモジュールのPID加速試験におけるセルとガラスの接触の影響について調査した結果を発表した。PID加速試験においてセルとカバーガラスの接触を防ぐことで、PID耐性が向上することを明らかにした。
■受賞にあたって一言
この度、日本太陽光発電学会よりInnovative PV 奨励賞を賜りまして大変光栄に思います。今回の受賞に恥じない研究成果を残すため、今後も精進致します。本研究の推進にあたり、ご指導、ご協力いただいた大平先生、Huynh先生をはじめとした大平研究室メンバーの皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
令和4年9月8日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2022/09/08-1.htmlダイヤモンドのNV中心を用いた温度計測に成功 ~非線形光学による新しい量子センシングの可能性~
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国立大学法人筑波大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 |
ダイヤモンドのNV中心を用いた温度計測に成功
~非線形光学による新しい量子センシングの可能性~
| 温度センサーは接触型と非接触型に大別されます。接触型の温度センサーには抵抗温度計、サーミスタや熱電対などが、非接触型の温度センサーには量子準位の変化で温度を読み取る量子センサーが主に用いられています。非接触型量子センサーの中でも、ダイヤモンドに導入した窒素―空孔(NV)中心と呼ばれる格子欠陥を用いたセンサーは、高空間分解能・高感度を必要とする細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーへの応用が期待されています。 高純度のダイヤモンドは結晶学的に対称性が高く、対象点を中心に結晶を反転させると結晶構造が重なる空間反転対称性を持っています。結晶の対称性は、結晶の光学的性質を決定する上で重要な役割を担っており、空間反転対称性の有無は、非線形光学効果の発現を左右します。本研究チームは近年、ダイヤモンド結晶にNV中心を人工的に導入し、ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで、2次の非線形光学効果である第二高調波発生(SHG)が発現することを報告しました。このSHGは、結晶にレーザー光を照射した際に、そのレーザー周波数の2倍の周波数の光が発生する現象です。 この成果を基に、本研究では、20℃から300℃の温度範囲において、SHG強度の変化を調べ、高温では屈折率変化による光の位相不整合によりSHG強度が大きく減少することを発見しました。 本研究成果は、ダイヤモンドベースの非線形光学による温度センシングの実現に向けた効率的かつ新しい方法を提示するものと言えます。 |
【研究代表者】
筑波大学 数理物質系
長谷 宗明教授
北陸先端科学技術大学院大学 応用物理学領域
安 東秀准教授
【研究の背景】
温度センサーは、エアコン、冷蔵庫、自動車エンジン、パソコンなどさまざまな電子機器に使用されており、温度管理や機器の性能維持に重要な役割を果たしています。温度センサーにはさまざまな種類がありますが、大きくは接触型と非接触型に分類されます。接触型の温度センサーには抵抗温度計、サーミスタ、熱電対などが用いられ、一方、非接触型の温度センサーには量子センサー注1)が主に使われています。
特に、ダイヤモンド中の窒素−空孔(NV)中心注2)を用いた非接触型量子センサーは、NV中心における量子準位間発光の共振マイクロ波周波数が温度によって変化することを原理とし、高空間分解能・高感度を必要とする細胞内計測や、デバイス評価装置のセンサーへの応用などが期待されています。ダイヤモンドのNV中心は、置換型窒素原子と炭素原子の隣の空孔からなる原子状欠陥(図1挿入図)です。
表面近傍(深さ数十ナノメートル)にNV中心を導入するには、一般に窒素イオン注入と高温アニールの組み合わせがよく用いられます。近年、ダイヤモンドのNV中心は、発光など豊かな光物性から、量子計算のためのフォトニックデバイス技術、単一光子源などへの応用が期待され、高い注目を集めています。さらに、ダイヤモンドのNV中心を用いた量子センシングが注目され、電場(電流)、磁場(スピン)の計測や、温度センサーに利用されています。一方、結晶の対称性、中でも空間反転対称性注3)の有無は、物質の光学的性質を決定する上で重要な役割を担っています。本研究チームは近年、ダイヤモンド結晶にNV中心を人工的に導入し、ダイヤモンド結晶の反転対称性を破ることで、2次の非線形光学効果である第二高調波発生(SHG)注4)を発現することを報告しましたa)。
今回、本研究チームは、NV含有ダイヤモンド結晶に赤外域の超短パルスレーザーを照射することで、第二高調波、および第三高調波の発光強度の温度依存性について研究し、非線形光学効果に基づいた温度センサーとしての可能性を探りました。
【研究内容と成果】
本研究チームは、フェムト秒(1000兆分の1秒)の時間だけ波長800nmで瞬く超短パルスレーザー注5)を波長1350nmの赤外パルス光に変換し、NV中心を導入した高純度ダイヤモンド単結晶に励起光として照射しました。これにより、ダイヤモンドの表面近傍から発生したカスケード型第三高調波(cTHG)と第二高調波の強度変化を、20℃~300℃の温度範囲で調べました。図2は、20℃(室温)から240℃までのさまざまな温度でNV含有ダイヤモンド結晶から得られた典型的な発光スペクトルを示します。室温の20℃においては、複屈折性を有するNV含有ダイヤモンド試料の角度を調整することにより、ほぼ完全な位相整合注6)が精巧に行われました。この時、SHGについては約4.7 × 10-5、cTHGについては約3.0 × 10-5の光変換効率が得られています。しかし、温度上昇に伴い、SHG および cTHG の強度は急激に減少することが分かります。
