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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。研究員のSINGHさんが第69回高分子討論会において優秀ポスター賞を受賞
研究員のSINGH, Apekshaさん(物質化学領域・松見研究室)が第69回高分子討論会において優秀ポスター賞を受賞しました。(ポスター発表時は本学博士前期課程2年、令和2年9月博士前期課程修了。)
高分子討論会は、高分子科学に携わる研究者・技術者が研究成果の発表を行い、発表内容に関し、参加者と充実した討論およびコミュニケーションができる場を提供することを方針とし、開催されます。今回はWEBEXを用いてオンラインで開催されました。
■受賞年月日
令和2年9月18日
■発表題目
全固体ナトリウムイオン二次電池用難燃性電解質の設計と高速充放電特性
(Design of Non-flammable Electrolyte for All-solid-state Sodium-ion Batteries and Its High-rate Performance)
■研究者、著者
Apeksha Singh,Rajashekar Badam,Noriyoshi Matsumi
■受賞対象となった研究の内容
今日、電気自動車用途をはじめとする次世代電池の創出に向けて、リチウム資源の近い将来の枯渇が予想されるなか、元素戦略的な観点からナトリウムイオン二次電池の開発の重要性が認識されている。リチウムイオン二次電池同様、その開発においては高い放電容量のみならず、高速充放電能の実現に関心が高まっている。本研究においては有機ホウ素系電解質を用いた全固体ナトリウムイオン二次電池を構築し、その特性を評価した。有機ホウ素系電解質に由来する好ましい界面被膜の特性により、高速充放電能と高い充放電サイクル耐久性が観測され、当該分野の発展にとって興味深い知見となった。
■受賞にあたって一言
Firstly, I would like to thank my supervisor Prof. Noriyoshi Matsumi, who has given me valuable suggestions, and heartfelt encouragement throughout my research project. I would like to acknowledge the important role of Dr. Rajashekar Badam, who apart from his constant motivation, has provided me with the working knowledge and practical experience of electrochemical energy storage systems. I'm thankful to MEXT and Elements Strategy Initiative for Catalysts & Batteries (ESICB) for financial support. About my research, I believe, to attain a balance between sustainable energy generation and energy consumption, efficient fast-charging batteries are imperative. We now live in a world where energy storage has become equally important due to the intermittent nature of sustainable energy sources, and thou shall continue to work on this meaningful research.
令和2年10月20日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2020/10/20-1.htmlリチウムイオン2次電池の長期的安定作動を指向した高耐久性負極バインダーの開発に成功
リチウムイオン2次電池の長期的安定作動を指向した
高耐久性負極バインダーの開発に成功
ポイント
- リチウムイオン2次電池の長期的安定作動を可能にする高耐久性負極バインダーの開発に成功した。
- 500回の充放電サイクルを経ても95%の容量維持率を示した。
- 本バインダー材料を用いた系ではPVDF系で顕著であった電解液の電気分解が抑制された。
- 充放電サイクル後に、本バインダー材料を用いた電池系ではPVDF系と比較して大幅に低い内部抵抗が観測された。
- 各種電気化学測定により、負極内部のリチウムイオンの拡散性に優れていることが分かった。
- SEI被膜が薄く界面抵抗が低いことが示唆され、充放電後に生成するLiFの量がPVDF系の5分の1に減少したことがイオンの拡散性とSEIの力学特性の両面に寄与したと考えられる。
- 電極―電解質界面抵抗*1を低減できる高性能バインダーとして、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見紀佳教授、ラージャシェーカル バダム助教、テジキラン ピンディジャヤクマール(博士後期課程学生)はリチウムイオン2次電池*2の耐久性を大幅に向上させる負極バインダー材料(図1、図2)の開発に成功した。
リチウムイオン2次電池は一般に長期的な使用に伴い充放電能力が経時的に劣化することは、広く知られており、ユーザーレベルでも広範に問題が認識されている。その原因は極めて多様であるが、様々な電極内における副反応によるバインダーを含む電極複合材料の変性、電極/集電体の接着力の劣化が主要因の一つと考えられる。 本負極バインダーは、市販のポリ(ビニルベンジルクロリド)を1-アリルイミダゾールとジメチルホルムアミド中80oCで48時間反応させてイオン液体構造を形成させた後に、水溶液中でLiTFSIとのイオン交換を行うことにより合成した(図2)。 開発した高分子化イオン液体型のリチウムイオン2次電池用バインダーは、長く検討されてきたポリフッ化ビニリデン(PVDF)と比較すると、 LUMO*3が低い電子構造的特徴を有する(表1)。バインダー材料が有するアリルイミダゾリウム構造は、PVDFやエチレンカーボネート(EC)が負極側で還元分解する前にイミダゾリウム環C2位が還元を受けカルベンを形成する。その結果ECの過剰な分解による厚いSEI被膜の形成は抑制される。また、アリルイミダゾリウム基の存在により、サイクリックボルタンメトリー*4後に見積もられたリチウムイオンの拡散係数はPVDF系と比較して41%高い値となり、結果として充放電レート特性も改善された。また、リチウム脱挿入ピークの電位差(オーバーポテンシャル)は高分子化イオン液体系において200.3 mVとPVDF系と比較して89.6 mV減少し、より容易なリチウムイオンの拡散を支持する結果となった(図3)。充放電後の電池セルの界面抵抗も高分子化イオン液体系において大幅に低い値を示した(36.39Ω;PVDF系では94.89Ω)(図4)。 その結果としてイオン液体系では500回の充放電サイクルを経ても95%の容量維持率を示し、非常に優れた耐久性が明らかとなった(図5)。 原因を解明するため、500回の充放電サイクル後に負極のXPS測定を行ったところ、高分子化イオン液体系では1.5倍のグラファイティックカーボンのピークが観測された。また、充放電後も負極内部のバインダー由来のN1sピークを観測可能であり、これらの結果はいずれも薄いSEI被膜の形成を示唆した。さらに興味深い観測としては、高分子化イオン液体系ではLi2CO3とLiPF6との反応の結果生成するLiFの量がPVDF系と比較して5分の1程度であった。LiF生成の抑制は、負極内のリチウムイオンの拡散性やSEIの力学的安定性の改善において、重要な結果に結び付いたと考えられる。 なお本研究は、文部科学省元素戦略プロジェクト拠点形成型(京都大学) JPMXP0112101003の支援のもと実施された。 |
成果はACS Applied Energy Materials (米国化学会)オンライン版に2月11日に掲載された。
題目: Allylimidazolium-Based Poly(ionic liquid) Anodic Binder for Lithium Ion Batteries with Enhanced Cyclability
著者: Tejkiran Pindi Jayakumar1, Rajashekar Badam1 and Noriyoshi Matsumi1, 2 *
(1: JAIST, 2: 京大触媒・電池元素戦略)
<今後の展開>
セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつける。
イオン液体構造の多様性の視点から、構造をさらに検討し最善の特性の発現に向けたチューニングを行う。
電極―電解質界面抵抗を大幅に低減できる機能性高分子バインダーとして、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が見込まれる。

