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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ -ガン幹細胞制御技術に向けて-
ナノテクノロジーと遺伝子工学のマリアージュ
-ガン幹細胞制御技術に向けて-
ポイント
- ナノテクノロジーと遺伝子工学を利用し、細胞やマウス体内のガン幹細胞性を制御することに成功
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野 稔、石川県能美市)、先端科学技術研究科物質化学領域の都 英次郎准教授の研究グループは、ウシの角に似た炭素分子「カーボンナノホーン」(CNH)*1と遺伝子工学を使ってマウス体内のガン幹細胞性を制御する技術の開発に成功した。
再発と転移を繰り返す治療抵抗性のガン幹細胞を体内から排除可能な治療法が望まれている。本研究では、生体透過性の高い近赤外レーザー光*2でCNHが容易に発熱する性質(光発熱特性)*3と52℃以上の温度になるとカルシウムイオンを細胞内に取り込むTransient Receptor Potential Vanilloid 2(TRPV2)*4というタンパク質に着目した。遺伝子工学的手法によりTRPV2を導入したガン細胞にCNHの光発熱特性を作用させたところ、細胞内に過剰のカルシウムイオンが流入し、標的とするガン細胞が選択的かつ効果的に死滅することが明らかとなった(図1)。また、マウスを用いた実験で本手法がガン幹細胞性の制御に有用であることも分かった。本手法を利用すれば体外からレーザー光を照射し、その熱で患部を狙い撃ちできるほか、治療の難しいガン幹細胞の予防・治療法にも道が開けると期待している。 本成果は、2020年8月17日に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。なお、本研究成果は日本学術振興会科研費[基盤研究A、基盤研究B、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)]の支援のもと、国立研究開発法人産業技術総合研究所と行われた共同研究によるものである。 |

図1. 機能性CNHとTRPV2によるガン細胞殺傷メカニズム
【論文情報】
| 掲載誌 | Nature Communications |
| 論文題目 | Photothermogenetic inhibition of cancer stemness by near-infrared-light-activatable nanocomplexes |
| 著者 | Yue Yu, Xi Yang, Sheethal Reghu, Sunil C. Kaul, Renu Wadhwa, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2020年8月17日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1038/s41467-020-17768-3 |
【用語説明】
*1 カーボンナノホーン(CNH)
直径は2~5 nm、長さ40~50 nmで不規則な形状を持つ。数千本が寄り集まって直径100 nm程度の球形集合体を形成している。とりわけ、薬品の輸送用担体として期待されており、バイオメディカル分野で注目を集めている。
*2 近赤外レーザー光
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
*3 光発熱特性
数多くあるナノカーボン材料の特性の一つであり、レーザー光やカメラのフラッシュにより容易に発熱する特性のこと。
*4 Transient Receptor Potential Vanilloid 2(TRPV2)
細胞膜に存在するタンパク質の一種。52℃以上の温度によって活性化し、細胞内へカルシウムイオンを流入する。
令和2年8月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/08/17_2.html「日本固有資源"サクラン"の細胞を並べる機能を発見」を開発 -細胞組織工学へ新たな道-
「日本固有資源"サクラン"の細胞を並べる機能を発見」を開発
-細胞組織工学へ新たな道-
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST、学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域の金子研究室らは、日本固有種微生物スイゼンジノリから抽出される超高分子サクラン(発見者:岡島麻衣子研究員)の新しい機能を発見しました。3Dプリンターで凹凸にパターン化したポリスチレン基板(武藤工業株式会社作成)の上でサクランゲルを作成することで、このパターンが転写されたゲルを得ました。ゲル内部の分子配列は特殊であり凹部のみでサクラン分子鎖が配向し、細胞をその上に播種すると細胞のほとんどがそれに沿って伸展することが見いだされました。
スイゼンジノリは日本固有種の食用藻類で福岡県、熊本県の一部で地下水を利用し養殖されています。このスイゼンジノリの主成分であるサクランは、2006年本学の岡島らによって発見され、天然分子の中で最も大きな分子量を持ち、高い保水能力(ヒアルロン酸の5倍~10倍)と抗炎症効果を持つ新機能物質として注目され、現在では化粧品を中心に幅広く用いられています。研究チームは昨年このサクランの高い保水能力に着目し、サクラン・レーヨン混紡繊維"サク・レ"を作製するなど、人体に接触する材料としての研究を進めてきました。並行してサクランが作るゲルの細胞適合性などを系統的に研究する中で、今回の発見に至りました。 このゲルは極めて低濃度で液晶構造を形成するサクラン分子鎖の自己配向性を巧みに利用した例であり、サクランがポリスチレン基板に張り付きながら乾燥していく際に、凸部から凹部に向かって重力に伴う延伸張力が働き分子配向すると考えられます。これにより膜自身にも分子配向の方向に筋状のマイクロ構造が形成され、その方向を細胞が認識して配向伸展したと考えています。これが細胞を並べるメカニズムです。また、サクランは光合成を行うラン藻(スイゼンジノリ)が作る物質であるため、空気と水と日光さえあれば作ることが可能であり、生産時に大気の二酸化炭素(CO2)削減に貢献する究極にエコな物質といえます。 ![]() 写真 パターン化サクランゲル(左:ゲル,右:ゲル上の伸展細胞) 本成果はアメリカ化学会誌 [ACS Applied Materials & Interfaces(インパクトファクター8.1)] でオンライン公開され近く印刷公開予定です。 |
<開発の背景と経緯>
藻類などの植物体に含まれる分子を用いて得られるバイオマス注1)材料の中には、材料中にCO2を長期間固定できるため、持続的低炭素社会の構築に有効であるとされています。北陸先端科学技術大学院大学の研究チームはこれまで、淡水性の藍藻であるスイゼンジノリから高保湿力を持つ繊維質である超高分子「サクランTM」注2)を開発してきました。
近年、iPS細胞の発見に端を発し、細胞組織工学の分野が活発化してきています。しかし、細胞を配向させる技術が無いと人工臓器も単なる分化細胞の塊にすぎません。そこで、細胞を適所で配向させる技術が待たれています。
<作製方法>
3Dプリンタで作成したマイクロプラスチック棒のアレイの上にサクランをキャストした。得られたフィルムはプラスチック棒の間でサクランが棒に対して垂直に配向することが分かりました(図1)。
<今回の成果>
このゲルは極めて低濃度で液晶構造を形成するサクラン分子鎖の自己配向性を巧みに利用した例であり、サクランがポリスチレン基板に張り付きながら乾燥していく際に、凸部から凹部に向かって重力に伴う延伸張力が働き分子配向すると考えられます。これにより膜自身にも分子配向の方向に筋状のマイクロ構造が形成され、その方向を細胞が認識して配向伸展したと考えています。この上に、L929マウス線維芽細胞を播種した所、細胞はサクランの配向に応じてパターン化した配向性を示すことが分かりました(図2)。
<今後の展開>
ほとんど全ての臓器は配向しており細胞を配向させるこの技術は組織工学に極めて有用と考えられる。サクランは元来緊急時の火傷治療膜、臓器癒着防止膜、湿布剤に応用できると報告してきましたが、今回人工血管、人工皮膚など、組織工学用基板へ応用展開も期待できます。
| <参考図> | ||
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| 図1 3Dプリンタで作成した基板上でキャストしたサクランの偏光顕微鏡注3)写真(530nmの鋭敏色板使用) 左2つは上からの観察、右は横からの観察 | ||
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| 図2 播種した細胞の写真(ほぼすべての細胞が左右に伸展している) | ||
<用語説明>
注1)バイオマス(例 スイゼンジノリ)
生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼ぶ。本研究で取り扱ったスイゼンジノリ(ラン藻の一種であり学名はAphanothece sacrum)は日本固有のバイオマスの一種であり、世界でも極めて希な食用ラン藻である。また、スイゼンジノリは江戸時代から健康維持のために食され、当時は細川藩および秋月藩における幕府への献上品とされてきた。大量養殖法が確立されている。
注2)サクラン
スイゼンジノリが作る寒天質の主成分である。硫酸化多糖類の一つでスイゼンジノリから水酸化ナトリウム水溶液により抽出される。サクランの重量平均絶対分子量は静的光散乱法で2.0 x 107 g/mol と見積もられている。現実的には原子間力顕微鏡によりサクラン分子が 13 μm の長さを持つことが直接観察されている。天然分子で 10 μm 以上の長さにも達するものを直接観察した例はこれが初めてとされる。サクランという名称はスイゼンジノリの種名の語尾を多糖類の意味の "-an" という接尾後に変換したもので、北陸先端科学技術大学院大学の岡島らによって発見され名付けられた。現在もその金属吸着性や高保水性などに関する研究が進められており、吸水高分子として応用が進められている。
注3)偏光顕微鏡
光学顕微鏡の一種。試料に偏光を照射し、偏光および複屈折特性を観察するために用いられる。偏光特性は結晶構造や分子構造と密接な関係があるため、鉱物学や結晶学の研究で多く用いられる。他、高分子繊維の研究などにも用いられる。一般には特定方向に偏波させることのできる二枚のフィルター(偏光板)をお互いに直交させて使用する。これにより光は通らなくなるが、屈折率に方向依存性のある高分子繊維などが二枚の偏光板の間に存在すると、この高分子繊維だけが観察可能となる。さらに、特殊なカラーフィルターを組み合わせることで高分子繊維内部の分子配向の方向を色調変化により判定することが可能となる。
平成31年1月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/01/21-1.htmlJAIST社会人セミナー 平成29年度第5回「co-café@JAIST」「お酒とお化粧の話~細胞膜に聞いてみよう~」
下記のとおり、平成29年度第5回「co-café@JAIST」を開催しますので、 ご案内します。
産学官連携推進センターでは、地方創生/地域活性化の推進を目的に、今年度から社会人人材育成事業としてJAIST社会人セミナーを実施しています。
JAIST社会人セミナーでは、①co-café@JAIST(異業種・異分野の産学連携交流イベント)、②地域人材育成セミナー、③社会人向けデザインスクールという3つの事業を行っています。
今回の「co-café@JAIST」は、本学の最先端技術の紹介や、本学の若手教員と地域企業とのニーズ・シーズの出会い場とすることを目的とした産学官連携の交流イベントです。
多くの方のご参加をお待ちしております。
| 日 時 | 平成29年9月6日(水)18:30 ~ |
| 会 場 | 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター 金沢駅前オフィス(金沢市本町2-15-1 ポルテ金沢12階) |
| 開催内容 | ・18:30~ ミニセミナー テーマ:お酒とお化粧の話 ~細胞膜に聞いてみよう~ 講 師:北陸先端科学技術大学院大学 生命機能工学領域 下川 直史 助教 ゲスト:株式会社福光屋 専務取締役 福光 太一郎 氏 ・19:00~ 交流会 |
| お申し込み | 下記PDFの参加申込フォームに必要事項をご記入の上、FAXまたはE-mailでお申込みください。 (定員:30名、参加無料 ※交流会のみ有料/参加費1,000円) |
| お問合わせ | 北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 産学官連携推進センター 担当:八十出(やそで)、辰巳 【TEL】0761-51-1070 【Fax】0761-51-1427 【E-mail】co-cafe@jaist.ac.jp |
ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで
ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで
ナノ粒子工学研究室 Laboratory on Nanoparticle Engineering
教授:前之園 信也(MAENOSONO Shinya)
E-mail:
[研究分野]
ナノ材料化学、ナノ材料物性、コロイド化学
[キーワード]
半導体ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、金属ナノ粒子、バイオ医療、エネルギー変換、センシング
研究を始めるのに必要な知識・能力
基礎学力、コミュニケーション能力、知的好奇心、柔軟な思考
この研究で身につく能力
修士課程では、(1) ナノ材料の化学合成技術、(2) 各種分析機器(透過型電子顕微鏡、X 線回折装置、X 線光電子分光、組成分析装置など)の操作スキル、(3) 基礎学問の知識(無機材料化学、結晶学、コロイド化学、固体物性など)、(4) ナノ材料に関する先端専門知識を身につけて頂きます。博士課程では、1-4に加え、英語によるプレゼンテーション能力、英語論文執筆能力、研究課題設定能力、共同研究遂行能力など、研究者に必要なあらゆる能力を身につけて頂きます。
【就職先企業・職種】 製造業(化学、精密機器、電気機器、ガラス・土石製品、繊維製品、その他製品など)
研究内容
物質をナノメートルサイズまで細かくしていくと、種々の物性がサイズに依存する新奇な材料となります。このような新奇材料を一般に「ナノ材料」と呼びますが、我々はその中でも特に「ナノ粒子」に興味を持ち、ナノ粒子に関する基礎から応用に亘る研究を行っています。半導体、磁性体、金属などのナノ粒子を化学合成し、その表面をさまざまな配位子によって機能化し、さらにそれらナノ粒子の高次構造を制御することによって、バイオ・医療分野あるいは環境・エネルギー分野で新たな応用を開拓することを目指しています。

