研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。ナノとバイオを融合して医療と環境の問題を解決する
ナノとバイオを融合して
医療と環境の問題を解決する
バイオナノ医工学デバイス 研究室
Bio-Nano Medical Device Laboratory
教授:高村 禅(TAKAMURA Yuzuru)
E-mail:
[研究分野]
BioMEMS、微小流体デバイス、分析化学、バイオセンサ
[キーワード]
血液分析チップ、一細胞解析、質量分析チップ、マイクロ元素分析、微細加工プロセス、バイオチップ、マイクロプラズマ
研究を始めるのに必要な知識・能力
私たちが扱う対象は分野融合的要素が強く、従って本研究室では様々なバックグラウンドの学生を受け入れております。生物、化学だけでなく、物理、機械、電子、制御、材料など、個人のバックグラウンドに応じたテーマを設定し、研究を進めます。
この研究で身につく能力
何かを解析するチップの研究が多いので、分析科学の要素は押し並べて身につきます。微量なサンプルを扱うので、微量な生体サンプルのハンドリング技術、生体分子と無機材料の界面の調整技術、微量な蛍光や光信号の観察・計測技術等が身につきます。また、チップを作成するには、フォトリソグラフィー等、マイクロマシンの技術が身につきます。新しい材料を使う場合は、成膜やエッチングの為のプロセス開発を行うこともあります。チップの開発では、流体の動きや熱の伝達をシミュレーションし設計することもあります。修了生は、計測機器メーカへの就職が多いですが、半導体製造機器メーカや、薬品会社へ就職する方もいらっしゃいます。
【就職先企業・職種】 計測機器メーカ、電気、機械、半導体製造機器メーカ、半導体メーカ、薬品関連
研究内容
半導体プロセスを応用して、ウエハ上に小さな流路や反応容器、分析器等を作りこみ、一つのチップの上で、血液検査等に必要な一通りの化学実験を完遂させようという微小流体デバイス、μTAS(micro total analysis systems)やLab on a chipと呼ばれる研究分野が急速に発展しています。これは、病気の診断、創薬、生命現象の解析に応用でき、大きな市場と新しい学術分野を開拓するものとして期待されております。また、いろいろな形状の微小流路内を、流体や大きな分子が流れるときの挙動は、ブラウン運動や界面の影響が支配的で、流体力学でも分子動力学でも扱えない新しい現象を含んでいます。当研究室は、このような新しい現象をベースに、ナノとバイオを融合した次世代のバイオチップ創製を目指した研究を行っています。
主なテーマを次に示します。

図1.作成したバイオチップの例

図2.汎用微小流体チップ案
1)高集積化バイオ化学チップの開発
高機能バイオチップの実現には、チップ内での流体の駆動機構と、高感度な検出器の開発が重要になります。本研究室では、溶液プロセスによるPZTアクチュエータアレイや電気浸透流ポンプをはじめ様々なチップ内での液体駆動機構と、ナノ材料を駆使した新しい検出器の開発を進めています(図1)。これらを用いて、組織中の一細胞を分子レベルで解析可能なチップや、高度な処理をプログラム次第で様々にこなす汎用微小流体チップの開発を目指しています(図2)。
2)高感度バイオセンシング技術の開発
一滴の血液には、体内の様々な状態を反映した多くの情報が含まれております。これらを頻繁に解析することで、重篤な病気の超早期発見や、日々の健康管理、あるいは老化や病気が起きにくい体質になるために食事や運動をガイドする等、様々なことが可能になると考えられております。このためには、非常に微量なバイオマーカを簡易に測定する技術が必要です。私どもは、自己血糖測定器と同じ手間とコストでpg/mLオーダの測定ができるチップや、質量分析チップの開発を行っております。
3)液体電極プラズマを用いたマイクロ元素分析器の開発
中央を細くした微小な流路に液体のサンプルを導入し、高電圧を印加するとプラズマが発生します。このプラズマからの発光を分光することにより、サンプル中の元素の種類と量を簡単・高感度に測定することができます。この原理を用いて、食物、井戸水、土壌工場廃水・廃棄物に含まれている有害な金属(Hg、Cd、Pbなど)などを、オンサイトで測定できるマイクロ元素分析器の開発を行っています。
主な研究業績
- Pulse-heating ionization for protein on-chip mass spectrometry,Kiyotaka Sugiyama, Hiroki Harako, Yoshiaki Ukita, Tatsuya Shimoda, Yuzuru Takamura, Analytical Chemistry, 86, 15, 7593-7597, 05 August 2014.
- Development of automated paper-based devices for sequential multistep sandwich enzyme-linked immunosorbent assays using inkjet printing, Amara Apilux, Yoshiaki Ukita, Miyuki Chikae, Orawom Chilapakul and Yuzuru Takamura, Lab Chip,13(1), 126-135, January 2013.
- High sensitive elemental analysis for Cd and Pb by liquid electrode plasma atomic emission spectrometry with quartz glass chip and sample flow, Atsushi Kitano, Akiko Iiduka, Tamotsu Yamamoto, Yoshiaki Ukita, Eiichi Tamiya, Yuzuru Takamura, Analytical Chemistry 83(24), 9424-9430, 04 November 2011.
使用装置
クリーンルーム半導体製造装置一式
電気化学測定装置
表面プラズモン共鳴測定装置
イムノクロマトグラフ製造装置
全反射蛍光一分子観察装置
研究室の指導方針
iPS細胞など最近の新しい医療技術の多くは、新しい工学的技術の進歩が発端になっていることをご存知でしょうか。その多くに、高度に発展したナノテクノロジーとバイオテクノロジーの融合技術が使われています。この分野は、まさに今アクティブで、また人類への多くの貢献が期待されている分野でもあるのです。私どもの研究室には、様々なバックグランドと目的を持った学生さんが来ます。私どもは一人ひとりの目的に合わせたゴールを設定し、そこに向かって必要なものを自ら獲得できる様に、サポートとガイドを行うことを主な指導方針としています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/takamura/index.html
ナノバイオテクノロジー
ナノバイオテクノロジー
ナノバイオ研究室 Laboratory on Nanobiotechnology
講師:高橋 麻里(TAKAHASHI Mari)
E-mail:
[研究分野]
ナノ材料科学、細胞生物学
[キーワード]
ナノ粒子、バイオ医療応用
研究を始めるのに必要な知識・能力
探求心があり、努力することを厭わず、向上心がある方ならバックグランドが違っていても研究を楽しむことができます。研究テーマに対して、自分がこの研究を進めるんだという主体的な立場にたつことが必要です。共同研究をすることが多いため、協調性やコミュニケーション能力も必要となります。
この研究で身につく能力
ナノ粒子の合成法、構造・特性評価及び解析方法に関する幅広い知識。金属・磁性・半導体材料とナノ粒子にすることで現れる特徴的な性質に関する一般的な知識。細胞生物学に関する一般的な知識。新たな課題に対して取り組むチャレンジ精神。
【就職先企業・職種】 製造業(化学、精密機器、ガラス・土石製品、繊維製品、その他製品など)
研究内容
ナノ粒子のバイオ医療応用に関する注目は年々高まっています。私達は金属・半導体・磁性体をナノサイズにすることで現れるバルクとは異なる性質を利用して、ナノ粒子のバイオ医療応用に関する研究を行っています。応用先は様々ですが、主に下記に示す3つの内容に力を入れており、それぞれの用途に合わせたナノ粒子の合成から構造解析、特性評価、応用までの一連の流れを一人の学生が担当して研究を進めます。
1. 磁性体ナノ粒子を用いた細胞内小器官の磁気分離
正常細胞と機能欠損細胞から細胞内小器官を分離し、タンパク質を解析し比較することは、疾患の分子機構の解明において重要です。超常磁性体ナノ粒子を合成し、表面を生体分子で機能化した粒子を用い、細胞内小器官を迅速かつ温和に磁気分離し、生化学的手法による解析を行います。種々の細胞内小器官の磁気分離法の構築や機能欠損細胞のタンパク質解析を通して、最終的には創薬分野への貢献を目指します。
2. 磁気粒子分光を用いたイムノアッセイ
人生100年時代と言われる現代、私達が健康に長生きするためには、疾病の早期発見のための診断技術・精度の向上がますます重要となります。磁気粒子分光(MPS)を用いたイムノアッセイ(抗原抗体反応を用いた抗原の検出)では、種々の磁性体ナノ粒子を合成しMPSで評価し、感度が高いプローブを複数選択することで同時多抗原検出を目指します。
3. アップコンバージョンナノ粒子による光遺伝学的研究
アップコンバージョンナノ粒子とは、波長が長い入射光を照射した際に波長が短い発光を示す蛍光体ナノ粒子です。光遺伝学とは光受容タンパク質を遺伝学的に細胞に発現させ、光で細胞の応答を制御する技術で、この2つを組わせることで、光による生体組織の制御を行う研究をしております。
主な研究業績
- D. Maemura, T. S. Le, M. Takahashi, K. Matsumura, and S. Maenosono: "Optogenetic Calcium Ion Influx in Myoblasts and Myotubes by Near-Infrared Light Using Upconversion Nanoparticles" ACS Appl. Mater. Interfaces 15 (2023) 42196
- T. S. Le, M. Takahashi, N. Isozumi, A. Miyazato, Y. Hiratsuka, K. Matsumura, T. Taguchi, S. Maenosono: "Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic–Plasmonic Hybrid Nanoparticles" ACS Nano 16 (2022) 885
- T. S. Le, S. He, M. Takahashi, Y. Enomoto, Y. Matsumura, and S. Maenosono: "Enhancing the Sensitivity of Lateral Flow Immunoassay by Magnetic Enrichment Using Multifunctional Nanocomposite Probes" Langmuir 37 (2021) 6566
使用装置
透過型電子顕微鏡(TEM) 超伝導量子干渉磁束計(SQUID)
走査透過型電子顕微鏡(STEM) 動的光散乱測定装置(DLS)
X線回折装置(XRD) 共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)
X線光電子分光装置(XPS) 核磁気共鳴装置(NMR)
研究室の指導方針
常に新しい内容の研究を行っており、研究内容に関しては教員が学生へ毎回指示を与えるのではなく、学生自身にも実験と論文調査から次の方向性を決めるといった、一緒に研究を進めていくスタンスで研究を行います。その過程で卒業後の進路(就職希望か進学希望)に合わせて必要な基礎知識と研究力が身につくように指導します。また、分野外の方でも最前線の研究が行えるように効率的な努力の仕方や学習法を身に着けられるように指導しますので、心配なことや研究に関する疑問等は積極的に相談してください。そのためにはコミュニケーション能力も重要であり、卒業後の社会人にとって必要不可欠なスキルが身につくようにサポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/~shinya/
ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える
ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える
蓄電池・エネルギー材料化学研究室
Laboratory on Energy Storage Materials and Devices
教授:松見 紀佳(MATSUMI Noriyoshi)
E-mail:
[研究分野]
エネルギー材料の創出研究
[キーワード]
リチウムイオン2次電池、ナトリウムイオン2次電池、リチウム空気電池、スーパーキャパシター
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究への意欲、知的好奇心、多少の失敗にひるまない楽観性、他のメンバーと協調的に研究を遂行できる適応性。また、以下は研究室に入る時点で必須ではありませんが、有機合成化学、高分子合成化学、電池関連化学、光化学などの経験や知識があればアドバンテージになります。
この研究で身につく能力
物質をデザインし、合成し、キャラクタライズする能力。実験データの意味を客観的に考察する能力。短期的、長期的に研究計画を立てる能力。報告書を作成したり、効果的にプレゼンテーションを行う能力、ディスカッション能力などがそれぞれ身につきます。さらには英語でコミュニケーションをとるための実践的能力を身につける場としても適しています。よりテクニカルな点では、嫌気下で様々な物質を有機合成し、NMR等で構造確認するスキル、イオン伝導性材料をインピーダンス測定などにより評価し、それらの電気化学的安定性を評価し、実際に電池を構築して充放電評価するスキルが身につくほか、光電気化学反応を電気化学的に評価するスキルを身につけることが出来ます。
【就職先企業・職種】 総合化学メーカー、自動車関連メーカー、繊維系メーカー、素材メーカー、機械系メーカーなど。
研究内容