図1.Liイオン2次電池における負極バインダー

図2. 高分子化イオン液体バインダーの合成法
| Chemical Moiety (Octameric units except EC) | ELUMO (eV) | EHOMO (eV) | Bandgap (eV) |
| PVBCAImTFSI (PIL) | -11.75 | -16.28 | 4.53 |
| PVDF | 0.27 | -8.76 | -9.03 |
| EC | 0.63 | -8.23 | -9.03 |
表1.高分子イオン液体(PIL)、PVDF、ECのHOMO*5、LUMOエネルギー準位

図3.BIAN型高分子(左)及びPVDF(右)を用いて構築したハーフセルのサイクリックボルタモグラム*4(第一サイクル)

図4.BIAN型高分子(左)及びPVDF(右)を用いて構築したハーフセルの充放電サイクル後の内部インピーダンススペクトル

図5.(a) 1st、100th、300th、500thサイクルにおける高分子化イオン液体系の充放電曲線、(b) 高分子化イオン液体系及びPVDF系のサイクル特性
<用語解説>
*1 電極―電解質界面抵抗
エネルギーデバイスにおいては一般的に個々の電極の特性や個々の電解質の特性に加えて電極―電解質界面の電荷移動抵抗がデバイスのパフォーマンスにとって重要である。交流インピーダンス測定を行うことによって個々の材料自身の特性、電極―電解質界面の特性等を分離した成分としてそれぞれ観測し、解析することが可能である。
*2 リチウムイオン2次電池
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
*3 LUMO
電子が占有していない分子軌道の中でエネルギー準位が最も低い軌道を最低空軌道(LUMO; Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
*4 サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム)
電極電位を直線的に掃引し、系内における酸化・還元による応答電流を測定する手法である。電気化学分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。
*5 HOMO
電子が占有している分子軌道の中でエネルギー準位が最も高い軌道を最高被占軌道(HOMO; Highest Occupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
令和2年2月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/02/17-1.html物質化学領域の松見教授がFiMPART2019においてPadmashri Dr. Baldev Raj FiMPART Distinguished Researcher Awardを受賞
2019年12月15日~18日に、インドのアーメダバードで開催されたFiMPART (Frontier in Materials, Processing, Application, Research and Technology)2019において、松見 紀佳教授(物質化学領域)がPadmashri Dr. Baldev Raj FiMPART Distinguished Researcher Awardを受賞しました。
FiMPARTは、材料研究の様々な分野について議論する場を提供し、それらの分野における技術革新を目的に開催されます。FiMPART2019は、2015年のハイデラバード(インド)、2017年のボルドー(フランス)に続いて3回目の開催となり、アーメダバード市長の開会挨拶のもと、百数十名が参加しました。
今回、インドの物理学者で一昨年逝去し、インド首相が追悼の意を表したPadmashri Dr. Baldev Rajの名を付した賞が設けられ、運営委員会メンバーからの6名の候補者の推薦をもとに協議が行われ、受賞者が選出されました。
■受賞年月日
令和元年12月17日
■受賞にあたっての一言
この度、このような賞を頂き大変光栄と存じます。近年の研究成果はこれまでに本研究室に関わったスタッフや学生諸氏の貢献が大きく、この場を借りて御礼申し上げます。また、JST未来社会創造事業による研究助成にも併せて感謝の意を表します。今後さらに良い成果を生み出せるようチームとして努力を続ける所存です。