1.磁性体ナノ粒子の合成とバイオ医療分野への応用
超常磁性体のナノ粒子を独自の方法によって合成し、その表面を自在に修飾することによって、バイオ医療分野での様々な応用の道を開拓しています。具体的には、細胞やタンパクの磁気分離、MRI 造影剤、ドラッグデリバリーシステムなどのナノ磁気医療に応用するための技術開発を行っています。
2.半導体ナノ粒子の合成とエネルギー変換素子への応用
狭ギャップ化合物半導体から広ギャップ酸化物半導体のナノ粒子まで、幅広い種類の半導体ナノ粒子を化学合成し、それらを用いて低炭素社会の実現を志向したナノ構造エネルギー変換素子の創製に関する研究を行っています。特に、ナノ構造熱電素子や光機能素子などに興味を持っています。
3.金属ナノ粒子を用いたバイオセンシング技術の開発
近年、金ナノ粒子を用いた様々なバイオセンサが開発され、簡便かつ迅速に DNA 配列検出やタンパク質機能解析などが可能となってきています。我々は、ナノ粒子プローブを用いたバイオセンシング技術の更なる高度化を目指し、異種金属元素からなるヘテロ構造ナノ粒子や合金ナノ粒子のプローブの開発を進めています。
主な研究業績
- T. S. Le, M. Takahashi, N. Isozumi, A. Miyazato, Y. Hiratsuka, K. Matsumura, T. Taguchi, and S. Maenosono, “Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanoparticles”, ACS Nano 16 (2022) 885
- J. Hao, B. Liu, S. Maenosono, and J. Yang, “One-Pot Synthesis of Au-M@SiO2 (M = Rh, Pd, Ir, Pt) Core-Shell Nanoparticles as Highly Efficient Catalysts for the Reduction of 4-Nitrophenol”, Sci. Rep. 12 (2022) 7615
- T. S. Le, S. He, M. Takahashi, Y. Enomoto, Y. Matsumura, and S. Maenosono, “Enhancing the Sensitivity of Lateral Flow Immunoassay by Magnetic Enrichment Using Multifunctional Nanocomposite Probes”, Langmuir 37 (2021) 6566
使用装置
透過型電子顕微鏡 (TEM) 超伝導量子干渉磁束計 (SQUID)
過型電子顕微鏡 (STEM) 動的光散乱測定装置 (DLS)
X 線回折装置 (XRD) 共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM)
X 線光電子分光装置 (XPS) 核磁気共鳴装置 (NMR)
研究室の指導方針
就職希望者には、基礎・専門知識はもちろん、コミュニケーション能力、英会話力、論理的思考力および柔軟な対応力を涵養し、不確実性の時代を生き抜くことができる人材となってもらうための指導を行います。企業経験を活かした実践的就職指導も行っています。
博士後期課程への進学希望者については、先端的かつ国際的な研究環境を提供することによって、将来的に大学教員や企業研究者として活躍できるグローバル研究人材を育成します。
[Website] URL:https://www.jaist.ac.jp/~shinya/
次世代の細胞計測技術を創り、ニューロン情報処理の秘密に迫る
次世代の細胞計測技術を創り、
ニューロン情報処理の秘密に迫る
神経情報生理学研究室
Laboratory for Neural Information Physiology
准教授:筒井 秀和(TSUTSUI Hidekazu)
E-mail:
[研究分野]
分子生物学、生理学、生物物理学、細胞計測
[キーワード]
神経細胞、分子センサー、次世代計測技術
研究を始めるのに必要な知識・能力
予備知識:分子・細胞生物学や電気回路の基礎などを理解しているとスムーズに研究を開始できますが、初学者にも丁寧に指導します。
求める人材:新しい技術を創出したい人。実験が好きで、試行錯誤や寄り道の楽しさを理解している方。
この研究で身につく能力
分子・細胞生物学、基礎生理学、生物物理学に関する基本的な研究方法や実験手技を理解し、体得します。さまざまな生命現象の仕組みや分子的基礎が詳細に解明されてきましたが、その一方で、広大な領域が未だに謎に包まれたまま残されています。本研究室では、新しい技術を創出し、今までアクセス不可能だった領域に踏み入る意義や楽しさを学びます。こうした新規技術を創り出すための創意工夫、粘り強い探求や試行錯誤を通じて身に付く能力は、学術の世界のみならず、社会や産業の発展を牽引する上で大いに役に立ちます。
【就職先企業・職種】学術、医工学・電気、情報・バイオなど
研究内容
【ニューロン回路の不思議】
柔軟さ、堅牢さ、緻密さを兼ね備えていることが細胞・組織・器官の機能の特徴の一つです。生き物の仕組みを知りたい!そんな素朴な疑問を大切に研究を行っています。具体的には、ニューロン回路における情報処理の秘密に迫るための、新しい細胞計測技術の創出に取り組んでいます。ニューロン回路は究極の生体組織です。0.1ボルト、1ミリ秒程度の電圧信号が回路網を高速に流れ、情報の表現や処理を司っています。この過程を詳細に理解することができれば、疾患の理解や新しい情報処理様式の発見のほか、想像もできない展開も期待できます。しかし、この挑戦は、数多くの障壁に阻まれています。例えば、既存の細胞計測技術では、複雑なニューロン回路の中を伝播する電気信号を十分に詳細に追跡することは困難で、実験的な立場における大きな課題の一つです。研究室では、主に二つの異なるアプローチでこの課題に取り組んでいます。
【次世代の電気生理計測法の探求】

(上)ニューロンの配線メカニズムを用いて作成した微小電極との接合構造
電気生理計測とは、金属やガラス管の微小電極を用いて、細胞の電気的現象を調べる手法の総称です。長い歴史のある計測法ですが、今日の最先端研究でも欠かすことのできない、強力な手法です。しかしながら、細胞認識能を原理的に備えていない、などの本質的な欠点が残されています。研究室では、脳内でニューロンが配線される分子メカニズムと微細加工技術を融合させることで、この課題の解決に取り組んでいます。これまでに、分子生物学的に人工設計したシナプス誘導因子を用いて、特定種のニューロンを特定の電極に接続する基本原理の実証など成功しています。ニューロン活動を読み取る次世代の電気生理技術の創出に向けて、皆さんと様々な工夫をこらし、探求をしていきます。
また、思いもよらぬ方向から、研究の突破口が開けることも多くあります。既成概念にとらわれず、不思議・楽しい!を大切にし、色々な技術や考え方を学際的に学び、日々の研究に活かしていくことを心掛けています。
【ニューロン活動を可視化する分子センサー】

(左)分子センサーの性能試験の様子
(中央)分子センサーを発現した神経細胞
(右)試作した次世代電気生理技術の原理実証用の微小電極
ある種の細胞には膜電位の変化(電圧信号)を感知するための分子が備わり、電圧信号を増幅し、細胞外環境に応じて細胞内の環境を変化させています。こうした分子を部品として使うことで、電圧信号を光の信号として可視化するセンサー分子を創ることが出来ます。研究室ではこれまでに単一細胞の単一スパイクを可視化することなどに成功してきています。皆さんといろいろなアイディアを持ち寄り、センサーのさらなる高速・高感度化を目指したいと考えています。また、細胞に備わるそうした分子が、そもそもどのような仕組みで電圧信号を感知しているのか?といった基礎的な問題にも興味を持って研究を進めています。
主な研究業績
- K. Sekine, et al., Neuron-microelectrode junction induced by an engineered synapse organizer, Biochem. Biophys. Res. Commun. p149935, 2024.
- W. Haga, et al., Development of artificial synapse organizers liganded with a peptide tag for molecularly inducible neuron-microelectrode interface, Biochem. Biophys. Res. Commun., vol. 699, 2024.
- S. Kim, et al., Formation of neuron-microelectrode junction mediated by a synapse organizer, Appl. Phys. Express, vol. 16, 2023.
使用装置
各種光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡
電気生理・電気化学計測関連機器
薄膜作成・微細加工装置
細胞・組織培養関連機器
分子生物学関連機器
研究室の指導方針
研究は自由で楽しいものであるべきと考えますが、それもバックグラウンドの正しい理解や確かな実験技術に基づくはずです。まずは正確な実験や観察が行えるようになる事に努めます。研究結果の定期的な発表(プログレスレポート)および論文紹介(ジャーナルクラブ)を通じてプレゼンテーション力を身につけます。英語専門書を一つ選定して、輪読を行い、研究の背後にある概念や文化を理解する事にも重点を置きます。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/tsutsui/wordpress/
化学と生物の融合による新たな人工タンパク質の創製
化学と生物の融合による
新たな人工タンパク質の創製
人工タンパク質合成研究室
Laboratory on Nonnatural Protein Biosynthesis
教授:芳坂 貴弘(HOHSAKA Takahiro)
E-mail:
[研究分野]
遺伝子工学・タンパク質合成・ケミカルバイオロジー
[キーワード]
遺伝暗号拡張、人工タンパク質、非天然アミノ酸、無細胞翻訳系、蛍光分析
研究を始めるのに必要な知識・能力
タンパク質や遺伝子に興味を持っていること。生物化学・有機化学に関する基礎的な知識や実験技術が必要になりますが、入学後に修得することも可能です。
この研究で身につく能力
遺伝子工学・タンパク質合成・有機合成・蛍光分析などに関する専門的な知識と実験技術を修得することができます。また研究活動を通じて、実験計画の立案・関連研究の調査・実験データの取得と分析・研究成果のまとめとプレゼンテーション、に至る一連の研究プロセスを学ぶことができます。これらの能力は、技術者・研究者としていずれも必要不可欠なものです。
【就職先企業・職種】 化学・生物関連企業、研究機関
研究内容
遺伝子工学・タンパク質合成などの生物化学的手法と、有機合成などの化学的手法を組み合わせることで、新たな人工タンパク質の創製を目指して研究を行っています。具体的には、以下のような研究テーマを進めています。また、研究室で得られた成果を企業と共同で実用化するための研究も行っています。

図1.4塩基コドンを用いた非天然アミノ酸のタンパク質への導入

図2.抗原分子を検出できる蛍光抗体センサーの例
1.遺伝暗号の拡張による非天然アミノ酸のタンパク質への導入
タンパク質はDNAの遺伝暗号に従ってアミノ酸が連なって合成され、それが精密な立体構造を形成することで、高度な機能を発揮しています。しかし生物が使用しているのはわずか20種類のアミノ酸のみです。私たちは、この20種類の制限を超えて、人工的に合成した「非天然アミノ酸」をタンパク質の特定部位に導入することのできる、新たな技術の開発に成功しています。これは、4塩基コドンなどの拡張遺伝暗号に非天然アミノ酸を割り当てる(図1)、という新しい概念によって達成されています。
2.新たな機能を持つ人工タンパク質の創製
上記の技術を利用することで、新たな機能を持った人工タンパク質の創製を進めています。例えば、抗体などの特定の分子を認識して結合するタンパク質に、蛍光分子を付加した非天然アミノ酸を導入することで、蛍光により標的分子を検出できるタンパク質センサーを合成できます(図2)。また、非天然アミノ酸の導入技術を利用することで、新しいタンパク質医薬品の合成も試みています。これらの研究の一部は、企業・研究機関との共同研究により進めています。
3.生物の潜在能力を利用した新たなバイオ技術の開発
非天然アミノ酸のタンパク質への導入技術は、生物がもともと持っている潜在能力を、人工的に引き出して活用したものと言えます。私たちは、そのような生物の持つ潜在能力を新たに見つけ出し利用することで、人工タンパク質などの有用物質を合成することのできる、新たなバイオ技術の開発にも挑戦しています。
主な研究業績
- A. Yamaguchi, T. Hohsaka, Synthesis of novel BRET/FRET protein probes containing light-emitting proteins and fluorescent nonnatural amino acids, Bull. Chem. Soc. Jpn., 85, 576-583 (2012).
- R. Abe, H. Ohashi, I. Iijima, M. Ihara, H. Takagi, T. Hohsaka, H. Ueda, “Quenchbodies”: Quench-based antibody probes that show antigen-dependent fluorescence, J. Am. Chem. Soc., 133, 17386-17394 (2011).
- 芳坂貴弘、非天然アミノ酸のタンパク質への導入技術-バイオメディカル応用に向けて、メディカルバイオ別冊, 72-77 (2010).
使用装置
蛍光分析装置(分光光度計・蛍光寿命測定・蛍光スキャナなど)
遺伝子解析装置(DNAシーケンサー・リアルタイムPCRなど)
質量分析装置
研究室の指導方針
人工タンパク質に関連した研究テーマに対して、実験を通じて新たな成果を挙げるとともに、その研究プロセスを修得することを目標としています。具体的には、各自の研究テーマに対して、実験を試行錯誤的に繰り返す過程を通じて、実験計画の立案、結果の解釈と問題点の把握、次の実験計画へのフィードバック、などを独力で遂行できる能力を鍛錬します。そのために、研究室ゼミでは定期的に研究報告会を開催して、進捗状況の確認と指導・助言を行います。また、研究成果は積極的に学会等で発表する機会を設けています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/hohsaka/
細胞・組織の機能を制御する高分子材料を創成し、医療に役立てる
細胞・組織の機能を制御する高分子材料
を創成し、医療に役立てる
生体制御高分子研究室 Laboratory on Biofunctional Polymers
教授:松村 和明(MATSUMURA Kazuaki)
E-mail:
[研究分野]
材料化学、高分子化学、生体材料
[キーワード]
高分子化学、バイオマテリアル、再生医療、凍結保存、ハイドロゲル
研究を始めるのに必要な知識・能力
化学をベースとして、生体に応用できる材料を目指すので、化学の基礎知識は持っていた方が望ましいです。その上で、生物学や医学に対しても必要な事を習得する姿勢を期待します。異分野からの参加は歓迎しますが、化学、高分子化学の勉強を興味を持って続けられる向上心は必要です。
この研究で身につく能力
生体材料の研究は化学・生物・医学また物理学を含んだ学際的領域の研究です。生体の持つ高度に制御された機能を学び、それを代替する材料の創成を目標として研究を続けていくことで、化学のみならず、生物学や医学、物理学などの幅広い学問分野に触れ、多角的な物の見方を獲得することが出来ます。
また、生体材料の研究は目的がはっきりしているニーズ指向型の研究のため、課題解決能力を育む事が可能です。特に博士後期課程の学生に関しては、問題発見能力も同時に身につけるように研究を進めていきます。
【就職先企業・職種】 製造業・化学メーカーなど
研究内容
機能性高分子バイオマテリアル
人工臓器やドラッグデリバリーシステム(DDS)には高分子化合物のようなソフトマテリアルが多く使用され、研究されています。バルクな材料だけでなく、コロイドやミセル、溶液なども一種のバイオマテリアルとして様々な場面での研究が展開されています。
高分子材料はそのバルク界面で、もしくは溶液状態で細胞や組織と相互作用し、機能を制御することが可能であることがわかってきました。また、様々な場面でその機能を利用したバイオマテリアルの研究開発が行われています。
凍結保護高分子
細胞を凍結保存することができる高分子を見出し、その機序を調べると共に応用を目指しています。この不思議な現象は、電荷密度の高い高分子化合物、特に両性電解質高分子に見られる特徴であることがわかってきました。細胞などの様な水を含む高次構造体をそのまま凍結すると細胞内の水の結晶化により致命的なダメージが加わり、死滅します。このような高分子化合物で細胞を凍結時のダメージから保護できるということは、これまでの常識では考えにくいことでした。従って、この現象の機序を解明することで、凍結保護だけでなく、生体組織や高次構造体の保護作用などへとつながる可能性を秘めています。我々はこの高分子をゲルにすることで、細胞保護性のハイドロゲルを作成しました。また、ナノ粒子化することでドラッグデリバリーシステムへの応用も試みています。

