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からだの中のコミュニケーションツール・糖鎖に挑む
分子糖鎖科学研究室 Laboratory on Molecular Glycoscience
准教授:山口 拓実(YAMAGUCHI Takumi)
E-mail:
[研究分野]
糖質科学、有機化学、生体機能関連化学、超分子化学、生物物理学
[キーワード]
糖鎖、分子認識、生命分子科学
研究を始めるのに必要な知識・能力
化学も生物も興味がある、という幅広い好奇心。新しい研究分野を創ることへの意欲。有機化学や物理化学、生化学などを扱いますが、その知識・技術は研究を通して身につけていくことができます。
この研究で身につく能力
当研究室が主な研究対象とする糖鎖は、創薬や医療のターゲットとして大きな注目を集めています。ところが、その取り扱いの難しさから、糖鎖に向き合った研究は多くはありません。既存のやり方にとらわれず、どうしたら問題を解決できるのか?自由な発想と論理的な思考によってプロジェクトを推進する力を身につけます。また、有機合成化学を中心に、分析化学やバイオテクノロジーなどの知識・技術を習得することができます。
【就職先企業・職種】 化学・材料⼯学系企業
研究内容
糖鎖 第3の生命分子鎖
糖鎖は、タンパク質・核酸とならぶ第3の生命鎖ともよばれ、私たちの生命活動の様々な場面で重要な働きをしています。例えば、糖鎖は細胞同士の接着をはじめ、生体内でのコミュニケーションにとって不可欠な役割を担っています。その一方で、糖鎖は、インフルエンザのようなウイルスの感染、がんの転移、さらにアルツハイマー病の発症にも深く関わっていることがわかりつつあります。また、バイオ医薬品の多くには糖鎖が関与しており、糖鎖は医薬品の特性に重要な因子としても注目を集めています。
糖鎖研究について
このように糖鎖は、創薬や医療のターゲットとして脚光をあびています。しかし、糖鎖の重要性が広く認識されてきたにもかかわらず、糖鎖そのものに対する研究はまだまだ発展途上です。例えば、多くのタンパク質のかたち(立体構造)が次々と明らかになってきているのに対し、糖鎖の3次元構造はほとんど未解明であるばかりでなく、アプローチ法すら十分に確立されていません。
糖鎖を知る 糖鎖を使う
私たちは化学的な手法を基盤にした多角的な実験を展開し、糖鎖研究に挑んでいます。糖鎖に構造情報取得のための化学プローブを導入することで、分子分光法による計測と分子シミュレーションを活用した立体構造解析を可能とし、水中で揺らめく糖鎖の姿を描き出すことに成功しました。さらに、細胞表面を覆う糖鎖を模倣したモデル化合物の合成や、糖鎖を応用した細胞機能の制御にも挑戦しています。

図1.糖鎖の3次元構造
化学と生物学の融合 その先を目指して
ライフサイエンス全体でみても、糖鎖をいかに取扱うかは今後の大きな課題となってきています。化学と生物学の融合による糖鎖研究を進展させることを通して、新たなサイエンスの地平を切り拓き、社会に貢献していきたいと考えています。
糖鎖は柔軟な構造をもち、水中で絶えず揺らいでいます。糖鎖と生体分子の相互作用は、とてもダイナミックな過程で進行します。図は、細胞の中でタンパク質の運命決定に関わる糖鎖の化学構造と立体構造モデルです。実験とコンピュータシミュレーションを組み合わせ、その姿を明らかにすることができました。
主な研究業績
- Comprehensive characterization of oligosaccharide conformational ensembles with conformer classification by free-energy landscape via reproductive kernel Hilbert space, T. Watanabe, H. Yagi, S. Yanaka, T. Yamaguchi, K. Kato, Phys. Chem. Chem. Phys., 23, 9753–9760, 2021.
- Experimental and computational characterization of dynamic biomolecular interaction systems involving glycolipid glycans, K. Kato, T. Yamaguchi, M. Yagi-Utsumi, Glycoconj. J. 39, 219–228, 2022.
- NMR analyses of carbohydrate–water and water–water interactions in water/DMSO mixed solvents, highlighting various hydration behaviors of monosaccharides glucose, galactose and mannose, H. Tatsuoka and T. Yamaguchi, Bull. Chem. Soc. Jpn., 96, 168-174, 2023.
使用装置
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置
高速液体クロマトグラフィ
質量分析計
大規模計算機
研究室の指導方針
卒業研究の際、自分で合成した分子の完成をはじめて確認したときのドキッとした感覚は今でも覚えています。何かを新しくつくることへの意欲を大切にしたいと思います。また、実験データやアイデアについて研究室の仲間と相談することや、学会で研究成果を発表し議論することなど、研究を通したコミュニケーション能力の向上を重視します。これだけはゆずれない!という自分の幹を太く育てながら、広く科学を学んでいきます。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/t-yamaguchi/
人工細胞膜の形や動きを探求する
人工細胞膜の形や動きを探求する
生体ソフトマター物理研究室
Laboratory on Biological and Soft Matter Physics
准教授:濵田 勉(HAMADA Tsutomu)
E-mail:
[研究分野]
ソフトマター物理、生物物理
[キーワード]
ソフトマター、人工細胞、生体膜、リポソーム、相分離、分子ロボティクス
研究を始めるのに必要な知識・能力
リポソームの実験に興味を持って楽しく取り組めること、物理・化学の基本的な知識があることが望ましいです。
この研究で身につく能力
- 人工細胞膜の実験技術
- ソフトマターの物理化学に関する知識
- 光学顕微鏡を主とする分析装置の取り扱い技術
- 英語の学術論文を読み書きする力
- 学会発表や修士・博士論文などで成果を表現する力
【就職先企業・職種】 化粧品、食品、化学、機械、バイオ研究開発など
研究内容
両親媒性ソフトマターである脂質分子は、自己集合して膜を形成します。脂質膜は、2次元膜面内での相分離や、3次元空間でのベシクル変形などの多様な物理現象を示し、その構造は弾性エネルギーにより支配されます。生体細胞は、この脂質膜を器・界面として利用しています。ミトコンドリア・小胞体のような複雑な構造体を形成したり、膜の融合・分裂などのダイナミックな動きが物質輸送を行っています。また、脂質膜小胞は、ドラッグデリバリーや化粧品などの材料としての応用開発も進められています。
私たちは、ソフトマター物理学的な視点から、細胞サイズの人工膜小胞(リポソーム)をデザインします。分子が集まることで創発する膜の秩序状態やダイナミクスに注目し、特に相分離・相転移などの物理現象が関連する膜の動的な構造や機能の研究を進めています。多様な膜現象を支配する物理化学法則の解明や新奇現象の発見を目指し、膜の世界を探求します。
1.膜の動態コントロール
光応答性分子を膜に導入することで、膜の融合、相分離の生成・消滅、小胞の開閉(細胞のオートファジーに類似した動き)、膜の出芽(細胞のエンドサイト-シスに類似した動き)を光で制御できることを発見しています。ナノメートル領域の膜分子の反応を、マイクロメートル領域の膜ダイナミクスに変換する機能システムを、膜の物性に基づき設計します。
2.膜の相分離現象
生体細胞膜を模倣した不均一な膜表面(相分離構造)を人工的に作り出し、不均一パターンを動的に制御する因子や法則姓を明らかにします。これまでに、分子の電荷による影響や、膜曲率との関連、コロイドやDNA等のゲスト分子との相互作用について明らかにしています。
3.膜の力学応答
物理的刺激に対する膜ダイナミクスの研究を行っています。これまでに、シアストレスや浸透圧によって膜面の相分離構造・パターンが変化することを発見しています。刺激の強さ、温度、膜の分子組成などに依存した、膜の応答ダイナミクスの体系化を進めています。
主な研究業績
- "Photo-induced fusion of lipid bilayer membranes" Y. Suzuki, et al., Langmuir, 33, 2671 (2017).