また、20℃から300℃までの非線形発光の温度同調曲線を、さらに光学調整を行わずに20℃の間隔で記録したところ、SHGとcTHGの積分強度は、低温領域(100℃以下)では、ほとんど温度変化しないことが分かりました。しかし、高温領域(150℃から300℃)では、SHG強度、cTHG強度ともに温度の上昇とともに急激に低下し、室温で得られる信号強度に比べてほぼ1桁低い信号強度が観測されました。一方、NV中心を導入する前の純粋なダイヤモンド結晶のTHG強度は、温度の上昇とともにゆっくり減少することが分かりました。ダイヤモンド結晶では、屈折率の温度変化による位相不整合により、格子温度の上昇に伴ってSHG強度が減少したと考えられます(図3)。このように、NV含有ダイヤモンドのSHGから得られる温度センサーとしての感度(dI/dT=0.81%/℃)は、高純度ダイヤモンドのTHGから得られる温度感度(dI/dT=0.25%/℃)よりも3倍以上大きく、非線形光学効果に基づいた温度センシング技術開発への大きな可能性を示すものでした。
【今後の展開】
本研究チームは、2次の非線形光学効果である第二高調波発生や電気−光学効果を用いた量子センシング技術を深化させ、最終的にダイヤモンドを用いたナノメートルかつ超高速時間領域(時空間極限領域)での量子センシングの研究を進めています。NV含有ダイヤモンドにおいては、NV中心の配向をそろえることでSHGの変換効率が高まると期待されます。また、NV含有ダイヤモンドは、チップ状に加工することで、走査型プローブ顕微鏡のプローブとしての役割も果たし、さまざまな先端材料に対して有効なナノメートル分解能をもつ温度センサーを実現できる可能性を秘めています。今後は、フェムト秒(1000兆分の1)パルスレーザー技術が持つ高い時間分解能と、走査型プローブ顕微鏡注7)が持つ高い空間分解能とを組み合わせ、ダイヤモンドのNV中心から引き出したSHGなどの2次の非線形光学効果が、電場や温度のセンシングに幅広く応用できることを示していきます。
【参考図】

| 図1.本研究に用いた実験装置の概略 挿入図は、ダイヤモンド結晶中の窒素―空孔(NV)中心の原子構造を示している。 |

図2.実験結果
第二高調波発生(SHG)とカスケード型第三高調波発生(cTHG)スペクトルの結晶温度依存性。五つの値:20℃(室温)、90℃、160℃、200℃、240℃に、黒、濃い赤、オレンジ、緑、紫の線が対応する。

| 図3.ダイヤモンド結晶における位相整合 NVダイヤモンド結晶における温度、屈折率(赤線)、およびSHG強度の関係を示す。 |
【用語解説】
注1)量子センサー
量子化した準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測するセンサーのこと。
注2)窒素−空孔(NV)中心
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、そのすぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)中心」は、ダイヤモンドの着色にも寄与する色中心(カラーセンター)と呼ばれる格子欠陥となる。NV中心には、周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。このため、NV中心を持つダイヤモンドは「量子センサー」と呼ばれ、次世代の超高感度センサーとして注目されている。
注3)空間反転対称性
三次元空間の直交座標系(x, y, z)において、結晶中の全ての原子を(x, y, z) → (-x, -y, -z)と反転操作しても元の結晶と完全に一致すること。
注4)第二高調波発生
同じ周波数(波長)を持つ二つの光子が非線形光学結晶に入射すると、入射した光子の2倍の周波数(半分の波長)の光が発生する現象のこと。2次の非線形光学効果(電場振幅の二乗に比例する効果)の一種である。同様に、第三高調波発生は三つの光子から入射した光子の3倍の周波数の光が発生する3次の非線形光学効果である。
注5)超短パルスレーザー
パルスレーザーの中でも、特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒以下の極めて短いレーザーのことをいう。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
注6)位相整合
基本波レーザー光とそれから発生する第二高調波(或いは第三高調波)の位相速度が一致することである。位相整合を満たす方法として、複屈折性を有する結晶の角度を回転させることで二つの異なる波長に対する屈折率を位相整合条件に一致させることができる。位相不整合が起こると第二高調波の強度が減少することが知られている。
注7)走査型プローブ顕微鏡
小さいプローブ(探針)を試料表面に近接させ、探針を表面に沿って動かす(走査する)ことで、試料の原子レベルの表面構造のみならず、温度や磁性などの物理量も画像化できる顕微鏡である。
【研究資金】
本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構 CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(グラント番号:JPMJCR1875)(研究代表者:長谷 宗明)による支援を受けて実施されました。
【参考文献】
a) Aizitiaili Abulikemu, Yuta Kainuma, Toshu An, and Muneaki Hase, 2021, Second-harmonic generation in bulk diamond based on inversion symmetry breaking by color centers. ACS Photonics 8, 988-993 (doi:1021/acsphotonics.0c01806).