再生医療応用可能な高分子
再生医療や組織工学に応用可能な、生体内分解性セルロースの開発も行っています。この技術により、細胞をその中で増殖させ、生体内で細胞治療が可能な足場材料の開発が期待されます。
生体と調和する高分子バイオマテリアル
生体機能の再生を目的とした診断・治療の支援を行うために、材料工学の手法を用いた、基礎的ならびに応用的研究も目指しています。具体的には、ハイドロゲルを用いた人工関節や人工血管用材料の設計など、高分子材料の観点から生物と化学の融合を目指し、さらには生体を凌駕するような機能を探求しています。

主な研究業績
- Rajan R, Furuta T, Zhao D, Matsumura K. Molecular mechanism of protein aggregation inhibition with sulfobetaine polymers and their hydrophobic derivatives. Cell Rep. Phys. Chem. 5, 102012 (2024)
- Kumar K, Nakaji-Hirabayashi T, Kato M, Matsumura K, Rajan R. Design of Highly Selective Zn-Coordinated Polyampholyte for Cancer Treatment and Inhibition of Tumor Metastasis. Biomacromolecules 25, 1481-1490 (2024)
- Hirose T, Rajan R, Miyako E, Matsumura K. Liquid metal–polymer nano-microconjugations as an injectable and photo-activatable drug carrier. Mol. Syst. Des. Eng. 9, 781-789 (2024)
使用装置
NMR
FITR
動的粘弾性装置
細胞培養用装置
共焦点レーザー顕微鏡
研究室の指導方針
本研究室では、高分子化学の基礎から応用までを理解し、生体材料としての応用を目指しています。そのためには、化学の知識だけでなく、生物や医学、さらには機械工学などの幅広い学問領域に通じている必要があります。また、生体材料がカバーする範囲は、人工臓器、再生医療、ドラッグデリバリー、バイオセンサなど多種多様であり、それらの研究開発に必要な知識を興味を持って獲得し、多角的な視点で課題の解決を遂行できる力のある学生を育成することを目標としています。
年に数度の学会発表を通じてプレゼンテーション能力を身につけ、週一度の研究室ゼミで基礎力・ディスカッション能力を養います。
[研究室HP] URL:https://matsu-lab.info/
機能性バイオマテリアルで難治性疾患を治療する
機能性バイオマテリアルで難治性疾患を治療する
先端ナノ医療・長寿創生研究室
Laboratory on Advanced Nanomedicine and Longevity Creation
教授:栗澤 元一(KURISAWA Motoichi)
E-mail:
[研究分野]
バイオマテリアル、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、ナノメディシン、再生医療
[キーワード]
生体内分解性高分子、ナノ粒子、緑茶カテキン、インジェクタブルゲル、薬物徐放・ターゲッテイング、細胞治療
研究を始めるのに必要な知識・能力
高分子化学の基礎知識があれば、問題なく研究を始めることができますが、入学前に特別な知識・能力がなくても大学や企業で活躍出来るように本気で指導します。要は日々の研究活動に対する心構え次第で、いくらでも成長できます。そのためには自他共栄の精神を研究スタッフ・学生と共有できる研究室づくりが大切だと考えています。
この研究で身につく能力
栗澤研究室では、ナノ粒子やゲルの設計・合成、キャラクタリゼーションを行い、細胞実験や動物実験によって、目的とする機能が十分であるのか否かを評価します。幅広い領域を学ぶので、種々の測定装置や実験手法の基礎を身につけることができます。動物実験を完了するころには、緻密な実験計画を立てる能力、討論・プレゼンテーション能力を習得することができます。研究目的を達成することに邁進することは大事なのですが、フェアに実験結果を評価できる能力を習得できるように指導します。
【就職先企業・職種】 大学教員、博士研究員、特許審査官、化学企業、製薬企業
研究内容

図1.緑茶カテキン・ナノ粒子による疾患治療
当研究室では、高分子科学、生体材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、再生医療などの学問領域を基盤とし、難治性疾患を治療可能とする機能性生体材料を開発します。昨今、遺伝子治療や再生医療などを含む先端医療が実施され、これまでに治療不可能とされてきた疾患に新しい治療法が切り拓かれてきています。このような先端医療を支える生体材料に関する研究は、難治性疾患を将来的に治療可能とする医療技術開発において益々重要な役割を果たすものと考えられます。シンガポール、韓国、米国をはじめとする海外研究機関との共同研究を展開しており、臨床応用及び産業化を目指した研究開発を推進します。
[緑茶カテキン・ナノ粒子を用いたドラックデリバリーシステム]
栗澤研究室では、タンパク質・抗体・低分子・核酸などの性質の異なる医薬品の内包を可能とする緑茶カテキン誘導体を薬物キャリアとしたナノ粒子の開発によって、癌をはじめとする難治性疾患の治療を目指したドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究を展開します(図1)。 緑茶カテキン・ナノ粒子は、薬物を疾患部に送達することを主な目的とした従来のDDS製剤とは異なる設計指針によって開発されています。疾患部への送達に加えて、薬物キャリアの主成分である緑茶カテキンが抗癌活性を有するために、薬物と緑茶カテキンのそれぞれの抗癌活性に基づくシナジー効果によって、抗腫瘍効果を増幅することを特徴としています。

図2.インジェクタブルゲル・システムによる医療応用
[インジェクタブルゲルによるヘルスケアへの貢献]
生体内での安全なハイドロゲル形成を可能とするインジェクタブルゲルシステムの開発及びその生体機能性材料としての応用研究を展開します。従来、注射によって生体内で安全に化学架橋を誘導する事は困難でありましたが、高分子—フェノールコンジュゲートと酵素溶液の同時注入により、コンジュゲート中のフェノールの酸化カップリングを誘導し、生体内で安全にゲル化させるプラットホームテクノロジーを開発しています(図2)。この手法によって、生体内で薬物及び細胞をゲル内に固定し、長期間に及ぶ薬物徐放及び細胞増殖・分化の制御が可能となることから、様々な疾患に対して新たな治療法をDDS及び再生医療分野において確立されることが期待されます。
主な研究業績
- N. Yongvongsoontorn, J. E. Chung, S. J. Gao, K. H. Bae, M. H. Tan, J. Y. Ying, M. Kurisawa, Carrier-enhanced anticancer efficacy of sunitinib-loaded green tea-based micellar nanocomplex beyond tumor-targeted delivery, ACS Nano 13, 7591-7602 (2019).
- K. Liang, J. E. Chung, S. J. Gao, N. Yongvongsoontorn, M. Kurisawa, Highly augmented drug loading and stability of micellar nanocomplexes comprised of doxorubicin and poly(ethylene glycol)-green tea catechin conjugate for cancer therapy, Adv. Mater. 30, 1706963 (2018).
- J. E. Chung et al. Self-assembled nanocomplexes comprising green tea catechin derivatives and protein drugs for cancer therapy, Nature Nanotechnol. 9, 907-912 (2014).
使用装置
紫外可視分光光度計、NMR、動的光散乱測定装置、HPLC、レオメーター、電子顕微鏡、細胞培養装置、動物実験関連機器
研究室の指導方針
学生に寄り添うスタイルで研究室を運営することをモットーとします。研究のディスカッションや勉強会・雑誌会はできる限り、 頻繁に行い、学生の研究能力の向上に努めます。当然ながら、レベルの高い研究成果を多く創出することは重要ではありますが、学生には先ず、自身が携わっている学問や研究が開拓しうる将来の社会を楽しく想像しながら研究することを提案します。応用研究を遂行する際には、社会貢献の可能性について、学生と十分に議論し、将来に学生が社会でリーダとして活躍するべく力を養う機会にします。また、学生であっても情報受信だけではなく、情報発信ができるよう指導いたします。学生の興味や個性をよく把握し、学生の能力を伸ばします。研究室内では常に世界の最先端の研究を意識しつつ、研究室もその舞台の中であり、世界に向けて発信したいと強く学生が意識する雰囲気を創ります。
[研究室HP] URL:https://kurisawa-lab.labby.jp/
人体に学び、自然を理解し、ナノ戦略で難治性疾患や老化に挑む
人体に学び、自然を理解し、ナノ戦略で難治性疾患や老化に挑む
抗疾患ナノファイター研究室 Laboratory on Anti-Disease Nano-Fighter
教授:鄭 主恩(CHUNG, Joo Eun)
E-mail:
[研究分野]
バイオマテリアル、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、ナノメディシン、抗がん治療、アンチエイジング
[キーワード]
生体適合性ポリマー、ナノ粒子、非侵襲的薬物送達、ターゲティング、薬効増幅、緑茶カテキン、メラトニン
研究を始めるのに必要な知識・能力
特別な専門知識や技術は必要ありません。科学への探究心があり、向上心、自他への責任感、本気で世界トップレベルの研究に取り組む意欲と覚悟が大事です。
この研究で身につく能力
バイオマテリアルの合成やナノ粒子の調製から化学物質・細胞・動物を用いた様々な手法の評価まで、学際的な知識や分析技術を経験し習得することができます。社会実装価値の高い医療技術創出を目指し世界最先端技術と競う研究を行う中、実験・ディスカッション・プレゼンテーション・論文執筆を通して、論理的思考、慎重さ、忍耐強さ、トラブルシューティング能力、洞察力、コミュニケーション能力を鍛えられるよう指導します。
【就職先企業・職種】 大学教員、博士研究員、特許審査官、化学企業、製薬企業
研究内容