- "Domain dynamics of phase-separated lipid membranes under shear flow" T. Hamada et al., Soft Matter, 18, 9069 (2022).
- "人工細胞膜のダイナミクス解析と構造制御" 濵田勉, 応用物理, 86, 875 (2017).
使用装置
画像解析システム
蛍光・位相差顕微鏡
研究室の指導方針
私たちは、人工細胞膜の新奇現象を発見し、膜の新たな可能性を表現することで、膜系が示す物理現象の原理究明を目的に研究をしています。研究活動を通して、基礎知識を活用し課題を解決する能力を養い、好奇心を持ち自ら調べ学ぶことの楽しさを経験してもらいたく思います。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/hamada
電磁波と原子核でナノ空間を視(み)て、制御する
電磁波と原子核でナノ空間を視(み)て、制御する
固体ナノ化学研究室 Laboratory on Solid-State Nanochemistry
教授:後藤 和馬(GOTOH Kazuma)
E-mail:
[研究分野]
物理化学、無機材料化学
[キーワード]
核磁気共鳴(NMR)、炭素材料、二次電池(リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、次世代電池)、その場分析
研究を始めるのに必要な知識・能力
化学の基礎知識があれば研究をすみやかに始められますが、必要なことは学ぶという意欲さえあれば知識の有無は問題ありません。研究を通して自分の成長(能力的&人間的)を望み、新しいことに取り組む意思があれば大丈夫です。
この研究で身につく能力
ものづくりに始まり、測定機器による分析、得られた実験結果・測定結果の考察までを行うので、無機材料を中心とした材料合成の実験技術、電池作製および評価の技術、NMRをはじめとする各種機器分析の技術など幅広い技術が身につきます。また、研究室でのセミナーや学会発表、海外研究グループとの国際交流を通してプレゼンテーション能力、英語力なども磨かれます。しかし一番大事なことは、得られた実験・測定結果から「物質の中で何が起きているか」を総合的にとらえ考察する能力や、課題を解決し研究をまとめるための論理的な思考力など、AIにとって代わられることのない「人間」としての考える力であり、これを特に重視しています。社会に出て長くずっと第一線で活躍できる能力を持った人になってもらいたいと考えています。
【就職先企業・職種】 化学・材料メーカー、電機・電池・自動車および関連メーカー、分析機器メーカー、公設試験研究機関、教員
研究内容
ナノサイズの空間や表面などの構造、およびミクロな環境を解明することをテーマとして、細孔物質(物質の中に多数の小さな穴=細孔をもった固体材料)の内部空間や、黒鉛などの層状化合物の層間に吸蔵された分子やイオンの状態、動的挙動、内部空間の表面状態などを、核磁気共鳴(NMR)法を中心に様々な方法で研究しています。内部空間への分子やイオンの導入(インターカレーション)は電池電極反応とも密接な関連があることから、特にリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池や今後実用化が期待される次世代電池など、各種二次電池の電極材料の研究を積極的に進めています。
【固体NMR開発と二次電池電極の状態分析】


電池のリアルタイムNMR解析(左上)*),金属リチウム析出イメージ(右上)2.
非晶質炭素の充電,過充電挙動モデル(下)2.
*) K.Gotoh et al., Carbon (2014).
・固体材料についてのNMRは、固体物質中の局所構造やダイナミクスの解析に極めて有効な分析手法です。特にナノ空間の構造や環境を調べる際には、吸着された物質中の原子やイオンを「プローブ(探針)」として利用し直接的に内部環境を調べることができます。よって、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池ではそれぞれリチウム、ナトリウムのNMR共鳴信号を解析することで、電池内部の微小な状態変化を検出できます。軽元素であるリチウムやナトリウムは電子顕微鏡やX線分光など他の分析手段では直接観測が非常に難しいため、NMRでリチウムやナトリウムなど電荷を担持する重要な核種の状態を観測することが、イオンの吸脱着メカニズム、すなわち電池の充放電メカニズムの解明に大きく役立ちます。
・最新のリチウムイオン電池や次世代電池であるナトリウムイオン電池、全固体電池などの電極内に吸蔵されたリチウム、ナトリウムの状態を解明しています。充放電により刻々と変化する内部環境をリアルタイムで観測するためには、電池の「その場観測(オペランド解析)」が必須となるため、電池観測のための高感度オペランドNMR法の開発を積極的に進めています。本手法により電池が過充電された際の金属析出メカニズムも解明できるため、安全性評価にも貢献できます。
・充放電メカニズムの解析から、新たな材料の設計指針を立て、それに基づいた負極材料の開発を行っています。炭素材料は以前から負極に用いられてきましたが、次世代電池用電極材料としても期待できることから、新たな炭素材料の開発を進めています。
主な研究業績
- Dynamic nuclear polarization -nuclear magnetic resonance for analyzing surface functional groups on carbonaceous materials. H. Ando, K. Suzuki, H. Kaji, T. Kambe, Y. Nishina, C. Nakano, K. Gotoh*, Carbon, 206, 84 (2023).
- Mechanisms for overcharging of carbon electrodes in lithium-ion/sodium-ion batteries analysed by operando solid-state NMR. K. Gotoh*, T. Yamakami, I. Nishimura, H. Kometani, H. Ando, K. Hashi, T. Shimizu and H. Ishida, J. Mater. Chem. A 8, 14472 (2020).
- Combination of solid state NMR and DFT calculation to elucidate the state of sodium in hard carbon electrodes. R. Morita, K. Gotoh*, M. Fukunishi, K. Kubota, S. Komaba, T. Yumura, N. Nishimura, K. Deguchi, S. Ohki, T. Shimizu and H. Ishida, J. Mater. Chem. A 4, 13183 (2016).