【掲載論文】
| 題 目 | Temperature-dependent second-harmonic generation from color centers in diamond. (ダイヤモンドの色中心からの温度依存的な第二高調波発生) |
| 著者名 | Aizitiaili Abulikemu, Yuta Kainuma, Toshu An, and Muneaki Hase |
| 掲載誌 | Optics Letters |
| 掲載日 | 2022年3月1日(著者版先行公開) |
| DOI | 10.1364/OL.455437 |
令和4年3月9日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/03/09-1.htmlナノ複合化細菌を利用したがん光診断・治療技術の開発に成功
ナノ複合化細菌を利用したがん光診断・治療技術の開発に成功
ポイント
- 機能性色素を封入したナノ粒子と天然のビフィズス菌を水溶液中で一晩混合し、洗浄するだけの簡便な方法で、高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現するナノ複合化細菌を創出
- 当該ナノ複合化細菌の特性と近赤外レーザー光を組み合わせた、新たながん光診断・治療技術を開発
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都 英次郎准教授とラグ シータル大学院生(博士後期課程)は、ナノ複合化細菌を使ってマウス体内のがん細胞の蛍光検出と光発熱治療を同時に可能にする技術の開発に成功した。 |
【研究背景と内容】
近年、低酸素状態の腫瘍内部で選択的に集積・生育・増殖が可能な細菌を利用したがん標的治療に注目が集まっている。なかでもビフィズス菌*1を利用するがん標的治療は、その優れた腫瘍選択性と高い安全性などの特徴から有力な微生物製剤として期待されている。しかし、ビフィズス菌に抗腫瘍作用を発現させるためには、通常、煩雑な遺伝子操作が必要である。また、ビフィズス菌を含む細菌を利用するがん標的治療は、基本的には抗がん剤の運搬という、いわゆる従来型のドラッグデリバリーシステム*2の概念を出ない。
本研究では、機能性色素のインドシアニングリーン*3を封入したポリオキシエチレンヒマシ油*4から成るナノ粒子と天然のビフィズス菌を生理食塩水中で一晩混合し、洗浄するだけで、高い腫瘍標的能を有し、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5によって近赤外蛍光と熱を発現するナノ複合化細菌の創出に成功した(図1(a),(b))。また、当該細菌のこれらの特性を活用し近赤外レーザー光照射と組み合わせることで、体内の腫瘍を高選択的に検出し、標的部位を効果的に排除することが可能ながん光診断・治療技術を開発することに成功した(図1(c),(d))。さらに、マウスがん細胞とヒト正常細胞を用いた細胞毒性試験、ならびにマウスを用いた生体適合性試験(血液学的検査、組織学的検査など)を行った結果、いずれの検査からもナノ複合化細菌が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した細菌の簡便なナノ複合化技術が、がん光診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2022年2月18日にナノサイエンス・ナノテクノロジー分野のトップジャーナル「Nano Letters」誌(アメリカ化学会発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、日本学術振興会科研費(基盤研究A)と公益財団法人上原記念生命科学財団の支援のもと行われたものである。

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図1.(A) ナノ複合化細菌を利用するがん細胞の蛍光検出と光発熱治療の概念
(B) 機能性色素を封入したナノ粒子との混合前後のビフィズス菌水溶液 (C) がん患部におけるナノ複合化細菌の可視化(近赤外蛍光を検出) (D) ナノ複合化細菌の抗腫瘍効果。蛍光検出されたがん患部に近赤外レーザー光を当てると、 光熱変換による効果によりがんが消失した。 |
【論文情報】
| 掲載誌 | Nano Letters(アメリカ化学会発行) |
| 論文題目 | Nanoengineered Bifidobacterium bifidum with Optical Activity for Photothermal Cancer Immunotheranostics |
| 著者 | Sheethal Reghu, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2022年2月18日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1021/acs.nanolett.1c04037 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)、がん光細菌療法の新生(2021年2月16日JAISTからプレス発表)、ナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる!(2021年12月21日JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
【用語説明】
*1 ビフィズス菌
ヨーグルトでおなじみの細菌。主にヒトなどの動物の腸内の小腸下部から大腸にかけて生息する乳酸菌の一種で、いわゆる善玉菌と呼ばれる微生物のことである。整腸作用だけではなく、病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑える効果があると考えられている。
*2 ドラッグデリバリーシステム
製剤技術の一つで、疾患部位に必要な薬効成分を届ける技術のこと。
*3 インドシアニングリーン
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外レーザー光を照射すると近赤外蛍光と熱を発することができる。
*4 ポリオキシエチレンヒマシ油
天然ヒマシ油に由来する、安全性の高い界面活性成分のこと。各種化粧品の可溶化・透明化に使用されている。
*5 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和4年2月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2022/02/21-1.htmlナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる! ~ ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発により実現 ~
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国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
ナノ粒子と近赤外レーザー光でマウス体内のがんを検出・治療できる!
~ ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子の開発により実現 ~
ポイント
- 液体金属に生体分子を吸着させた複合体へのガンマ線照射によりコア-シェル型の構造を持つナノ粒子の作製に成功
- ガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子がEPR効果により腫瘍に集積し、マウスに移植したがんの可視化と、光熱変換によるがん治療が可能であることを実証
- 当該ナノ粒子と近赤外光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科 物質化学領域の都 英次郎准教授とセキ ウン大学院生(博士前期課程)は、量子科学技術研究開発機構(理事長・平野 俊夫、千葉県千葉市)、高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部(群馬県高崎市)の田口 光正上席研究員(「生体適合性材料研究プロジェクト」プロジェクトリーダー)、木村 敦上席研究員と共同で、量子ビーム(ガンマ線*1)架橋技術を用いて、ガリウム-インジウム合金から成る液体金属*2 表面に様々な生体高分子(ゼラチン、DNA、レシチン、牛血清蛋白質)がコートされ、安定な状態を保つことができるコア-シェル型*3 のユニークな構造を有すナノ粒子の作製に成功した(図1)。得られたゼラチン-液体金属ナノ粒子は、EPR効果*4 によって大腸がんを移植したマウス体内の腫瘍内に集積し、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5 により、がん患部の可視化と光熱変換による治療が可能であることを実証した。さらに、マウスがん細胞とヒト正常細胞を用いた細胞毒性試験と生体適合性試験を行い、いずれの検査からもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。当該ナノ粒子と近赤外レーザー光を組み合わせた新たながん診断・治療技術の創出が期待される。 |
【研究背景と内容】
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温で液体の金属(液体金属)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけナノ粒子化した液体金属をバイオメディカル分野に応用する研究に大きな注目が集まっている。研究チームでも、液体金属をがん患部に送り込むことができれば、生体透過性の高い近赤外レーザー光を用いることで、患部の可視化や光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療が実現できるのではないかと考え、研究をスタートさせた。
液体金属をナノ粒子化するためには煩雑な合成プロセスが必要であり、ナノ粒子化した液体金属の構造や機能を溶媒中で安定的に保持させることは難しい。そこで、研究チームは、液体金属をがん患部まで送り、がん細胞内に取り込ませるために、液体金属表面に生体高分子(ゼラチン、DNA、レシチン、牛血清蛋白質)を吸着させたコア-シェル型ナノ粒子の作製を試みた。Ga/In液体金属と生体分子の混合物に超音波照射することで、コア-シェル型ナノ粒子を形成できることを見出したが、そのままではナノ粒子の構造を水中で安定的に維持させることはできなかった。
この問題を解決するために、ナノ粒子表面の生体高分子がバラバラにならないよう、量子ビーム(ガンマ線)架橋反応を利用すれば、架橋剤などの細胞毒性を有する薬剤を用いることなく、生体高分子の特性を保持したまま安定化できると考えた。この方法でガンマ線架橋したゼラチン-液体金属ナノ粒子は、30日以上の粒径安定性を有していること、細胞に対し高い膜浸透性を有し毒性が無いこと、近赤外レーザー光照射により発熱が起こることが確認できたため、がん患部の可視化と治療効果について試験を行った。
大腸がんを移植して10日後のマウスに、ゼラチン-液体金属ナノ粒子を投与し、4時間後に740~790 nmの近赤外光を当てたところがん患部だけが蛍光を発している画像が得られ、当該ナノ粒子がEPR効果によりがん組織に取り込まれていることが分かった(図2(左))。そこで、当該ナノ粒子が集積した患部に対して808 nmの近赤外レーザー光を照射したところ、光熱変換による効果で26日後には、がんを完全に消失させることに成功した(図2(右))。
さらに、ゼラチン-液体金属ナノ粒子の細胞毒性と生体適合性を評価した。2種類の細胞[マウス大腸がん由来細胞(Colon-26)、ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞(MRC5)]を培養する培養液中に、ゼラチン-液体金属ナノ粒子を、添加量を変えて投与・分散させ、24時間後に細胞内小器官であるミトコンドリアの活性を指標として細胞生存率を測定した結果、細胞生存率の低下は見られず、細胞毒性はなかった(図3)。また、ゼラチン-液体金属ナノ粒子をマウスの静脈から投与し、生体適合性を血液検査(1週間調査)と体重測定(約1ヵ月調査)により評価したが、いずれの項目でもゼラチン-液体金属ナノ粒子が生体に与える影響は極めて少ないことがわかった。
これらの成果は、今回開発した生体高分子のナノ粒子コーティング技術が、革新的がん診断・治療法の基礎に成り得ることを示すだけでなく、ナノテクノロジー、光学、量子ビーム工学といった幅広い研究領域における材料設計の技術基盤として貢献することを十分期待させるものである。
本成果は、2021年12月20日に先端材料分野のトップジャーナル「Applied Materials Today」誌(Elsevier発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究は、日本学術振興会科研費(基盤研究A)及び総合科学技術・イノベーション会議 官民研究開発投資拡大プログラム(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograM:PRISM)の支援のもと行われたものである。

図1. ガンマ線を利用した生体分子-液体金属ナノ複合体の合成と当該ナノ粒子を活用した光がん療法の概念。
LM: 液体金属、NIR: 近赤外、FL: 蛍光。

図2. ナノ粒子をがん患部に集積・可視化(左)し、光照射によりがんを治療(右)。

図3. CCK-8法によるゼラチン-液体金属ナノ粒子の細胞毒性評価。
赤:マウスの大腸がん細胞、グレー:ヒトの正常細胞、
RIPA: Radioimmunoprecipitation Buffer(細胞や組織の溶解に
使用される緩衝液、本実験の陽性対照に利用)
【論文情報】
| 掲載誌 | Applied Materials Today |
| 論文題目 | Sonication- and γ-ray-mediated biomolecule-liquid metal nanoparticlization in cancer optotheranostics |
| 著者 | Qi Yun, Atsushi Kimura, Mitsumasa Taguchi, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2021年12月20日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1016/j.apmt.2021.101302 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)、がん光細菌療法の新生(2021年2月16日JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