図1 自然由来のナノファイターによる難治性疾患治療および健康寿命の伸長
当研究室はバイオマテリアルを用いたナノシステムを開発し、現治療法の限界を克服することを目指しています。
昨今、医療技術の発展に伴い世界中の人々の寿命が長くなっていますが、健康寿命の伸長は平均寿命より遅く、そのギャップは老化に伴う様々な疾患による生活質(QOL)の低下や個人と社会への大きな負担をもたらしています。当研究室では自然や人体由来の物質からなる新規な生体分解性バイオマテリアルを合成し、様々な難治性疾患の治療や抗老化作用を発揮するナノ粒子を開発しています。例えば、緑茶カテキンまたは脳内睡眠ホルモンであるメラトニンの誘導体を薬物キャリアとしたナノ粒子の開発により、今まで薬物送達が困難とされている疾患部位(がん・脳・後眼部など)へタンパク質・抗体・低分子・核酸などの性質の異なる様々な薬物を高濃度で疾患部位へ特異的に送達し、従来の薬物治療の大きい問題となっている正常部位への副作用を低減すると共に、緑茶カテキンやメラトニンから由来するキャリア本来の治療効能とのシナジー効果により、著しく薬効を増幅することが可能であります(図1)。このナノ粒子は薬物送達の妨げになっている様々な生体バリアを効率よく克服する高い薬物送達能力と、副作用のない低濃度の薬物を用いても高い薬効を達成する薬効増幅能力を兼ね備えた革新的なテクノロジーであり、トップジャーナルに掲載され高い国際評価を受けています。さらに国際特許(90報以上)の出願・登録および大学や企業との共同研究など臨床応用及び産業化を目指した研究開発を推進します。
従来のDDS製剤とは異なる設計指針によって開発されている当研究室のナノメディシンにより、今まで治療困難であった難治性疾患の治療や老化により蓄積する生体へのダメージの修復を可能とし、健康な生活・社会の実現や産業の活性化を目指しています。
主な研究業績
- N. Yongvongsoontorn, J. E. Chung, S. J. Gao, K. H. Bae, M. H. Tan, J. Y. Ying, M. Kurisawa, Carrier-enhanced anticancer efficacy of sunitinib-loaded green tea-based micellar nanocomplex beyond tumor-targeted delivery, ACS Nano 13, 7591-7602 (2019).
- K. Liang, J. E. Chung, S. J. Gao, N. Yongvongsoontorn, M. Kurisawa, Highly augmented drug loading and stability of micellar nanocomplexes comprised of doxorubicin and poly(ethylene glycol)-green tea catechin conjugate for cancer therapy, Advanced Materials 30, 1706963 (2018).
- J. E. Chung et al. Self-assembled nanocomplexes comprising green tea catechin derivatives and protein drugs for cancer therapy, Nature Nanotechnology. 9, 907-912 (2014).
使用装置
動的光散乱測定装置、紫外可視分光光度計、HPLC、NMR、電子顕微鏡、細胞培養装置、動物実験関連機器、IVIS動物イメージングシステム
研究室の指導方針
自分が行っている研究の科学的・社会的意義やインパクト、そして最先端技術と競うレベルの新規性をしっかり理解することで、熱意と意欲を持って研究を進めるよう鼓舞します。研究の進捗状況に関する十分なディスカッションを行い、総合・分析・判断力や問題解決能力を身につけるよう指導します。研究課題を含め学生の個性と適性に合った方法で段階的なマルチプルマイルストーンを設定し、着実に自信をつけながら成長するよう努めます。迅速な意見交換やチームワークは研究遂行において重要であるため、コアタイム(10-17時)を設けます。雑誌会、研究発表、論文執筆を通して、実力・倫理観・リーダーシップを兼ね備えた科学者として活躍できるよう育成します。
[研究室HP] URL:https://chungje-lab.labby.jp/
AI設計の次世代ステルス材料と極細硬性内視鏡を開発 ―光熱がん治療の新たな可能性を切り拓く―
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| 国立大学法人東北大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 エア・ウォーター株式会社 帝京大学先端総合研究機構 |
AI設計の次世代ステルス材料と極細硬性内視鏡を開発
―光熱がん治療の新たな可能性を切り拓く―
【発表のポイント】
- 血中滞留時間が従来のPEG(注1)の4倍以上で生分解性(注2)を持つ新しい人工タンパク質「IDP1(注3)」を人工知能(AI)を用いて開発しました。
- IDP1でコーティングした光熱変換ナノ粒子(注4)は静脈投与だけで腫瘍に効率よく集積し、正常臓器への分布が少ないことを定量的に確認しました。
- 標準的な注射針に挿入できる極細硬性内視鏡(注5)を開発し、腫瘍内部から直接レーザを照射する「接触型照射システム」を実現しました。
- マウスの大腸がんモデルにおいて、1回の薬剤投与と1回のレーザ照射の組み合わせで腫瘍が14日以内に消失し、40日以上再発しないことを確認しました。
- 観察期間中、明らかな全身毒性は認められませんでした。
【概要】
| 近赤外線レーザでがん細胞を熱で破壊する「光熱療法」は、手術や放射線治療に比べて体への負担が少ない次世代のがん治療として期待されています。しかし、治療薬を運ぶナノ粒子が免疫細胞に排除されて腫瘍へ届きにくいことや、体外からのレーザ照射では深部腫瘍に十分な熱を届けられないことが課題でした。 東北大学 多元物質科学研究所の都 英次郎教授(北陸先端科学技術大学院大学 客員教授)らと、エア・ウォーター株式会社の山下 紘正グループリーダー(帝京大学先端総合研究機構 特任准教授)らは、共同研究によりこれら2つの課題を同時に解決しました。タンパク質構造予測AI「AlphaFold(注6)」を活用して設計した人工タンパク質「IDP1」をナノ粒子にコーティングすることで腫瘍への集積性を高めるとともに、注射針に挿入可能な極細硬性内視鏡を用いた接触型レーザ照射システムを開発し、低出力で高い加熱効果を実現しました。マウス大腸がんモデルでは、1回の治療で腫瘍の消失と長期的な再発抑制を確認しました。 本研究成果は、ナノサイエンス・材料科学分野の専門誌Small Scienceに、2026年7月14日付で掲載されました。 |
【詳細な説明】
研究の背景
光熱療法はがん細胞を近赤外線レーザで選択的に加熱・破壊する治療法で、低侵襲性・繰り返し治療の可能性・免疫活性化効果などから次世代がん治療として世界中で研究が進んでいます。治療薬はナノ粒子に封入して静脈投与されますが、体内の免疫細胞(主にマクロファージ)がナノ粒子を異物として認識し、肝臓や脾臓で回収してしまうため、腫瘍への到達効率が低下するという課題があります。
これを防ぐためにPEGというプラスチック由来の分子でナノ粒子を覆うことが広く行われてきましたが、繰り返し投与によって体がPEGへの抗体を産生し2回目以降の投与では薬剤が急速に排除される「加速血中消失現象(注7)」が起こること、またPEGが体内で分解されず長期的な安全性に懸念が残ることが問題でした。
レーザ照射については、体の外から照射する従来法では皮膚・皮下組織・筋肉などがレーザを吸収・散乱するため、深部の腫瘍に十分な熱を届けるには1 W以上の高出力が必要となり、皮膚熱傷などの副作用リスクが高まります。光ファイバを腫瘍内に挿入する方法も存在しますが、これまでのシステムはファイバが太く、小動物実験への適用や最小侵襲性の観点で課題がありました。
今回の取り組み
研究グループはこれらの課題を以下の2つの独自技術で解決しました。
1つ目は、コンピュータ設計による人工ステルスタンパク質「IDP1」の開発です。血液中に豊富に存在する「ヒト血清アルブミン(HSA)(注8)」は表面に親水性アミノ酸を多く持ち、ナノ粒子への非特異的タンパク吸着を防ぐ性質を持っています。研究グループはまずHSAの立体構造データを解析して水との接触面積が大きいアミノ酸だけを選び出し、得られた改変HSAの立体構造をノーベル賞受賞技術にも貢献したタンパク質構造予測AI「AlphaFold」で予測することで、固有の立体構造を持たない柔軟な領域(固有無秩序領域)を特定しました。この候補配列の中から最も高い親水性と適切な電荷バランスを持つ配列をIDP1として選定しました。AlphaFoldの高精度な構造予測能力があってこそ、従来は困難だった「無秩序な領域の同定」が可能になりました。これらを評価した結果、弱いマイナス電荷を持ち最も高い親水性を示す候補をIDP1として選定しました。IDP1は大腸菌を使って生産でき、マウスへの投与実験では血中滞留時間がPEGの4倍以上(半減期150.5分対17.8分)を達成しました。
2つ目は、エア・ウォーター株式会社との共同研究による注射針サイズの極細硬性内視鏡です。エア・ウォーター株式会社が培ってきたグレーデッドインデックス型プラスチック光ファイバ(GI-POF)のレンズ応用技術を医療応用に展開し、直径0.5 mmのレンズを持つ極細硬性内視鏡を実現しました。この内視鏡は標準的な16ゲージ注射針の内腔に収まり、腫瘍内に直接挿入して808 nmのレーザを照射できます。レーザが皮膚や周囲組織を通過しないため光の減衰がなく、腫瘍全体に均一に熱を届けられます。実験では従来の外部照射(700 mW、ΔT≈40°C)と比べて28%低い出力(500 mW)で同等の温度上昇(ΔT=36.3°C)を達成しました。さらに励起波長785 nm・検出波長810〜860 nmの蛍光観察モジュールを搭載し、薬剤集積のリアルタイム確認と最適照射位置の決定を同一デバイスで行えるシステムを実現しました。
実験結果
細胞実験では、IDP1でコーティングしたナノ粒子(IDP1-CNH/ICG)は免疫細胞であるRAW264.7マクロファージへの取り込みが従来のコーティングなし粒子と比べて大幅に抑制されました。がん細胞(Colon26)に対しては接触型レーザ照射によって濃度依存的な細胞死が誘導され、正常細胞(MRC5)への影響は最小限に留まりました。
マウスを使ったin vivo実験では、投与24時間後に腫瘍部位への強い蛍光集積が確認されました。蛍光解析では腫瘍への集積量が肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺を大幅に上回り、正常臓器への分布が少ないことが定量的に示されました。
がんの治療実験では、IDP1-CNH/ICG投与+接触型レーザ照射群において14日以内に全マウスで腫瘍が消失しました。40日以上の観察期間中に再発は認められませんでした。体重に変化はなく血液検査でも異常は見られず、安全性が示唆されました。腫瘍組織の病理解析ではアポトーシス(細胞の自然死)とネクローシス(壊死)の強い誘導が確認されました。なお薬剤投与なしで接触型レーザのみを照射した群、および薬剤投与+従来の外部レーザ照射群ではいずれも腫瘍の消失には至らず、IDP1-CNH/ICGと接触型照射の組み合わせが治療成功に重要な要素であることが示されました。
今後の展開
IDP1の設計手法はがん治療薬の運搬だけでなく、さまざまなバイオ医薬品の体内での安定性向上(半減期延長)にも広く応用できると期待されます。また接触型光ファイバ内視鏡システムについては、エア・ウォーター株式会社と連携しながら内視鏡が届くさまざまながん種(頭頚部がん、食道がん・乳がん・大腸がんなど)への展開を進める予定です。今後は非臨床安全性試験の実施と早期臨床応用に向けた研究開発を推進します。

| 図1. 本研究の概要。ヒト血清アルブミンからコンピュータで設計した人工タンパク質IDP1でコーティングした光熱変換ナノ粒子(IDP1-CNH/ICG)を静脈投与し、注射針サイズの極細硬性内視鏡を腫瘍内に挿入して直接レーザを照射することで、効率的な光熱がん治療を実現した。 |

| 図2. IDP1の優れたステルス性能。(左)静脈投与後の血中濃度の変化。IDP1(赤線)は従来のPEG(水色線)と比べて4倍以上長く血液中に留まることが示された。(右)がん細胞(Colon26)および免疫細胞(RAW264.7マクロファージ)へのナノ粒子の取り込み量の比較。IDP1でコーティングしたナノ粒子(薄紫)は、コーティングなし(濃紺)と比べて取り込みが大幅に抑制された。 |