高分子バインダーと活物質から成る
高性能電極材料のイメージ図
次世代用高性能蓄電池の創成研究
これまで、リチウムイオン二次電池用負極としては長きにわたりグラファイト負極が使用されてきました。現在、従来型のグラファイト負極よりも10倍以上の理論容量を有するシリコン負極の適用に関する研究が注目を集めています。しかし、シリコンは充放電中の体積膨張・収縮が大きく、粒子や界面の破壊や集電体からの活物質の剥離などの問題を引き起こし、問題が山積しています。本研究室では特殊構造高分子バインダーを適用することで、次世代用高容量電池の創成を目指しています。また、現存する多くの電池系は、性能が大幅に経年劣化することがユーザーレベルで広く認識されており、長期耐久性の課題解決も重要となっています。この点においても、分子レベルでの高機能バインダーの設計を行っています。さらに、シリコン負極型リチウムイオン二次電池と同様に、高容量の革新型電池として期待されている蓄電池系として、リチウム―空気電池が挙げられます。リチウム空気電池の開発の鍵となっている酸素還元反応触媒、及び酸素発生反応触媒においても、独自のアプローチにより研究を進めており、とりわけ白金の代わりに卑金属を用いた低コスト系の開発を進めています。さらに、リチウムに依存しない元素戦略に配慮した次世代蓄電池設計も進めています。例えばナトリウムイオン二次電池の高性能化に関する研究を電解質設計の立場から進めており、汎用の電解質を利用した系よりも大幅にサイクル特性やレート特性に優れた全固体ナトリウムイオン二次電池系の開発につながっています。現在の本研究室の電池開発において、もう一点注力しているのが急速充放電への対応です。現状の電気自動車では、高速道路のサービスエリアなどで充電を行う際に約30分を要しており、ガソリンスタンドでの給油と比較すると極めて長時間を要しています。本研究室では特殊な活物質の合成や、特異的な人工界面形成により充放電時間を大幅に短縮する試みを行っています。それを実現するキーワードとなるのが積極的な界面設計です。長きにわたって電池研究は四大部材(電極、電解質、バインダー、セパレータ)の研究を中心に展開されてきました。しかし、固体電解質界面(SEI)の重要性がいっそうクローズアップされつつあり、その戦略的かつ合理的な設計が次世代蓄電池の成否の鍵を握っていると考えられます。本研究室では、有機合成化学や高分子合成のバックグラウンドを有する電池研究グループという個性を最大限に活かしつつ、独自のアプローチで未来社会のニーズに応える高性能電池系の創出を目指します。
主な研究業績
- "Densely imidazolium functionalized water soluble poly(ionic liquid) binder for enhanced performance of carbon anode in lithium/sodium-ion batteries", A. Patra and N. Matsumi, Adv Energy Mater (2024) 20243071.
- "Water-soluble densely functionalized poly(hydroxycarbonylmethylene) binder for higher performance hard carbon anode-based sodium-ion batteries", A. Patra, N. Matsumi. J Mater Chem A., 12 (2024) 11857-11866.
- "Confronting the issue associated with the practical implementation of zinc blende-type SiC anode for efficient and reversible storage of lithium ions"R. Nandan, N. Takamori, K. Higashimine, R. Badam, N. Matsumi. ACS Appl Ener Mater., 7 (2024) 2088-2100.
使用装置
充放電評価装置
インピーダンスアナライザー
電気化学アナライザー
核磁気共鳴分光装置
ソーラーシミュレーター
研究室の指導方針
合成化学を基盤にしながら、リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池など社会的要求の高い研究分野に果敢にチャレンジします。クリエイティブな発想力と失敗を恐れない実行力、社会貢献への意識などを有したバランスのとれた人材の育成を目指します。ヘテロな研究集団を目指していますので、様々なバックグラウンドを持った人材を歓迎します。入って来るメンバーの科学的知識レベルも様々でしょうが、2年間ないし5年間にそれぞれのレベルに応じて大きな成長と達成感、自信を味わって巣立っていただくことが目標です。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/matsumi
エネルギー変換の最先端 ―未利用廃熱の高効率回収―
エネルギー変換の最先端 ―未利用廃熱の高効率回収―
R7年10月以降に入学する学生の受け入れは行いません
小矢野研究室 KOYANO Laboratory
教授:小矢野 幹夫(KOYANO Mikio)
E-mail:
[研究分野]
固体物性、熱電変換
[キーワード]
物理・実験系、低次元伝導体、熱電変換の物理、熱電材料、エネルギーの有効利用、エネルギーハーベスティング
研究を始めるのに必要な知識・能力
物理の実験系の研究室ですが、出身分野にはこだわりません。今までにも物理系、電子・電気系、機械系、化学系の学生が本研究室に来て活躍しています。JAISTに入学してから、応用物性数学、量子力学、固体物理学など自然科学系の講義を受講してもらうことをお願いしています。
この研究で身につく能力
物理系のみならず多様な分野から来た学生が、総合的な科学技術としての熱電変換の研究を行うことにより、修了後に企業や研究機関で社会に貢献することを目指しています。私たちの研究室で身につけられる能力は、具体的には以下のとおりです。
- 実際に手を動かしてものを作る面白さを知ること。
- 先端的な実験機器を用いた物理研究と実験手法の習得。
- 物理的または科学的な考え方の習得、ものごとを定量的に捉える力の獲得。
- プレゼンテーション能力、科学的な論文(主として日本語)の作成の方法。
【就職先企業・職種】 製造業ほか
研究内容

テトラヘドライト

硫化物熱電材料

ポストグラフェン材料
ゼーベック効果やペルチェ効果などを利用した『熱電変換技術』を使うと、熱エネルギーと電気エネルギーの相互変換が出来るため、廃熱から直接発電を行う『熱電発電』が可能となります。私たちの研究室では、【はかる】【つくる】【さがす】という3本の柱で熱電変換に関する研究を行っています。
【はかる】微小スケールの熱電性能の測定
「はかる」とは熱電材料の特性をはかるための評価手法の開発という意味です。近年、微細な構造を持った新規熱電素子が開発されていますが、システム自体が小さく測定が難しいため、新しい評価手法の開発が望まれています。
私たちの研究室では、3ω法(スリーオメガ法)と呼ばれる熱伝導率測定法を改良して、Bi-Te 系熱電ナノ粒子凝集体の熱伝導率を測定することに成功しました。さらにこの3ω法を改良することにより、遷移金属トリカルコゲナイドナノワイヤーの熱伝導率測定にもチャレンジしています。またポイントコンタクト型局所熱電性能測定法も開発しており、将来的にはグラフェンやポストグラフェンなど先端材料のフォノン物性を解明することを目指しています。
【つくる】インクジェット技術を用いた新規熱電モジュールの開発
実際に熱電発電を行うためには、Bi-Te 系熱電素子を多数配列させた熱電モジュールを作製しなければなりません。われわれは、LCD 用カラーフィルターの製造に利用されているインクジェット技術を熱電モジュール作製に応用するという、新たな製造プロセスの開発を行いました。
インクジェット印刷を用いることにより、従来作製が難しかった微小サイズモジュールや、ポリイミドをはじめとするフレキシブルな基板を用いたモジュールの試作に成功しました。今後は、焼成後の素子の密度と粒子配向性の向上といった課題を解決し、既存の分野およびエネルギーハーベスティングなど新しい分野への応用展開を図ることを予定しています。
【さがす】新しい熱電変換材料の創製
現在実用化されている熱電材料(Bi-Te 系材料)は、構成元素のTe が希少・高価であるという問題を抱えています。この問題を解決するため、私たちはTe の代替元素として硫黄(S)を用いた化合物、すなわち新しい硫化物熱電材料の開発を行っています。
最近、私たちはテトラヘドライトと呼ばれる熱電鉱物Cu12Sb4S13が、実用化されている材料と比べても遜色ない性能を示すことを発見しました。この材料は母体のままでも良好な熱電性能を示しますが、さらに、Cu サイトをNi で置換することにより熱電性能を約1.4倍向上させることに成功しました。
これ以外にも、多様な硫化物の低次元伝導体や、熱電材料と磁性体のハイブリッド材料の合成・開発を行い、その基礎物性や熱電性能を調査しています。
主な研究業績
- Development of thermal conductivity measurement system using the 3ω method and application to thermoelectric particles, S. Nishino, K. Suekuni, K. Ohdaira, and M. Koyano, Journal of Electronic Materials (2014), DOI: 10.1007/s11664-014-2993-9.
- High-performance thermoelectric mineral Cu12-xNixSb4S13 tetrahedrite, K. Suekuni, K. Tsuruta, M. Kunii, H. Nishiate, E. Nishibori, S. Maki, M. Ohta, A. Yamamoto, and M. Koyano, Journal of Applied Physics 113, 043712 (2013)
- 廃熱も電気に変える熱電発電,小矢野幹夫,Ohm Bulletin, 2014年 VOL.49 冬号(通巻200号)pp. 02.
使用装置
物理特性測定装置 PPMS(熱電性能、電気伝導の測定)
ラマン散乱分光装置(固体中の素励起のエネルギー分析)
管状電気炉・マッフル炉(無機材料の合成)
ホットプレス装置(粉体試料の加圧焼結・配向制御)
研究室の指導方針
『多様な物性に多様な価値観で挑む』をモットーに、今まで誰も知らなかった新しい現象を発見したり、新規材料を創製することを目指しています。小矢野研は『エネルギーに興味がある人』『無機材料を自分で作ってみたい人』『科学や物理が好きな人』 を歓迎します!
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/kotai/koyano/index.html
固体電子構造と局所配位環境のデザインにより所望の光機能を発現させる!
固体電子構造と局所配位環境のデザインにより所望の光機能を発現させる!
光機能無機材料化学研究室
Laboratory on Optical Functional Inorganic Materials Chemistry
准教授:上田 純平(UEDA Jumpei)
E-mail:
[研究分野]
無機化学、固体化学、光化学、ガラス
[キーワード]
蛍光体、蓄光材料、応力発光体、白色LED、レーザー励起、白色光源、近赤外蛍光体、蛍光温度計、高圧物性、有機長残光蛍光体
研究を始めるのに必要な知識・能力
知的好奇心をもち、積極的に研究に取り組み、コミュニケーションとディスカッションを通して学問の発展や新分野の開拓、自己の成長を遂げたいという意欲が必要です。必要な知識は問いませんが、無機固体化学の知識があると研究に有利です。
この研究で身につく能力
研究テーマは、材料合成、物性評価、応用展開の一連の内容を含み、研究を通して計画能力、課題把握能力、論理的思考や幅広い知見と様々な測定技術を習得できます。英語での研究発表会や最新英語学術論文を紹介する雑誌会のゼミによって、プレゼンテーション力と英語コミュニケーション力が鍛えられます。
専門的には、材料合成技術(無機固体粉末、セラミックス、透光性セラミックス、ガラス、単結晶)や物性評価技術(X線回折測定、X線吸収分光、基礎的な光学特性評価、蛍光寿命測定、光伝導度測定、真空紫外分光、蓄光材料評価手法、ダイアモンドアンビルセルによる高圧実験)など、固体化学と分光学の研究者としての能力を身に付けることができます。
【就職先企業・職種】 材料・化学メーカー、電機メーカー
研究内容

組成に伴う化学的、幾何学的変化により光物性を制御
身の回りには発光する材料やデバイスが多く存在します。例えば、白色LED照明、レーザープロジェクター、テレビやスマートフォンのディスプレイはその一例です。これらの発光デバイスには、短波長の光を吸収して長波長の光に変換する蛍光体と呼ばれる発光中心イオン(希土類や遷移金属など)を添加した無機固体材料が使われています。蛍光体の光物性は、発光中心イオンの種類やその幾何学的・化学的な配位環境、結晶ホストの固体電子構造で大きく変化します。本研究室では、これらの光物性を支配する要因を詳細に調査・特定し、高効率蛍光体や近赤外蛍光体、残光蛍光体など所望の光機能を有した固体材料をデザインしています。
◆白色光を創る!
白色LED照明やレーザー励起白色光源は、青色LED(またはレーザー)と可視蛍光体から構成されています。白色光源用蛍光体は、用途により要求される特性が異なり、最近ではディスプレイ用の発光バンドの半値幅の狭い「ナロ―バンド蛍光体」やレーザーの強励起でも消光しない「レーザー励起用蛍光体」などの開発が求められています。我々は、物理現象の解明を通し、より高い特性を有する蛍光体を戦略的に創製します。

開発した長残光蛍光体
◆光を蓄える!
通常、蛍光体は励起光を遮断すると、直ちに減衰し光らなくなります。しかしながら、励起電子の一部を結晶ホストに存在する電子トラップに蓄えることにより、数分から数日の時間スケールで光続ける蛍光体(長残光蛍光体または蓄光材料)を作製できます。我々は固体電子構造に着目し、光誘起電子移動機構を制御することにより、残光蛍光体を設計しています。
◆光で測る!
蛍光体の光物性は、温度や圧力により変化するので、特徴的な発光の変化を利用することにより、非接触・非侵襲型の温度センサーや圧力センサーとして使用できます。バイオ応用に向けた近赤外サーモメーターや高感度圧力センサーなどを開発しています。
◆その他研究テーマ
透光性セラミックス、フォトクロミック材料、熱ルミネッセンス蛍光体、応力発光体、アップコンバージョン蓄光、有機長残光蛍光体、太陽電池用波長変換材料、消光機構解明、圧力誘起相転移
主な研究業績
- A. Hashimoto, J. Ueda, et al., J. Phys. Chem. C. 127, 15611(2023).
- J. Ueda, et al., ACS Appl. Opt. Mater. 1, 1128(2023).
- Jumpei Ueda, Bull. Chem. Soc. Jpn. 94, 2807(2021)
使用装置
真空高温管状炉、X線回折装置
蛍光分光光度計、クライオスタット
波長可変レーザー、蓄光材料評価装置
ダイアモンドアンビル高圧セル
研究室の指導方針
当研究室では、メンバーの人数により調整しますが、1週間に一度の研究報告会と雑誌会(最新英語論文の紹介)を行います。規則正しい生活のために、コアタイムを9時から17時とします。研究テーマは、材料合成、物性評価、応用展開の一連の内容を含み、研究室での実験だけでなく、共通分析機器の利用や学外との共同研究により、幅広い専門知識と技術の修得ができます。基本的に、在籍中に国内学会や国際学会で、一度は研究発表を行って頂きます。また、得られた研究成果は、国際論文雑誌にて学生が第一著者または共著者として発表することを目指します。
[研究室HP] URL:https://uedalab.com/
次世代の細胞計測技術を創り、ニューロン情報処理の秘密に迫る
次世代の細胞計測技術を創り、
ニューロン情報処理の秘密に迫る
神経情報生理学研究室
Laboratory for Neural Information Physiology
准教授:筒井 秀和(TSUTSUI Hidekazu)
E-mail:
[研究分野]
分子生物学、生理学、生物物理学、細胞計測
[キーワード]
神経細胞、分子センサー、次世代計測技術
研究を始めるのに必要な知識・能力
予備知識:分子・細胞生物学や電気回路の基礎などを理解しているとスムーズに研究を開始できますが、初学者にも丁寧に指導します。
求める人材:新しい技術を創出したい人。実験が好きで、試行錯誤や寄り道の楽しさを理解している方。
この研究で身につく能力
分子・細胞生物学、基礎生理学、生物物理学に関する基本的な研究方法や実験手技を理解し、体得します。さまざまな生命現象の仕組みや分子的基礎が詳細に解明されてきましたが、その一方で、広大な領域が未だに謎に包まれたまま残されています。本研究室では、新しい技術を創出し、今までアクセス不可能だった領域に踏み入る意義や楽しさを学びます。こうした新規技術を創り出すための創意工夫、粘り強い探求や試行錯誤を通じて身に付く能力は、学術の世界のみならず、社会や産業の発展を牽引する上で大いに役に立ちます。
【就職先企業・職種】学術、医工学・電気、情報・バイオなど
研究内容
【ニューロン回路の不思議】
柔軟さ、堅牢さ、緻密さを兼ね備えていることが細胞・組織・器官の機能の特徴の一つです。生き物の仕組みを知りたい!そんな素朴な疑問を大切に研究を行っています。具体的には、ニューロン回路における情報処理の秘密に迫るための、新しい細胞計測技術の創出に取り組んでいます。ニューロン回路は究極の生体組織です。0.1ボルト、1ミリ秒程度の電圧信号が回路網を高速に流れ、情報の表現や処理を司っています。この過程を詳細に理解することができれば、疾患の理解や新しい情報処理様式の発見のほか、想像もできない展開も期待できます。しかし、この挑戦は、数多くの障壁に阻まれています。例えば、既存の細胞計測技術では、複雑なニューロン回路の中を伝播する電気信号を十分に詳細に追跡することは困難で、実験的な立場における大きな課題の一つです。研究室では、主に二つの異なるアプローチでこの課題に取り組んでいます。
【次世代の電気生理計測法の探求】