使用装置
Bruker AVANCE NEO 400MHz NMR(固体測定専用)拡散測定システム付, Bruker AVANCE Ⅲ500MHz-NMR(固体対応)オペランド測定用特殊プローブ付
X線回折,X線光電子分光(XPS),熱分析,電子顕微鏡,ガス吸脱着装置,電気化学測定装置(充放電試験装置等),電池作製設備(グローブボックス等),高温熱処理炉(2200℃)
研究室の指導方針
社会人としてどのような分野でも力を発揮できる基礎力と、専門家として活躍できる知識経験の、両方を持った人になってもらうことを目的として指導します。定期的な研究室でのセミナーや報告会がありますが、実験については装置の都合により個々のスケジュールがかなり異なってくるので、自分自身で研究計画を立案し、実行してもらうことになります。国内外の学会での発表のほか、海外研究グループや企業と進めている多彩な共同研究にも積極的に参加してもらい、国際的な幅広い視野を持てる機会を提供したいと考えています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/nmcenter/labs/gotoh-www/
ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで
ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで
ナノ粒子工学研究室 Laboratory on Nanoparticle Engineering
教授:前之園 信也(MAENOSONO Shinya)
E-mail:
[研究分野]
ナノ材料化学、ナノ材料物性、コロイド化学
[キーワード]
半導体ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、金属ナノ粒子、バイオ医療、エネルギー変換、センシング
研究を始めるのに必要な知識・能力
基礎学力、コミュニケーション能力、知的好奇心、柔軟な思考
この研究で身につく能力
修士課程では、(1) ナノ材料の化学合成技術、(2) 各種分析機器(透過型電子顕微鏡、X 線回折装置、X 線光電子分光、組成分析装置など)の操作スキル、(3) 基礎学問の知識(無機材料化学、結晶学、コロイド化学、固体物性など)、(4) ナノ材料に関する先端専門知識を身につけて頂きます。博士課程では、1-4に加え、英語によるプレゼンテーション能力、英語論文執筆能力、研究課題設定能力、共同研究遂行能力など、研究者に必要なあらゆる能力を身につけて頂きます。
【就職先企業・職種】 製造業(化学、精密機器、電気機器、ガラス・土石製品、繊維製品、その他製品など)
研究内容
物質をナノメートルサイズまで細かくしていくと、種々の物性がサイズに依存する新奇な材料となります。このような新奇材料を一般に「ナノ材料」と呼びますが、我々はその中でも特に「ナノ粒子」に興味を持ち、ナノ粒子に関する基礎から応用に亘る研究を行っています。半導体、磁性体、金属などのナノ粒子を化学合成し、その表面をさまざまな配位子によって機能化し、さらにそれらナノ粒子の高次構造を制御することによって、バイオ・医療分野あるいは環境・エネルギー分野で新たな応用を開拓することを目指しています。

1.磁性体ナノ粒子の合成とバイオ医療分野への応用
超常磁性体のナノ粒子を独自の方法によって合成し、その表面を自在に修飾することによって、バイオ医療分野での様々な応用の道を開拓しています。具体的には、細胞やタンパクの磁気分離、MRI 造影剤、ドラッグデリバリーシステムなどのナノ磁気医療に応用するための技術開発を行っています。
2.半導体ナノ粒子の合成とエネルギー変換素子への応用
狭ギャップ化合物半導体から広ギャップ酸化物半導体のナノ粒子まで、幅広い種類の半導体ナノ粒子を化学合成し、それらを用いて低炭素社会の実現を志向したナノ構造エネルギー変換素子の創製に関する研究を行っています。特に、ナノ構造熱電素子や光機能素子などに興味を持っています。
3.金属ナノ粒子を用いたバイオセンシング技術の開発
近年、金ナノ粒子を用いた様々なバイオセンサが開発され、簡便かつ迅速に DNA 配列検出やタンパク質機能解析などが可能となってきています。我々は、ナノ粒子プローブを用いたバイオセンシング技術の更なる高度化を目指し、異種金属元素からなるヘテロ構造ナノ粒子や合金ナノ粒子のプローブの開発を進めています。
主な研究業績
- T. S. Le, M. Takahashi, N. Isozumi, A. Miyazato, Y. Hiratsuka, K. Matsumura, T. Taguchi, and S. Maenosono, “Quick and Mild Isolation of Intact Lysosomes Using Magnetic-Plasmonic Hybrid Nanoparticles”, ACS Nano 16 (2022) 885
- J. Hao, B. Liu, S. Maenosono, and J. Yang, “One-Pot Synthesis of Au-M@SiO2 (M = Rh, Pd, Ir, Pt) Core-Shell Nanoparticles as Highly Efficient Catalysts for the Reduction of 4-Nitrophenol”, Sci. Rep. 12 (2022) 7615
- T. S. Le, S. He, M. Takahashi, Y. Enomoto, Y. Matsumura, and S. Maenosono, “Enhancing the Sensitivity of Lateral Flow Immunoassay by Magnetic Enrichment Using Multifunctional Nanocomposite Probes”, Langmuir 37 (2021) 6566
使用装置
透過型電子顕微鏡 (TEM) 超伝導量子干渉磁束計 (SQUID)
過型電子顕微鏡 (STEM) 動的光散乱測定装置 (DLS)
X 線回折装置 (XRD) 共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM)
X 線光電子分光装置 (XPS) 核磁気共鳴装置 (NMR)
研究室の指導方針
就職希望者には、基礎・専門知識はもちろん、コミュニケーション能力、英会話力、論理的思考力および柔軟な対応力を涵養し、不確実性の時代を生き抜くことができる人材となってもらうための指導を行います。企業経験を活かした実践的就職指導も行っています。
博士後期課程への進学希望者については、先端的かつ国際的な研究環境を提供することによって、将来的に大学教員や企業研究者として活躍できるグローバル研究人材を育成します。
[Website] URL:https://www.jaist.ac.jp/~shinya/
動的核偏極磁気共鳴法による炭素材料表面の微細構造の解析に世界で初めて成功 -次世代の炭素材料の開発と利用促進に貢献-
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| 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 国立大学法人京都大学 国立大学法人岡山大学 |
動的核偏極磁気共鳴法による炭素材料表面の微細構造の解析に世界で初めて成功
-次世代の炭素材料の開発と利用促進に貢献-
ポイント
- 次世代の炭素材料として、グラフェンや薄膜炭素といった材料が注目されている。炭素材料は、化学反応の触媒や燃料電池等の電極触媒としてだけでなく、ドラッグデリバリーシステムなどのバイオマテリアル分野を含め、多種多様な分野での応用が期待されている。
- NMR(核磁気共鳴分光法)による炭素材料の表面構造分析の感度を改善するため、信号強度増幅剤を用いた動的核偏極磁気共鳴法により、これまで同手法では不可能と考えられていた炭素表面の微量なメチル基、水酸基などの表面官能基の検出に成功した。
- これにより、炭素材料の性質に大きな影響を及ぼす表面構造の微細な違いが検出可能となった。
- 今後の炭素材料の表面構造制御ならびに様々な用途に応じた炭素材料の開発とその炭素材料の利用促進に貢献できる。
| 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・寺野稔、石川県能美市)ナノマテリアルテクノロジーセンターの後藤和馬教授、岡山大学大学院自然科学研究科の安東映香大学院生は、京都大学化学研究所の梶弘典教授、鈴木克明助教ならびに岡山大学学術研究院自然科学学域の神戸高志准教授、異分野融合先端研究コアの仁科勇太研究教授らと共同で、動的核偏極磁気共鳴法(DNP-NMR)による炭素材料の微細表面構造解析に成功した。これまで不可能とされていたDNP-NMR法による炭素表面のメチル基や水酸基などの表面官能基の信号の大幅な増幅に成功し、炭素材料の性質に大きな影響をおよぼす微量のメチル基、水酸基の観測に成功した。今後の炭素材料の表面構造制御ならびに様々な用途に応じた炭素材料の開発とその炭素材料の利用促進に貢献できる。 |