| 図3. マウスを用いた光熱療法の治療効果。(左)近赤外線サーモグラフィによる腫瘍部位の温度分布。注射針サイズの極細硬性内視鏡を用いた接触型レーザ照射(右下)では、照射開始から5分後に腫瘍内温度が約67.7°Cに達した。体外からの従来照射(右上)では温度上昇が限定的であった。(右)各治療群における腫瘍体積の経時変化。IDP1-CNH/ICGの投与と接触型レーザ照射を組み合わせた群(黒丸)でのみ、マウスの腫瘍がレーザ照射の14日以内に消失した。他の治療群では腫瘍の増大が確認された。データはマウス5匹の平均値±標準偏差を示す。 |
【謝辞】
本研究は、科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(JPMJSF2318)、JSPS科研費(JP23K17209、JP23H00551、JP25K21827)同 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(JPJS00420230006)、文部科学省先端研究基盤共用促進事業(JPMXS0440200021)の支援を受けて実施されました。また、極細硬性内視鏡の開発にあたってはエア・ウォーター株式会社、帝京大学先端総合研究機構から実験的・技術的サポートをいただきました。
【用語説明】
石油由来の水溶性ポリマーで、ナノ粒子を免疫細胞から守るため医薬品分野で広く使われてきた材料です。しかし繰り返し投与によって体が抗体を産生し薬剤が急速に排除される問題や、体内で分解されないという長期安全性の課題が知られています。(ポリエチレングリコール)
体内の酵素や化学反応によって自然に分解される性質のことです。IDP1はアミノ酸から構成されており、体内のタンパク質分解酵素によって最終的に無害なアミノ酸に分解されます。プラスチック由来のPEGが体内で分解されないことと対照的な特長です。
本研究で新たに開発した人工タンパク質です。通常のタンパク質は決まった立体構造を持ちますが、IDP1(内在性無秩序ポリペプチド1)は形が決まらず水の中で柔軟に揺らめく「無秩序な」構造を持ちます。この柔軟性と水との強い親和性が、免疫細胞から認識されにくいステルス効果の源となっています。約100個のアミノ酸から構成される比較的小さなタンパク質で、大腸菌による大量生産も可能です。
本研究で開発したナノ粒子の正式名称です。直径約200 nmの脂質ナノ粒子の内部にカーボンナノホーン(CNH、炭素製の光熱変換材料)とインドシアニングリーン(ICG、FDA承認の蛍光色素)を封入し、表面をIDP1でコーティングしたものです。近赤外線レーザを照射すると効率よく熱に変換され、がん細胞を破壊します。(IDP1-CNH/ICG)
エア・ウォーター株式会社と共同開発した極細の硬性内視鏡です。グレーデッドインデックス型プラスチック光ファイバ(GI-POF)という、光を効率よく伝える特殊な素材を活用したレンズを使用しています。レンズ径わずか0.5 mm、標準的な注射針(16ゲージ)の内腔に挿入して腫瘍内に刺し込むことができ、腫瘍内部から直接レーザを照射できます。同時に腫瘍内の蛍光画像をリアルタイムで観察できる機能も搭載可能なデバイスです。
英国のDeepMind社(現Google DeepMind)が開発したタンパク質の立体構造を予測する人工知能(AI)プログラムです。アミノ酸の配列情報だけから、タンパク質がどのような三次元構造を取るかを高精度で予測できます。この技術は生命科学に革命をもたらしたとして、2024年のノーベル化学賞の受賞対象となった研究に深く関連しており、世界中の研究者が無償で利用できます。本研究では、ヒト血清アルブミンの改変配列がどのような構造を取るかを予測し、形が決まらない「無秩序な」領域を特定するために使用しました。(アルファフォールド)
PEGでコーティングしたナノ粒子を繰り返し投与した際に、免疫系がPEGに対する抗体を産生することで2回目以降の投与では薬剤が急速に排除される現象です。がん治療では複数回投与が必要な場合が多く、PEGベースの薬剤送達システムの重大な課題として広く認識されています。IDP1はタンパク質由来であるため、この問題が起きにくいと考えられます。(ABC現象)
血液中に最も多く含まれる主要タンパク質で、体重60 kgの成人では血液中に約200 gが存在します。脂肪酸・ホルモン・薬物を全身に運ぶ輸送役を担うほか、表面に親水性アミノ酸を多数持ち免疫細胞からの認識を受けにくい性質があります。本研究ではHSA全体ではなく、そのステルス性に寄与する部分の配列だけをコンピュータで特定・抽出しました。
【論文情報】
| タイトル | Intrinsically Disordered Polypeptides-Based Stealth Materials Enable Enhanced Photothermal Cancer Therapy Using an In Situ Fiber-Based Penetrating Laser System |
| 著者 | Kei Nishida, Hiromasa Yamashita, Akira Takahashi, and Eijiro Miyako* *責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 都 英次郎 |
| 掲載誌 | Small Science |
| DOI | 10.1002/smsc.70342 |
| URL | https://doi.org/10.1002/smsc.70342 |
令和8年7月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/07/21-1.htmlベタレイン色素の新たな生合成経路を解明 ― ゴムフレニンI合成酵素 cDOPA6GT を世界で初めて発見 ―
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石川県公立大学法人 石川県立大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 |
ベタレイン色素の新たな生合成経路を解明
― ゴムフレニンI合成酵素 cDOPA6GT を世界で初めて発見 ―
ポイント
- ツルムラサキおよびセンニチコウから、ゴムフレニンI生合成に関わる新規糖転移酵素cDOPA6GTを発見
- タバコ培養細胞を用いたゴムフレニンIの人為的大量生産系の構築に成功
- ゴムフレニンIが、ベタニンより高い熱安定性を示すことを発見
| 石川県立大学の重久亮太 修士課程学生、森正之 教授、今村智弘 准教授、高木宏樹 教授、北陸先端科学技術大学院大学 大木進野 教授、山口拓実 准教授らの研究グループは、ベタレイン色素を生産するツルムラサキ(Basella alba)およびセンニチコウ(Gomphrena globosa)を用いて、ゴムフレニンI生合成に関わる新規糖転移酵素cDOPA6GTを発見し、ベタレイン色素の新たな生合成経路を明らかにしました。 本研究成果は、植物科学分野の国際研究誌「New Phytologist」に掲載されました。 |
研究背景と概要
ナデシコ目植物の多くがベタレイン色素*1 を生産し、赤色系のベタシアニン*2 と黄色系のベタキサンチンに大別されます。ベタシアニンは、基本骨格であるベタニジンにグルコースが付加されることで形成されます。この修飾では、分子内の5位または6位にグルコースが付加されることが知られており、5位に付加したものをベタニン型、6位のものをゴムフレニン型と呼んでいます(図1)。ベタレイン生産植物の多くはベタニン型ベタシアニンを生産しますが、ゴムフレニン型を生産する植物は限られています。
それぞれのタイプを決定する酵素について、ベタニン型では、ベタニジンの5位にグルコースを付加する酵素(Betanidin 5-O-glucosyltransferase、B5GT)と、ベタニジンの前駆体であるシクロドーパの5位にグルコースを付加する酵素(cyclo-DOPA 5-O-glucosyltransf-erase、cDOPA5GT)が報告されています(図1右)。一方、ゴムフレニン型については、ベタニジンの6位にグルコースを付加する酵素(Betanidin 6-O-glucosyltransferase、B6GT)は、これまでに1例しか報告されていませんでした(図1左下)。そのため、ゴムフレニン型ベタシアニンの生合成機構の全体像は未解明のままであり、20年以上にわたり未解決の課題となっていました。
本研究では、ゴムフレニン型ベタシアニンを生産していることが知られているツルムラサキ*3 とセンニチコウ*4 を対象として、ゴムフレニンI*5 の生合成に関わる酵素遺伝子の探索を行いました。両植物はゲノム情報が公開されていなかったため、RNA-seq*6 解析によって取得した遺伝子発現情報から転写産物の配列を再構築し、候補遺伝子を抽出しました。まず、これまでに報告されているB6GTのアミノ酸配列を手がかりに候補遺伝子を選抜し、ベンサミアナタバコを用いたアグロインフィルトレーション法*7 によって機能解析を行いました。しかし、ゴムフレニンIを合成する酵素は見いだせませんでした。この結果は、ツルムラサキとセンニチコウにおいて、ゴムフレニンIの生合成に未知の酵素が関与している可能性を示していました。
そこで、私たちは、これまで報告のなかったベタニジンの前駆体であるシクロドーパの6位にグルコースを付加してゴムフレニンIを合成する新たな経路の存在を想定し、その反応を担う酵素(cyclo-DOPA 6-O-glucosyltransferase、cDOPA6GT)の探索を行いました(図1左上)。ベタニン型ベタシアニンでは、複数の植物種でcDOPA5GTが報告されていることから、キヌアのcDOPA5GTのアミノ酸配列を手がかりに、相同性解析を行いました。その結果、ツルムラサキから2つ、センニチコウから1つの有力な候補遺伝子を見いだしました。これらの候補について、機能解析を行った結果、ツルムラサキ由来のBacDOPA5/6GT1およびBacDOPA5/6GT2は、ベタニンとゴムフレニンIの両方を生産すること、一方でセンニチコウ由来のGgcDOPA6GTはゴムフレニンIのみを生産することが明らかとなりました(図2)。これにより、長年未解明であったゴムフレニン型ベタシアニンの生合成において、世界で初めてcDOPA6GT経路の存在を実証しました。
次に、ゴムフレニンI合成活性を示した遺伝子を、他のベタシアニン生合成遺伝子とともにタバコ培養細胞(BY-2細胞)へ導入し、ゴムフレニンIの人為的生産系の構築を行いました。その結果、遺伝子を導入した培養細胞は赤色を呈し、蓄積した色素を精製し、NMR*8 による構造解析を行ったところ、ゴムフレニンIであることが確認されました(図3)。さらに BacDOPA5/6GT1、BacDOPA5/6GT2およびGgcDOPA6GTを導入した培養細胞では、ゴムフレニンIが高濃度で蓄積していることが確認されました。これらの結果から、ゴムフレニンIの人為的生産系の構築に成功しました。
さらに、タバコ培養細胞で生産したゴムフレニンIとベタニンを用いて、それぞれの熱安定性を評価しました。その結果、ゴムフレニンIは、ベタニンに比べて有意に高い熱安定性を示しました(図4)。そこで、両色素の分子構造シミュレーション*9 解析を行った結果、ゴムフレニンIではグルコース部分と色素骨格との間に、ベタニンには見られない分子内水素結合が形成される可能性が示されました(図4)。この分子内水素結合が、ゴムフレニンIの高い熱安定性に寄与していると考えられます。
本研究により、長年未解明であったゴムフレニン型ベタシアニンの生合成機構が明らかとなり、世界で初めてcDOPA6GT経路の存在が実証されました。本成果は、ベタレイン色素の生合成機構の理解に貢献するとともに、熱に強い天然色素の開発や利用技術の高度化、新たな機能性天然色素の創出につながることが期待されます。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(科研費)の支援を受けて実施されました。また、本研究の一部は、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM)の支援を受けて実施されました。

図1 ゴムフレニン型およびベタニン型ベタシアニンの生合成経路
・本研究により、世界で初めてcDOPA6GT(黄色)の経路を実証した。

| 図2 ベンサミアナタバコを用いたアグロインフィルトレーション法による候補遺伝子の機能解析 (a,b)ツルムラサキ由来のBacDOPA5/6GTsの活性評価(c, d)センニチコウ由来のGgcDOPA6GTの活性評価 ・BacDOPA5/6GTsおよびGgcDOPA6GTがゴムフレニンIの合成に関与することが明らかとなった。 |

| 図3 タバコ培養細胞によるゴムフレニンIの人為的生産系の構築 (a,b)ツルムラサキ由来のBacDOPA5/6GTsを用いた生産系の構築(c,d)センニチコウ由来のGgcDOPA6GTを用いた生産系の構築 ・タバコ培養細胞を用いたゴムフレニンIの安定的な人為的生産系を構築することに成功した。 |

| 図4 ゴムフレニンIの熱安定性評価(a)熱処理前のゴムフレニンIおよびベタニン (b)熱処理後のゴムフレニンIおよびベタニン(c)熱処理後のゴムフレニンIおよびベタニンの残存率(%)(d, e)分子構造シミュレーションによるゴムフレニンIとベタニンの構造解析。黄矢印は分子内水素結合を示す。 ・ゴムフレニンIはベタニンに比べて熱安定性が高いことが示された。また、ゴムフレニンIでは、ベタニンには見られない分子内水素結合が形成される可能性が示された。 |
【用語の説明】
ナデシコ目植物に含まれる水溶性の植物色素。赤紫色のベタシアニンと黄色のベタキサンチンに大別される。
ベタレイン色素の一種で、赤色から赤紫色を示す色素群。ビートやツルムラサキ、センニチコウなどに含まれる。
熱帯アジア原産のつる性野菜。若葉や茎が食用として利用され、赤紫色のベタレイン色素を蓄積する。
熱帯アメリカ原産の観賞植物。色鮮やかな苞を長期間維持することから広く利用されている。ベタレイン色素を蓄積する代表的な花卉である。
ベタシアニンの一種。ベタニンと同じ分子式を持つが、グルコースの結合位置が異なる位置異性体。本研究の中心となった色素であり、ベタニンより高い熱安定性を示す。
次世代シークエンサーを用いて、細胞内で発現しているmRNAを網羅的に解析し、どの遺伝子が働いているかを調べる技術。
植物細胞に遺伝子を導入する性質を持つ土壌細菌であるアグロバクテリウムを利用して、植物葉内に目的遺伝子を一時的に導入し、その機能を評価する実験手法。
原子核スピンの共鳴現象を利用して、分子構造を高精度に解析する分析手法。化合物の構造決定に広く利用されている。
コンピューター上で分子の立体構造や分子内の相互作用を予測・解析する手法。本研究では、ゴムフレニンIとベタニンの構造を比較し、熱安定性の違いに関与する可能性のある分子内水素結合を解析した。
【発表論文】
| 論文タイトル | A cyclo-DOPA 6-O-glucosyltransferase-mediated route for gomphrenin I biosynthesis in Basella alba and Gomphrena globosa |
| 論文著者 | Tomohiro Imamura*,†, Ryouta Shigehisa†, Akio Miyazato, Nami Matsumura, Kaisei Miyaki, Tenta Segawa, Masahide Yoshizumi, Hiroki Takagi, Takumi Yamaguchi, Shinya Ohki, and Masashi Mori* (*:責任著者、†:共同筆頭著者) |
| 雑誌 | New Phytologist |
| DOI | 10.1111/nph.71340 |
| 掲載日 | 2026年6月7日 |
令和8年6月19日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/06/19-1.html多剤耐性がんを克服する新たなナノ粒子薬物送達システムの開発に成功 ―アミノ酸由来のナノ粒子による逐次的薬物放出と光熱療法の融合ー
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国立大学法人東北大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 |
多剤耐性がんを克服する新たなナノ粒子薬物送達システムの開発に成功
―アミノ酸由来のナノ粒子による逐次的薬物放出と光熱療法の融合―
【発表のポイント】
- アミノ酸を原料とした超微小粒子(ナノ粒子(注1))を独自の製法で作製し、抗がん剤をより多く効率よく詰め込むことに成功しました。
- 粒子の表面加工により、がん細胞が抗がん剤を細胞の外へ追い出す前に、その「排出ポンプ」の働きをあらかじめ止めてから抗がん剤を届ける仕組みを実現しました。
- 薬による治療とレーザー光を使った熱治療を組み合わせることで、治療が難しい多剤耐性がんのマウス実験において、40日間すべてのマウスが生存するという顕著な効果を達成しました。
- 開発したナノ粒子は正常な組織への毒性がなく、がん細胞を狙い撃ちにする機能も確認されました。
【概要】
| がん細胞が、複数の抗がん剤に対して同時に抵抗性を持つようになる現象「多剤耐性」は、がんに対する化学療法において大きな課題となっています。 東北大学 多元物質科学研究所の都英次郎教授(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 客員教授)らの研究グループは、多剤耐性(注2)がんの治療に向けた革新的なナノ粒子薬物送達システムの開発に成功しました(図1)。本研究グループは、アミノ酸を原料とした超微小粒子(ナノ粒子)を独自の製法で作製し、その表面をイカやタコの墨に含まれる色素に似た物質(ポリドーパミン(注3))で層状にコーティングしました。この加工により、多剤耐性がん細胞が抗がん剤を排出する前に細胞内に蓄積させることが可能となりました。さらに、腫瘍部位を局所的に加熱する光熱療法との組み合わせにより、マウス実験で治療開始からわずか7日で腫瘍が完全に消失し、40日間すべてのマウスが副作用なく生存しました。 本成果は多剤耐性がんに対する化学療法と光熱療法を融合した新しい治療戦略として、高い臨床応用可能性を持ち、今後、様々な種類の多剤耐性腫瘍への応用拡大が期待されます。 本研究成果は、薬物送達分野の国際的権威ある学術誌「Journal of Controlled Release」に、2026年5月6日付けで掲載されました。 なお、本研究はフランス国立科学研究センター(CNRS)ストラスブール大学のAlberto Bianco博士、Cécilia Ménard-Moyon博士らの研究グループとの共同研究によるものです。 |
【詳細な説明】
研究の背景
がん化学療法における最大の障壁の一つが多剤耐性(MDR)の発現です。MDRを獲得したがん細胞は、細胞膜上にP糖タンパク質(P-gp)(注4)と呼ばれる薬物排出ポンプを過剰発現させ、投与された抗がん剤を細胞外へ積極的に排出してしまいます。その結果、薬剤の細胞内濃度が著しく低下し、治療効果が大幅に損なわれます。この問題を解決するため、P-gp阻害剤と抗がん剤を同時に投与する手法が検討されてきましたが、両薬剤が同時に放出されると、P-gpの阻害が完了する前に抗がん剤が排出されてしまうという課題がありました。
今回の取り組み
本研究グループは、チロシンおよびトリプトファンのアミノ酸誘導体を自己集合・紫外線架橋させたナノ粒子を出発材料として、独自の自己鋳型エッチング法によって多孔質アミノ酸ナノ粒子(CPP)を作製しました。この多孔質構造により、抗がん剤ドキソルビシン(Dox)(注5)を従来の非多孔質ナノ粒子(積載効率~15%、封入効率~57%)と比べて大幅に高効率で担持することが可能となりました。
次に、ナノ粒子表面にポリドーパミン(PDA)を層ごとに積層コーティングし、さらにP-gp阻害剤であるキニジン(注6)をpH感受性のイミン結合を介して表面に結合させました。この設計により、以下の3つの革新的な機能が実現されました。
1つは、逐次的薬物放出(注7)です。酸性・グルタチオン(GSH)豊富な腫瘍細胞内環境に応答して、キニジンがDoxより先に放出されます。PDAコーティング層数を3層とすることで、キニジンがP-gpを阻害した後にDoxが放出される最適な逐次放出プロファイルを実現しました。
2つ目は、光熱療法(PTT)(注8)です。PDAコーティングは近赤外線(808 nm)を吸収して熱に変換する優れた光熱変換能を示し、腫瘍部位における温度を51℃まで上昇させることが確認されました。
3つ目は、腫瘍ターゲティングです。PEGリンカーを介して表面に結合させた葉酸(FA)(注9)が、多くの腫瘍細胞で過剰発現している葉酸受容体を標的とし、ナノ粒子の腫瘍への選択的集積を促進しました。
多剤耐性EMT-6/AR1細胞を用いたin vitro実験において、本ナノ粒子(FA/C-Dox@PDA-Q)とレーザー照射を組み合わせた治療により、細胞生存率が5%未満にまで低下することが確認されました。これは化学療法単独やPTT単独の効果をはるかに超えるものです。
多剤耐性EMT-6/AR1腫瘍を移植したマウスモデルを用いたin vivo実験では、FA/C-Dox@PDA-Q+レーザー照射群において、治療開始7日後に腫瘍の完全消退が観察され、40日間の観察期間中に100%の生存率が達成されました(図2)。一方、薬剤を含まないナノ粒子(PTT単独)の群では一時的な腫瘍消退後に再発が認められ(40日生存率20%)、その他の対照群はすべて生存率0%でした。血液検査および体重モニタリングの結果から、本ナノ粒子の全身毒性がないことも確認されました。
今後の展開
本研究で開発したナノ粒子プラットフォームは、多剤耐性がんに対する化学療法と光熱療法を融合した新しい治療戦略として、高い臨床応用可能性を持ちます。今後は、様々な種類の多剤耐性腫瘍への応用拡大や、さらなる安全性・有効性の検討を進めていく予定です。