令和2年1月10日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2020/01/10-1.html物質化学領域の松見教授らの論文がJournal of Applied Polymer Science誌の表紙に採択
物質化学領域の松見 紀佳教授、学生のGUPTA, Surabhiさん(博士後期課程3年、物質化学領域、松見研究室)らの論文がJournal of Applied Polymer Science誌の表紙に採択されました。なお、本研究成果はNEDO/TherMAT(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)の支援のもと、トヨタ自動車株式会社と行われた共同研究によるものです。
■掲載誌
Journal of Applied Polymer Science
■著者
Surabhi Gupta, Tomoharu Kataoka, Masao Watanabe, Mamoru Ishikiriyama, Noriyoshi Matsumi
■論文タイトル
Fine‐tuning of phase behavior of oxazoline copolymer-based organic-inorganic hybrids as solid‐supported sol-gel materials
■論文概要
LCST(下限臨界溶液温度)現象はドラッグデリバリーシステムをはじめ生医学的な応用を中心に多年にわたり活発に研究されているが、本コンセプトを固体状態の材料に拡充することにより感温性を有するスマートマテリアルの創出につながる可能性がある。LCSTを示すポリオキサゾリン誘導体の存在下でアルコキシシランのゾル―ゲル縮合を行い種々の有機・無機ハイブリッド材料を作製したところ、示差走査熱量分析により得られた各材料は熱的相転移を示すことが分かった。また、材料中におけるポリオキサゾリン含有量の相転移温度への依存性を示す相図は、水溶液中におけるポリオキサゾリン濃度の影響を示す相図と類似し、同様の現象が固体状態で発現していることが示唆された。
論文詳細:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/app.48163

令和元年8月8日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2019/08/08-1.html世界最高水準の(有機系)Liイオン伝導体 ―有機系擬固体電解質の作製に成功―
世界最高水準の(有機系)Liイオン伝導体
―有機系擬固体電解質の作製に成功―
北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科・環境エネルギー領域の金子 達雄教授と物質化学領域の松見 紀佳教授らは、バイオ分子から10-2 Scm-1弱のイオン伝導性を持つ擬固体電解質の作製に世界で初めて成功しました。
バイオ由来材料は植物などの生物に由来する再生可能な有機性資源(バイオマス)を原材料とする材料で、二酸化炭素(CO2)削減と廃棄物処理に有効であるとされていますが、未だ使い捨て分野で使用されているのが現状であり、用途は限られています。一方その高価格を想定した場合には、高付加価値を持つ用途への展開が想定されます。今回、東京大学でバイオ分子として数年前に見出された3-アミノー4-ヒドロキシ安息香酸を化学的にアレンジすることでポリベンズイミダゾールという超高耐熱高分子を合成し、その一部をホウ素系物質で化学修飾することでイオン化に成功しました。イオン化されたポリベンズイミダゾール(iPBI)とイオン液体をコンポジット化することでペースト状の固体電解質を得ました。その10%重量減少温度は340℃を超えるため高耐熱な擬固体電解質であり、かつイオン伝導性8.8x10-3Scm-1という有機系固体としては極めて高い値であることが分かりました。さらに、このイオン伝導のほとんどがLiイオン伝導の寄与によるものであることも分かりました。このメカニズムはiPBI鎖の持つ特別な電子状態によりLiイオンがあまり強く結合していないために印加電圧に敏感に応答するためと考えています。さらに、直線走査ボルタンメトリーにより4.5Vまでの電位窓を有することが分かりました。
さらに、この擬固体電解質の有用性を探るために、リチウムイオン二次電池セルを作製しその充放電特性を調べました。その結果、擬固体系ながらLi/電解質/Siセルにおいて0.1Cで約1300mAhg-1の放電容量を示しました。これにより未来指向型の次世代自動車に必須とされる高性能二次電池や、高電圧を必要とする他のエネルギーデバイスの要素技術として有効と考えられます。
本成果は、英国王立化学会誌Journal of Materials Chemistry A(インパクトファクター9.9)に1/28 午前10時(英国時間)オンライン公開されました。

平成31年1月29日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/01/29-1.html学生のSurabhi GuptaさんがISPE-16において英国王立化学会 Energy & Environmental Science Poster Prizeを受賞
学生のSurabhi Guptaさん(博士後期課程2年、物質化学領域・松見研究室)がISPE-16(The 16th International Symposium on Polymer Electrolytes)において英国王立化学会 Energy & Environmental Science Poster Prizeを受賞しました。
ISPEは各種エネルギーデバイスなど高分子電解質に関連した様々な最先端のトピックスを扱う学会で2年に一度開催されており、1987年に英国で開催されてから今回の開催で30周年の節目を迎えました。
今回は前々回のオーストラリア、前回のスウェーデンに続いて日本における20年ぶりの開催となりました。学会のボードメンバーにはポリエチレンオキシドのイオン伝導現象を発見したWright博士、Liイオン二次電池の概念を先駆けて提唱したArmand博士らが含まれ、分野の最高水準の研究者たちと交流が可能な貴重なプラットフォームとなっています。
■受賞年月日
平成30年6月28日
■論文タイトル
Gold NPs Incorporated Thermo-sensitive Materials Using PNIPAM and Polymerizable Ionic Liquids (Surabhi Gupta and Noriyoshi Matsumi)
■論文概要
ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)に代表される感温性高分子はそのLCST挙動によりセンサーやドラッグデリバリー、多様なスマートマテリアルへの応用が展開されている。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)へのイオン液体構造の導入はLCST転移温度のチューニングを可能にすることを以前に報告しているが、本系ではさらに金ナノ粒子を系に導入することによりLCST転移温度の上昇が観測されることを見出した。金ナノ粒子の導入は転移温度における高分子鎖のコンフォメーション変化を阻害し、相転移の発現に必要な温度を高める結果となった。本分子設計概念は今後LCSTを示す多様な高分子材料や金属ナノ粒子に応用可能と考えられる。
■受賞にあたって一言
I am pleased, honored and humbled to accept the Best Poster ISPE 2018 award, given by RSC, making it more special. This is my first appreciation of research and I am feeling extremely happy. I dedicate this award to my Professor Noriyoshi Matsumi, at JAIST who is the best teacher and an extremely supportive guide. A heartfelt thanks to my husband Dr. Ankit Singh and my families who is my encouragement and support-system. This award inspires me to be more focused and dedicated to work for more fruitful science.