【研究の背景】
次世代炭素材料の一つとしてグラフェンや薄膜炭素が注目されており、その応用に関して数多くの研究が行われています。グラフェンや薄膜炭素材料の作製にはいくつかの方法があり、黒鉛を化学的に酸化して炭素層を剥離することで、酸化グラフェンを得る方法などが知られています。この酸化グラフェンは触媒となる金属ナノ粒子を担持する[用語解説]ことや、ポリマーやカーボンナノチューブなどと複合化ができるため、化学反応の触媒、燃料電池等の電極触媒としてだけでなく、ドラッグデリバリーシステムなどのバイオマテリアル分野を含め、多種多様な分野での応用が期待されています。
このような炭素材料の表面には数多くの欠陥構造があり、そこには水酸基やカルボキシル基、エポキシ基、メチル基などの表面官能基が存在していることが知られています。炭素材料の性質はこの表面官能基の種類や結合量により、大きく変わることも知られています。よって、この表面官能基の状態を把握し、制御することが材料開発において重要となります。従来、炭素材料の表面官能基についてはX線光電子分光法(XPS)や昇温脱離法(TPD)といった分析手段により解析されてきましたが、これらの方法では分析の感度は良いものの、精度に課題がありました。一方、本研究で用いた核磁気共鳴分光法(NMR)[用語解説]では、官能基の種類の分析は高精度で行えるものの、従来の方法では検出感度が低いという問題があり、高精度かつ高感度な炭素材料の表面構造の分析手段が望まれていました。
【研究の内容】
本研究では、NMR による分析の感度を改善するために、近年溶液中の分子の水素(1H)原子や炭素(13C)原子を高感度で観測する技術として注目されている、動的核偏極(DNP)[用語解説]という手法を用いた分析を試みました。NMRは、磁場中に置かれた原子核が特定の周波数の電磁波(ラジオ波)を吸収する現象を利用することによって、対象原子の状態を観測する分析手段で、化学物質の同定や病院のMRI検査などに広く用いられています。DNP-NMRは、測定したい試料にマイクロ波(MW)を同時に照射することで、試料中に含まれる信号強度増幅に用いるラジカル分子[用語解説]の磁化を原子核に移し、NMRの信号強度を最大で200倍以上に増幅させる画期的手法です。しかし、炭素材料はマイクロ波を吸収し効率的な磁化移動を阻害する上に、マイクロ波吸収による温度上昇も生じることからDNP効果が減少するという問題があるため、これまでDNP-NMRを用いた炭素材料の信号強度増幅は不可能とされてきました。
これに対し、本研究では、DNPによる信号強度増幅を可能にするため、DNP測定で用いられる信号強度増幅用のラジカルと溶媒の組み合わせを、従来のTEKPol/有機溶媒系からAMUPol/水系に変更し、水酸基やカルボキシル基の存在により親水性が増していると考えられる炭素表面へラジカル分子の接近を可能とすることで、DNPによる信号強度増幅を実現しました。また、炭素材料自体がその欠陥構造内に所有している内在ラジカルを用いたDNP信号強度増幅現象を発現することも観測しました。この手法により、従来の一般的NMR測定ではほとんど観測できなかった酸化グラフェン末端のメチル基を、1H-13C CP/MAS 固体NMR法[用語解説]にて明確に観測することに成功しました。このとき、信号強度増幅は10倍以上となります。また、スクロースを焼成して作製した無定形炭素材料[用語解説] においても、水酸基の信号強度の10倍以上の増幅を達成しました。
本研究により、今後DNP-NMRを用いて炭素材料の微細表面構造の解析が進むことが期待されます。DNP-NMRを用い、炭素材料の表面構造に残存する微少量の表面官能基の存在を明らかにすることで、それぞれの炭素材料の表面状態の違いを解明することができ、これにより、各種触媒元素の担持への適合性などを知ることができるようになると期待されます。適合性が判明することによって、多種多様な分野の各種用途に最適化した薄膜炭素材料の開発に大きく貢献できることが期待されます。
本研究成果は、2月14日にElsevier社が発行する学術雑誌「Carbon」のオンライン版に掲載されました。また、3月25日に出版予定の当該誌206号において、表紙(front cover)に採択されることになりました。
【論文情報】
| 論文題目 | Dynamic nuclear polarization - nuclear magnetic resonance for analyzing surface functional groups on carbonaceous materials |
| 雑誌名 | Carbon |
| 著者 | Hideka Ando, Katsuaki Suzuki, Hironori Kaji, Takashi Kambe, Yuta Nishina, Chiyu Nakano, Kazuma Gotoh |
| WEB掲載日 | 2023年2月14日 |
| 出版予定日 | 2023年3月25日 |
| DOI | 10.1016/j.carbon.2023.02.010 |

図 DNP-NMRによる観測(信号強度増幅は10倍以上となる。)
【用語説明】
担持:他の物質を固定する土台となる物質のことを担体といい、担持は、その土台に金属などの物質を付着させること。金属をグラフェン上に担持した触媒は、水酸化触媒や酸化触媒として工業的にも利用されている。
NMR (Nuclear Magnetic Resonance) :核磁気共鳴分光法。試料を磁場中に置き、電磁波を照射すると、元素ごとに特定の周波数を吸収する「共鳴」現象が生じる。周波数を観測することで水酸基、カルボキシル基、メチル基などを分別して検出が可能なため、有機化合物の分析などに広く用いられている。
DNP (Dynamic Nuclear Polarization):動的核偏極。NMR測定時にマイクロ波を照射することで測定核近傍のラジカルの磁化を測定対象原子核に移動させる手法。NMRでの共鳴信号検出の際のエネルギー準位間の電子の占有数差を大きく変化させることにより、通常のNMR信号に比べて数倍から最大で200倍以上の信号強度を得ることができる。
ラジカル:不対電子を持つ原子や分子。共有電子対を形成していないため、極めて不安定かつ反応性が高い状態である。
1H-13C CP/MAS 固体NMR:体交差分極(CP)マジック角回転(MAS)NMR法。1H元素の磁化を13C元素に特定条件下で移動させ、さらに試料全体を数kHz以上の超高速回転で回転させることにより、炭素のNMR信号を高感度、高精度で検出する実験手法。
無定形炭素材料:黒鉛やダイヤモンド、カーボンナノチューブなどのような規則的構造をもつ炭素材料とは異なり、結晶構造を持たない非結晶性炭素。但し、非結晶性ではあるが完全に規則構造が無い訳ではなく、ある程度炭素の層状構造や内部細孔などが存在することが知られている。無定形炭素の一種である難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)はリチウムイオン電池・ナトリウムイオン電池の負極として用いられている。
令和5年3月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/03/07-1.htmlナノテクノロジープラットフォーム公開講座「材料の構造解析のためのTEMの基礎と実習」参加者募集
本学ナノマテリアルテクノロジーセンター主催で「材料の構造解析のためのTEMの基礎と実習」と題して公開講座を開催いたします。
ただいま受講者を募集しております。皆様のご参加をお待ちしております。
| 日 時 | 令和4年3月3日(木)10:00~17:00 |
| 場 所 | 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 2F会議室(下記フロアマップのC1-26) キャンパスマップ フロアマップ |
| 講 師 | 大島 義文:マテリアルサイエンス系・教授(応用物理学領域) 麻生 浩平:マテリアルサイエンス系・助教(応用物理学領域) 東嶺 孝一:ナノマテリアルテクノロジーセンター・技術専門員 |
| 内 容 | ナノマテリアルテクノロジーセンターが中心となってすすめている文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業の企画として毎年1回公開講座を実施しています。令和3年度は透過型電子顕微鏡(TEM)をトピックスとして選び、透過型電子顕微鏡の原理、正しい観察手法や正しいデータ解析方法などをわかりやすく解説します。 |
| 定 員 | 5名程度(先着順) |
| 参加対象者 | 企業・他大学・高専等の研究者・技術者 |
| 受講料 | 6,200 円(税込) |
| 申込方法 | 受講希望の方は、 ①氏名(ふりがな) ②勤務先・職名 ③受講の目的 ④本講座に期待すること ⑤書類送付先 ⑥電話番号 ⑦メールアドレス を明記の上、E-mail (宛先 nano-net@ml.jaist.ac.jp)またはFAX(ポスター2ページ目参照)でお申し込みください。 |