(上)ニューロンの配線メカニズムを用いて作成した微小電極との接合構造
電気生理計測とは、金属やガラス管の微小電極を用いて、細胞の電気的現象を調べる手法の総称です。長い歴史のある計測法ですが、今日の最先端研究でも欠かすことのできない、強力な手法です。しかしながら、細胞認識能を原理的に備えていない、などの本質的な欠点が残されています。研究室では、脳内でニューロンが配線される分子メカニズムと微細加工技術を融合させることで、この課題の解決に取り組んでいます。これまでに、分子生物学的に人工設計したシナプス誘導因子を用いて、特定種のニューロンを特定の電極に接続する基本原理の実証など成功しています。ニューロン活動を読み取る次世代の電気生理技術の創出に向けて、皆さんと様々な工夫をこらし、探求をしていきます。
また、思いもよらぬ方向から、研究の突破口が開けることも多くあります。既成概念にとらわれず、不思議・楽しい!を大切にし、色々な技術や考え方を学際的に学び、日々の研究に活かしていくことを心掛けています。
【ニューロン活動を可視化する分子センサー】

(左)分子センサーの性能試験の様子
(中央)分子センサーを発現した神経細胞
(右)試作した次世代電気生理技術の原理実証用の微小電極
ある種の細胞には膜電位の変化(電圧信号)を感知するための分子が備わり、電圧信号を増幅し、細胞外環境に応じて細胞内の環境を変化させています。こうした分子を部品として使うことで、電圧信号を光の信号として可視化するセンサー分子を創ることが出来ます。研究室ではこれまでに単一細胞の単一スパイクを可視化することなどに成功してきています。皆さんといろいろなアイディアを持ち寄り、センサーのさらなる高速・高感度化を目指したいと考えています。また、細胞に備わるそうした分子が、そもそもどのような仕組みで電圧信号を感知しているのか?といった基礎的な問題にも興味を持って研究を進めています。
主な研究業績
- K. Sekine, et al., Neuron-microelectrode junction induced by an engineered synapse organizer, Biochem. Biophys. Res. Commun. p149935, 2024.
- W. Haga, et al., Development of artificial synapse organizers liganded with a peptide tag for molecularly inducible neuron-microelectrode interface, Biochem. Biophys. Res. Commun., vol. 699, 2024.
- S. Kim, et al., Formation of neuron-microelectrode junction mediated by a synapse organizer, Appl. Phys. Express, vol. 16, 2023.
使用装置
各種光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡
電気生理・電気化学計測関連機器
薄膜作成・微細加工装置
細胞・組織培養関連機器
分子生物学関連機器
研究室の指導方針
研究は自由で楽しいものであるべきと考えますが、それもバックグラウンドの正しい理解や確かな実験技術に基づくはずです。まずは正確な実験や観察が行えるようになる事に努めます。研究結果の定期的な発表(プログレスレポート)および論文紹介(ジャーナルクラブ)を通じてプレゼンテーション力を身につけます。英語専門書を一つ選定して、輪読を行い、研究の背後にある概念や文化を理解する事にも重点を置きます。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/tsutsui/wordpress/
多様な光触媒の性能を左右する「ボトルネック」を診断し、設計指針を確立 ―大規模材料探索と速度論解析の融合により、高性能光触媒開発を加速―
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| 北陸先端科学技術大学院大学 東京科学大学 東京理科大学 |
多様な光触媒の性能を左右する「ボトルネック」を診断し、設計指針を確立
―大規模材料探索と速度論解析の融合により、高性能光触媒開発を加速―
【ポイント】
- 多数の酸化物光触媒を同一条件で比較し、性能を左右する「ボトルネック」を判別する新たな速度論的評価法を構築しました。
- 光の強さと温度への応答から、材料表面への電荷供給と、表面での界面電荷移動のどちらが性能を制限しているかを診断できることを示しました。
- 遷移金属(Mn、V)を含む材料では電荷供給能力が高く、第3族元素(Sc、Y)を含む材料では電荷供給が制限要因になりやすいことを明らかにし、構成元素に基づく材料設計指針を提案しました。
【概要】
| 東京科学大学物質理工学院材料系の張葉平助教(研究当時、北陸先端科学技術大学院大学特任助教)、東京理科大学先進工学部の中野渡淳助教、北陸先端科学技術大学院大学物質化学フロンティア研究領域の谷池俊明教授らの共同研究チームは、多様な酸化物光触媒について、性能を左右する「ボトルネック」を効率的に見分ける新たな速度論的評価手法を開発しました。光触媒は、太陽光を利用して化学反応を起こす材料であり、水素製造や二酸化炭素の資源化、環境浄化などへの応用が期待されています。しかし、光吸収や熱力学的条件を満たす材料であっても、必ずしも高い性能を示すとは限らず、どの過程を改善すべきかを多数の材料について効率的に診断することは困難でした。 研究チームは、材料データベースから選出した多数の酸化物材料を合成し、ハイスループット評価によって光触媒活性を比較しました。さらに、光の強さと温度に対する応答を組み合わせ、材料表面への電荷供給と、表面での界面電荷移動のどちらが性能を制限しているのかを判別する手法を構築しました。その結果、見かけの活性が同程度の材料であっても、「表面へ十分な電荷を供給できない材料」と「供給された電荷を表面反応に十分利用できない材料」が存在することを明らかにしました。 さらに、こうした速度論的特性が、材料を構成する元素によって系統的に変化することを見いだしました。マンガン(Mn)やバナジウム(V)などの遷移金属を含む材料は高い電荷供給能力を示した一方、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)を含む材料では、電荷供給が性能の制限要因になりやすいことが分かりました。本成果は、高活性材料を見つけるだけでなく、材料ごとに「電荷供給」と「界面電荷移動」のどちらを改善すべきかを示す、新たな光触媒設計指針となるものです。本研究成果は2026年7月21日に学術誌「Journal of Materials Chemistry A」にオンライン掲載されました。 |
1.研究の背景
光触媒は、光のエネルギーを利用して化学反応を進める材料であり、水素製造や二酸化炭素の資源化、環境浄化などへの応用が期待されています。一般に光触媒の候補は、「光を吸収できること」と「目的の反応を熱力学的に進められること」を手がかりに選ばれてきました。しかし、これらの条件を満たしていても、高い性能を示すとは限りません。
光を受けた材料の内部では、電荷が生成・分離され、材料表面まで移動し、最後に反応物へ受け渡されます。この一連の過程のうち、ある材料では表面への電荷供給が不足し、別の材料では表面での電荷移動が遅いなど、性能を制限する「ボトルネック」は材料ごとに異なります。
高性能な光触媒を効率よく開発するには、活性の高い材料を見つけるだけでなく、どの過程が性能を制限しているかを把握することが重要です。しかし、従来の速度論的解析は複雑で時間がかかるため、多数の材料を対象とする大規模探索への適用は困難でした。そのため、大規模探索と両立し、材料ごとの改善方針まで示せる新たな診断方法が求められていました。
2.研究の詳細
本研究では、大規模材料探索と、大規模に展開可能な速度論解析を組み合わせることで、多様な光触媒材料の性能を支配する要因を明らかにしました。まず、材料データベースMaterials Project*1に登録された82,202種類の酸素含有材料から、安全性、合成可能性、光吸収特性などを基準として1,319種類まで候補を絞り込みました。さらに、その中からランダムに選んだ100組成を、異なる温度条件(400℃と1,000℃)で合成し、計200試料を作製しました。研究グループがこれまでに開発した96ウェルマイクロプレート*2を用いるハイスループット評価系により、メチレンブルー分解反応を指標として一斉評価しました。その結果、明確な活性を示す材料は探索空間のごく一部に限られ、特に銀(Ag)やマンガン(Mn)を含む酸化物に有望な材料が多いことを見いだしました。一方、従来有望と考えられていた元素を含む材料でも高い活性を示さない例があり、既存の経験則だけでは十分な材料設計指針にならないことも明らかになりました。
次に、有望な材料について反応温度と光の強さを系統的に変化させて測定し、各材料が持つ二つの能力を評価しました。一つは、光によって生じた電荷を材料表面まで供給する能力であり、もう一つは、その電荷を表面で反応物へ受け渡す能力です。光の強さは表面へ供給される電荷量に、温度は主に表面での電荷移動に影響するため、両者への応答を組み合わせることで、どちらの過程が性能を制限しているかを判別できます。研究チームは、この応答を理論的に整理するとともに、「温度依存性が現れ始める光強度(OITD:Onset Intensity for Temperature Dependence)*3」という新たな指標を提案しました。OITDを用いて解析した結果、見かけの反応速度が同程度の材料であっても、性能を制限している過程は材料ごとに異なることを明らかにしました。
さらに、電荷供給と界面電荷移動のバランスは、材料を構成する元素によって系統的に変化することも分かりました。銀と、マンガン(Mn)やバナジウム(V)などの遷移金属を組み合わせた材料では、電荷を表面へ供給する能力が高い傾向が見られました。特に、本研究で最も高い性能を示したMnAgO2は、弱い光でも温度依存性を示し、優れた電荷供給能力を持つことが分かりました。一方、銀と、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)などの第3族元素を組み合わせた材料では、強い光を照射しても温度依存性がほとんど現れず、電荷供給が性能を制限していることが示されました。表面での界面電荷移動は助触媒の担持や表面修飾によって改善できる場合が多い一方、材料が本質的に持つ電荷供給能力を高める手段は限られています。本成果により、高性能材料を探索するだけでなく、材料ごとに必要な改良の方向性を判断できる設計指針が得られました。