平成30年7月5日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2018/07/05-1.html金属を含まない極めて高い電気化学的耐久性を示す有機高分子系酸素還元反応触媒(カソード電極材料)の開発に成功
金属を含まない極めて高い電気化学的耐久性を示す有機高分子系
酸素還元反応触媒(カソード電極材料)の開発に成功
ポイント
- 1000回の電気化学サイクルを経ても高い電気化学的安定性を示す非金属型有機高分子系酸素還元反応触媒(カソード電極材料)の開発に成功した。同様の条件で失活する市販品とは対照的な特性である。
- 得られた材料は明確な構造を有しており、酸素還元反応の機構の解明にも寄与するアプローチである。
- 水溶液系のみならず、非水系(Li塩溶存下)においても優れた酸素還元反応触媒活性を示し、燃料電池のみならず、リチウム―空気電池をはじめとする金属―空気電池への適用にとっても有用と考えられる。
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見 紀佳教授、サイゴウラン パトナイク大学院生、ラーマン ヴェーダラージャン(元JAIST助教、現インド国立燃料電池研究所)らの研究グループはビスアセナフテンキノンジイミン(BIAN)骨格を有する新規π-共役系高分子(BP)(図1)を開発し、金属を含まない本材料が優れた酸素還元反応特性及び高い電気化学的耐久性を示すことを見出した。 今日、酸素還元反応は燃料電池及びリチウム―空気電池*1のデバイス作動における律速段階として知られており、その効率がデバイスの性能を左右することが広く認識されている。 成果は米国化学会のACS Applied Energy Materials オンライン版に3/15に掲載された。 |
<今後の展開>
本研究では、金属を含まない新たなカテゴリーの明確な構造を有する高分子系酸素還元反応触媒を戦略的に創出することに成功した。本アプローチでは今後合成手法のバリエーションによる更なる構造制御や異なる特性を有した活性点の随意なデザインが可能と考えられる。高温でのアニーリング処理が必要な材料と比較して厳しい条件を必要としない利点があり、これまでに報告されている非金属系酸素還元触媒として知られる最善の材料と同等の特性を示していることから、更なる発展が期待できる。
燃料電池及びリチウム―空気電池用カソード電極材料としての展開が期待される。

図1 BIAN構造を有するπ-共役系高分子(BP)の構造

図2 窒素雰囲気下及び酸素雰囲気下におけるGO/BPのサイクリックボルタモグラム
(At 50 mV/sec in 0.1M KOH (RE: Hg/HgO, CE:Pt wire, WE: Catalyst coated GCE)