| 申込締切 | 令和4年2月17日(木)【定員に達し次第締切】 |
| 問合せ・ 申込み先 |
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事務局 橋本 〒923-1292 石川県能美市旭台1-1 TEL:0761-51-1449 FAX:0761-51-1455 E-mail:nano-net@ml.jaist.ac.jp |
ナノテクノロジープラットフォーム公開講座「質量分析とNMRを組み合わせた構造解析の実際」
本学ナノマテリアルテクノロジーセンター主催で「質量分析とNMRを組み合わせた構造解析の実際」と題して公開講座を開催いたします。
ただいま受講者を募集しております。皆様のご参加をお待ちしております。
| 日 時 | 令和3年3月19日(金)10:00~17:00 |
| 場 所 | 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 2F会議室(下記フロアマップのC1-26) キャンパスマップ フロアマップ |
| 講 師 | 大木 進野:ナノマテリアルテクノロジーセンター・教授(生命機能工学領域) 宮里 朗夫:ナノマテリアルテクノロジーセンター・主任技術職員 五十棲 規嘉:ナノマテリアルテクノロジーセンター・研究員 |
| 内 容 | 質量分析とNMRの最先端機器で「何が出来るか」、「何がわかるか」を広く知っていただくことを目的に、未知試料の測定と解析を行います。 |
| 定 員 | 5名程度(先着順) |
| 参加対象者 | 企業・他大学・高専等の研究者・技術者 |
| 受講料 | 6,200 円(税込) |
| 申込方法 | 受講希望の方は、 ①氏名(ふりがな) ②勤務先・職名 ③受講の目的 ④本講座に期待すること ⑤書類送付先 ⑥電話番号 ⑦メールアドレス を明記の上、E-mail (宛先 nano-net@ml.jaist.ac.jp)またはFAX(ポスター2ページ目参照)でお申し込みください。 |
| 申込締切 | 令和3年3月12日(金)【定員に達し次第締切】 |
| 問合せ・ 申込み先 |
北陸先端科学技術大学院大学 文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業 分子・物質合成プラットフォーム事務局 橋本 〒923-1292 石川県能美市旭台1-1 TEL:0761-51-1449 FAX:0761-51-1455 E-mail:nano-net@ml.jaist.ac.jp |
多糖膜が超らせん構造によって湿度変化に瞬間応答 -ナノスケールから再組織化-
多糖膜が超らせん構造によって湿度変化に瞬間応答
-ナノスケールから再組織化-
PRポイント
- ナノメートルスケールから階層的に再組織化されたマイクロファイバー
- 湿度変化に瞬間応答して曲がる天然高分子のフィルム
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)の先端科学技術研究科、環境・エネルギー領域の、博士後期課程大学院生ブッドプッド クリサラ、桶葭 興資准教授、岡島麻衣子研究員、金子 達雄教授らは、シアノバクテリア由来の多糖サクランを用いて、水中で自ら形成するマイクロファイバーが乾燥時に2次元蛇行構造、3次元らせん構造など高秩序化することを見出した。さらにこの構造を利用して、水蒸気をミリ秒レベルで瞬間感知して屈曲運動を示すフィルムの作製に成功した。天然由来の代表物質でもある多糖をナノメートルスケールから再組織化材料としたこととしても意義深い。光合成産物の多糖を先端材料化する試みは、持続可能な社会の構築に重要である。
多糖は分子認識や水分保持など、乾燥環境下で重要な役割を果たす。しかし、天然から抽出された多糖が潜在的に持つ自己組織化を活用することはこれまで困難であった。特に、セルロースナノファイバーなど分子構造を制御した透明素材などはできても、外界変化への応答材料には利用されてこなかった。一方で、我々の研究グループはこれまでに、シアノバクテリア由来の多糖サクランに関する研究を進め、超高分子量の物性やレアメタル回収能など様々な特性を持つ多糖であることを明らかにしてきた。本研究では、1)分子・ナノメートルスケールからマイクロファイバー形成の階層化、2)界面移動による秩序立った変形、3)その多糖膜の水蒸気駆動の運動について報告した。 用いた多糖サクランのユニークな特徴として、直径約1 µm、長さ 800 µm以上と他には類を見ない大きなマイクロファイバーを水中で自己集合的に形成する。今回、これが乾燥界面の移動によって蛇行構造やらせん構造に変形することを解明した。乾燥した多糖フィルムの内部では、このねじれた構造がバネ様運動を引き起こす。このメカニズムを利用して、水滴が接近した際、瞬時に屈曲する運動素子の開発に成功した(図)。 本成果は、科学雑誌「Small」誌に6/9(米国時間)オンライン版で公開された。なお、本研究は文部科学省科研費はじめ、旭硝子財団、積水化学工業、澁谷工業の支援のもと行われた。 |
<背景と経緯>
天然高分子など生体組織が水と共生して高効率なエネルギー変換を達成している事実に鑑みれば、持続可能な社会への移行に向けて学ぶべき構造と機能である。例えば、ソフトでウエットな高分子ハイドロゲルは人工軟骨や細胞足場など医用材料をはじめ、生体機能の超越が有望視されている。同時に、刺激応答性高分子を用いたケモメカニカルゲルや湿度応答する合成高分子フィルムなど、しなやかに運動するアクチュエータの研究も注目されてきた。これに対し、天然物質の多糖を再組織化させて先端材料とする研究は発展途上にある。
我々はこれまでに、シアノバクテリア由来の多糖サクランに関する研究を進め、超高分子量、レアメタル回収能など様々な特性を持つ天然高分子であることを明らかにしてきた。さらに直近の研究では、サクラン繊維が水中から乾燥される際に、空気と水の界面にならび一軸配向膜を形成することも見出している。
<今回の成果>
1.多糖サクランのマイクロファイバーの微細構造(図1)
用いた多糖サクランは、直径約1 µm、長さ 800 µm以上と他には類を見ない大きなマイクロファイバーを水中で自己集合的に形成する。このマイクロファイバーを電子顕微鏡で観察すると、直径約50 nmのナノファイバーが束となり、ねじれた構造をとっていることが分かった。これは、人工的に形を作ったわけではなく、多糖が潜在的に持つ自己集合によるものである。他の多糖やDNAやタンパク質の自己集合体と比較しても、驚異的に大きなサイズである。
2.乾燥界面の移動によってファイバーがしなやかに蛇行・らせんを描いて変形(図2)
今回、これが乾燥界面の移動によって蛇行構造やらせん構造に変形することを解明した。界面移動がゆっくりの場合、マイクロファイバーが一軸配向構造、もしくは蛇行構造を形成する。一方、界面移動が早い場合、3次元的な超らせん構造を形成する。1本のマイクロファイバーが蛇行構造をとった後に超らせん構造をとることから、界面がマイクロファイバーの変形に強く寄与していると考えられる。
3.多糖膜の水滴接近に伴う瞬間応答(図3)
乾燥した多糖膜の内部では、このねじれた構造がバネ様運動を引き起こす。このメカニズムを利用して、水滴が接近した際、瞬時に屈曲する運動素子の開発に成功した。時空間解析から、水滴が接近/離隔した際、曲った状態とフラットな状態を可逆的にミリ秒レベルで屈曲運動を示すことが分かる。このような瞬間応答は、湿度変化を膜中のねじれた構造が瞬時に水和/脱水和を大きな変化に増幅したためと考えられる。
<今後の展開>
天然多糖を再組織化することで、水蒸気駆動型の運動素子をはじめ、光、熱など外界からのエネルギーを変換するマテリアルの構築が期待される。多糖ファイバーに機能性分子を導入しておくことで、湿度だけでなく、光や温度の外部環境変化に応答するソフトアクチュエーターである。本研究の成果は、天然由来の代表物質でもある多糖をナノメートルスケールから再組織化材料としたこととしても意義深い。光合成産物の多糖を先端材料化する試みは、持続可能な社会に非常に重要である。
![]() マイクロファイバーはナノファイバーが束になってねじれた状態。 |
A![]() |
B![]() |
C 図2. 乾燥界面の移動によってまっすぐなファイバーが蛇行構造やらせん構造に変形A. 蛇行構造をとったマイクロファイバー。B. 界面移動による高次構造化。C. 1本のマイクロファイバーが蛇行構造やらせん構造をとった様子の顕微鏡画像。 |
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A ![]() |
B ![]() |
| 図3. 多糖膜の水滴接近に伴う瞬間応答 A. 多糖フィルムに水滴を接近させた際に示す屈曲運動と時空間解析。水滴が接近した際、ミリ秒レベルで屈曲運動を示す。 B. 屈曲変形の概念図。乾燥した多糖フィルムの内部にあるファイバーのねじれた構造がバネ様運動を引き起こし、高速な屈曲変形を示す。 |
【用語説明】(Wikipedia より)