| 図1. 大規模探索と速度論解析を組み合わせた光触媒材料の評価フロー Materials Projectに登録された82,202種類の酸素含有材料から候補を絞り込み、100組成を2種類の温度で合成して計200試料を一斉評価した。さらに、有望材料について温度と光強度を変えて測定し、電荷供給と界面電荷移動のどちらが光触媒性能を制限しているかを解析した。 |
3.今後の期待
今回の成果は、多数の候補材料の中から高性能な光触媒を効率よく探索するだけでなく、材料ごとに「電荷供給」と「界面電荷移動」のどちらを改善すべきかを判断できる、新たな設計指針を提供するものです。
特に、光触媒を利用した水素製造や二酸化炭素資源化、環境浄化技術の高度化に向けて、材料開発の試行錯誤を減らし、開発効率を高めることが期待されます。今後は、本研究で開発した評価手法をさらに多様な材料群や反応系へ展開し、次世代の高性能光触媒の開発につなげる予定です。
【論文情報】
| 論文タイトル | Element-dependent charge-supply and charge-transfer balance in oxide photocatalysts identified by high-throughput kinetic screening |
| 日本語タイトル | ハイスループット速度論解析による酸化物光触媒の電荷供給・電荷移動特性の解明 |
| 著者 | Yohei Cho, Kyo Yanagiyama, Emi Sawade, Sunao Nakanowatari, Toru Wada, Toshiaki Taniike |
| 掲載誌 | Journal of Materials Chemistry A(2026) |
| 掲載日 | 2026年7月21日(オンライン公開) |
| DOI | 10.1039/d6ta04494h |
【研究資金】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業「特別研究員奨励費(課題番号:24KJ1201)」「若手研究(課題番号:26K17938)」、リバネス研究費京セラ賞、公益財団法人ヒロセ財団研究助成、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業(課題番号:JPMJMI25G1)の支援を受けて実施されました。
【用語説明】
第一原理計算に基づく材料物性データベース。材料の組成、結晶構造、電子状態、熱力学的安定性などを検索でき、材料探索の出発点として広く利用されている。
96個の小さな容器(ウェル)が並んだ実験用プレート。多数の試料を同時に測定・評価できるため、材料探索の効率化に役立つ。
光を徐々に強くした際に、反応速度に温度の影響が現れ始める光強度を表す指標。値が低いほど、表面反応に必要な電荷を供給する能力が高いことを示す。
令和8年8月18日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/08/18-1.html電池材料の電極界面ごとの"イオンの流れ"を初めて分離 ―電池材料の性能向上に新たな指針―
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北陸先端科学技術大学院大学 東京理科大学 |
電池材料の電極界面ごとの"イオンの流れ"を初めて分離
―電池材料の性能向上に新たな指針―
ポイント
- 電池材料の電極界面ごとに、イオン(プロトン)の流れを分離・定量する手法を開発
- 酸化物界面と金属・炭素界面の輸送特性を定量化することに初めて成功
- 電池材料の性能向上に新たな設計指針を提示し、燃料電池や水電解などの性能向上に貢献
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の阿部雄介大学院生(博士前期課程)(研究当時)、青木健太郎助教、Athchaya SUWANSOONTORN研究員(研究当時)、長尾祐樹教授らは、カナダ・カルガリー大学および東京理科大学 創域理工学部の四反田功准教授らとの共同研究により、電池材料の電極を構成する高分子電解質*1薄膜における「イオン(プロトン)」*2輸送を、界面*3ごとに分離・定量する新たな計測手法を開発しました。電池材料の性能向上に新たな指針を与える成果です。 燃料電池や水電解などの電池材料では、電極と高分子電解質が接する「界面」における「プロトン」の流れが性能を大きく左右します。しかし実際の電極では、酸化物、白金、炭素など複数の界面が混在しており、従来の測定ではそれらの輸送が重なって観測されるため、どの界面がどの程度プロトン輸送に寄与しているのか、プロトン伝導度*4を直接測定することができませんでした。このため、電池材料の性能向上に向けた界面設計の指針が得られないという課題がありました。 そこで本研究では、電極構造(くし形のインターディジテッド電極*5)の設計と低周波領域まで拡張したインピーダンス測定*6を組み合わせることで、これまで分離できなかった界面ごとのプロトン輸送を初めて分離・定量する手法を開発しました。その結果、電池材料の電極における酸化物界面と白金・炭素界面で最大で2倍程度異なるプロトン輸送特性を示すことを明らかにし、それぞれの役割を個別に評価できることを実証しました。本成果により、電極界面ごとのプロトン輸送の律速要因を明確に把握することが可能となり、電池材料の選択や界面設計をより合理的に進めることができるようになります。燃料電池に加え、水電解や二次電池、センサなど、さまざまな電気化学デバイスの性能向上に貢献することが期待されます。 |
【研究の背景】
燃料電池や水電解など、次世代エネルギー技術の高効率化に向けて、電極と電解質が接する「界面」におけるプロトンの流れの理解が重要となっています。特に近年、脱炭素社会の実現に向けて、燃料電池や水電解装置の性能向上への期待が高まっており、その鍵を握る界面設計の高度化が求められています。
燃料電池や水電解では、高分子電解質(アイオノマー)が電極表面を覆い、その界面を通じてプロトンが移動しています。しかし、実際の材料では、白金、炭素など複数の界面が混在しており、従来の測定ではそれらすべての寄与が一つに重なって観測されていました。そのため、どの界面でプロトンがどの程度流れているのかを区別することができず、界面設計の指針が得られないという課題がありました。
このように、界面ごとのプロトン輸送を分けて評価する手法が存在しないことが、電極材料や界面構造の最適設計を進める上で大きなボトルネックとなっていました。
【本研究の成果】
本研究では、電極構造(くし形のインターディジテッド電極)の形状を精密に制御するとともに、低周波まで拡張したインピーダンス測定を組み合わせることで、これまで一つに重なって観測されていたプロトン輸送の成分を分離・定量する新たな手法を開発しました。これにより、電極界面ごとのプロトンの流れを個別に評価することに初めて成功しました。その結果、測定信号に含まれる複数の抵抗成分が、それぞれ異なる界面に由来することを明確にし、
・高周波側の抵抗成分は酸化物(SiO2)界面のプロトン伝導
・低周波側の抵抗成分は白金および炭素界面のプロトン伝導
に対応することを明らかにしました。

| 図1 本研究の概念図と結果の概要。左図は、ナフィオン薄膜中をプロトンが電極界面に沿って移動する様子を示しています。SiO2基板界面(σ1)と、炭素または白金電極界面(σ2)で異なる輸送経路が存在します。従来はσ2を正確に得ることができていませんでした。右図は、電極パッド長(Long / Short)を変えても、それぞれの界面に対応する伝導度(σ1, σ2)がほぼ一致することを示しています。これは、測定された伝導度が電極構造の影響ではなく界面固有の値であり、σ2が高い精度で定量できていることを示します。 |
さらに、電極パッドの長さを変えても同じ伝導度が得られることから、これらの抵抗成分が電極構造ではなく「界面そのもの」の性質に由来することを実証しました。これにより、従来は一つの値としてしか評価できなかったプロトン伝導度を、界面ごとに分けて定量できることを初めて示しました。
本成果は、これまで"混ざって見えていたプロトンの流れ"を界面ごとに分解して捉えることを可能にした点で、電極界面におけるプロトン輸送の理解を大きく前進させるものです。

| 図2 本研究のまとめ。電池内部では、プロトンが複数の「電極界面」を通って移動していますが、従来はそれらが重なって観測されるため、どこが性能のボトルネックか分かりませんでした。本研究では、櫛のような電極構造を用いてプロトンの流れを界面ごとに「仕分け」して測定することに成功しました。その結果、酸化物と金属・炭素の界面でプロトンの進みやすさが最大で2倍程度異なることを明らかにしました。これにより、電池内部の「渋滞箇所」を特定でき、燃料電池や次世代電池の性能向上に向けた設計が可能になります。(本ポンチ絵は、AIにより作成) |
【社会への還元として期待できる内容、今後の展望】
本研究により、電極と高分子電解質が接する界面におけるプロトン輸送を、界面ごとに分離して評価できる手法が確立されました。これにより、どの界面がイオン輸送のボトルネックとなっているのかを明確に特定できるようになり、電極材料の選択や界面構造の最適化を、従来よりも科学的根拠に基づいて設計することが可能となります。特に、燃料電池や水電解装置の開発においては、エネルギー変換効率の向上やコスト低減が重要な課題であり、本手法はその設計指針を与える基盤技術として、材料開発やデバイス設計に直接的に貢献することが期待されます。また、本手法は、燃料電池に限らず、水電解、二次電池、センサなど、電極界面でのイオン輸送が重要となるさまざまな電気化学デバイスに適用可能であり、それらの性能向上に貢献すると考えられます。
今後は、実際の複雑な電極構造への展開や、界面構造とイオン輸送の関係の解明を進め、より高効率で高機能なエネルギー・デバイスの実現を目指します。
本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST(JPMJCR21B3)、日本学術振興会(JSPS) 科研費 新学術研究領域「ハイドロジェノミクス」(JP21H00020)、公益財団法人 村田学術振興・教育財団 研究助成による財政的支援を受けて実施されました。
【論文情報】
| 掲載誌 | ACS Applied Materials & Interfaces |
| 論文タイトル | Decoupling Interfacial Proton Conductivity in Ionomer Thin Films on Pt and Carbon Electrodes |
| 著者 | Yusuke Abe, Kentaro Aoki, Athchaya Suwansoontorn, Kunal Karan, Isao Shitanda, Yuki Nagao* |
| 掲載日 | 2026年5月1日 |
| DOI | 10.1021/acsami.6c04425 |
【用語説明】
イオンを運ぶ機能を持つ高分子材料です。燃料電池などでは、プロトン*2を選択的に輸送する役割を担います。本研究では代表的な高分子電解質であるナフィオンを使用しています。ナフィオンは、プロトンを効率よく輸送できるため、燃料電池などで広く利用されています。
水素原子が電子を失った粒子(H+)で、電気を運ぶ役割を持つイオンです。燃料電池や水電解などは、このプロトンを電子と別々に流すことで動きます。
異なる材料が接している境界のことです。本研究では、ナフィオンとSiO2(酸化物)、白金、炭素との接触部分を指します。
プロトンがどれだけ流れやすいかを表す指標です。値が大きいほど、プロトンが移動しやすいことを意味します。
櫛(くし)の歯のように電極が交互に並んだ構造を持つ電極です。電極間を横方向に流れるイオンの動きを測定するのに適しています。
交流電圧を加えて材料の応答を調べる測定手法で、イオンの動きや電気的な抵抗を周波数ごとに解析することができます。
令和8年5月11日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/05/11-1.htmlユネスコ無形文化遺産「金沢金箔」の薄さと輝きを生む謎を解明 ―伝統工芸と材料科学が出会う、新たな発見―
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北陸先端科学技術大学院大学 大阪大学 |
ユネスコ無形文化遺産「金沢金箔」の薄さと輝きを生む謎を解明
―伝統工芸と材料科学が出会う、新たな発見―
【ポイント】
- 金沢金箔は、打ち延ばす工程によって箔全体を立方晶{001}集合組織(結晶粒の結晶方位が特定の方位に集中している状態)に配向させていることを解明。
- 金箔の上下に和紙を挟んで叩くことで温度上昇を防ぎ、再結晶化や回復を阻止。
- 通常は働かない{110}すべり系(原子の層がずれて動く仕組み)が特別に活性化し、箔全体の均一な薄さと輝きを実現。
| 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域のXU, Yuanzhe大学院生(博士後期課程)、麻生浩平講師、村田英幸教授、大島義文教授、大阪大学 超高圧電子顕微鏡センターの市川聡特任教授(常勤)の研究グループは、最新の電子顕微鏡技術により、ユネスコ無形文化遺産に登録されている金沢金箔の箔打ち工程で「再結晶や回復を防ぐ工夫」や「特殊な滑り面の働き」を確認することに成功し、金沢金箔の薄さと輝きを保つ仕組みを世界で初めて解明しました。この成果は、金沢金箔の保存・継承に貢献するだけでなく、将来的にナノ材料や高機能薄膜の開発にもつながる可能性があります。 本研究成果は、2025年9月26日 (英国標準時間)に科学雑誌「npj Heritage Science」誌のオンライン版で公開されました。 |
【研究概要】
金沢金箔(図1(a))は、寺社仏閣や伝統工芸品を飾るだけでなく、文化財の修復に不可欠な素材です。その特徴は「世界で最も薄い金属箔」(わずか100ナノメートル=髪の毛の約1/1000)という極薄性と、変わらない光沢にあります。この魅力から、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。これまでの研究では、金沢金箔が安定した{001}集合組織を形成することは知られていましたが、その過程は不明でした。通常の金属では、箔打ちにより{110}集合組織が発達しますが、同時に再結晶や回復が起き、面内の結晶方位はランダムになると考えられていました。したがって、なぜ金沢金箔が均一で安定した{001}集合組織を示すのかは長年の謎でした。この謎を解き明かすことは、伝統工芸の継承と材料科学の進展の双方にとって重要な課題です。本研究では、最先端の技術である、電子後方散乱回折(EBSD)*1と世界最高加速電圧の超高電圧透過電子顕微鏡(UHVEM)*2 (加速電圧 2MV)を用いて、無加工で系統的に金沢金箔の分析を行いました。その結果、従来の金属学では予想されなかった「非八面体すべり系」という特殊な変形が室温の槌打ち工程で活性化し、金箔の結晶配向を整えることを明らかにしました。
本研究では、製造の中間段階にあたる「金澄(約1 μm)」と最終段階の「金箔(約100 nm)」を対象とし、電子後方散乱回折(EBSD)*1および超高電圧透過電子顕微鏡(UHVEM)*2を用いて局所的な結晶性の調査を行いました。その結果、金澄は、面内の結晶方位はランダムな{110}集合組織となっていましたが、転位密度が高く、再結晶が起きていないことがわかりました。一方、最終段階の金箔は、面内の結晶配向も高い{001}集合組織となっていました(図1(b))。ただし、転位密度は著しく増加しており、回復や再結晶が生じていないことを示唆していました。加えて、{110}面に平行な多数のすべり帯があり、その多くが直交していることを観察しました(図1(c))。この事実は、非八面体的な{110}-<110>すべり系が活性化していることを示唆しています。通常の面心立方晶(FCC)金属では、このような非八面体のすべり系が動くことはなく、金箔が特殊な変形状態にあることがわかりました。
以上の結果から考察を行い、金沢金箔は従来のFCC金属とは異なる変形メカニズムによって特異な集合組織を形成することが分かりました。具体的には、熱間圧延や焼鈍処理を施した金属材料と異なり、金沢金箔は再結晶や回復を伴わずに加工が進行しています。そのため、箔打ち過程において転位が絡み合うため、通常活性化する{111}-<110>すべり系が抑制されます。また、膜厚が転位ループのサイズに近い200 nm程度になると、転位ループの一部が表面を突き抜けるため、薄膜全体を貫通するらせん転位が多数残存します。これらのらせん転位は動きやすいため、交差すべりが生じやすくなります。この交差すべりが進化した結果、非八面体的な{110}-<110>すべり系が活性化します。この{110}-<110>すべり系は、箔打ち方向に対し、結晶方位を[110]から[001]へ徐々に回転させることができます。なお、加工時に金箔の上下に和紙を挟んで叩くことで、表面摩擦を低減するとともに温度上昇を防いでいました。つまり、この温度制御によって再結晶や回復が抑制され、上述したような特殊な変形が実現したと説明できます。
本研究の成果は、金沢金箔という無形文化遺産の科学的理解を深め、伝統技術の保存・継承に確かな裏付けを与えるものです。これにより、文化財修復における信頼性の向上や、安定供給に向けた技術支援が可能になります。さらに、極薄金属膜における特殊な変形メカニズムの知見は、構造敏感な次世代のナノ材料や高機能薄膜デバイスの開発にも応用が期待されます。具体的には、電子材料、センサー、装飾材など、従来にない性能やデザイン性を備えた新しい製品の創出につながる可能性があります。