量子科学技術研究開発機構(QST)、先端機能材料研究部プロジェクト「生体適合性材料研究」では、量子ビーム微細加工技術による先端医療デバイスの創製の一環として、これまでに、診断や創薬における微量検体の分析性能が数10倍に!(2019年6月25日 QSTからプレス発表)、平面状の細胞シートが立体的に!細胞が自分の力でシートを3次元化(2021年7月14日QSTからプレス発表)などの機能性材料作製技術を開発している。
【用語説明】
*1 ガンマ線
ガンマ線とは、放射性同位元素(コバルト60など)の崩解によって放出される量子ビームの一種。
*2 液体金属
室温以下あるいは室温付近で液体状態を示す金属のこと。例えば、水銀(融点マイナス約39℃)、ガリウム(融点約30℃)、ガリウム-インジウム合金(融点約15℃)がある。
*3 コア-シェル型
コアは核、シェルは殻を意味し、一つの粒子で核と殻の素材が異なるものをこのように呼ぶ。
*4 EPR効果
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみがん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
*5 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
令和3年12月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/12/21-1.html超越バイオ医工学研究拠点 リサーチコアセミナー「カーボンナノチューブの近赤外蛍光を用いた褐色脂肪組織異常の検出」
セミナーを下記のとおり開催しますので、ご案内します。
新型コロナウイルス感染症対策のため、ネット配信方式にてご参加いただきます。カメラ付きパソコン、スマホ、タブレットなどからご参加いただけます。
| 開催日時 | 令和3年10月13日(水)13:30~15:00 |
| 実施方法 | ネット配信方式 |
| 講演題目 | カーボンナノチューブの近赤外蛍光を用いた褐色脂肪組織異常の検出 |
| 講 師 | 産業技術総合研究所 ナノ材料研究部門 客員研究員 湯田坂 雅子 氏 |
| 参加申込 | 下記のお問い合わせ担当へ前日までにご連絡ください。 (参加費無料) 【お問い合わせ】 北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオ医工学研究拠点長 都 英次郎 (担当:研究施設支援係 sien@ml.jaist.ac.jp) |
生体分子モーターで動く人工筋肉、光で自在に作製可能 ― マイクロ・ソフトロボットの3Dプリントの実現に期待 ―
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| 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 国立大学法人 大阪大学 |
生体分子モーターで動く人工筋肉、光で自在に作製可能
― マイクロ・ソフトロボットの3Dプリントの実現に期待 ―
ポイント
- 光照射した場所に自在な形状に作製できる人工筋肉の開発に成功
- 遺伝子工学的に改変した生体分子モーターからなる光応答性の分子システムを開発
- ミリメートルスケールの微小機械の駆動を実証
- マイクロロボットやソフトロボットの3Dプリントの実現に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学・先端科学技術研究科 生命機能工学領域の平塚祐一准教授、杜釗 大学院生(博士前期課程)は、岐阜大学・工学部の新田高洋准教授、大阪大学・大学院工学研究科 機械工学専攻の森島圭祐教授、王穎哲 大学院生(博士後期課程/特任研究員)との共同研究で、筋肉のような収縮性のファイバー(以下、人工筋肉)を、光照射した場所に自在に形成させることに成功した。この人工筋肉は、生物の動きに関わるタンパク質である生体分子モーターを遺伝子工学的に改変することにより実現した。光の照射形状を変えることで自由な形状・大きさの人工筋肉が造形でき、ミリメートルスケールの微小機械の動力に利用できることを実証した。この成果は将来、これまで困難であったマイクロロボットやソフトロボットの3Dプリンタによる製造への応用が期待される。 本研究成果は、2021年4月19日(英国時間)に科学雑誌「Nature Materials」誌のオンライン版で公開された。なお、本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」(JPNP15009)、日本学術振興会(JSPS)科研費 新学術領域研究「分子ロボティクス」の支援を受けて行われた。 |
【研究背景と内容】
生物のエンジン「筋肉」は、モータータンパク質[*1]と呼ばれる生体分子モーターから構築されており、数百マイクロメートル(マイクロは100万分の1)から数十メートルまでスケーラビリティにとんだアクチュエータである。生物のエネルギー源(アデノシン三リン酸 (ATP))を用いて高い効率で力学的仕事を行うという、従来のアクチュエータと比べ質的に異なる特性を持ち、これまでには無い産業分野での応用が期待されている。しかし、筋肉自体または筋肉細胞をアクチュエータとして利用する試みは基礎研究レベルでは報告されているが、筋肉細胞の安定性・保存性の問題やアクチュエータとして組み込む技術が未発達のため、実用化には至っていない。また、筋肉組織の構成分子はほぼ同定されているが、それら構成分子から筋肉を再構築する技術は知られていなかった。
本研究では、生体内の収縮性ファイバーの形成過程に着想を得て、人工筋肉を自在に形成させる分子システムを開発した。モータータンパク質の一種であるキネシンを遺伝子工学的に改変し、フィラメント状にすることにより、レールタンパク質である微小管[*2]と混ぜるだけで、モータータンパク質の動的な機能により自己組織的に人工筋肉を形成させることができた。さらに、光照射によりモーター分子のフィラメント化を開始させ、照射した部位のみに人工筋肉を形成させることを可能とした(図1)。この人工筋肉を大きさ数ミリメートルの機械構造内に形成させることにより微小機械を駆動させることに成功した(図2)。
筋肉のような柔軟で低エネルギー・低環境負荷なアクチュエータの産業応用は期待されているが、上述のように実用化には至っていない。本研究では、生体の運動素子であるモータータンパク質分子を数ミリメートル以上の組織に構築することにより、生物の筋肉に似た機能・性質を持つ人工筋肉の製造を可能とした。特に光照射により人工筋肉の形成を開始可能なことから、たとえば光造形型の3Dプリンタに組み込めば人工筋肉の光造形などが可能になることが将来期待でき、生体材料で駆動するマイクロロボットやソフトロボットの3Dプリント技術の基盤技術となる可能性が高い。
【今後の展開】
本研究で開発された人工筋肉は、現時点では形成・収縮が同時に起こり、かつ収縮は一回のみで用途も限定される。今後、制御用の分子システムを開発することにより、可逆または振動可能な人工筋肉を開発しマイクロロボットやソフトロボットへの実装を目指す。

図1.光照射による人工筋肉形成のコンセプト図
モータータンパク質の一種キネシンを遺伝子工学的に改変し、光照射によりキネシンがフィラメント状になるように設計(K456m13とCaMLMM)。キネシンフィラメントは自身の運動能により微小管を引っ張り、自己組織的に筋肉に似た収縮性の繊維を形成する。

図2. 人工筋肉の応用例