図1. 本研究の概念

| 図2. マウスを用いた抗腫瘍効果の検証 (a) 腫瘍の大きさの変化(治療開始からの日数)4種類の条件でマウスに投与し、腫瘍の大きさを継続的に観察しました。機能性ナノ粒子(FA/C-Dox@PDA-Q)と近赤外線レーザー照射を組み合わせた群では、わずか7日間で腫瘍が完全に消失しました。一方、薬剤を含まないナノ粒子+レーザー照射の群では一時的な腫瘍消失の後に再増殖が認められ、それ以外の対照群では腫瘍の抑制効果はほとんど見られませんでした。▲印はナノ粒子の投与日、↑印はレーザー照射日を示します。 (b) 生存率(治療開始から40日間)機能性ナノ粒子(FA/C-Dox@PDA-Q)+レーザー照射を受けたすべてのマウスが、観察期間の40日間を通じて生存しました(生存率100%)。一方、他の治療条件のマウスはいずれも40日以内に全例死亡しており、本治療法の顕著な生存延長効果が示されました。 |
【謝辞】
本研究は、フランス国立科学研究センター(CNRS)、フランス国立研究機構(ANR)LabExプロジェクト(ANR-10-LABX-0026_CSC)、Jean-Marie Lehn財団、JSPS科研費 基盤研究(A)(JP23H00551)、挑戦的研究(開拓)(JP22K18440、JP25K21827)、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(JPMJTR22U1)、JST共創の場形成支援プログラムJPMJSF2318の支援を受けて実施されました。
【用語説明】
【論文情報】
| タイトル | Multifunctional amino acid-based nanoparticles for sequential drug delivery to overcome multidrug resistant cancer |
| 著者 | Tengfei Wang, Nina Sang, Cécilia Ménard-Moyon,* Eijiro Miyako,* Alberto Bianco* *責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 都英次郎 フランス国立科学研究センター(CNRS)ストラスブール大学 Alberto Bianco博士、Cécilia Ménard-Moyon博士 |
| 掲載誌 | Journal of Controlled Release |
| DOI | 10.1016/j.jconrel.2026.114954 |
| URL | https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2026.114954 |
令和8年5月8日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/05/08-1.html両生類・爬虫類の腸内細菌から画期的ながん治療細菌を発見!
両生類・爬虫類の腸内細菌から画期的ながん治療細菌を発見!
【ポイント】
- 両生類・爬虫類の腸内から採取した天然細菌が、一度限りの投与でがん組織を完全に消失させることを実証
- 細菌による直接的ながん細胞殺傷と、免疫系の活性化による間接的攻撃の両方を実現
- 既存の化学療法や免疫療法を上回る治療効果を示しながら、正常組織への悪影響なし
- 多様な固形がんへの適用が期待され、新たながん治療法開発への道を拓く
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授の研究チームは、ニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)、アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)、カナヘビ(Takydromus tachydromoides)の腸内から計45株の細菌を単離しました。これらの細菌を系統的にスクリーニングした結果、9株が抗腫瘍効果を示し、中でもニホンアマガエルの腸内から単離した細菌Ewingella americanaが、マウスのがんモデルで一度限りの投与により腫瘍を完全に消失させる極めて強力な抗がん作用を持つことを発見しました。 近年、腸内細菌とがんの関係が注目されていますが、これまでは主に腸内細菌叢全体の調整や糞便移植などの間接的アプローチが中心でした。本研究では、これとは全く異なるアプローチとして、腸内細菌を単離・培養し、直接静脈投与することで、がんを直接攻撃する革新的な治療法を開発しました。 本研究成果は、国際学術誌Gut Microbesに掲載されました。 |
【研究の詳細】
・驚異的な治療効果
マウスを用いた大腸がんモデルにおいて、E. americanaをたった一回静脈投与するだけで、腫瘍が完全に消失し、100%の完全奏効[注1]率(CR率)を達成しました(図1)。これは、現在標準治療として使われている免疫チェックポイント阻害薬[注2](抗PD-L1抗体)やリポソーム化ドキソルビシン(化学療法剤)を大きく上回る治療効果です。

図1. 抗がん効果:Ewingella americanaと従来治療法との比較
| 腫瘍応答:E. americana単回静脈内投与(200 µL、5 × 10⁹ CFU/mL)、ドキソルビシン(DOX)または抗PD-L1抗体4回投与(200 µL、2.5 mg/kg/回)、PBSを対照として使用。データ:平均値 ± 標準誤差(n = 5)。****、p < 0.0001(スチューデントの両側 t 検定) |
・二重作用による抗がん効果
E. americanaは以下の二つのメカニズムでがんを攻撃します(図2)。
- 直接的殺傷効果:
通性嫌気性細菌[注3] であるE. americanaは、低酸素状態のがん組織に選択的に集積し、がん細胞を直接破壊します。腫瘍内での細菌数は投与後24時間で約3,000倍に増加し、効率的にがん組織を攻撃します。 - 免疫活性化効果:
細菌の存在が免疫系を強力に刺激し、T細胞、B細胞、好中球などの免疫細胞ががん組織に集結します。これらの免疫細胞が産生する炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)がさらに免疫応答を増幅し、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

図2. Ewingella americanaの抗腫瘍メカニズム
・腫瘍特異的な集積メカニズム
E. americanaは、がん組織に選択的に集積し、正常組織には全く定着しません。この驚くべき腫瘍特異性は、以下の複合的メカニズムによるものと考えられます。
- 低酸素環境:がん組織特有の低酸素状態が嫌気性細菌の増殖を促進
- 免疫抑制環境:がん細胞が発現するCD47[注4]タンパク質により局所的免疫抑制が生じ、細菌が生存しやすい環境を形成
- 異常血管構造:がん組織の血管は穴が多く、細菌が容易に侵入できる
- 代謝異常:がん特有の代謝産物が細菌の選択的増殖を支援
・優れた安全性プロファイル
詳細な安全性評価により、E. americanaは以下の特徴を示しました。
- 血中から急速に除去(半減期約1.2時間、24時間後には完全に検出不能)
- 肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓などの正常臓器に細菌の定着は一切なし
- 一過性の軽度炎症反応のみで、72時間以内に正常化
- 60日間の長期観察でも慢性毒性なし
【今後の展開】
本研究により、天然細菌を用いた新しいがん治療法の可能性が実証されました。今後は以下の研究開発を進める予定です。
- 他のがん種への適用拡大:乳がん、膵臓がん、メラノーマなど、多様ながん種での効果検証
- 投与方法の最適化:分割投与、腫瘍内投与など、より安全で効果的な投与法の開発
- 併用療法の開発:既存の免疫療法や化学療法との組み合わせによる相乗効果の検証
本研究は、未開拓の生物多様性が新たな医療技術開発の宝庫であることを示すとともに、難治性がん患者に新たな治療選択肢を提供する可能性を秘めています。
【用語解説】
治療により腫瘍が完全に消失し、検査で確認できなくなった状態。
がん細胞による免疫抑制を解除し、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬剤。
酸素がある環境でも無い環境でも増殖できる細菌。がん組織の低酸素領域で選択的に増殖できる。
細胞表面に発現する「食べないで」信号を出すタンパク質。がん細胞はこれを過剰発現して免疫細胞による攻撃を回避する。
【論文情報】
| 掲載誌 | Gut Microbes |
| タイトル | Discovery and characterization of antitumor gut microbiota from amphibians and reptiles: Ewingella americana as a novel therapeutic agent with dual cytotoxic and immunomodulatory properties |
| 著者 | Seigo Iwata, Nagi Yamasita, Kensuke Asukabe, Matomo Sakari, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年12月10日 |
| DOI | 10.1080/19490976.2025.2599562 |
【研究資金】
本研究は、以下の研究資金の支援を受けて実施されました。
日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(A)(課題番号:23H00551)
同 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)(課題番号:22K18440)
同 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(課題番号:JPJS00420230006)
科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(課題番号:JPMJSF2318)
同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2102)
令和7年12月15日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/12/15-1.html海洋細菌による新しいがん免疫療法の開発に成功! ~遺伝子改変不要の天然細菌が大腸がんを選択的に攻撃~
海洋細菌による新しいがん免疫療法の開発に成功!
~遺伝子改変不要の天然細菌が大腸がんを選択的に攻撃~
【ポイント】
- 海洋細菌Photobacterium angustumが大腸がんに対して強力な抗腫瘍効果を示すことを世界で初めて発見
- 遺伝子改変を一切行わない天然細菌でありながら、がん組織に選択的に集積し、健康な臓器への影響が極めて少ない
- 細菌による直接的ながん細胞破壊と免疫系の活性化という二つのメカニズムで腫瘍を攻撃
- 従来の細菌療法と比較して優れた治療効果と安全性を確認
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授と宮原 弥夏子大学院生(博士後期課程、JAIST SPRING研究員)らの研究チームは、海洋細菌*1Photobacterium angustum(フォトバクテリウム・アングスタム)が大腸がんに対して顕著な治療効果を示すことを発見しました。 本研究では、複数の海洋細菌株をスクリーニングした結果、P. angustumが遺伝子改変を施さない天然の状態で、がん組織に選択的に集積し、直接的な腫瘍溶解作用と強力な免疫活性化を引き起こすことを明らかにしました。マウスモデルにおいて、静脈内投与されたP. angustumは腫瘍組織に高度に集積する一方、肝臓を除く重要臓器への定着はほとんど認められず、血液学的異常や組織学的毒性も観察されませんでした。 さらに、P. angustumによる治療は、T細胞、B細胞、好中球などの免疫細胞の腫瘍内浸潤を促進し、腫瘍壊死因子α(TNF-α)やインターフェロンγ(IFN-γ)などの炎症性サイトカイン*2の産生を増強しました。また、細菌が産生する天然の外毒素*3により、がん細胞を直接破壊する能力も確認されました。これらの複合的な作用により、治療を受けたマウスの生存期間が著しく延長し、一部の個体では完全寛解が達成されました。 本研究成果は、遺伝子組み換え生物(GMO)*4に依存しない、より安全で生体適合性の高い新しいがん免疫療法の開発につながる重要な知見です。 この研究の詳細は、がん免疫療法分野の国際的トップジャーナルである「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」に掲載されました。 |
【研究背景と内容】
がんは世界的な死因の上位を占めており、免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T細胞療法などの画期的な免疫療法が開発されてきました。しかし、これらの治療法は高額であり、免疫関連の副作用、固形腫瘍における限定的な効果、腫瘍微小環境*5における免疫抑制機構などの課題があります。
細菌を用いたがん治療は150年以上前から検討されてきましたが、近年、特定の細菌種が腫瘍の低酸素環境や免疫抑制環境に選択的に定着し増殖する能力を持つことが明らかになり、注目を集めています。しかし、これまでの研究の多くは遺伝子改変された大腸菌やサルモネラ菌を用いており、安全性の懸念、複雑な製造プロセス、厳格な規制などの課題がありました。
本研究では、遺伝子改変を行わない天然の海洋細菌に着目し、がん治療への応用可能性を探索しました。
【研究の内容】
1. 海洋細菌のスクリーニング
研究グループは、P. angustum、P. phosphoreum、P. aquimaris、A. logei、P. indicumを含む複数の海洋細菌株について、大腸がんマウスモデルにおける抗腫瘍活性を評価しました。その結果、P. angustumのみが顕著な抗腫瘍効果を示し(図1)、生存期間を著しく延長させました。他の細菌株は高い毒性により投与後2日以内にマウスが死亡しました。