| 図1 (a) 金沢金箔の写真。(b)金沢金箔の電子後方散乱回折(EBSD)から得た方位マップ。色は、箔打ち方向に対する結晶方位を示します(赤は、[001]方位)。(c) 最終段階の金沢金箔のTEM像。黒い帯に対応する[110]方位に沿ったすべり帯は、お互いに直交しています。 |
【論文情報】
| 雑誌名 | npj Heritage Science |
| 論文名 | Deformation mechanism behind the unique texture of Kanazawa gold leaf |
| 著者 | Yuanzhe Xu, Satoshi Ichikawa, Kohei Aso, Hideyuki Murata, and Yoshifumi Oshima |
| 掲載日 | 2025年9月26日 |
| DOI | 10.1038/s40494-025-02055-5 |
【用語説明】
材料表面で後方に散乱した電子回折の菊池パターンを解析し、ナノメートルの分解能で結晶方位、組織、転位密度のマップを得ることができます。
通常の透過電子顕微鏡の加速電圧が100-200 kVであるのに対し、超高電圧透過電子顕微鏡の加速電圧は、2MVと一桁大きい。そのため、入射電子の透過能が高く、厚い試料の内部構造を観察することができます。本研究の金箔、金澄を観察用に薄片加工することなくそのまま観察することができます。
令和7年10月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/10/07-1.html特殊なダイヤモンドの針を開発し超高速で変化する電場の局所計測に成功
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| 国立大学法人筑波大学 国立大学法人 慶應義塾大学 |
特殊なダイヤモンドの針を開発し
超高速で変化する電場の局所計測に成功
NV中心と呼ばれる格子欠陥を導入したダイヤモンドを原子スケールの空間分解能を持つ原子間力顕微鏡(AFM)の探針(プローブ)に用い、二次元層状物質の表面近傍の電場をフェムト秒(1000兆分の1秒)・ナノメートル(10億分の1メートル)の時空間分解能で計測することに成功しました。
| ダイヤモンドの結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがあります。これをNitrogen-Vacancy(NV)中心と言います。そして、NV中心を導入したダイヤモンドに電界を加えると、その屈折率が変化するようになります。これは電気光学(EO)効果と呼ばれる現象で、ダイヤモンド単体では実現していませんでした。 本研究チームはこれまでに、NV中心を導入した高純度ダイヤモンドに1000兆分の1秒という極めて短時間だけパルス光を放出するフェムト秒レーザーを照射し、ダイヤモンドのEO効果を計測することで、ダイヤモンドの格子振動ダイナミックスを動的に高感度に検出することに成功しています。このことは、ダイヤモンドが超高速応答するEO結晶として利用可能で、電場を検出する探針(ダイヤモンドNVプローブ)となり得ることを示しています。 そこで本研究では、NV中心を導入したダイヤモンドの超高速EO効果と、原子スケールの空間分解能を有する原子間力顕微鏡(AFM)技術とを融合し、フェムト秒(fs=1000兆分の1秒)の時間分解能とナノメートル(nm=10億分の1メートル)の空間分解能で局所的な電場のダイナミックスを測定できる、時空間極限電場センシング技術を開発しました。そして、このセンシング技術を用いることで、二次元の原子層が層状に重なった二次元層状物質であるセレン化タングステン(WSe2)試料の表面近くの電場を500 nm以下かつ100 fs以下の時空間分解能でセンシングできました。 ダイヤモンドNVプローブはスピンや温度の変化にも感度があるため、本研究成果は、電場の検出に加え、磁場や温度を検出するためのセンシング技術としても展開されることが期待されます。 |
【研究代表者】
筑波大学数理物質系
長谷 宗明 教授
北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアル・デバイス研究領域
安 東秀 准教授
慶應義塾大学理工学部
ポール フォンス 講師(研究当時、同大学同学部電気情報工学科教授)
【研究の背景】
ダイヤモンド中の不純物には窒素やホウ素などさまざまな種類があります。その中でも、点欠陥に電子や正孔が捕捉され、発光を伴う種類のものはダイヤモンドを着色させるため、「色中心:カラーセンター」と呼ばれます。色中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、温度や電場を読み取る量子センサー注1)として用いられています。
量子センサーの中でも、ダイヤモンドに導入した窒素―空孔(NV)中心注2)と呼ばれる複合欠陥を用いたセンサーは、まだまだ発展途上の技術ですが、高空間分解能・高感度が要求される細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーへの応用など、新しい可能性が期待されています。
本研究チームは、フェムト秒(1000兆分の1秒)の時間だけ近赤外域の波長で瞬くフェムト秒超短パルスレーザー注3)を用い、NV中心を導入したダイヤモンドの電気光学(EO)効果注4)を実時間分解計測することで、ダイヤモンドの格子振動ダイナミックスを動的に高感度に検出することに成功しています参考文献 a)。このことは、ダイヤモンドが超高速応答するEO結晶になり、電場検出の探針(プローブ)となり得ることを示すものです。
これまでもダイヤモンドを原子間力顕微鏡(AFM)注5)と組み合わせた電場センシングの試みはなされていましたが、局所ダイナミックスを動的に評価できる手法はほとんどありませんでした。特に時間分解能に関しては、発光測定に基づく従来の手法ではナノ秒程度が限界であり、ピコ秒以下の超高速時間分解能に関しては、全く開拓されていませんでした。
【研究内容と成果】
本研究では、量子光学(フェムト秒超短パルスレーザーを用いたダイヤモンドのEO効果)と走査プローブ顕微鏡(SPM)の一種である原子間力顕微鏡(AFM)技術を融合することで、光の回折限界を超える空間分解能に加えて、今までの検出限界を超える超高速時間分解能で局所的な電場計測を実現することを目指しました(図1)。
極めて不純物が少ない高品質のダイヤモンド結晶の表面近傍(深さ40nm)に、密度を制御したNV中心を導入し、そのダイヤモンド結晶をレーザーカットおよび集束イオンビーム(FIB)技術注6)を駆使することで、先端径が500 nm以下のダイヤモンドNVプローブに加工することに成功しました。このダイヤモンドNVプローブを、フェムト秒超短レーザーを組み込むことが可能な、ピエゾ抵抗効果注7)に基づく自己センシング方式注8)のAFMのカンチレバーに取り付けました(図2)。
このシステムを用いて、まずガリウムヒ素(GaAs)半導体基板の表面電場を調べました。フェムト秒超短パルスレーザーの出力光をビームスプリッタで約10対1に分岐し、強い方を励起のためのポンプ光、弱い方を探索のためのプローブ光とします。電子が電流を運ぶn型GaAs試料は高強度のポンプ光で励起され、プローブ光はダイヤモンドNVプローブに入射されます(図3a)。まず、ダイヤモンドNVプローブの有無による時間分解EO信号の検出感度を確認するため、ダイヤモンドNVプローブを用いないマクロ計測により時間分解EO信号を計測したところ、励起直後(Time delay=時間遅延0 ps)に立ち上がり、数ps(ps=1兆分の1秒)以内に緩和しポンプ光を当てる前に戻る信号が得られました(図3b)。またNVセンターを導入したダイヤモンドNVプローブを通じて、n型GaAsの表面電場を検出することに成功しました(図3c)。ダイヤモンドNVプローブの導入によりEO信号の大きさは約1/42に減少しましたが、局所計測に成功したと言えます。
さらに二次元層状物質注9)であるセレン化タングステン(WSe2)単結晶をシリコン基板上に転写した試料を用いて実験を行いました。このWSe2試料では、場所によって結晶の厚さが異なっていますが、光学顕微鏡で銀白色のバルク(Bulk)結晶(厚さが10原子層以上の結晶)を見つけ、このバルク結晶と接する紫色の単層(1 ML)部分との界面に着目しました(図4a)。この厚さの異なる界面を用いて、局所的な表面電場の計測を行ったところ、単層部分とバルク部分のキャリア特性を反映した表面電場信号を、500 nm以下かつ100 fs以下の時空間分解能でセンシングすることに成功しました(図4a,b)。また時間分解EO信号の減衰を指数関数を用いてフィッティング(モデル化)したところ、単層部分では約200フェムト秒で緩和する成分のみが観測されました。一方、バルク部分では、この成分に加えて、約2psで緩和する遅い成分の寄与があることが分かりました(図4c)。このことは、単層部分では電場は基板との相互作用などで高速に緩和するのみなのに対し、バルク部分では、表面電場と結合したキャリアのバンド内緩和やバレー間緩和注10)が寄与していることを示しています。n型GaAsの時間分解EO信号による電場検出感度を見積もると、約100 V/cm/
(Hzは周波数)となりました。これは発光測定に基づく従来の手法で得られたマイクロ秒時間領域でのDC(直流)電場センシングと同等の検出感度を達成したことになります。最近のマイクロ秒時間領域でのAC(交流)電場センシングに関する検出感度には2桁及びませんが、本手法ではDC(直流)電場センシングと同等の検出感度で500 nm以下かつ、100フェムト秒というマイクロ秒を遙かに凌ぐ高い時空間分解能が得られることが示されたと言えます。
【今後の展開】
今回開拓した時空間極限センシング技術は、例えば炭化ケイ素(SiC)などのパワー半導体材料や燃料電池材料内での局所電場検知、トポロジカル絶縁体における局所電場検知など、基礎物理・化学のための基盤技術となることが期待されます。また、NV中心を含むダイヤモンドNVプローブはスピンや温度の変化にも感度があるため、本研究のアプローチは、電場の検出に加え、磁場や温度を検出するためのセンシング技術としても展開可能であると言えます。例えばレーザー医療や分子レベルでの細胞の計測や制御を通じて、癌の治療をはじめとする量子生命科学の分野にも波及しうる革新的な展開が期待されます。
【参考図】

| 図1 本研究で行なった実験の概要図 ダイヤモンドNVプローブを用いた超高速ポンプ・プローブ電場センシング測定の概略図。試料上の各指定点においてAFMプローブを垂直に接近・後退させる「ピンポイントモード」で測定を行った。また試料はピエゾスキャナーを用いてx-y方向に走査される。 |

| 図2 本研究で作製したダイヤモンドNVプローブ概要図 (a) FIBで作製したダイヤモンドNVプローブ(探針)の走査型イオン顕微鏡像。マイクロメートルサイズに加工されたダイヤモンド結晶の一部が探針となっている。(b) ダイヤモンドNVプローブの探針部分のフォトルミネッセンス画像。赤色の部分から探針の直径が500 nm以下であることが分かる。(c)カンチレバーに取り付けたダイヤモンドNVプローブの光学顕微鏡像。カンチレバーは自己センシング方式用の回路部分の上部に位置しており、その先端に探針部分を含むダイヤモンドNVプローブが取り付けられている。 |

| 図3 ダイヤモンドNVプローブを用いたn型GaAs表面の電場センシング (a)ダイヤモンドNVプローブ先端近傍の表面バンド曲げと接触モードの配置図。表面状態はフェルミエネルギー(EF)を示すベル形状の破線で表され、下側のバンドは電子(-)で占有されている。VBは価電子帯、CBは伝導帯を示す。(b)ダイヤモンドNVプローブを用いないマクロ計測によるn型GaAsウェハーからの時間分解電気光学信号。(c)ダイヤモンドNVプローブを用いたn型GaAsからの局所的時間分解電気光学信号。(b)のマクロ計測の場合に比べてEO信号の大きさは約1/42になっているが、検出感度が十分であることが確認された。 |