大きさ数ミリメートルのシリコンゴム製の微小構造の周囲に、光照射により人工筋肉を形成させ、その構造を駆動させた。右上)マイクログリッパ:光照射後に人工筋肉(オレンジ色)が形成し、20秒後にグリッパが閉じる。右下)昆虫型デバイス:人工筋肉により左右に動く。左上)ロボットアーム型デバイス。左中)微小歯車の組み立て。左下)細胞サイズの微小ビーズの集積。
【研究資金】
・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」(JPNP15009)
・日本学術振興会(JSPS)科研費 新学術領域研究「分子ロボティクス」(JP24104004)
・日本学術振興会(JSPS)科研費 基盤研究(B)(JP18H01407)
【論文情報】
| 雑誌名 | Nature Materials |
| 題名 | "A printable active network actuator built from an engineered biomolecular motor" |
| 著者名 | Takahiro Nitta, Yingzhe Wang, Zhao Du, Keisuke Morishima and Yuichi Hiratsuka* |
| 掲載日 | 2021年4月19日(英国時間)にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1038/s41563-021-00969-6 |
【用語解説】
[*1] モータータンパク質(motor protein)
生体の動きに関与するタンパク質の総称。大きさ数ナノメートル〜数十ナノメートルの分子で、代表的なものとして筋収縮に働くミオシン、細胞内の物質輸送に働くキネシン、鞭毛運動等に働くダイニンなどが挙げられる。これらは繊維状のタンパク質であるアクチンまたは微小管の上を生体のエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)の加水分解エネルギーを利用して一方向に動く。
[*2] 微小管(microtubule)
細胞骨格を構成する繊維状タンパク質のひとつ。大きさ数ナノメートルのチューブリンが筒状に重合することにより直径25ナノメートルの管状の繊維を形成する。キネシンやダイニンなどモータータンパク質が動くレールとして働く。
令和3年4月20日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/04/20-1.htmlがん光細菌療法の新生
がん光細菌療法の新生
ポイント
- 高い腫瘍標的能を有し、近赤外光によって様々な機能を発現する光合成細菌の発見
- 当該細菌を活用したがん診断・治療技術の創出
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)先端科学技術研究科物質化学領域の楊 羲研究員、博士前期課程学生の小松 慧、博士後期課程学生のラグー シータル、都 英次郎准教授らは、光合成細菌を使ってマウス体内のガン細胞の検出と治療を同時に可能にする技術の開発に成功した。 世界的にがんの罹患者数、死亡者数は増加している。体内の高精度ながん細胞検出技術ならびにがん細胞を根絶可能な治療法の開発は、がん医療における究極の目的である。 本研究では、低酸素状態の腫瘍環境内で高選択的に集積・生育・増殖が可能で、かつ生体透過性の高い近赤外レーザー光*1によって様々な機能を発現する非病原性の紅色光合成細菌*2を発見した(図1)。また、当該細菌の特性を活用することで体内の腫瘍を高選択的に検出し、標的部位のみを効果的に排除することが可能な "がん光細菌療法"という新しい概念・技術を創出することに成功した。 本研究で提案する概念・技術は、ナノ・マイクロテクノロジー、光学、微生物工学といった幅広い研究領域に貢献し、将来的に先進医療分野において世界の科学・技術をリード可能な革新的がん診断・治療法に成り得ると期待している。 本成果は、2021年2月15日にナノサイエンス・ナノテクノロジー分野のトップジャーナル「Nano Today」誌(Elsevier発行)のオンライン版に掲載された。なお、本研究成果は日本学術振興会科研費[基盤研究A、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)]の支援のもと行われたものである。 |
図1. がん光細菌療法の概念。NIR: 近赤外、FL: 蛍光、ROS: 活性酸素種、PA: 光音響。 |
【論文情報】
| 掲載誌 | Nano Today(Elsevier発行) |
| 論文題目 | Optically activatable photosynthetic bacteria-based highly tumor specific immunotheranostics |
| 著者 | Xi Yang, Satoru Komatsu, Sheethal Reghu, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2021年2月15日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1016/j.nantod.2021.101100 |
【関連研究情報】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、先端科学技術研究科物質化学領域の都研究室では、近赤外レーザー光により容易に発熱するナノ材料の特性(光発熱特性)に注目し、これまでに、"三種の神器"を備えた多機能性グラフェン(2020年4月23日 JAISTからプレス発表)、ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ(2020年8月17日 JAISTからプレス発表)などの光がん療法を開発している。
【用語解説】
*1 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
*2 紅色光合成細菌
近赤外光を利用して光合成を行う細菌。水の分解による酸素発生は行わない。
令和3年2月16日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2021/02/16-1.html環境・エネルギー領域の大平教授の研究課題がNEDO「太陽光発電主力電源化推進技術開発」に採択
環境・エネルギー領域の大平 圭介教授の研究課題が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「太陽光発電主力電源化推進技術開発」の研究開発項目(I)太陽光発電の新市場創造技術開発/(ⅱ)壁面設置太陽光発電システム技術開発に採択されました。
太陽光発電の主力電源化に向けて、需要地に近接しているが従来の技術では太陽光発電の導入が進んでいなかった場所を利用可能にするための太陽光発電システム開発や、長期安定的な事業運営確保として現在顕在化している課題解決のための技術開発が求められています。
NEDOではこれらの開発を推進するため、「太陽光発電主力電源化推進技術開発」において(i)フィルム型超軽量太陽電池の開発、(ii)壁面設置太陽光発電システム技術開発、(iii)移動体用太陽電池の研究開発での公募を実施し、今回、33テーマを採択しました。
*詳しくは、NEDOホームページをご覧ください。
https://www.nedo.go.jp/koubo/FF3_100292.html
■研究課題名
多機能・高品質薄膜の利用による壁面太陽電池モジュールの長寿命化
■研究期間