図3 1000回の電気化学サイクルを経たBIAN系高分子の電気化学的安定性の検討

図4 1000回の電気化学サイクルを経たVulcan-XC(市販品;白金/炭素系触媒)の電気化学的安定性の検討

図5 DFT計算によるBIAN系高分子の最適化構造と電荷分布
<用語解説>
※1)リチウム―空気電池
リチウム―空気電池は金属リチウムを負極活物質、酸素を正極活物質とした充放電可能な電池である。リチウムイオン2次電池と比較すると、理論的に貯蔵可能なエネルギー容量は10倍程度と極めて高い。正極の活物質として空気中の酸素を利用すれば正極は容量を制限しないことから、次世代電池として多大な期待を集めている。
※2)サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム)
電極電位を直線的に掃引し、系内における酸化・還元による応答電流を測定する手法である。電気化学分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。
平成30年3月19日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2018/03/19-1.html修了生のRajashekar Badamさんと物質化学領域の松見教授らの論文がSpringer-Nature刊行のPolymer Journal誌のFront Coverに採択
修了生のRajashekar Badamさん(平成28年9月博士後期課程修了、物質化学領域・松見研究室)と物質化学領域の松見 紀佳教授らの論文がSpringer-Nature刊行のPolymer Journal誌のFront Coverに採択されました。
■掲載誌
Polymer Journal (Springer-Nature)
■著者
Rajashekar Badam、Raman Vedarajan、Noriyoshi Matsumi
■論文タイトル
3D-Polythiophene Foam on a TiO2 Nanotube Array as a Substrate for Photogenerated Pt Nanoparticles as an Advanced Catalyst for the Oxygen Reduction Reaction
■論文概要
燃料電池やリチウム―空気電池における律速段階として効率の改善が図られている酸素還元反応においては、炭素/白金系触媒を中心にした検討が進められている。しかし、炭素系材料の電気化学的安定性は概してあまり高いものではなく代替系の開発が期待されている。今回は二酸化チタンナノチューブ上にイオン液体をベクターとしてチオフェンを電解重合させることにより二酸化チタンナノチューブを鋳型としたハニカム状ポリチオフェンを生成させた。得られた有機・無機ハイブリッド電極上に犠牲試薬を用いない光還元法により白金ナノ粒子を生成させ、複合電極の酸素還元触媒活性について検討した。得られた材料は優れた酸素還元触媒活性を示し、インピーダンス測定結果の解析からとりわけ低い電極―電解質界面の電荷移動抵抗を有することが明らかとなった。
参考URL : https://www.nature.com/pj/volumes/50/issues/2
平成30年2月15日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2018/02/16-1.html従来型バインダー材料を代替するリチウムイオン2次電池用新型高性能バインダーの開発に成功
従来型バインダー材料を代替するリチウムイオン2次電池用
新型高性能バインダーの開発に成功
ポイント
- 従来型バインダー材料であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を代替し得る特性を有するリチウムイオン2次電池用新型高性能高分子バインダーの開発に成功した。
- 本バインダー材料を用いた系ではPVDFを用いた場合よりも約1.5倍高い放電容量が観測された。
- 本バインダー材料を用いた系ではPVDF系で顕著であった電解液の電気分解が抑制された。
- 充放電サイクル後に、本バインダー材料を用いた電池系ではPVDF系と比較して大幅に低い内部抵抗が観測された。
- 電極―電解質界面抵抗を低減できる高性能バインダーとして、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教(当時)らはリチウムイオン2次電池*1における電極―電解質界面抵抗*2を大幅に低減し、PVDFを代替し得る高機能性高分子バインダーの開発に成功した。 リチウムイオン2次電池用バインダー (図1)としては、長きにわたってポリフッ化ビニリデン(PVDF)が広範に用いられてきた。活発な基礎研究が展開されてきた正極・負極、電解質等の部材に常に脚光が当たってきた一方で、バインダーに関しては近年論文数は向上しているものの、十分に検討されていなかった。 |
<今後の展開>
セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつける。
電極―電解質界面抵抗を大幅に低減できる機能性高分子バインダーとして、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、金属―空気電池等)への応用が見込まれる。
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| 図1.Liイオン2次電池における負極バインダー | 図2.BIAN型高分子バインダーの設計概念 |
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| 図3.EC、PVDF及びBIAN型高分子バインダーのHOMO、LUMOエネルギー準位 | |
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| 図4.BIAN型高分子(左)及びPVDF(右)を用いて構築したハーフセルのサイクリックボルタモグラム | |
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| 図5.BIAN型高分子及びPVDFを用いて構築したハーフセルの充放電サイクル後の内部インピーダンススペクトル | |
<用語解説>
1.リチウムイオン2次電池
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
2.電極―電解質界面抵抗
エネルギーデバイスにおいては一般的に個々の電極の特性や個々の電解質の特性に加えて電極―電解質界面の電荷移動抵抗がデバイスのパフォーマンスにとって重要である。交流インピーダンス測定を行うことによって個々の材料自身の特性、電極―電解質界面の特性等を分離した成分としてそれぞれ観測し、解析することが可能である。
3.HOMO
電子が占有している分子軌道の中でエネルギー準位が最も高い軌道を最高被占軌道(HOMO; Highest Occupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
4.LUMO
電子が占有していない分子軌道の中でエネルギー準位が最も低い軌道を最低空軌道(LUMO; Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
5.サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム)
電極電位を直線的に掃引し、系内における酸化・還元による応答電流を測定する手法である。電気化学分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。
平成29年8月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/08/17-1.html最高水準のリチウムイオン輸率を示す液状電解質の開発に成功 ― 次世代高容量電極への活用に期待 ―
最高水準のリチウムイオン輸率を示す液状電解質の開発に成功
― 次世代高容量電極への活用に期待 ―
ポイント
- 高イオン伝導度と0.9以上の高リチウムイオン輸率を併せ持つ高性能リチウムイオン輸送性電解質の開発に成功した。
- 本電解質は電気化学的安定性においても優れ、実際にハーフセル(Li/電解質/Si)を構築し充放電試験を行ったところ、可逆的な充放電挙動と共に非常に高い放電容量(>2500mAh/g)を示した。
- 安全志向の高性能電解液として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が期待される。
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北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST) (学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教らはリチウムイオンを90%以上高選択的に輸送する液状電解質の開発に成功した。 |
<今後の展開>
セル構成や充放電条件を最適化し、最も優れた特性を有する蓄電デバイスの創出に結びつける。
安全志向の高性能電解液として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、マグネシウム電池、金属―空気電池等)への応用が見込まれる。