※1自己組織化:
物質や個体が、系全体を俯瞰する能力を持たないのにも関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果として、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のことである。自発的秩序形成とも言う。
※2シアノバクテリア:
ラン藻細菌のこと。光合成によって酸素と多糖を生み出す。
※3多糖:
グリコシド結合によって単糖分子が多数重合した物質の総称である。デンプンなどのように構成単位となる単糖とは異なる性質を示すようになる。広義としては、単糖に対し、複数個(2分子以上)の単糖が結合した糖も含むこともある。
※4サクラン:
硫酸化多糖の一つで、シアノバクテリア日本固有種のスイゼンジノリ (学名:Aphanothece sacrum) から抽出され、重量平均分子量は2.0 x 107g/mol とみつもられている。
※5界面:
ある均一な液体や固体の相が他の均一な相と接している境界のことである。
【論文情報】
| 掲載誌 | Small (WILEY) |
| Vapor-sensitive materials from polysaccharide fibers with self-assembling twisted microstructures | |
| 著者 | Kulisara Budpud, Kosuke Okeyoshi, Maiko K. Okajima, Tatsuo Kaneko DOI: 10.1002/smll.202001993 |
| 掲載日 | 2020年6月9日(米国時間)にオンライン掲載 |
令和2年6月11日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2020/06/11-1.html「低密度ポリエチレン長鎖分岐の構造を明らかに」 -汎用ポリマーの高性能化に道-
「低密度ポリエチレン長鎖分岐の構造を明らかに」
-汎用ポリマーの高性能化に道-
ポイント
- ポリマーの物性に影響を及ぼす長鎖分岐の構造を世界で初めて直接計測
- ポリマーの合成・構造・物性の相関を解明し高性能化を実現する道を拓いた
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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科物質化学領域の篠原健一准教授と住友化学(株)先端材料開発研究所の柳澤正弘主任研究員は、ポリエチレンの長鎖分岐(LCB)の構造を液中高速原子間力顕微鏡(高速AFM)イメージング法によって世界で初めて明らかにした。
ポリマー材料の物性は高分子鎖の構造と強く相関しており、分岐構造を有する場合では分岐鎖長や分岐数などの微細構造によって材料物性は大きく変化する。しかしながら、高分子の構造が複雑であることと同時に分析法の限界から、とくにポリエチレンの長鎖分岐の微細構造は未解明であった。 今回篠原研究室と住友化学(株)の産学連携グループは、高圧法ポリエチレンのうちチューブラープロセスで製造された低密度ポリエチレン(LDPE)の高分子鎖の構造を高速AFMで1分子イメージングしたところ、低密度ポリエチレンの長鎖分岐の鎖長や分岐点間隔などの計測に成功した。その結果、162 nmの主鎖に3本のLCBが確認され、各LCBの長さは10, 31, 18 nmと計測された。また各LCBの位置は主鎖末端から33, 70, 78 nmにあった。 このようにポリマー鎖の構造を計測・数値化できた意義は大きく、これまで不明確であった重合反応条件と生成ポリマーの分子構造との関係、さらにポリマー材料物性とポリマー分子構造との関係を明確化する新しい研究開発手法が確立された。ポリマーの合成・分子構造・物性の相関を明らかにすることで、より高性能なポリマー材料の開発を実現する明確な分子設計指針を与える。 本成果は英国Scientific Reports誌(インパクトファクター 4.525)に7月5日(金)に公開された。 |

図(A)世界で初めて捉えたポリエチレンの長鎖分岐構造(AFM像)サイズ横278 nm、縦209 nm、高さ18 nm。(B)分子鎖長の計測結果。(C)ワイヤーモデル(赤色は主鎖、黒色は3本の各LCBを示す)。
<今後の展開>
今回開発された長鎖分岐構造の直接計測法を用いて、他のグレードのポリマーについても分岐鎖を直接計測することで、材料物性との相関関係をパラメータ化と同時に序列化する。これによって、ポリマー分岐構造と物性の分子レベルでの関係が体系化され、従来経験に頼っていた材料開発が効率化・加速化する。そして究極的には、望む特性の材料が製造できる「夢のオーダーメイド材料開発」が実現する。
<用語解説>
*1 ポリエチレン
世界で最も生産されているポリマー。略称はPE。エチレン(CH2=CH2)の重合反応によって得られるポリマー(高分子)。高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレンなど種々のPEが製造されている。容器や包装用フィルムをはじめ様々な用途があり、人工股関節に使用される耐摩耗性のPEもある。
*2 長鎖分岐
炭素数が6以上からなる分子鎖を言う。一方、炭素数6未満の分子鎖は短鎖分岐と言う。長鎖分岐の長さや本数などの違いでポリマー材料の性質が大きく左右される重要な高分子の構造。
*3 高速AFM
一秒間に数枚以上の顕微鏡像を取得出来る原子間力顕微鏡(AFM)。ナノメートルスケールの空間分解能を有するのでポリマー鎖一本の構造やさらにその動きもリアルタイムで撮影できる最先端の顕微鏡。
*4 チューブラープロセス
管型(チューブラー)の重合反応器を用いる製造方法。PEの製造においてはフィルム用途に適する性質のポリマーを与える。
*5 低密度ポリエチレン
略称はLDPE。原料のエチレンを触媒と共に高温・高圧条件下で重合して得られるPE。単純な直鎖状高分子とはならず分子中に幾つもの短鎖分岐と長鎖分岐を有する。
<論文>
| 掲載誌 | Scientific Reports |
| 論文題目 | Direct Observation of Long-Chain Branches in a Low-Density Polyethylene |
| 著者 | Ken-ichi Shinohara, Masahiro Yanagisawa, Yuu Makida |
| https://www.nature.com/articles/s41598-019-46035-9 |
令和元年7月9日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/07/09-1.htmlシリセンと六方晶窒化ホウ素の積層構造を実現 -シリセンの性質に影響しない絶縁性酸化防止膜の実証-
シリセンと六方晶窒化ホウ素の積層構造を実現
-シリセンの性質に影響しない絶縁性酸化防止膜の実証-
ポイント
- シリセンはケイ素版グラフェンと言える原子層物質。このシリセンと絶縁性の原子層物質である六方晶窒化ホウ素の積層構造を二ホウ化物薄膜上で実現。
- 世界で初めて、絶縁性の六方晶窒化ホウ素シートにより、シリセンの構造や電子状態に影響を及ぼすことなく、大気中での酸化防止に成功した。
|
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科応用物理学領域のアントワーヌ・フロランス講師、高村 由起子准教授らは、トゥウェンテ大学、ウォロンゴン大学と共同で、シリセンと六方晶窒化ホウ素(hBN)の積層構造を二ホウ化ジルコニウム薄膜上に形成し、シリセンの構造と電子状態を乱さずに、大気中で一時間以上の酸化防止が可能であることを世界で初めて実証しました。 |

<今後の展開>
六方晶窒化ホウ素(hBN)がシリセンの電子的特性に影響せずに良好な界面を形成することが実験的に明らかとなり、加えて、一原子層厚みにも関わらず、短時間とはいえ大気中での酸化防止効果があることが実証されました。今後は、このhBNシート上にさらに厚く保護層を形成することでシリセンを大気中で安定的に取り扱うことが可能になり、従来困難であった大気中での評価や加工、ひいてはデバイス作製へと発展することが期待できます。
<論文>
"Van der Waals integration of silicene and hexagonal boron nitride" (シリセンと六方晶窒化ホウ素のファン・デル・ワールス積層)
DOI: https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2053-1583/ab0a29/
F. B. Wiggers, A. Fleurence, K. Aoyagi, T. Yonezawa, Y. Yamada-Takamura, H. Feng, J. Zhuang, Y. Du, A.Y. Kovalgin and M. P. de Jong
2D Materials 6, 035001 (2019).