2020年7月~2023年3月(継続の可能性あり)
■研究概要
建造物の壁面に設置するタンデム型太陽電池モジュールの発電性能および意匠性に関し、建造物と同等の寿命を達成するための要素技術開発を行う。本学で長年研究を行っている、触媒化学気相堆積(Cat-CVD)法で形成する窒化Si膜は、100℃程度の低温製膜でも高い膜密度が得られ、膜自体の長期安定性と、高いガスバリア性能を発揮する。この窒化Si膜をタンデムセル上に形成し、タンデムセルの色調安定化と水蒸気浸入による発電性能低下の抑止を達成するための基盤技術確立を目指す。また、再委託先である岐阜大学では、酸化Si膜を塗布法によりモジュールのカバーガラス上に形成し、防汚性能、反射低減性能等を付与する検討を行う。
■採択にあたって一言
建造物の壁面に設置する太陽電池モジュールの開発は、いわゆるネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を実現するために、大変重要な研究です。今回、同時に採択された新潟大学、青山学院大学、再委託先である岐阜大学とも連携の上、本学の技術の強みを生かしつつ研究開発を進め、太陽光発電の普及拡大に貢献していきたいと思います。
令和2年7月31日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2020/07/31-1.html「光で細胞内遺伝子発現を制御することに成功」-核酸医薬への応用に期待-
「光で細胞内遺伝子発現を制御することに成功」
-核酸医薬への応用に期待-
ポイント
- 超高速光架橋型人工核酸(CNVD)を用いることで遺伝発現を制御可能
- 悪性遺伝子の発現抑制にも応用可能
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科生命機能工学領域の藤本健造教授は、超高速光架橋型人工核酸(CNVD)を用いることにより細胞内の標的遺伝子の発現を制御することに成功した。
遺伝子の過剰発現*1は細胞の異常増殖などを引き起こし、細胞の癌化と深く関係している。核酸医薬*2は標的遺伝子に直接作用し、発現量を抑制することができるため、癌の治療薬として注目されているとともに、高い選択性を有するため副作用の低減も期待できる。しかし、これまで様々な人工核酸を用い、遺伝子の過剰発現を抑制する試みが行われてきたが、いまだ完全に抑制することはできていない。 今回藤本研究室のグループは、乳癌由来の培養細胞であるHeLa細胞を用い、モデル系である標的遺伝子の発現を、超高速光架橋型人工核酸*3(CNVD)を組み込んだDNAプローブ*4を用いることによりほぼ完全に抑制することに成功した。光照射の場所やタイミングにより遺伝子発現を制御することができるため、疾患部位のみに薬効を発揮させることができる。また、光照射エネルギーにより遺伝子発現量を制御することができるため、細胞内遺伝子発現を最適な量に調節することが可能となった。これにより従来は困難であった発現量の調節も可能となる。 今後、遺伝子の異常発現を伴う細胞の癌化に対し、有用な治療法となると期待できる。また、超高速光架橋核酸(CNVD)は日華化学株式会社より販売されており、本研究成果の普及に大きく寄与することが期待される。 本成果はWiley誌Chemistry-an Asian Journal(インパクトファクター 3.69)に表紙掲載論文として6月1日に公開される。 |
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細胞内での様子を表したイメージ図、光照射により超高速光架橋型人工核酸を含むDNAがターゲットmRNAに光架橋する様子 |
| 図1.光照射による細胞内遺伝子発現の光制御しているイメージ図 光応答性人工核酸を組み込んだDNAプローブを細胞内に導入し、光照射により細胞内遺伝子発現を抑制することに成功している。特に照射エネルギーを調節(リモコン)することにより発現量を制御することができ、リモートでも遺伝子発現量の調節に成功した。 |
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図2. 光架橋型人工核酸を組み込んだDNAプローブによる遺伝子発現の抑制
光架橋型人工核酸を組み込んだDNAプローブを細胞内に導入し、光照射を行うと、標的のメッセンジャーRNA(mRNA)と光架橋する。それにより翻訳を阻害するため、遺伝子発現を抑制することが可能となる。

図3. 超高速光架橋型人工核酸(CNVシリーズ)
超高速光架橋型人工核酸(CNVシリーズ)は数秒の光照射でDNAやRNA間をつなげることができる。世界最高速を誇るCNVシリーズは藤本研究室オリジナルな分子であり、日華化学株式会社より販売が開始されている。
<今後の展開>
細胞の癌化の多くは遺伝子が傷つき、遺伝子の発現パターンが変化したことを原因とする。今回、光照射による発現量の制御は、遺伝子の過剰発現を伴う細胞の癌化に対し、その発現量を適切な範囲内に調節できる可能性を有しており、近年注目されている核酸医薬としての展開が期待される。
<用語解説>
*1 遺伝子の過剰発現
DNAにコードされた多くの情報はRNAへと転写された後、たんぱく質へ翻訳される。通常、この一連の流れは精密に制御されているが、何らかの原因でストッパーが外れたかのようにこのサイクルが回り続けることがある。これを遺伝子の過剰発現と呼び、細胞の癌化の一つの原因でもある。
*2 核酸医薬
医薬品の一つの種類であり、DNAやRNAなどを直接医薬品として用いる薬剤の総称。核酸類の高い配列認識能を利用し、標的とする分子のみに作用する分子標的薬の一種。これまで主流とされてきた抗体医薬とは異なり、副作用の低減が期待できる。近年、新たな医薬品として注目されており、すでに市販されているものもいくつかある。
*3 超高速光架橋型人工核酸
DNAやRNAなどの核酸同士を連結することができる人工核酸であり、有機化学的に合成される。特に、藤本研究室が報告しているCNVシリーズは数秒の光照射により反応する世界最高速の光架橋型人工核酸である。
*4 DNAプローブ
短鎖の合成DNAであり、今回の実験ではGFPのmRNAのアンチセンス核酸として機能する。配列を自由に設計することができるため悪性遺伝子に対し、設計することでその遺伝子発現を抑制することができる。
<論文>
| 掲載誌 | Chemistry an Asian Journal |
| 論文題目 | Strong Inhibitory effects of antisense probes on gene expression through ultrafast RNA photo-crosslinking |
| 著者 | Kenzo Fujimoto, Hung Yang-Chun, Shigetaka Nakamura |
| DOI | 10.1002/asia.201801917 |
令和元年6月1日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/06/01-1.html高分子の相転移を利用した人工光合成に成功-可視光エネルギーによる高効率な水素生成を達成-
高分子の相転移を利用した人工光合成に成功
-可視光エネルギーによる高効率な水素生成を達成-
ポイント
- 実際の光合成に習った光エネルギー変換システムの構築
- 高分子の可逆的相転移挙動を利用して高効率な水素生成に成功