図1. 大腸がんマウスモデルにおけるP. angustumの抗腫瘍活性
2. 優れた安全性プロファイル
P. angustum投与後のマウスにおいて、体重減少や血液学的異常は認められませんでした。完全血球計算、生化学的分析、組織学的検査のいずれにおいても、毒性の徴候は観察されませんでした。また、炎症性サイトカインの上昇は毒性株と比較して顕著に低く、24時間後には肝臓を除く重要臓器から細菌が検出されませんでした。
3. 高い腫瘍選択性
静脈内投与されたP. angustumは、腫瘍組織に選択的に集積し、多数のコロニー形成が確認されました。一方、心臓、肺、腎臓、脾臓などの健康な臓器への定着はほとんど認められませんでした。
4. 二重の抗腫瘍メカニズム
P. angustumの抗腫瘍効果は、以下の二つのメカニズムによるものと考えられます(図2):
- 直接的な腫瘍溶解作用:細菌が産生する天然の外毒素(ヘモリシンなど)により、がん細胞を直接破壊
- 免疫系の活性化:T細胞、B細胞、好中球の腫瘍内浸潤を促進し、TNF-αやIFN-γなどの炎症性サイトカインの産生を増強

図2. P. angustumによる抗腫瘍メカニズム
5. 幅広い適用可能性
P. angustumは、炎症誘発性の大腸がんモデルに加え、薬剤耐性のトリプルネガティブ乳がんモデルにおいても顕著な抗腫瘍効果を示しました。これは、本治療法が大腸がん以外のがん種にも応用できる可能性を示唆しています。
【研究の意義と今後の展望】
本研究は、遺伝子改変を必要としない天然細菌が、安全かつ効果的ながん免疫療法として機能することを実証しました。今後は、さまざまながん種での有効性の検証、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の評価、長期的な免疫記憶の詳細な解析などを進める予定です。
また、P. angustumの腫瘍選択的な定着メカニズムや免疫活性化の分子機構をさらに解明することで、より効果的な治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、GMOに依存しない生体適合性の高い細菌療法という新しい治療パラダイムを提示するものであり、将来的には臨床応用に向けた開発が期待されます。
【研究支援】
本研究は、以下の研究資金の支援を受けて実施されました:
日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(A)(課題番号:23H00551)
同 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)(課題番号:22K18440)
同 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(課題番号:JPJS00420230006)
科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(課題番号:JPMJSF2318)
同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2102)
【論文情報】
| 掲載誌 | Journal for ImmunoTherapy of Cancer |
| 論文題目 | Systemic administration of Photobacterium angustum promotes antitumor immunity and direct tumor lysis in murine models of colorectal cancer |
| 著者 | Mikako Miyahara, Teruhisa Takizawa, Matomo Sakari, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年11月19日にオンライン版に掲載 |
| DOI | 10.1136/jitc-2025-012665 |
【用語説明】
海洋環境に生息する細菌の総称。本研究で使用したPhotobacterium angustumは、特殊な培養条件を必要とせず、通常の海洋培地で培養可能。
細胞間の情報伝達に関与するタンパク質。TNF-αやIFN-γは免疫応答を促進する炎症性サイトカイン。
細菌が体外に分泌する毒性物質。本研究では、P. angustumが産生する外毒素ががん細胞を直接破壊することが示された。
遺伝子工学的手法により遺伝子を改変した生物。本研究で使用したP. angustumは天然株であり、遺伝子改変は行っていない。
がん組織とその周辺の細胞、血管、免疫細胞、シグナル分子などから構成される環境。多くの場合、低酸素状態や免疫抑制状態にある。
令和7年11月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/11/21-1.html特殊なダイヤモンドの針を開発し超高速で変化する電場の局所計測に成功
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| 国立大学法人筑波大学 国立大学法人 慶應義塾大学 |
特殊なダイヤモンドの針を開発し
超高速で変化する電場の局所計測に成功
NV中心と呼ばれる格子欠陥を導入したダイヤモンドを原子スケールの空間分解能を持つ原子間力顕微鏡(AFM)の探針(プローブ)に用い、二次元層状物質の表面近傍の電場をフェムト秒(1000兆分の1秒)・ナノメートル(10億分の1メートル)の時空間分解能で計測することに成功しました。
| ダイヤモンドの結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがあります。これをNitrogen-Vacancy(NV)中心と言います。そして、NV中心を導入したダイヤモンドに電界を加えると、その屈折率が変化するようになります。これは電気光学(EO)効果と呼ばれる現象で、ダイヤモンド単体では実現していませんでした。 本研究チームはこれまでに、NV中心を導入した高純度ダイヤモンドに1000兆分の1秒という極めて短時間だけパルス光を放出するフェムト秒レーザーを照射し、ダイヤモンドのEO効果を計測することで、ダイヤモンドの格子振動ダイナミックスを動的に高感度に検出することに成功しています。このことは、ダイヤモンドが超高速応答するEO結晶として利用可能で、電場を検出する探針(ダイヤモンドNVプローブ)となり得ることを示しています。 そこで本研究では、NV中心を導入したダイヤモンドの超高速EO効果と、原子スケールの空間分解能を有する原子間力顕微鏡(AFM)技術とを融合し、フェムト秒(fs=1000兆分の1秒)の時間分解能とナノメートル(nm=10億分の1メートル)の空間分解能で局所的な電場のダイナミックスを測定できる、時空間極限電場センシング技術を開発しました。そして、このセンシング技術を用いることで、二次元の原子層が層状に重なった二次元層状物質であるセレン化タングステン(WSe2)試料の表面近くの電場を500 nm以下かつ100 fs以下の時空間分解能でセンシングできました。 ダイヤモンドNVプローブはスピンや温度の変化にも感度があるため、本研究成果は、電場の検出に加え、磁場や温度を検出するためのセンシング技術としても展開されることが期待されます。 |
【研究代表者】
筑波大学数理物質系
長谷 宗明 教授
北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアル・デバイス研究領域
安 東秀 准教授
慶應義塾大学理工学部
ポール フォンス 講師(研究当時、同大学同学部電気情報工学科教授)
【研究の背景】
ダイヤモンド中の不純物には窒素やホウ素などさまざまな種類があります。その中でも、点欠陥に電子や正孔が捕捉され、発光を伴う種類のものはダイヤモンドを着色させるため、「色中心:カラーセンター」と呼ばれます。色中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、温度や電場を読み取る量子センサー注1)として用いられています。
量子センサーの中でも、ダイヤモンドに導入した窒素―空孔(NV)中心注2)と呼ばれる複合欠陥を用いたセンサーは、まだまだ発展途上の技術ですが、高空間分解能・高感度が要求される細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーへの応用など、新しい可能性が期待されています。
本研究チームは、フェムト秒(1000兆分の1秒)の時間だけ近赤外域の波長で瞬くフェムト秒超短パルスレーザー注3)を用い、NV中心を導入したダイヤモンドの電気光学(EO)効果注4)を実時間分解計測することで、ダイヤモンドの格子振動ダイナミックスを動的に高感度に検出することに成功しています参考文献 a)。このことは、ダイヤモンドが超高速応答するEO結晶になり、電場検出の探針(プローブ)となり得ることを示すものです。
これまでもダイヤモンドを原子間力顕微鏡(AFM)注5)と組み合わせた電場センシングの試みはなされていましたが、局所ダイナミックスを動的に評価できる手法はほとんどありませんでした。特に時間分解能に関しては、発光測定に基づく従来の手法ではナノ秒程度が限界であり、ピコ秒以下の超高速時間分解能に関しては、全く開拓されていませんでした。
【研究内容と成果】
本研究では、量子光学(フェムト秒超短パルスレーザーを用いたダイヤモンドのEO効果)と走査プローブ顕微鏡(SPM)の一種である原子間力顕微鏡(AFM)技術を融合することで、光の回折限界を超える空間分解能に加えて、今までの検出限界を超える超高速時間分解能で局所的な電場計測を実現することを目指しました(図1)。
極めて不純物が少ない高品質のダイヤモンド結晶の表面近傍(深さ40nm)に、密度を制御したNV中心を導入し、そのダイヤモンド結晶をレーザーカットおよび集束イオンビーム(FIB)技術注6)を駆使することで、先端径が500 nm以下のダイヤモンドNVプローブに加工することに成功しました。このダイヤモンドNVプローブを、フェムト秒超短レーザーを組み込むことが可能な、ピエゾ抵抗効果注7)に基づく自己センシング方式注8)のAFMのカンチレバーに取り付けました(図2)。
このシステムを用いて、まずガリウムヒ素(GaAs)半導体基板の表面電場を調べました。フェムト秒超短パルスレーザーの出力光をビームスプリッタで約10対1に分岐し、強い方を励起のためのポンプ光、弱い方を探索のためのプローブ光とします。電子が電流を運ぶn型GaAs試料は高強度のポンプ光で励起され、プローブ光はダイヤモンドNVプローブに入射されます(図3a)。まず、ダイヤモンドNVプローブの有無による時間分解EO信号の検出感度を確認するため、ダイヤモンドNVプローブを用いないマクロ計測により時間分解EO信号を計測したところ、励起直後(Time delay=時間遅延0 ps)に立ち上がり、数ps(ps=1兆分の1秒)以内に緩和しポンプ光を当てる前に戻る信号が得られました(図3b)。またNVセンターを導入したダイヤモンドNVプローブを通じて、n型GaAsの表面電場を検出することに成功しました(図3c)。ダイヤモンドNVプローブの導入によりEO信号の大きさは約1/42に減少しましたが、局所計測に成功したと言えます。
さらに二次元層状物質注9)であるセレン化タングステン(WSe2)単結晶をシリコン基板上に転写した試料を用いて実験を行いました。このWSe2試料では、場所によって結晶の厚さが異なっていますが、光学顕微鏡で銀白色のバルク(Bulk)結晶(厚さが10原子層以上の結晶)を見つけ、このバルク結晶と接する紫色の単層(1 ML)部分との界面に着目しました(図4a)。この厚さの異なる界面を用いて、局所的な表面電場の計測を行ったところ、単層部分とバルク部分のキャリア特性を反映した表面電場信号を、500 nm以下かつ100 fs以下の時空間分解能でセンシングすることに成功しました(図4a,b)。また時間分解EO信号の減衰を指数関数を用いてフィッティング(モデル化)したところ、単層部分では約200フェムト秒で緩和する成分のみが観測されました。一方、バルク部分では、この成分に加えて、約2psで緩和する遅い成分の寄与があることが分かりました(図4c)。このことは、単層部分では電場は基板との相互作用などで高速に緩和するのみなのに対し、バルク部分では、表面電場と結合したキャリアのバンド内緩和やバレー間緩和注10)が寄与していることを示しています。n型GaAsの時間分解EO信号による電場検出感度を見積もると、約100 V/cm/
(Hzは周波数)となりました。これは発光測定に基づく従来の手法で得られたマイクロ秒時間領域でのDC(直流)電場センシングと同等の検出感度を達成したことになります。最近のマイクロ秒時間領域でのAC(交流)電場センシングに関する検出感度には2桁及びませんが、本手法ではDC(直流)電場センシングと同等の検出感度で500 nm以下かつ、100フェムト秒というマイクロ秒を遙かに凌ぐ高い時空間分解能が得られることが示されたと言えます。
【今後の展開】
今回開拓した時空間極限センシング技術は、例えば炭化ケイ素(SiC)などのパワー半導体材料や燃料電池材料内での局所電場検知、トポロジカル絶縁体における局所電場検知など、基礎物理・化学のための基盤技術となることが期待されます。また、NV中心を含むダイヤモンドNVプローブはスピンや温度の変化にも感度があるため、本研究のアプローチは、電場の検出に加え、磁場や温度を検出するためのセンシング技術としても展開可能であると言えます。例えばレーザー医療や分子レベルでの細胞の計測や制御を通じて、癌の治療をはじめとする量子生命科学の分野にも波及しうる革新的な展開が期待されます。
【参考図】