図1.
(a) イオン液体/メシチルジメトキシボラン体積比とリチウムイオン輸率の関係
(b) イオン液体/メシチルジメトキシボラン系(v/v = 1/2)の直線走査ボルタモグラム
(c) Li/電解質/Si型セル[1-アリル-3メチルイミダゾリウム FSI/メシチルジメトキシボラン(v/v = 1/2)]の充放電曲線 (0.3 C)
(d) Li/電解質/Si型セル[1-アリル-3メチルイミダゾリウム FSI/メシチルジメトキシボラン(v/v = 1/2)]の充放電における各サイクルのクーロン効率
<用語説明>
リチウムイオン2次電池:
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う2次電池。従来型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
リチウムイオン輸率:
系内におけるすべてのイオン種の移動において、リチウムイオンが移動する割合。系内を移動するイオンがすべてリチウムイオンである場合には1となる。
電位窓:
電解質材料を安定に使用可能な電位の範囲。電池の作動電圧よりも広い電位窓を有する電解質が求められる。高電圧の電極系の発達に伴い、より広い電位窓を示す電解質材料が求められつつある。
平成29年7月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/07/04-1.html学生の平田さんが第66回高分子学会年次大会において優秀ポスター賞を受賞
学生の平田雄大さん(博士前期課程2年、物質化学領域・松見研究室)が第66回高分子学会年次大会において優秀ポスター賞を受賞しました。
高分子学会年次大会優秀ポスター賞は高分子学会年次大会で優れたポスター発表を行った発表者を表彰し、さらなる研究発表を奨励しつつ高分子科学ならびに高分子学会の発展に資するために設けられています。高分子学会年次大会の運営委員会内に優秀ポスター発表賞の選考委員会が設置されており、発表の予稿原稿をもとに第一次審査、ポスター発表をもとに第二次審査が行われ、選考委員会の審議により受賞者が決定されます。
■受賞年月日
平成29年6月21日
■ポスタータイトル
RuOxおよびWOxを複合させたTiO2ナノチューブを用いた光電気化学的水分解
■ポスター概要
水素エネルギーは発電時のエネルギー変換効率が高く、燃料として使用してもCO2などの温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして注目されています。しかし、水分解に必要な反応開始電圧が高いため、広範な実用化には未だ至っていません。本研究では陽極に合成したTiO2ナノチューブ上にRuOxおよびWOxを同時に担持させることで効率的な電荷分離を促進させ、より反応開始電圧の低い光触媒電極の開発に成功しました。
■受賞にあたって一言
この度は高分子学会年次大会におきまして、このような栄誉ある賞を頂き大変嬉しく思います。本研究において熱心にご指導して頂いた松見教授、Raman助教、ならびに研究室の皆様に深く感謝いたします。


極めて低い白金担持量で高酸素還元反応性触媒の開発に成功
極めて低い白金担持量で高酸素還元反応性触媒の開発に成功
ポイント
商用の酸素還元反応性触媒よりも大幅に低い白金担持量で商用系に匹敵する性能を示す酸素還元反応触媒の開発に成功した。本研究は、アルコール類などの犠牲試薬を一切用いない光還元法により白金ナノ粒子を炭素/TiO2上に析出させた最初の例であり、白金ナノ粒子系酸素還元反応触媒のグリーンな合成法としても特色を有している。今回作製した材料は、商用系の1/15から1/20ほどの白金担持量であるにもかかわらず、特定反応比活性(specific activity)※1 において商用系を上回る電気化学触媒活性を示した。
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/物質化学領域の松見紀佳教授、ラーマン ヴェーダラージャン助教、ラージャシェーカル バダム博士、及び田中貴金属工業株式会社(岡谷一輝氏、松谷耕一氏)の共同研究グループは極めて低い白金担持量で商用系触媒に匹敵する高酸素還元性を示す低コスト型電気化学触媒の開発に成功した。 論文タイトル:Sacrificial Reducing Agent Free Photo-Generation of Platinum Nano Particle over Carbon/TiO2 for Highly Efficient Oxygen Reduction Reaction <今後の展開> |