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、先端科学技術研究科環境・エネルギー領域の桶葭興資講師らは東京大学大学院の吉田亮教授と共同で、電子伝達分子を持つ刺激応答性高分子を合成し、高分子の相転移によって電子伝達を加速させる人工光合成システムを構築した。
石油ショック以来、持続可能社会の実現に向けて人工光合成*1が注目を浴び、様々なシステムが考案されてきた。しかし、実際の葉緑体が持つ光合成システムにあるような、水分子との連動的な電子伝達組織の構築が未だ提案されてこなかった。これに対し本研究では、機能分子間の電子伝達に駆動力が生じるよう、高分子の相転移を利用した人工光合成システムを設計した。 まず、刺激応答性高分子*2のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(poly(NIPAAm))*3に電子伝達分子ビオロゲン*4を導入すると、その酸化/還元*5状態によって高分子の相転移*6温度が異なることを見出した。この高分子poly(NIPAAm-co-Viologen) は一定温度下で酸化/還元変化により可逆的なコイル - グロビュール転移*7を伴い、加速的に電子伝達して水素を生成する。光エネルギーが与えられた際、光励起電子をビオロゲン分子が受けると、その周辺の高分子は疎水的となる。これが、界面活性剤で分散された触媒ナノ粒子近傍の疎水的な空間に潜り込み、電子を渡して水素生成する。実際、可視光エネルギーを用いた水素生成は、相転移温度付近で10%を超え、高い量子効率が達成された。 従来の溶液システムによる人工光合成では、液相中で機能性分子や触媒ナノ粒子が乱雑な分散状態のため電子伝達も乱雑となり、反応が進むにつれて分子凝集による機能低下が問題であった。これとは大きく異なり、粒子間に高分子が介在することで粒子凝集を抑制すると同時に、高分子の相転移によって電子伝達の加速が得られた。 高分子相転移現象は、ソフトアクチュエータ*8やドラッグデリバリーシステム*9の開発に広く利用されてきたが、今回の光エネルギー変換への利用は画期的である。本成果により、可視光エネルギーによる人工光合成システム「人工葉緑体」の構築が期待される。 ![]() 本成果は、4月25日付WILEY発行Angewandte Chemie International Edition (オンライン版) に掲載された。なお、本研究は科学研究費補助金などの支援を受けて行われた。 |
<今後の展開>
可視光エネルギーにより水を完全分解 (2H2O + hν → 2H2 + O2) する反応場として、高分子網目中に機能分子を配置した光エネルギー変換システムを構築することが期待される。
<論文情報>
| 掲載誌 | Angewandte Chemie International Edition (WILEY) |
| 論文題目 | Polymeric Design for Electron Transfer in Photoinduced Hydrogen Generation through a Coil-Globule Transition |
| 著者 | Kosuke Okeyoshi, Ryo Yoshida |
| 掲載日 | 2019年4月25日付、オンライン版 |
| DOI | 10.1002/anie.201901666 |
<用語解説>
*1. 人工光合成
光合成を人為的に行う技術のこと。自然界での光合成は、水・二酸化炭素と、太陽光などの光エネルギーから化学エネルギーとして炭水化物などを合成するものであるが、広義の人工光合成には太陽電池を含むことがある。自然界での光合成を完全に模倣することは実現していないが、部分的には技術が確立している。
*2. 刺激応答性高分子
温度やpHなど外部刺激に応答して可逆的に親・疎水性など物理化学的性質を変化させる高分子のこと。
*3. ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)
この高分子水溶液は、32度付近で下限臨界温度型の相転移挙動を示す。最も広く研究されている刺激応答性高分子。
*4. ビオロゲン
4,4'-ビピリジンの窒素原子上をアルキル化したピリジニウム塩のこと。農薬の他、生物学や光触媒反応、エレクトロクロミック材料などの研究で使用されている。
*5. 酸化/還元
酸化還元反応とは化学反応のうち、反応物から生成物が生ずる過程において、原子やイオンあるいは化合物間で電子の授受がある反応のこと。
*6. 相転移
ある系の相が別の相へ変わることを指す。熱力学または統計力学的において、相はある特徴を持った系の安定な状態の集合として定義される。
*7. コイル - グロビュール転移
分子鎖が広がったランダムコイル状態から凝集したグロビュール状態をとること。またその逆の状態変化のこと。今回の場合、高分子がランダムコイル状態で親水的、グロビュール状態で疎水的な性質を持つ。
*8. ソフトアクチュエータ
軽量で柔軟な材料が変形することによりアクチュエータとして機能する材料、素子、デバイスのこと。
*9. ドラッグデリバリーシステム
体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのこと。
令和元年5月15日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/05/15-1.html平成29年度 ナノテクノロジープラットフォーム公開講座「分子の構造を探る-NMR(核磁気共鳴)分光装置とMS(質量分析)装置の測定と解析-」
本学では、地域社会へ開かれた大学を目指す一環として、下記のとおり公開講座を開講いたします。
| 日 時 | 平成30年3月1日(木)NMR 10:00~16:30 平成30年3月2日(金)MS 10:00~16:30 ※どちらか1日のみの参加でも可 |
| 場 所 | 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター C1-26 (石川県能美市旭台1-1) |
| テーマ | 分子の構造を探る-NMR(核磁気共鳴)分光装置とMS(質量分析)装置の測定と解析- |
| 講 師 | 生命機能工学領域 教授 大木 進野 環境・エネルギー領域 講師 大坂 一生 ナノマテリアルテクノロジーセンター 主任技術職員 宮里 朗夫 ナノマテリアルテクノロジーセンター 研究員 五十棲 規嘉 |
| 内 容 | 初学者の方にもわかりやすく,NMR とMS で分子の構造を調べる手法や解析方法を解説します。 また、実際に装置を操作して測定を体験していただきます。 |
| 対 象 | 企業・他大学・高専等の研究者・技術者 |
| 定 員 | 5~10名 |
| 受講料 | どちらか1日のみの参加の場合 ¥6,200 円(税込) 両日参加の場合 ¥7,200 円(税込) |
| 申込方法 | 受講希望の方は、 ①氏名(ふりがな) ②勤務先等・職名 ③受講の目的 ④本講座に期待すること ⑤書類送付先 ⑥電話番号 ⑦メールアドレス を明記の上、E-mail またはFAXでお申し込みください。 ● 申込書はこちらから |
| 申込締切 | 平成30年2月13日(火)まで【先着順 定員に達し次第締切】 |
| お申込・ 問合わせ先 |
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 文部科学省ナノテクノロジープラットフォ-ム事業 分子・物質合成プラットフォーム事務局 〒923-1292 石川県能美市旭台1-1 TEL:0761-51-1449 FAX:0761-51-1455 E-mail:nano-net@jaist.ac.jp |