| 図4 WSe2のEO信号の時空間測定 (a) ダイヤモンドNVプローブを用いた60 µm ×60 µm領域のトポグラフ画像。色の薄い部分がバルク(Bulk)結晶である。左上の挿入図は光学顕微鏡像であり、銀白色の部分はバルク(Bulk)結晶である。 局所計測では、単層(1ML)領域(P4)からバルク(Bulk)領域(P11)までを500 nmステップで計測する。(b)ダイヤモンドNVプローブを用いて得られた局所的な時間分解電気光学信号。P4からP11に行くに従い、単層(1ML)からバルク(Bulk)領域を測定している。図(b)の黒実線は、単一指数関数(単層=1ML領域のデータについて)または二重指数関数(バルク領域のデータについて)を用いたフィッティング(モデル化)を示す。(c) P4からP11の異なる位置における500 nmステップで得られた時間分解電気光学信号へのフィッティングにより得られた緩和時間定数。エラーバーは標準偏差を示す。 |
【用語解説】
量子化した準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測する手法のこと。
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)中心」はダイヤモンドの着色にも寄与する色中心と呼ばれる格子欠陥となる。NV中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。このため、NV中心を持つダイヤモンドは「量子センサー」と呼ばれ、次世代の超高感度センサーとして注目されている。
パルスレーザーの中でも特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒(1000兆分の1秒)以下の極めて短いレーザーのこと。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
物質に電場を加えると、電場の強度に応じて物質の屈折率が変化する効果のこと。
先端が鋭い探針で試料の表面を走査し、探針と表面との間に働く微少な力を測定して表面構造を原子スケールの高分解能で観察することができる顕微鏡のこと。AFM探針は、バネのようにしなるカンチレバーの先端に取り付けられており、コンタクトモードでは、この探針と試料表面を微小な力で接触させ、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針・試料間距離をフィードバック制御しながらX―Y方向(水平方向)に走査することで、表面形状を画像化できる。
イオンビーム(荷電しているイオンを高電界で加速したもの)を細く絞ったものである。物質の微細加工、蒸着、観察などの用途に用いられる。
半導体材料などに機械的なひずみ(力による変形)を与えたとき、材料の電気抵抗が変化する効果のこと。
通常のAFMでは、レーザー光をカンチレバー背面に照射し、反射したレーザービームの位置変化を位置センサーで計測することで、カンチレバーのたわみ量(表面構造によりたわんだ量)を読み取る。カンチレバーのたわみ信号を光で読み取ることから、これを光てこ方式と呼ぶ。一方、自己センシング方式のAFMでは、光てこ方式のようにレーザーと一センサーを必要とせず、ピエゾ抵抗効果などのカンチレバー自身の物理量の変化からカンチレバーのたわみ量を読み取ることができる。
共有結合が二次元方向だけに伸びている結晶のこと。原子一層レベルの二次元原子層が、ファンデルワールス力で積層して三次元結晶を形成している。炭素の二次元原子層であるグラフェンが積層したグラファイト、近年盛んに研究されるようになった遷移金属カルコゲナイドなどがある。本研究で調べたセレン化タングステン(WSe2)も遷移金属カルコゲナイドである。
半導体などにおいて、バレーとは電子バンドの極小点を指す。異なるバレー間にキャリアが散乱(遷移)することでエネルギーを失う緩和過程をバレー間緩和と呼ぶ。
【研究資金】
本研究は、科研費による研究プロジェクト(25H00849, 22J11423, 22KJ0409, 23K22422, 24K01286, 24H00416, 23H00264)、および国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(研究代表者:長谷 宗明)(JPMJCR1875)の一環として実施されました。
【参考文献】
a) T. Ichikawa, J. Guo, P. Fons, D. Prananto, T. An, and M. Hase, 2024, Cooperative dynamic polaronic picture of diamond color centers. Nature Communications. 15, 7174 (10.1038/s41467-024-51366-x).
【掲載論文】
| 題名 | An ultrafast diamond nonlinear photonic sensor. (超高速ダイヤモンド非線形光センサー) |
| 著者名 | D. Sato, J. Guo, T. Ichikawa, D. Prananto, T. An, P. Fons, S. Yoshida, H. Shigekawa, and M. Hase |
| 掲載誌 | Nature Communications |
| 掲載日 | 2025年9月25日 |
| DOI | 10.1038/s41467-025-63936-8 |
令和7年9月26日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/09/26-1.html学生のXUさんがEM-NANO 2025においてStudent Awardを受賞
学生のXU, Yuanzheさん(博士後期課程3年、ナノマテリアル・デバイス研究領域、大島研究室)が、The 10th International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies(EM-NANO 2025)において、Student Awardを受賞しました。
EM-NANO 2025は、有機・無機エレクトロニクス材料とナノテクノロジーに関する国際シンポジウムで、令和7年6月11日~14日にかけて、福井県福井市のAOSSA(福井県県民ホール)にて開催されました。
同シンポジウムでは、全体講演(Plenary lectures)や招待講演、特別セッションのほか、開催10回目を記念する式典も行われ、エレクトロニクス分野における最新の研究成果について活発な議論が行われました。
※参考:EM-NANO 2025
■受賞年月日
令和7年6月14日
■研究題目、論文タイトル等
Microscopic study of Kanazawa gold leaves
■研究者、著者
Yuanzhe Xu, Satoshi Ichikawa (大阪大学) , Kohei Aso, Hideyuki Murata, Yoshifumi Oshima
■受賞対象となった研究の内容
超薄膜(約100~200 nm)である金沢金箔の組織変化を調査しました。常温で処理されたにもかかわらず、焼鈍や熱間圧延を行わなくても、面心立方(FCC)金属において強い{001}テクスチャが形成されることは、長年の謎でした。今回、EBSDとTEMを用いて、No. 4金箔において[101]方向に沿って幅約100nmのスリップバンドが形成され、{011}-<011>スリップシステムと一致することを発見しました。この滑り系はFCC金属では稀な現象であり、超薄膜による活性化が原因と考えられます。この現象と交差滑り活動が、ハンマー加工中の{001}組織の形成を促進しています。
■受賞にあたって一言
It is a great honor to receive the "Student Award" at EM-NANO2025. I am truly encouraged by this recognition from the committee, which strengthens my determination to further explore the unique deformation mechanisms of Kanazawa gold leaf. As this research is closely tied to the cultural and scientific heritage of Kanazawa and the Hokuriku region, receiving this award at a local conference is especially meaningful to me. This achievement would not have been possible without the invaluable support and guidance of my supervisor, Prof. Yoshifumi Oshima, and the generous assistance of Specially Appointed Professor Satoshi Ichikawa from the Research Center for Ultra-High Voltage Electron Microscopy, Osaka University. I would also like to thank Senior Lecturer Kohei Aso and all the laboratory members for their generous support in both research and daily life.
令和7年7月17日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/07/17-2.htmlリチウムイオン電池の負極を守り、耐久性を大幅に向上させる新しい電解液添加剤を開発
リチウムイオン電池の負極を守り、耐久性を
大幅に向上させる新しい電解液添加剤を開発
【ポイント】
- リチウムイオン電池で広く使われているグラファイト負極を保護し、耐久性を大幅に向上させる新しい電解液添加剤(FPTI)を開発しました。
- FPTIは、電解液の成分よりも先に反応し、グラファイト表面に丈夫で安定した保護膜を形成します。これにより、電池内部で起こる不要な副反応を抑えます。
- FPTIを添加することで、負極と電解液の界面における抵抗が低下するとともに、リチウムイオンが移動しやすくなることを確認しました。
- 試験用のグラファイト/リチウムハーフセルでは、FPTIを4 mg/mL添加した場合、1,000回の充放電後も、約200回時点で得られた最大容量の95.6%を維持しました。
- 今回確認したのは主に試験用セルにおける負極の耐久性向上です。今後、実用電池に近い条件での検証を進めることで、リチウムイオン電池の長寿命化への応用が期待されます。
【概要】
| 北陸先端科学技術大学院大学物質化学フロンティア研究領域の松見紀佳教授、MANTRIPRAGADA, Bharat Sri Mitra助教、REDDI, Uday Sai大学院生(博士後期課程)の研究グループは、リチウムイオン二次電池*1で広く使用されているグラファイト負極を保護し、その耐久性を大幅に向上させる新しい電解液添加剤を開発しました。 スマートフォンや電気自動車(EV)、定置型蓄電池など広く利用されるリチウムイオン電池をより長く安定して使用するためには、充放電を繰り返しても性能が低下しにくい電極の実現が重要です。 開発した添加剤「FPTI」は、フッ素を高密度に含む分子構造を持ち、通常の電解液成分よりも先に反応して、グラファイト負極の表面に安定した保護膜を形成します。これにより、不要な副反応を抑えるとともに、負極と電解液の界面の抵抗を低減し、リチウムイオンが移動しやすくなることを確認しました。試験用のグラファイト/リチウムハーフセルでは、FPTIを4 mg/mL添加した場合、1,000回の充放電後も、約200回時点で得られた最大放電容量の95.6%を維持しました。 本研究で実証したのは、主に試験用セルにおけるグラファイト負極の耐久性向上であり、実用電池そのものの耐用年数の向上を直接示したものではありません。今後、実用電池に近い条件での検証を進めることで、リチウムイオン電池の長寿命化への応用が期待されます。 本成果は、米国化学会の学術誌「Energy and Fuels」に掲載されました。 |
1.背景
リチウムイオン電池は、高い電圧とエネルギー密度を持つことから、スマートフォンやノートパソコンなどの携帯機器だけでなく、電気自動車(EV)や定置型蓄電池などにも広く利用されています。これらの用途が拡大するなか、電池を長期間にわたって安定して使用できるようにすることは、利便性やコストの面だけでなく、資源を有効に利用するという観点からも重要な課題です。
現在広く利用されているリチウムイオン電池では、負極材料として主にグラファイトが使われています。グラファイトは充放電を安定して行える優れた材料ですが、電池を使い始める際に、負極表面で電解液の一部が分解して「固体電解質界面(SEI:Solid Electrolyte Interphase)*2」と呼ばれる薄い膜が形成されます。この膜は、負極を電解液から守りながらリチウムイオンを通す、いわば負極表面の保護膜として重要な役割を果たします。
一方、この保護膜が不安定で、充放電のたびに壊れたり作り直されたりすると、その過程でリチウムや電解液が消費され、電池の内部抵抗が増加して容量低下につながります。そのため、グラファイト表面に薄く安定した保護膜を形成し、それを長期間維持することが、負極の耐久性を高めるうえで重要です。
これまで、リチウムイオン電池の性能を改善するためにはさまざまな電解液添加剤が研究されてきました。特に正極を安定化させる添加剤については多くの研究が進められている一方、グラファイト負極を安定化させる添加剤は相対的に限られています。
これは、炭素材料自体の耐久性が一般的に低く、グラファイト負極を安定化するための効果的な添加剤の設計戦略が十分に確立されていないことが原因と考えられます。
そこで研究グループは、負極表面で電解液よりも先に反応し、安定した保護膜を形成できる分子の開発に取り組みました。
2.研究内容
研究グループは、グラファイト負極の表面に安定した保護膜を形成する新しい電解液添加剤として、フッ素を高密度に含むイミン化合物「FPTI(pentafluorophenyl thiophene imine)」を設計しました。FPTIは、3-チオフェンカルボアルデヒドとペンタフルオロフェニルアミンとの反応により、94%の収率で合成しました。
FPTIは、フッ素を多く含むペンタフルオロフェニル基と、硫黄を含むチオフェン構造を併せ持つことが特徴です。研究グループは、この特徴的な分子構造によって、FPTIがグラファイト負極の表面で通常の電解液成分よりも先に反応し、負極を保護する安定した膜を形成することを狙いました。
研究グループは、FPTIを電解液に添加し、グラファイトを負極、金属リチウムを対極とした試験用のCR2025型コインセル(グラファイト/リチウムハーフセル)を用いて、その効果を調べました。
計算化学(DFT計算)による解析の結果、FPTIは一般的な電解液成分やバインダーよりも低いLUMO*3準位を持ち、グラファイト負極上で通常の電解液成分よりも先に還元されやすいことが分かりました。このため、充電時にFPTIが先に反応することで、グラファイト負極の表面にSEIと呼ばれる保護膜を形成し、電解液の不要な分解を抑えることができます。
実際にFPTIを添加したセルでは、添加していないセルと比べて、負極表面のSEI抵抗と、負極と電解液の間でリチウムイオンが移動する際の抵抗がいずれも低下しました。4 mg/mL添加した場合、SEI抵抗は7.6 Ωから2.2 Ωへ、電荷移動抵抗は41.8 Ωから19.8 Ωへ低下しました。
また、リチウムイオンの移動しやすさを示す拡散係数は、非添加系の3.45±4.71×10⁻14cm²s⁻¹に対し、2 mg/mL添加系では2.92±3.96×10⁻13cm²s⁻¹、4 mg/mL添加系では3.58±3.74×10-13cm²s⁻¹となり、FPTIの添加によってリチウムイオンが移動しやすくなることが確認されました。
さらに、負極表面を分析したところ、FPTIを添加したセルでは、フッ化リチウム(LiF)を多く含む安定したSEIが形成されていることが分かりました。FPTIに含まれるフッ素や硫黄などが保護膜の形成に寄与することで、グラファイト負極と電解液の界面が安定化したと考えられます。
長時間の充放電試験では、最初の3サイクルを0.1C、その後0.5Cで評価しました。その結果、約200サイクル時の最大容量を基準とした1,000サイクル時点の容量維持率は、FPTIを添加しないセルでは62.7%だったのに対し、2 mg/mL添加したセルでは89.4%、4 mg/mL添加したセルでは95.6%となりました。FPTIを添加することで、繰り返し充放電した際のグラファイト負極の容量低下が大きく抑えられることが示されました。
また、研究グループは、実際のリチウムイオン電池により近い構成として、NMC811正極とグラファイト負極を組み合わせたフルセルについても評価しました。FPTIを用いてあらかじめグラファイト負極表面にSEIを形成した後、FPTIを含まない電解液を用いてフルセルを構成したところ、4 mg/mLのFPTIで処理した負極を用いたセルで約233 Wh kg⁻¹のエネルギー密度が得られました。
なお、このフルセル試験は、FPTIを実用電池の電解液に直接添加して性能を評価したものではなく、FPTIによってあらかじめ形成した負極側の保護膜の効果を検証したものです。
3.今後の展開
今回の研究により、FPTIを用いてグラファイト負極表面に安定した保護膜を形成することで、試験用セルにおける負極の耐久性を大幅に向上できることが示されました。
一方、今回の成果は、実際に市販されているリチウムイオン電池の耐用年数が延びることを直接実証したものではありません。社会実装に向けては、実用サイズ・実用条件に近いフルセルでの長期試験をはじめ、温度条件、安全性、添加剤の最適な使用方法、製造工程への適合性、量産性などについて、さらに検証する必要があります。
本技術は、電解質や電極活物質そのものを新たな材料に置き換えるものではなく、少量のFPTIを既存の電解液に添加することでグラファイト負極の耐久性向上を図るものです。そのため、既存の電池製造設備や工程を大きく変更することなく導入できる可能性があり、研究グループでは、社会実装に向けたハードルが相対的に低い技術になると考えています。今後、実用電池に近い条件での検証・実証を進めていくことを希望しています。
今後、こうした検証を進め、実用電池でも長寿命化が実現できれば、スマートフォンや電気自動車、定置型蓄電池などの交換頻度を減らし、ユーザーの利便性向上やコスト低減につながる可能性があります。また、電池をより長く使用できるようになれば、電池の製造・交換に伴う資源消費や環境負荷の低減にもつながることが期待されます。
松見教授は、「本研究成果についてはすでに国内特許を出願しています。今後は企業との共同研究などを通じて実用化に向けた研究開発を進め、耐久性の高いリチウムイオン電池の実現と、将来的な低炭素社会への貢献を目指します。現在、開発パートナーを募集しており、サンプル提供についてもご相談に応じます」と話しています。