| 図1. | (A)Photo-Pt- Graphite-TiO2、Photo-Pt-CNT-TiO2 のサイクリックボルタモグラム (B)サイクリックボルタモグラムから算出したECSA(電気化学有効表面積)値と商用材料との比較 (C)Photo-Pt-Graphite-TiO2、Photo-Pt-CNT-TiO2 の直線走査ボルタモグラムと商用材料との比較 (D)各材料系の質量比活性(mass activity)及び特定反応比活性(specific activity) |
<開発の背景と経緯>
燃料電池などのエネルギーデバイスのカソード電極材料において、現状では不可欠となっている白金/炭素系材料の作製においては、ポリオール系犠牲試薬や界面活性剤の使用、高温反応条件の適用など、比較的環境的負荷の大きな手法の適用が一般的となっている。これらの状況を踏まえて、水をメディアとしたグリーンな手法でこれらの材料群を作製する手法の開発は工業的に魅力的である。
加えて、商用系には一般に相当量の白金が含有されており、白金を担持させる炭素材料種を検討することにより白金の導入量を低減させることが検討されてきた。
本研究では光還元的析出法を検討することで、水中において疑似太陽光のみを光源として炭素/TiO2上への白金ナノ粒子の析出が可能であることが見出された。犠牲試薬や界面活性剤を利用しない本手法は白金ナノ粒子本来の高い電気化学触媒活性を発現させ、少量の白金担持量において高酸素還元反応性が達成された。
<合成方法・評価方法>
まず、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンオキシド等の各炭素材料を脱イオン水中で約2時間超音波照射し、均一分散液を調整した。分散液に市販のアナターゼ型TiO2を加え、さらに15分間超音波照射した。その後、塩化白金酸水溶液を加え、攪拌条件下で疑似太陽光を5時間照射した。得られた分散液を濾過した後、脱イオン水で洗浄して常温下で真空乾燥した。
作製した各コンポジット材料における白金含有量をICP-MSにより測定したところ、1.6-4.3wt%であった。また、各材料の透過型電子顕微鏡(TEM)による分析により、各系において白金ナノ粒子が均一に分散していることが示唆された。炭素材料として伝導度の高いカーボンナノチューブを用いた場合には白金ナノ粒子の平均サイズは1nmほどであり、特にサイズの小さい白金ナノ粒子がTiO2部位から遠距離の部分まで分布することが分かった。一方、官能基密度が高く伝導度が低いグラフェンオキシドが炭素材料として用いられた場合には、白金ナノ粒子はほぼTiO2上にのみ分布し、その粒径も比較的大きかった (2-6nm)。
得られた各材料をXPSにより分析したところ、とりわけTiO2/カーボンナノチューブ系に白金ナノ粒子を析出させた系においてPt 4fピークの顕著なシフトが観測され、強い金属―基盤間の相互作用が存在していることが示唆された。
電気化学評価は回転ディスク電極を用いたサイクリックボルタンメトリー※4、直線走査ボルタンメトリー※5により行った。0.1M HClO4 aq.を電解液とし、グラッシーカーボン電極上に作製した電気化学触媒をコートしたものを作用極、白金を対極、RHE (reversible hydrogen electrode)電極を参照極とした。窒素雰囲気下において 50mVs-1の掃引速度で測定を行い、回転ディスク電極の回転速度は400-3600rpmの範囲とした。
<今回の成果>
本系では水をメディアとし、疑似太陽光照射により炭素/二酸化チタン上に犠牲試薬を用いずに簡便に白金ナノ粒子を析出させる新手法の開発に成功した。本手法では水系反応メディアのpH調整も必要なく、常温での短時間の反応により作製が可能であり、工業的に魅力的である。また、炭素材料系の伝導性に応じて白金が析出し分布する基礎的に興味深い知見を得ることができた。
本材料系で達成された電気化学触媒活性は、特定反応比活性(specific activity)において比較対象の商用材料を上回るなど、トータルな特性として既存の最善の商用材料に匹敵する性能を示した。このような特性が商用系の1/15~1/20の白金含有量で達成されたことは特筆に値し、低コスト型エネルギーデバイスの開発にとって意義深い成果であると考えられる。
| ※1 | 特定反応比活性:Pt単位面積あたりの酸素還元電流密度。 |
| ※2 | ECSA(電気化学有効表面積):水素吸着によるピークの積算電荷量を白金の単位活性面積当たりの吸着電荷量で除するこ とで活性白金表面積を求め算出する。 |
| ※3 | 質量比活性:Pt単位重量あたりの酸素還元電流密度。 |
| ※4 | サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム):電極電位を直線的に掃引し、系内における酸化・還元による応答電流を測定する手法である。電気化学分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。 |
| ※5 | 直線走査ボルタンメトリー:電極電位を連続的に変化させ、流れる電流値を測定する。サイクリックボルタンメトリーのような電位の往復を伴わない測定法。 |
平成28年11月15日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/11/15-1.html世界最高の検出感度を示すフッ化物イオンセンシング材料 ポリボロシロキサンの創出に成功
世界最高の検出感度を示すフッ化物イオンセンシング材料
ポリボロシロキサンの創出に成功
ポイント
デンタルケアなどライフサイエンス分野で高い有用性を有しながら人体に有害なフッ化物イオンのセンシングにおいては、数十年来世界中で活発な研究が進められ、これまで一定以上の検出感度が得られていなかったが、このたび松見研究グループは、新たにポリボロシロキサンを創出し、一般的な商用系(LaF3)センシング材料を用いた検出感度(10-6 Mオーダー)程度を大幅に上回る、世界最高の検出感度(10-10 Mオーダー)を水溶液系において達成することに成功した。
本材料は、塩化物イオン、臭化物イオン等の負イオンへの検出能力と比較して、フッ化物イオンに対して極めて高い検知能力を示した。
また、ケイ酸ガラス構造に対応した一次元構造高分子としてポリシロキサンが広く知られているが、本研究ではケイホウ酸ガラスに対応した一次元構造高分子の合成に成功した。
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科 /物質化学領域 の松見紀佳教授、 ラーマン ヴェーダラージャン助教、プーフップ プニート博士らの研究グループでは、世界最高の検出感度を示す フッ化物イオンセンシング材料の創出に成功した。(図1) |
図1 出発物質(左)と合成したポリボロシロキサンの化学構造(右) 
図2 SiOB型モデル化合物のDFT計算結果
【参考】
<開発の背景と経緯>
3級ホウ素原子は空のp軌道の存在を活用して様々な機能材料の創出研究に用いられてきた。ユニークな軌道間相互作用を利用した新規共役系高分子の創出のほか、ホウ素の高いアニオントラップ能を活用して高いリチウムイオン輸送選択性を有するリチウムイオン2次電池用電解質材料の創出にも結び付いてきた。ホウ素の高いアニオン受容能はイオンセンシング分野においても期待を集め、とりわけフッ化物イオンやシアン化物イオンなどの環境的に有害なアニオンの検出能の向上のための分子設計が望まれてきた。
3級ホウ素原子を主鎖に有する機能性高分子材料の合成法として、ヒドロボラン種をモノマーとしたヒドロボレーション重合や脱水素カップリング重合が有効であることが知られているが、本系においてはロジウムまたはパラジウム触媒を用いてジフェニルシランジオールとメシチルボランとの脱水素カップリング重合を行うことにより、目的の新規ポリボロシロキサンの合成を試みることとした。
<合成方法・評価方法>
合成はTHF溶液中、ロジウムもしくはパラジウム触媒存在下で等モル量のメシチルボランとジフェニルシランジオールを48時間反応させることにより行われた。重合物をヘキサンで抽出して精製し、数平均分子量40000を超えるポリマーが80%の収率で得られた。構造は1H-, 11B-, 29Si-NMRにより決定した。また、重合の交互性に関してはモデル化合物の生成挙動から明らかにした。
フッ化物イオンセンシング能はポテンショメトリー法により評価した。ポリボロシロキサンをTHF溶液からグラッシーカーボン電極上にキャストし、これを作用極とした。Ag/AgClを参照極、白金を対極、Na2HPO4 0.1 M水溶液を電解液として室温で測定を行った。
<今回の成果>
生成ポリマー及びモデル化合物のNMR構造解析により、交互共重合型ポリシロキサンが生成していることが支持された。ポリマーとモデルのいずれにおいても11B-NMR、29Si-NMRは単一のピークを示したほか、メシチルボランとトリフェニルシラノールとの反応では、両化合物間の縮合生成物が93%の収率で得られた。
ポテンショメトリー測定においては、10-10 Mのフッ化物イオンをセンシング可能であることに加え(図3)、フッ化物イオンの10倍の濃度変化に対して-23 mVの勾配で系の開放電圧が広範囲で変化し、フッ化物イオン検出の良好な検量線を与えることが分かった(図4)。
また、他のアニオン種に対する選択性も極めて高い(塩化物イオンに対して約60倍、臭化物イオンに対して約30倍の選択性)ことが選択性係数の算出結果(KF,ClSSM = 0.0161, KF,BrSSM = 0.0376)から明らかとなった(図4)。
【用語】
*ポテンショメトリー測定・・・ボルタンメトリー、クーロメトリーと同様に電気化学の主たる測定法の1つで、一定電流(もしくは電流なし)の条件下で電位を測定する手法
*DFT計算・・・電子系のエネルギーなどの物性を電子密度から計算する理論(密度汎関数理論)に基づく計算法