平成31年4月8日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2019/04/08-1.html【募集終了】平成30年度 ナノテクノロジープラットフォーム公開講座「材料の構造解析のための透過型電子顕微鏡(TEM)の基礎と実習」
本学ナノマテリアルテクノロジーセンター主催で透過型電子顕微鏡(TEM)の技術の基礎を学び、実習を行うことのできる公開講座を開催いたします。
ただいま受講者を募集しております。皆様のご参加をお待ちしております。
| 日 時 | 平成31年3月8日(金)10:00~17:00 |
| 場 所 | 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 2F会議室(石川県能美市旭台1-1) URL:https://www.jaist.ac.jp/top/campusmap/ |
| テーマ | 材料の構造解析のための透過型電子顕微鏡(TEM)の基礎と実習 |
| 講 師 | マテリアルサイエンス系 応用物理学領域 教授 大島 義文 ナノマテリアルテクノロジーセンター 技術専門員 東嶺 孝一 |
| 内 容 | 透過型電子顕微鏡は、金属材料、半導体デバイス、セラミックなどの欠陥や界面といった局所的な構造や組成を知るうえで欠かせない装置です。金属材料、半導体デバイス、セラミックの特性が欠陥や界面で決まることが多いことを考えると、この装置をよく知っておく必要があります。 本講座では、透過型電子顕微鏡の原理、正しい観察手法や正しいデータ解析方法などをわかりやすく解説します。デバイスや材料の研究開発に従事している多くの方に特にお勧めできる講座です。 |
| 定 員 | 5名(先着順) |
| 参加対象者 | 企業・他大学・高専等の研究者・技術者 |
| 受講料 | 6,200 円(税込) |
| 申込方法 | 受講希望の方は、 ①氏名(ふりがな) ②勤務先等・職名 ③受講の目的 ④本講座に期待すること ⑤書類送付先 ⑥電話番号 ⑦メールアドレス を明記の上、E-mail (宛先 nano-net@jaist.ac.jp)またはFAX(ポスター2ページ目参照)でお申し込みください。 |
| 申込締切 | 平成31年2月18日(月)まで【定員に達しましたので募集を締め切りました】 |
| 問合わせ先 ・申込み先 |
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター事務局 〒923-1292 石川県能美市旭台1-1 TEL:0761-51-1449 FAX:0761-51-1455 E-mail:nano-net@jaist.ac.jp |
銅スズ硫化物系ナノ粒子から環境に優しいナノ構造熱電材料を創製
銅スズ硫化物系ナノ粒子から環境に優しいナノ構造熱電材料を創製
ポイント
- 銅スズ硫化物系ナノ粒子を化学合成し、それを焼結することで環境に優しいナノ構造熱電材料の創製に成功
- ナノ粒子の粒成長を抑制しながら焼結することで微細構造と組成を制御し、構造及び組成と物性との関係を解明
- 創製したナノ構造熱電材料は、構造や組成制御がされていない通常の銅スズ硫化物結晶に比べて約10倍の熱電変換性能を示し、サステイナブルな熱電材料の実用化へ向けた大きな一歩
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北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)、物質化学領域の前之園 信也教授らは、(株)日本触媒、産業技術総合研究所と共同で、銅スズ硫化物系ナノ粒子を化学合成し、それらをビルディングブロック(構成要素)として環境に優しい銅スズ硫化物系ナノ構造熱電材料を創製しました。このように、化学的アプローチによって熱電材料のナノ構造を精密に制御し、熱伝導率と電気伝導率を独立に調節することで熱電変換効率を向上させる方法は他の熱電材料にも適用できるため、高い熱電変換効率を有したサステイナブルな熱電材料の実現への有効な手段の一つとして期待されます。 実用化された代表的な熱電材料であるテルル化ビスマスをはじめ多くの熱電材料には、テルル、セレン、鉛といった毒性が高いあるいは資源的に希少な元素が用いられています。民生用途は安全性の担保が必須条件であり、毒性の高い材料系を用いた場合には実用化に向けての大きな障害となりかねません。そのような観点から、我々は、サステイナブルな熱電材料として金属硫化物材料に注目してきました。金属硫化物材料は比較的安価で安全、資源的にも豊富です。金属硫化物熱電材料は、これまで知られている熱電材料の主要元素であるテルルやセレンと同じ第16族元素である硫黄を用いており、熱電材料としての潜在性も高いと考えられます。 一方、熱電変換効率を表す指標である無次元性能指数 ZT を向上させる一つの方法論として"ナノ欠陥構造制御"があります。ナノ欠陥構造制御を行うためのアプローチの一つに、化学合成したナノ粒子をビルディングブロックとして用いてマルチスケール欠陥構造を有する熱電材料を創製しようという試みが近年注目を集めています。バルク結晶をボールミリング法等によって粉砕しナノ粉末を得て、それらを焼結することでナノメートルサイズの結晶粒界を有する熱電材料が作製されてはいるものの、このようなトップダウン式の手法では原子・ナノスケールの精密な構造制御は困難でした。一方、不純物元素や格子欠陥が導入された均一かつ単分散なナノ粒子を、形状や粒径を制御しながら精密に化学合成し、それらをパルス通電加圧焼結法などによって焼結することで、マルチスケール欠陥構造を有する熱電材料をボトムアップ式に創製できます。 |
<今後の展開>
本研究は、マルチスケール欠陥構造を有する高性能銅硫化物系熱電材料の創製に向けての大きな第一歩となります。今後はCu2SnS3系だけでなく、テトラヘドライト(Cu12Sb4S13)系など様々な銅硫化物系ナノ粒子を化学合成し、それらナノ粒子を複数種類配合して焼結することで、パワーファクターの向上と格子熱伝導率の低減を同時に達成し、更なるZTの向上を図ります。最終的には、エネルギーハーベスティングに資することができるサステイナブル熱電材料の実用化を目指します。

図1 (a,b) CTS 及び (c-f) ZnドープCTS ナノ粒子の透過型電子顕微鏡像:(a)閃亜鉛鉱型CTSナノ粒子、(b) ウルツ鉱型CTSナノ粒子、(c) Cu2Sn0.95Zn0.05S3ナノ粒子、(d) Cu2Sn0.9Zn0.1S3ナノ粒子、(e) Cu2Sn0.85Zn0.15S3ナノ粒子、(f) Cu2Sn0.8Zn0.2S3ナノ粒子。

図2 (a) 電気伝導率、(b) ゼーベック係数、(c) 熱伝導率、(d) 格子熱伝導率、(e) パワーファクター、(f) ZT。 ▲、●、●、●、●及び●は、それぞれ、図1a-fのナノ粒子をパルス通電加圧焼結することによって作製したペレットのデータを表す。○はナノ構造を持たないCTSバルク結晶の値である(Y. Shen et al., Sci. Rep. 2016, 6, 32501)。(b)の挿入図は、●と○の格子熱伝導率データを温度の逆数(T -1)に対してプロットした図である。ナノ構造制御されたCTSでは格子熱伝導率がT -1に依存していないことから、フォノンが効率的に散乱されていることを示している。
<論文>
| 掲 載 誌 | Applied Physics Letters |
| 論文題目 | "Sustainable thermoelectric materials fabricated by using Cu2Sn1-xZnxS3 nanoparticles as building blocks" |
| 著 者 | Wei Zhou,1 Chiko Shijimaya,1 Mari Takahashi,1 Masanobu Miyata,1 Derrick Mott,1 Mikio Koyano,1 Michihiro Ohta,2 Takeo Akatsuka,3 Hironobu Ono3 and Shinya Maenosono1* 1 北陸先端科学技術大学院大学 2 産業技術総合研究所 3 株式会社日本触媒 |
| DOI | 10.1063/1.5009594 |
| 掲 載 日 | 2017年12月29日にオンライン掲載 |
平成30年1月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2018/01/04-1.html平成29年度 ナノテクノロジープラットフォーム公開講座「分子の構造を探る-NMR(核磁気共鳴)分光装置とMS(質量分析)装置の測定と解析-」
本学では、地域社会へ開かれた大学を目指す一環として、下記のとおり公開講座を開講いたします。
| 日 時 | 平成30年3月1日(木)NMR 10:00~16:30 平成30年3月2日(金)MS 10:00~16:30 ※どちらか1日のみの参加でも可 |
| 場 所 | 北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター C1-26 (石川県能美市旭台1-1) |
| テーマ | 分子の構造を探る-NMR(核磁気共鳴)分光装置とMS(質量分析)装置の測定と解析- |