| 図1.イミン型負極添加剤の設計コンセプト FPTIがグラファイト負極表面で電解液より先に反応し、LiFなどを含む安定した保護膜(SEI)を形成することで、不要な副反応を抑え、リチウムイオンが移動しやすい界面を形成する考え方を示しています。 |

| 図2.FPTIの合成と分子設計 (a) FPTIの合成法、(b) FPTIの1H NMRスペクトル、(c)FPTI、電解液及びバインダーのHOMO-LUMOエネルギーレベル。 |

| 図3.FPTI添加による充放電特性 (a)グラファイト/リチウムハーフセルの長期充放電サイクル特性、(b)第一サイクルにおけるdQ/dVプロット、(c)NMC811/グラファイトフルセルの充放電レート特性、(d)フルセルの充放電サイクル特性。 |
【用語説明】
リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充電・放電を行う二次電池。高い電圧とエネルギー密度を持ち、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車(EV)、定置型蓄電池などに広く利用される。
主にリチウムイオン電池の負極表面に形成される薄い膜。リチウムイオンを通す一方で、電解液のさらなる分解を抑える「負極表面の保護膜」として働き、その性質が電池の性能や耐久性に大きく影響する。
電子が入っていない分子軌道のうち、最もエネルギーが低い軌道。一般にLUMOのエネルギーが低い分子ほど電子を受け取りやすく、還元されやすい。本研究では、FPTIが電解液成分よりも先に還元され、負極表面に保護膜を形成する性質を説明する指標として用いた。
【論文情報】
| 論文タイトル | Enhancing the Cycling Stability of Graphite Anodes Using a Dense Fluorine Containing Thiophene-Based Electrolyte Additive |
| 日本語タイトル | 高密度フッ素含有チオフェン系電解液添加剤によるグラファイト負極のサイクル安定性向上 |
| 著者 | Uday Sai Reddi, Bharat Srimitra Mantripragada and Noriyoshi Matsumi* (*責任著者) |
| 掲載誌 | Energy and Fuels |
| 掲載日 | 2026年8月31日 |
| DOI | 10.1021/acs.energyfuels.6c02613 |
令和8年9月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/09/07-1.htmlリチウムイオン電池の劣化原因をナノスケールで可視化 ― 新手法「ケプストラム照合解析」で電池現象の解明に貢献 ―
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北陸先端科学技術大学院大学 東京科学大学 |
リチウムイオン電池の劣化原因をナノスケールで可視化
― 新手法「ケプストラム照合解析」で電池現象の解明に貢献 ―
【ポイント】
- リチウムイオン電池の劣化につながる正極の結晶構造変化をナノメートルスケールで可視化
- 新開発の「ケプストラム照合解析」により、高空間分解能・広視野・低損傷を同時に実現
- 電池劣化の原因となる界面での構造変化を解明し、高性能電池開発への貢献に期待
| 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域の麻生浩平講師、掛谷尚史大学院生(博士後期課程)、土田拓夢大学院生(博士前期課程)、大島義文教授、東京科学大学 物質理工学院応用化学系の伊藤広貴大学院生(博士前期課程)(研究当時)、淺野翔大学院生(博士後期課程)(研究当時)、渡邊健太助教、平山雅章教授、物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センターの三石和貴副センター長、木本浩司センター長、蓄電池基盤プラットフォームの篠田啓介エンジニア、エネルギー・環境材料研究センターの増田卓也センター長の研究グループは、リチウムイオン電池の結晶構造変化をナノメートル (nm:10億分の1メートル)スケールで可視化する新手法「ケプストラム照合解析」を確立しました。 新手法によって、従来の分析手法では困難だった、高空間分解能(約1 nm)・広視野(数百nm)・試料低損傷の三点を同時に実現しました。そして、この手法をエピタキシャル薄膜*1として作製したコバルト酸リチウム(LiCoO2)正極に応用することで、電解質との界面付近において、電池劣化の原因となるナノスケールの構造変化を可視化することに成功しました。今回、開発された手法は、電池における構造変化の理解を加速することで、電池の劣化原因解明や高性能化に役立つと期待されます。 本研究成果は、2025年10月21日(米国東部標準時間)に科学雑誌「Nano Letters」誌のオンライン版で公開されました。 |
【研究概要】
スマートフォンや電気自動車にはリチウムイオン電池(LIB)が欠かせません。その正極として広く用いられている材料が、層状の結晶構造(原子の並び方)を有するリチウム遷移金属酸化物(以下、層状正極)です。LIBの長時間稼働を実現するには、より高電圧で動かすことが重要となります。一方、高電圧で充放電を繰り返すと、液体電解質と接する界面において、層状正極がスピネル構造や岩塩構造*2に変化して、LIBの劣化を引き起こします。界面を起点として数nm のスケールで進行する構造変化を理解するために、解析が求められてきました。
従来の光やX線を使った観察では、空間分解能が数十〜数百nmに限られます。電子顕微鏡なら原子スケールで観察できますが、観察視野が約50×50 nm2に制限される課題と、多量の電子照射によって観察中に試料が損傷する課題がありました。つまり、「ナノ空間分解能」「広視野」「低試料損傷」の三つを両立して、層状正極の構造を解析できる手法がありませんでした。
本研究グループでは、層状正極の代表例であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)の構造(図1a)を調べるために、先進的な電子顕微鏡手法の一つである走査ナノビーム電子回折*3に注目しました (図1b)。これは、直径約1 nmの電子線をスキャンさせながら試料に照射し、結晶構造を反映する電子回折図形を得て、高速カメラに記録する手法です。高電圧で100サイクル充放電させたエピタキシャルLiCoO2について、あるスキャン位置での回折図形(図1c)と、結晶構造モデルから計算した回折図形(図1d)とで差異が認められます。電子回折図形には、結晶構造の情報に加えて、試料の厚さや僅かな傾きに依存するスポットの強度変化が含まれるため、比較が困難です。
そこで、音声信号処理で用いられるケプストラム解析*4に着目しました。ケプストラムは、回折図形の強度を対数変換してフーリエ変換し、その振幅を得ることで求められます。実験と計算のケプストラム(図1e、f)では、試料の厚さや傾きを反映する成分は中心スポットに、結晶構造の周期性を反映する成分は周囲のスポットにそれぞれ分離されます。構造由来のスポットは実験と計算でよく一致するため、この領域が層状構造だと分かります。この一致度は、相互相関関数(2つの画像が似ているほど高い値を示す関数)を用いることで、数値として評価できます。層状構造に加えて、スピネルや岩塩構造についても同様の解析を行い、試料各位置での構造を調べました。独自に開発した一連の解析を「ケプストラム照合解析」と名付けました。
結晶構造の合成マップ(図1g)では、LiCoO2正極の大部分はもとの層状構造を保持していましたが、電解質との界面から正極側へ約3 nmにかけてスピネル・岩塩構造が観察されました。本手法は、約1 nmの高空間分解能と、正極の内部と界面の両方をカバーする約300×100 nm2の広視野を同時に達成しました。さらに、原子分解能電子顕微鏡など電子線を多用する他の手法と比べ、本手法の照射量は2ケタ以上低いことが分かりました。観察中の試料損傷を低減でき、従来手法よりも信頼性の高い結果が得られます。
界面での構造変化に対して、LiCoO2正極を別の物質でコーティングして保護する対策や、異なる元素をわずかに添加する対策が提案されています。さらに、次世代デバイスとして注目を集めている全固体LIBでも、ナノスケールの構造変化が生じると報告されています。今後、本手法を活用することで、劣化メカニズムの詳細な解明や、コーティングや添加などの効果の検証を計画しています。本成果は、LIBの現象解明を目指す学術研究や、高性能LIB開発に広く貢献すると期待されます。

| 図1(a)[100]方位から見た層状LiCoO2の結晶構造モデル。(b)走査ナノビーム電子回折の模式図。(c)実験と(d)計算の電子回折図形。(e)実験と(f)計算のケプストラム。中心以外の明るいスポットが結晶構造に由来します。(g)結晶構造の合成マップ。青、緑、赤色が強いほど、層状、岩塩、スピネル構造であることを示します。 |
【研究資金】
本研究の一部は、日本学術振興会(JSPS) 科研費(JP22K14473、JP25K18108、JP24H00042)、科学技術振興機構(JST) 革新的GX技術創出事業(GteX)プログラム(JPMJGX23S5、JPMJGX23S6)、同 戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)、物質・材料研究機構(NIMS) 連携拠点推進制度、三谷研究開発財団、澁谷学術文化スポーツ財団、池谷科学技術振興財団、中部電気利用基礎研究振興財団、旭硝子財団、北陸先端科学技術大学院大学 研究拠点形成支援事業の支援を受けて実施されました。本研究の一部は、NIMS蓄電池基盤プラットフォーム、マテリアル先端リサーチインフラ(JPMXP1222JI0007、JPMXP1223JI0012、JPMXP1224JI0005)にて実施されました。
【論文情報】
| 雑誌名 | Nano Letters |
| 論文名 | Low-Dose Nanoscale Visualization of Crystal Phases in Epitaxial Cathodes via Cepstral Matching of Scanning Nanobeam Electron Diffraction |
| 著者 | Kohei Aso, Takafumi Kakeya, Takumu Tsuchida, Hiroki Ito, Sho Asano, Kenta Watanabe, Kazutaka Mitsuishi, Koji Kimoto, Keisuke Shinoda, Takuya Masuda, Masaaki Hirayama, and Yoshifumi Oshima |
| 掲載日 | 2025年10月21日 |
| DOI | 10.1021/acs.nanolett.5c03692 |
【用語説明】
目的の物質を、基板の結晶構造に合わせて成長させた薄膜。本研究ではチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)(111)基板上に成長させたLiCoO2薄膜を用いています。結晶方位や露出表面を制御できるため、通常の粉末多結晶正極よりも観察が容易になります。
おおむね、層状LiCoO2からリチウム(Li)が抜けて、そこに一部のコバルトが入り込んだ構造。層状構造ではLiイオンが(003)面内を2次元的に移動できますが、スピネル構造や岩塩構造ではその経路が失われるため、Liイオン伝導性が低下します。さらに、一度これらの構造に変化すると層状構造には戻りにくくなります。そのため、高電圧で充放電を繰り返すとLIBの劣化につながります。特に、充電の最大電圧が4.2V(vs Li/Li+)超えたときに現れやすいです。
細く絞った電子線を試料上で走査し、各位置で電子回折図形を記録する手法。回折波の配置を解析することで、試料の結晶構造を求めることができます。実空間2次元と逆空間2次元に対する強度を示す、複雑かつ膨大な4次元データが得られるため、適切なデータ処理を施して情報を抽出する必要があります。
音声を解析するために開発された、信号の細かく変化する成分となだらかに変化する成分を分離する信号処理手法。音声分野では、声帯での原音成分と、口や鼻での共鳴によって原音から変化した成分とを分離する目的で用いられます。
令和7年10月28日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/10/28-2.html次世代プロトン電池へ期待 ―多孔質MXene(マキシン)フィルムが高容量・高速充電を実現―
次世代プロトン電池へ期待
―多孔質MXene(マキシン)フィルムが高容量・高速充電を実現―
ポイント
- 次世代電池「プロトン電池」の鍵となる多孔質MXene (マキシン)フィルムを開発
- 素材の穴の量(細孔密度)を調整することで、従来を大きく上回る電池容量と充電性能を実現
- 長寿命でエコな電池づくりに前進、持続可能なエネルギー社会に貢献
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域のLinh Chi T. Cao大学院生(博士後期課程)、青木健太郎助教、長尾祐樹教授らは、タイ・タマサート大学シリントン国際工学部(SIIT)およびタイ・国立電子コンピューター技術研究センター (NECTEC)と共同で、再生可能エネルギーの普及や電気自動車の進化に伴い需要が高まる高性能エネルギー貯蔵デバイスの実現に向け、次世代型プロトン電池*1の鍵となる多孔質MXene*2,3アノード(陽極)の開発に成功しました。 本研究で開発された多孔質MXeneフィルムは、MXeneを用いた先行研究の中で最高の性能を発揮し、高容量と超高速充電を両立できることが示されました。この成果は、環境負荷の低い、持続可能な電池技術の発展に大きく貢献すると期待されます。 |
【背景】
現代社会では、電気自動車の普及や携帯端末の進化に伴い、効率の良いエネルギー貯蔵システムの重要性が高まっています。長く市場を牽引してきたリチウムイオン電池は、リチウム資源の限界、環境への影響、安全性といった課題を抱えており、資源の乏しい日本が持続可能な発展を遂げるためには、多様なエネルギー資源の活用と高効率な変換技術の確立が不可欠です。
そこで注目されているのが、プロトンと呼ばれる水素原子(H+)を電荷キャリアとして利用するプロトン電池(図1)です。プロトン電池は、水素イオンを使って電気をやりとりする電池で、材料が豊富でエコ、かつ素早く充電できる可能性を秘めており、次世代エネルギー貯蔵の有力候補として注目されています。二次元のナノ材料であるMXeneは、その優れた電気伝導性や高い表面積から、プロトン電池の有望なアノード候補です。しかし、従来のMXeneを薄膜状にしたMXeneフィルムは、MXeneのシート間の相互作用が強く、反応が起こる場所が減少したり、プロトンの輸送が阻害されたりといった課題を抱え、その性能を十分に引き出せていませんでした。