| 図1 本研究で行なった実験の概要図 ダイヤモンドNVプローブを用いた超高速ポンプ・プローブ電場センシング測定の概略図。試料上の各指定点においてAFMプローブを垂直に接近・後退させる「ピンポイントモード」で測定を行った。また試料はピエゾスキャナーを用いてx-y方向に走査される。 |

| 図2 本研究で作製したダイヤモンドNVプローブ概要図 (a) FIBで作製したダイヤモンドNVプローブ(探針)の走査型イオン顕微鏡像。マイクロメートルサイズに加工されたダイヤモンド結晶の一部が探針となっている。(b) ダイヤモンドNVプローブの探針部分のフォトルミネッセンス画像。赤色の部分から探針の直径が500 nm以下であることが分かる。(c)カンチレバーに取り付けたダイヤモンドNVプローブの光学顕微鏡像。カンチレバーは自己センシング方式用の回路部分の上部に位置しており、その先端に探針部分を含むダイヤモンドNVプローブが取り付けられている。 |

| 図3 ダイヤモンドNVプローブを用いたn型GaAs表面の電場センシング (a)ダイヤモンドNVプローブ先端近傍の表面バンド曲げと接触モードの配置図。表面状態はフェルミエネルギー(EF)を示すベル形状の破線で表され、下側のバンドは電子(-)で占有されている。VBは価電子帯、CBは伝導帯を示す。(b)ダイヤモンドNVプローブを用いないマクロ計測によるn型GaAsウェハーからの時間分解電気光学信号。(c)ダイヤモンドNVプローブを用いたn型GaAsからの局所的時間分解電気光学信号。(b)のマクロ計測の場合に比べてEO信号の大きさは約1/42になっているが、検出感度が十分であることが確認された。 |

| 図4 WSe2のEO信号の時空間測定 (a) ダイヤモンドNVプローブを用いた60 µm ×60 µm領域のトポグラフ画像。色の薄い部分がバルク(Bulk)結晶である。左上の挿入図は光学顕微鏡像であり、銀白色の部分はバルク(Bulk)結晶である。 局所計測では、単層(1ML)領域(P4)からバルク(Bulk)領域(P11)までを500 nmステップで計測する。(b)ダイヤモンドNVプローブを用いて得られた局所的な時間分解電気光学信号。P4からP11に行くに従い、単層(1ML)からバルク(Bulk)領域を測定している。図(b)の黒実線は、単一指数関数(単層=1ML領域のデータについて)または二重指数関数(バルク領域のデータについて)を用いたフィッティング(モデル化)を示す。(c) P4からP11の異なる位置における500 nmステップで得られた時間分解電気光学信号へのフィッティングにより得られた緩和時間定数。エラーバーは標準偏差を示す。 |
【用語解説】
量子化した準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測する手法のこと。
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)中心」はダイヤモンドの着色にも寄与する色中心と呼ばれる格子欠陥となる。NV中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。このため、NV中心を持つダイヤモンドは「量子センサー」と呼ばれ、次世代の超高感度センサーとして注目されている。
パルスレーザーの中でも特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒(1000兆分の1秒)以下の極めて短いレーザーのこと。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
物質に電場を加えると、電場の強度に応じて物質の屈折率が変化する効果のこと。
先端が鋭い探針で試料の表面を走査し、探針と表面との間に働く微少な力を測定して表面構造を原子スケールの高分解能で観察することができる顕微鏡のこと。AFM探針は、バネのようにしなるカンチレバーの先端に取り付けられており、コンタクトモードでは、この探針と試料表面を微小な力で接触させ、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針・試料間距離をフィードバック制御しながらX―Y方向(水平方向)に走査することで、表面形状を画像化できる。
イオンビーム(荷電しているイオンを高電界で加速したもの)を細く絞ったものである。物質の微細加工、蒸着、観察などの用途に用いられる。
半導体材料などに機械的なひずみ(力による変形)を与えたとき、材料の電気抵抗が変化する効果のこと。
通常のAFMでは、レーザー光をカンチレバー背面に照射し、反射したレーザービームの位置変化を位置センサーで計測することで、カンチレバーのたわみ量(表面構造によりたわんだ量)を読み取る。カンチレバーのたわみ信号を光で読み取ることから、これを光てこ方式と呼ぶ。一方、自己センシング方式のAFMでは、光てこ方式のようにレーザーと一センサーを必要とせず、ピエゾ抵抗効果などのカンチレバー自身の物理量の変化からカンチレバーのたわみ量を読み取ることができる。
共有結合が二次元方向だけに伸びている結晶のこと。原子一層レベルの二次元原子層が、ファンデルワールス力で積層して三次元結晶を形成している。炭素の二次元原子層であるグラフェンが積層したグラファイト、近年盛んに研究されるようになった遷移金属カルコゲナイドなどがある。本研究で調べたセレン化タングステン(WSe2)も遷移金属カルコゲナイドである。
半導体などにおいて、バレーとは電子バンドの極小点を指す。異なるバレー間にキャリアが散乱(遷移)することでエネルギーを失う緩和過程をバレー間緩和と呼ぶ。
【研究資金】
本研究は、科研費による研究プロジェクト(25H00849, 22J11423, 22KJ0409, 23K22422, 24K01286, 24H00416, 23H00264)、および国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(研究代表者:長谷 宗明)(JPMJCR1875)の一環として実施されました。
【参考文献】
a) T. Ichikawa, J. Guo, P. Fons, D. Prananto, T. An, and M. Hase, 2024, Cooperative dynamic polaronic picture of diamond color centers. Nature Communications. 15, 7174 (10.1038/s41467-024-51366-x).
【掲載論文】
| 題名 | An ultrafast diamond nonlinear photonic sensor. (超高速ダイヤモンド非線形光センサー) |
| 著者名 | D. Sato, J. Guo, T. Ichikawa, D. Prananto, T. An, P. Fons, S. Yoshida, H. Shigekawa, and M. Hase |
| 掲載誌 | Nature Communications |
| 掲載日 | 2025年9月25日 |
| DOI | 10.1038/s41467-025-63936-8 |
令和7年9月26日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/09/26-1.htmlがん光免疫療法のための多機能性液体金属ナノ複合体の開発に成功! ~乳酸菌と液体金属の革新的融合により、がんの可視化・診断・治療の一体化を実現~
がん光免疫療法のための多機能性液体金属ナノ複合体の開発に成功!
~乳酸菌と液体金属の革新的融合により、がんの可視化・診断・治療の一体化を実現~
【ポイント】
- 乳酸菌成分と液体金属からなる革新的ナノ複合体の作製に世界で初めて成功
- マウス移植がんの可視化と治療効果を実証
- 免疫賦活化(活性化)と光熱変換の相乗効果により、近赤外光照射でがんを完全消失
- 優れた生体適合性を確認、新たながん診断・治療技術創出への期待
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授らの研究チームは、液体金属*1表面に乳酸菌*2成分と近赤外蛍光色素(インドシアニングリーン*3)を被覆した多機能性ナノ複合体の開発に成功しました。 開発したナノ複合体は、EPR効果*4により、がん細胞を標的とする能力に優れており、大腸がんを移植したマウスの腫瘍内に効果的に集積することを確認しました。さらに、生体透過性の高い近赤外レーザー光*5照射により、以下の治療効果を実現しました。
実際に、近赤外光を2日に1回5分間、計2回照射することで、マウスの移植がんを5日後に完全消失させることに成功しました。また、包括的な生体適合性試験により、本ナノ複合体の高い安全性も確認されています。
本研究成果は、診断と治療を統合した革新的ながん光免疫治療技術の創出につながる可能性が期待されます。 |
【研究背景と内容】
液体金属ナノ粒子への着目
ガリウム・インジウム(Ga/In)合金からなる室温液体金属は、優れた生体適合性と物理化学的特性を有し、バイオメディカル応用において世界的に注目されています。都教授らは、「免疫賦活化物質を液体金属と組み合わせ、がん患部に選択的送達できれば、強力な抗腫瘍効果と近赤外光を用いた診断・治療の統合が実現できる」との着想から研究を開始しました(図1)。

図1. 多機能性液体金属ナノ複合体を活用したがん光免疫療法の概念図
腫瘍内細菌叢の活用
近年の研究により、腫瘍組織内には固有の細菌叢(さいきんそう:細菌の集まり)が存在することが明らかになっています。都教授らは、これまでに腫瘍内から多種の細菌の単離に成功し、これらを活用したがん治療技術開発を進めてきました(既報プレスリリース:「阿吽の呼吸で癌を倒す!(※1)」「2種の細菌による新たながん治療へのアプローチ『AUN(阿吽)』を開発(※2)」)。
(※1)https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/05/08-1.html
(※2)https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/08/06-1.html
革新的ナノ複合体の創製
本研究チームは、Ga/In液体金属、乳酸菌成分、インドシアニングリーンを混合し、超音波照射するだけで球状ナノ粒子を形成する簡便な製法を確立しました。この手法により作製されたナノ複合体は以下の特性を示しました。
・高い安定性:7日以上の粒径安定性を維持
・優れた細胞親和性:高い膜浸透性と無毒性
・効率的光熱変換:近赤外光照射による発熱機能
卓越した治療効果の実証
大腸がん移植マウスを用いた評価実験では、ナノ複合体の尾静脈投与24時間後、740~790 nmの近赤外光照射により、がん患部のみが鮮明に蛍光発光し、EPR効果による選択的腫瘍集積が確認されました(図2A)。
続いて808 nmの近赤外光を患部に照射(2日間隔で各5分間、計2回)したところ、免疫賦活化と光熱変換の相乗効果により、5日後にがんの完全消失を達成しました(図2B)。

| 図2. (A) 液体金属ナノ粒子の標的腫瘍内における蛍光特性 (B) 液体金属ナノ粒子による抗腫瘍効果(腫瘍は完全消失) |
対照実験の結果
乳酸菌単独投与:免疫賦活化によりある程度の抗腫瘍効果を確認
免疫非活性化ナノ粒子(ポリエチレングリコール-リン脂質複合体*6被覆):レーザー照射後も顕著な抗腫瘍効果なし
これらの結果から、乳酸菌成分による免疫賦活化と液体金属の光熱変換の相乗効果が、強力な抗腫瘍作用をもたらすことを明確に示しています。
優れた安全性の確認
細胞毒性試験:マウス大腸がん細胞(Colon26)およびヒト正常線維芽細胞(TIG103)において、ナノ複合体投与24時間後もミトコンドリア活性を指標とした細胞生存率に低下はなく、細胞毒性がないことを確認しました。
生体適合性試験:マウス静脈内投与後の血液検査(1週間)および体重測定(約1ヵ月)において、生体への悪影響は極めて軽微であることが判明しました。
【研究の意義と今後の展望】
本研究成果は、開発したナノ複合体が次世代がん診断・免疫療法の基盤技術となり得ることを実証するものです。さらに、ナノテクノロジー、光学、免疫学の学際的融合による材料設計の新たな技術基盤として、幅広い研究領域への貢献が期待されます。
今後は、他のがん種への適用拡大や臨床応用に向けた更なる安全性・有効性検証を進め、患者さんにより優しく効果的ながん治療法の実現を目指します。
【掲載誌情報】
本成果は、材料科学系トップジャーナル「Advanced Composites and Hybrid Materials」誌(Springer Nature社発行)に9月19日(現地時間)に掲載されました。
【研究支援】
本研究は、文部科学省科研費 基盤研究(A)(23H00551)、同 挑戦的研究(開拓)(22K18440、25K21827)、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)大学発新産業創出基金事業 スタートアップ・エコシステム共創プログラム(JPMJSF2318)、本学超越バイオメディカルDX研究拠点ならびに本学生体機能・感覚研究センターの支援のもと行われたものです。
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Composites and Hybrid Materials |
| 論文題目 | Bacterial-adjuvant liquid metal nanocomposites for synergistic photothermal immunotherapy |
| 著者 | Nina Sang, Seigo Iwata, Yun Qi, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年9月19日にオンライン版に掲載 |
| DOI | /10.1007/s42114-025-01434-7 |
【用語説明】
室温以下あるいは室温付近で液体状態を示す金属のこと。例えば、水銀(融点マイナス約39℃)、ガリウム(融点約30℃)、ガリウム-インジウム合金(融点約15℃)がある。
糖から乳酸を生成する性質を有する細菌の総称。本研究で用いた乳酸菌は都研究室にて腫瘍内から単離したものである。
肝機能検査に用いられる緑色色素のこと。近赤外レーザー光を照射すると近赤外蛍光と熱を発することができる。
100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみ、がん組織に到達して患部に集積させることが可能である。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)という。
レーザーとは、光を増幅して放射するレーザー装置、またはその光のことである。レーザー光は指向性や収束性に優れており、発生する光の波長を一定に保つことができる。とくに700~1100 nmの近赤外領域の波長の光は生体透過性が高いことが知られている。
ポリエチレングリコールとリンを含有する脂質(脂肪)が結合した化学物質。脂溶性の薬剤を可溶化させる効果があり、ドラッグデリバリーシステムに良く利用される化合物の一つ。
令和7年9月25日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/09/25-1.html