図3.フッ化物イオンの滴定におけるポテンショメトリー測定結果
(Disodium Hydrogen Phosphate, RE: Ag/AgCl, WE: GC, CE: Pt)

図4.様々なアニオンの滴定におけるポテンショメトリー測定結果
(Disodium Hydrogen Phosphate (pH=8), RE: Ag/AgCl, WE: GC, CE: Pt)
平成28年9月28日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/09/28-1.html第42回J-BEANSセミナー「理想の電池はできるのか?」開催
| 開催日時 | 平成28年7月21日(木) 12:40~13:20 |
| 会 場 | 知識科学系講義棟 1階エントランスホール ※会場がJ-BEANSではありませんのでご注意ください。 |
| 講演題目 | 「理想の電池はできるのか?」 |
| 講 演 者 | 物質化学領域 教授 松見 紀佳 |
● 詳細は、 J-BEANSセミナー開催一覧 をご覧ください。
出典:JAIST イベント情報https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/event/2016/07/01-1.html物質化学領域の松見教授らの研究成果が英国王立化学会 Polymer ChemistryのBack Coverに採択
物質化学領域の松見紀佳教授らの研究成果が英国王立化学会 Polymer ChemistryのBack Coverに採択されました。
■掲載誌
英国王立化学会 Polymer Chemistry, 2016, 7, 4182 - 4187
■著者
Puhup Puneet, Raman Vedarajan, Noriyoshi Matsumi*
■論文タイトル
σ-p Conjugated Copolymers via Dehydrocoupling Polymerization of Phenylsilane and Mesitylborane
■論文内容
共役系高分子は高分子エレクトロニクスの中核を担う重要な材料群である。初期の共役系材料として白川らによるπ-共役系ポリアセチレンの発見、Burkhardらによるσ-共役系ポリシランの創出が挙げられるが、それらは更にσ-π共役系有機ケイ素高分子(櫻井、熊田ら)、p-π 共役系有機ホウ素高分子(中條、松見ら)など、ヘテロ元素を含んだユニークな軌道間相互作用を活用した共役系高分子の創出につながっている。
今回、従来にない共役モードによる新規共役系高分子としてヒドロシランとヒドロボランとの共重合によりσ-p共役系高分子と呼べる一連の高分子を合成した。それらの分光学的特性に加えて、オリゴマーモデルのDFT計算によってσ-p共役的軌道間相互作用が支持された。得られた材料は従来にない電子状態を有した共役系高分子としてそれらの特性に興味がもたれる。例えば、μMオーダーのフッ化物イオンの存在下で蛍光が増大するなど、turn-on型フッ化物イオンセンシング材料としての可能性が示された。
参考 http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2016/PY/c6py00205f#!divAbstract

平成28年6月22日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2016/06/22-2.html