図1 本研究のプロトン電池の模式図
【成果】
本研究では、MXeneアノードの性能向上を目指し、ある物質を鋳型(テンプレート)として利用してその鋳型を犠牲にすることで目的とする物質構造を形成する合成手法である「犠牲テンプレート法」を用いて、細孔密度を系統的に調整した多孔質MXene(P-MX)フィルムを開発しました(図2)。特に、ポリ乳酸(PLA)とMXeneの比率が1:8の条件で合成された「1:8P-MX」アノードは、1 A g−1で104.8 mAh g−1という高容量を達成し、2000サイクル後も96.7%の容量維持率を維持しました(図3)。これは、これまでに報告されたMXeneアノードの中で最高の性能です(図4)。これは、電池を繰り返し使う中で、電解液が素材のすき間にしみ込みやすくなり、さらにプロトンが出入りすることで、素材同士がくっついてしまうのを防ぎ、性能の低下を抑えることができ、反応が起こる場所の増加に繋がったためと考えられます。
さらに、1:8P-MXアノードと銅鉄プルシアンブルー類似体*4(CuPBA)カソード(陰極)を組み合わせた「フルセル」プロトン電池を構築しました。この「フルセル」は、1 mol L−1 H2SO4電解液中で、1 A g−1(17 C)で57.9 mAh g−1、そして10 A g−1(188 C)という高速充電レート*5においても53.3 mAh g−1という高い容量を保持しました。二次電池(充電可能な電池)の充放電におけるエネルギー効率を表す指標である「クーロン効率」は200サイクル後も97%と安定して高い値を示しましたが、容量維持率は65.4%に低下しました。これは、主にCuPBAカソードの電解液中での溶解・分解に起因すると特定され、今後の課題となります。これらの結果は、MXeneアノードにおける細孔設計が、容量とレート性能の両方を向上させる上で極めて重要であることを示しています。

図2 多孔質MXene(P-MX)フィルムの走査電子顕微鏡観察

図3 1:8P-MXフィルムのサイクル特性:電流密度1 A g-1、
電位範囲 −0.7~0.2 Vにおける容量(左軸)および容量保持率(右軸)

図4 本研究におけるMXeneベースのアノード性能と文献との比較
【社会への還元として期待できる内容、今後の展望】
本研究の成果は、最適化された細孔設計を持つMXeneアノードが、高容量で高速充電が可能な次世代プロトン電池の実現に大きく貢献することを示しています。特に、高濃度酸性電解液や追加の活性材料を用いずに、MXeneのみで高性能を実現した点は、環境への影響を低減し、より持続可能なエネルギー貯蔵システムを開発する上で重要な進歩です。今後は、フルセル電池の長期安定性をさらに向上させるため、CuPBAカソードの電解液中での安定性改善に焦点を当てた研究を進めていきます。これにより、1:8P-MXアノードの優れた性能を最大限に引き出し、プロトン電池の実用化を目指します。
本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST(グラント番号 JPMJCR21B3)による財政的支援を受けて実施されました。
【論文情報】
| 掲載誌 | Chemical Engineering Journal |
| 論文タイトル | Porosity-controlled MXene anodes for enhanced rate and long cycle life performance in aqueous proton batteries |
| 著者 | Linh Chi T. Cao*, Kentaro Aoki, Shu-Han Hsu, Sakoolkan Boonruang, Yuki Nagao*(筆頭著者も責任著者) |
| 掲載日 | 2025年7月15日 |
| DOI | 10.1016/j.cej.2025.165882 |
【用語説明】
プロトン(水素イオン、H+)を電荷キャリアとして利用する二次電池の一種です。資源の豊富さや高速な電荷移動が特徴です。
二次元遷移金属炭化物の一種で、高い電気伝導性と表面積を持つ有望な新素材です。
微細な穴(細孔)を多数導入したMXene材料で、電解液の浸透性やイオン輸送経路を改善し、電池性能を向上させます。
プロトン電池のカソード材料として研究される化合物群です。
電池の充電および放電速度を示す指標です。1Cは定格容量を1時間で充放電する速度を意味します。
令和7年7月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/07/17-1.htmlナノ粒子の三次元結晶構造を明らかにする格子相関解析を開発 ― 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の構造決定に成功 ―
ナノ粒子の三次元結晶構造を明らかにする格子相関解析を開発
― 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の構造決定に成功 ―
【ポイント】
- 高分解能透過電子顕微鏡法とデータ科学手法を組み合わせた格子相関解析を開発
- 欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の三次元結晶構造の決定に成功
- 多様な結晶構造をとり得る金属オキシ水酸化物ナノ粒子の構造解明に役立つと期待
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市) ナノマテリアル・デバイス研究領域の麻生浩平講師、大島義文教授、宮田全展講師 (研究当時)、同大学ナノマテリアルテクノロジーセンターの東嶺孝一技術専門員、日本製鉄株式会社 技術開発本部の神尾浩史主幹研究員らの研究グループは、高分解能透過電子顕微鏡法とデータ科学手法を組み合わせた格子相関解析を開発しました。これにより、従来のX線回折法(XRD)*1などでは困難だった、欠陥を多く含むメタチタン酸ナノ粒子の結晶構造を決定することに成功しました。メタチタン酸ナノ粒子は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)構造を基本骨格とするものの、TiO2層とTi(OH)4層が交互に積層した構造であることを明らかにしました。酸素と金属で構成される金属酸化物や、さらに水素が加わった金属オキシ水酸化物は、多様な結晶構造をとり、それに応じて多彩な物性を発現することが知られています。格子相関解析は、このような材料の構造解明に弾みをつける新たな手法であり、多彩な物性の理解に貢献すると期待されます。 本研究成果は、2025年4月28日 (英国標準時間)に科学雑誌「Communications Chemistry」誌のオンライン版で公開されました。 |
【研究の背景及び概要】
酸素と金属で構成される金属酸化物ナノ粒子や、水素が加わった金属オキシ水酸化物ナノ粒子は、現代社会に欠かせない触媒、エネルギー変換、吸着材として注目されています。これらのナノ粒子は、組成が同じでも異なる構造をとり、異なる物性を示します。つまり、物性を真に理解する上で、合成されたナノ粒子の形状や構造の解明は欠かせません。典型的な構造解析として、X線回折法やラマン分光法*2があります。しかし、サイズが数ナノメートル (nm, 十億分の一メートル) 程度のナノ粒子の場合、ピークが明瞭でないため解析が困難です。また、今回の研究対象とした、金属オキシ水酸化物のひとつであるメタチタン酸は、欠陥を多く含むため構造解析がより困難となっていました。一方、透過電子顕微鏡 (TEM)*3や走査TEM (STEM)*4は、原子配列を可視化できますが、得られる情報は投影した二次元像です。
そこで、三次元の結晶構造を明らかにするため、多数のメタチタン酸ナノ粒子のTEM像を異なる様々な方位から取得しました。様々な方位から多数の像を得るのは、生物分野で利用される単粒子解析と類似していますが、本研究では異なる解析手法を採用しています。単粒子解析では、対象物の形状が均一であると仮定し、多数の像を観察方位ごとに分類して足し合わせることで、像の質を高めます。しかし、メタチタン酸ナノ粒子の場合、形状が均一ではないため、従来の方法をそのまま応用することはできませんでした。そこで、今回開発した手法では、像の足し合わせではなく、周期性や格子定数に敏感な結晶格子の間隔や異なる格子間の角度に着目しました。本手法は、間隔や角度の相関を統計的に解析することで、結晶構造の特徴を抽出しようとした点に新規性があります。
メタチタン酸ナノ粒子は、TEM試料用の支持膜上にランダムな方位を向いて分散するので、様々な方位からの粒子の原子分解能TEM像が得られます (図1a)。得られたTEM像から、画像処理によって個々のナノ粒子を検出し (図1b)、そのナノ粒子にガウス関数のマスクをかけて高速フーリエ変換 (FFT) パターンを得ました(図1c)。FFTパターンで観察されるスポットは、ナノ粒子の結晶格子の周期を反映します。異なるスポットの配置から、格子の間隔や角度の相関 (格子相関) が分かります。この処理を、500枚のTEM像で撮影された1300個のナノ粒子に対して行うことで、メタチタン酸ナノ粒子がもつ特徴的な格子相関を統計的に得ることが出来ました (図1d)。異なる観察方位に対する格子相関を組み合わせて解析することで、構造に関する三次元情報が得られます。
解析の結果、メタチタン酸ナノ粒子は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)構造を基本骨格とするものの、TiO2層とTi(OH)4層が交互に積層した構造であることを明らかにしました(図1e)。この構造は、密度汎関数理論による計算*5でも安定であることが確認されました(図1f)。また、原子の個数や原子番号をより直接的に反映する環状暗視野STEM像*6(図1g)とも整合しており、提案する構造は妥当であると判断しました。
本研究で開発した格子相関解析は、従来と比べて1/20から1/500程度の低い電子線照射量で、三次元的な結晶構造の解明を可能とします。今後は、電子線に敏感なため解析が困難だった、金属オキシ水酸化物ナノ粒子や有機物を含むナノ材料への展開が期待されます。新規材料探索は理論計算による研究が多いなかで、本手法は解析の自動化が可能であり、実験による新たなアプローチを提示できると考えています。これにより、より適切な材料設計や高性能デバイスの開発に弾みがつくと期待されます。

| 図1 (a) HRTEM像。暗いコントラストで示されるメタチタン酸ナノ粒子が見られる。(b) 画像処理によって粒子領域を検出した図。粒子ごとに色分けして塗りつぶしている。(c) b中の中央下、白い丸とバツでマークされた粒子のFFT図形。(d)格子相関マップの一例。ここでは(004)面と(110)面、(002)面と(110)面の組み合わせがスポットとして現れている。(e)解析から提案された結晶模型。(f)結晶模型について計算した環状暗視野STEM像。(g)メタチタン酸ナノ粒子の環状暗視野STEM像。 |
【論文情報】
| 雑誌名 | Communications Chemistry |
| 論文名 | Three-dimensional atomic-scale characterization of titanium oxyhydroxide nanoparticles by data-driven lattice correlation analysis |
| 著者 | Kohei Aso, Koichi Higashimine, Masanobu Miyata,Hiroshi Kamio,and Yoshifumi Oshima |
| 掲載日 | 2025年4月28日 |
| DOI | doi.org/10.1038/s42004-025-01513-2 |
【用語説明】
物質の平均的な結晶構造を調べる代表的な技術。X線を試料に照射してプロファイルを取得し、回折ピークの配置を解析することで試料の平均的な結晶構造が得られる。
物質にレーザー光を照射し、散乱された光の波長変化(ラマン散乱)を解析することで、物質の化学結合や結晶構造を得る手法。
電子線を試料に透過させ、得られた投影像から結晶構造を観察する手法。電子線を使うことを除いて、原理的には一般的な光学顕微鏡と同様。
0.1 nm程度に絞った電子線を試料上で走査し、試料各点からの信号によって結像する手法。
原子や分子の電子状態を理論に基づき計算する手法。ここでは、結晶構造のサイズ(格子定数)や原子位置をわずかに変化させながら計算を繰り返し、構造の安定性を評価した。
STEMのうち、前方散乱された電子をマッピングした像。原子番号や厚みの違いをより直接的に反映した像が得られる。
令和7年4月30日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/04/30-1.html物質化学フロンティア研究領域の都准教授らの論文がAdvanced Functional Materials誌の表紙に採択
物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎准教授らの「液体金属ナノ粒子を活用するがん光免疫療法の開発に成功」に係る論文が、ドイツの生物・化学系トップジャーナルAdvanced Functional Materials誌の表紙に採択されました。
なお、本研究は、科研費基盤研究(A)(23H00551)、科研費挑戦的研究(開拓)(22K18440)、科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)(JPMJTR22U1)、公益財団法人発酵研究所、公益財団法人上原記念生命科学財団、ならびに本学超越バイオメディカルDX研究拠点、本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものです。
■掲載誌
Advanced Functional Materials, Vol. 34, No. 31
掲載日:2024年8月1日
■著者
Yun Qi, Mikako Miyahara, Seigo Iwata, Eijiro Miyako*
■論文タイトル
Light-Activatable Liquid Metal Immunostimulants for Cancer Nanotheranostics
■論文概要
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温で液体の金属(液体金属)は、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有することが知られており、とりわけナノ粒子化した液体金属をバイオメディカル分野に応用する研究に大きな注目が集まっています。本研究では、液体金属ナノ粒子を活用した新しいがん光免疫療法の開発に取り組みました。より具体的には、免疫賦活化作用のある物質を液体金属に組み合わせ、がん患部に選択的に送り込ませることで、免疫による高い抗腫瘍作用を発現させることに成功しました。また、本研究では、生体透過性の高い近赤外光を用いることで、患部の可視化や光熱変換を利用した、新たながんの診断や治療法を提案しています。
表紙詳細:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.202470176
論文詳細:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.202305886
プレスリリース:https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/08/04-1.html
令和6年8月9日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2024/08/09-1.html