| 講 師 | 生命機能工学領域 教授 大木 進野 環境・エネルギー領域 講師 大坂 一生 ナノマテリアルテクノロジーセンター 主任技術職員 宮里 朗夫 ナノマテリアルテクノロジーセンター 研究員 五十棲 規嘉 |
| 内 容 | 初学者の方にもわかりやすく,NMR とMS で分子の構造を調べる手法や解析方法を解説します。 また、実際に装置を操作して測定を体験していただきます。 |
| 対 象 | 企業・他大学・高専等の研究者・技術者 |
| 定 員 | 5~10名 |
| 受講料 | どちらか1日のみの参加の場合 ¥6,200 円(税込) 両日参加の場合 ¥7,200 円(税込) |
| 申込方法 | 受講希望の方は、 ①氏名(ふりがな) ②勤務先等・職名 ③受講の目的 ④本講座に期待すること ⑤書類送付先 ⑥電話番号 ⑦メールアドレス を明記の上、E-mail またはFAXでお申し込みください。 ● 申込書はこちらから |
| 申込締切 | 平成30年2月13日(火)まで【先着順 定員に達し次第締切】 |
| お申込・ 問合わせ先 |
北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 文部科学省ナノテクノロジープラットフォ-ム事業 分子・物質合成プラットフォーム事務局 〒923-1292 石川県能美市旭台1-1 TEL:0761-51-1449 FAX:0761-51-1455 E-mail:nano-net@jaist.ac.jp |
ブロック遊びのようにナノ構造を組み上げる技術で新しい知見
ブロック遊びのようにナノ構造を組み上げる技術で新しい知見
北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/物質化学領域の長尾 祐樹准教授らの研究グループは、材料表面を高分子で修飾する表面高機能化技術において新たな知見を得ることに成功しました。材料表面が有する濡れ性、帯電性、防汚性、自己修復性等の機能性表面は、我々の生活をより快適で安全なものにしてくれます。これまでに2種類の機能性分子を交互に組み上げる技術は、数例報告されていましたが、得られたナノ薄膜注1)の密度や構造周期性については明らかにされていませんでした。これに対して、本研究は、ナノ薄膜の密度や構造周期性が膜厚に応じて変化することや分布があることを実験的に明らかにしました。本研究は、アメリカ化学会の雑誌Langmuirに平成28年5月13日に公開されました。
| 1. 研究の成果 | ||
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ブロック遊びのように分子を1種類ずつ材料表面に自在に組み上げる技術は、材料表面の濡れ性、帯電性、防汚性等の高性能化を目的としたコーティング技術等に応用できることから、新しい技術として注目されています。これまでに2種類の機能性分子を交互に積層することでナノ薄膜が得られることは数例報告されていましたが、組み上げた積層回数に応じてどのような高分子ネットワーク構造ができているかについては不明な点が数多くありました。 |
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![]() 分子の積層方法と得られたナノ薄膜の密度・構造周期性の分布 |
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なお、本成果は名古屋大学との共同開発成果であり、名古屋大学「分子・物質合成プラットフォーム」事業(文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業)の支援を受けました。 |
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| 2. 今後の展開 |
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今回の研究成果によって、材料表面を分子レベルで機能修飾するための新しい設計指針を得ることが出来ました。我々はグローバルな課題として認識されている水問題への取り組みに関心があります。今後、汚染水を浄化する多孔質フィルターの多孔質性を保持したまま表面の防汚性を向上させる技術開発のような応用展開が期待されます。 |
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| 3. 用語解説 |
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注1)ナノ薄膜:厚さが10億~1億分の1メートル程度の薄い膜。 |
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| 4. 論文情報 |
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掲載誌:Langmuir |
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平成28年5月17日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2016/05/17-1.html画像処理と電子顕微鏡を組み合わせて原子レベルでの物質の不思議を発見する
画像処理と電子顕微鏡を組み合わせて
原子レベルでの物質の不思議を発見する
ナノ物性顕微探索研究室
Laboratory on Microscopic Nano-Characterization
講師:麻生 浩平(ASO Kohei)
E-mail:
[研究分野]
原子スケール材料解析
[キーワード]
無機材料、固体物性、ナノ物質、ナノ計測、計測技術、画像処理、電子顕微鏡
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究テーマと真剣に向き合う意思、周囲の声を聞き入れる素直さ、研究を進める日々を楽しむ気持ちが大切です。固体材料、電子顕微鏡、画像処理、確率統計のいずれかへの興味があると良いです。知識があればなお良いですが、必須ではありません。
この研究で身につく能力
一連の研究(材料の知識獲得、電子顕微鏡の操作技術、Pythonによる画像処理、結果の解釈、文章化、自研究室や他研究室とのディスカッション、成果としてのまとめ)を通じて、各項目の技術と知識、および研究をやり通す経験が身につきます。
一般的な技術としては、自分の考えを掘り下げて分かりやすく表現できるよう、文章力の向上に重点を置きます。進捗報告会など、日々の研究に関する交流を文章によって行います。将来的に、企業や大学において書類をまとめる際や、近年成長が目覚ましい生成AIを思い通りに動かすうえで、文章力は重要だと考えています。
【就職先企業・職種】 電気・材料メーカー、材料分析会社、大学の研究者や技術職員など
研究内容
原子レベルで起こる物質の不思議なふるまいを発見するために、画像処理と電子顕微鏡を駆使した手法開発を進めています。電子顕微鏡データは、そのままでは単なる数値の配列です。画像処理による解析を通して初めて、粒子サイズ、結晶構造、原子位置といった有益な情報が得られます1,2。また、最近では、動作中のデバイスの動画観察にも取り組んでいます3。時刻ごとの多数の画像で構成される動画を効率的に解析するうえでも、画像処理は欠かせません。
具体的な研究テーマとして、以下が挙げられます。
1. リチウムイオン電池材料の動作下ナノ解析
2. ナノ粒子を統計的・3次元的に解析する手法開発
3. 原子位置を精密解析する手法開発1−3
ここでは3に絞って紹介します。
原子位置を精密解析する手法開発
図1aは、棒状の金ナノ粒子の電子顕微鏡像です。像で明るく見える点は、奥行き方向にならぶ金原子の列です。一見すると、輝点は画像内で規則正しく並んでいるように見えますが、これが本当かを解析しました。
規則正しい周期位置からの原子のずれ、つまり原子変位を測定しました。従来の方法では、変位量が小刻みに変化して見えます (図1b)。これは原子変位の情報ではなく、解析の邪魔をする統計ノイズ成分です。
そこで、信号処理手法のひとつであるガウス過程回帰を用いることで、原子変位の情報を抽出することに成功しました(図1c)。測定可能な最小の原子変位は0.7 pm(ピコメートル、1兆分の1メートル)ときわめて小さく、材料のなかで生じる2.4 pmの原子変位を検出することに成功しました。
解析によって、粒子の先端部分に位置する原子列は、軸に沿って外側へと変位していることが発見されました。考察の結果、棒状粒子の先端と胴体で曲率が異なるため表面張力に差が生じ、局所的な変位が生じると示唆されました1。

図1 (a) 金ナノロッドの電子顕微鏡像。奥行き方向にならぶ金原子の列が明るい点として見えています。(b) 従来手法で測定した原子変位と (c) データ科学で処理した原子変位。原子が正常な位置から左にずれるほど暗い青色、右にずれるほど明るい黄色で示されます。
主な研究業績
- K. Aso, J. Maebe, XQ. Tran, T. Yamamoto, Y. Oshima, and S. Matsumura, “Subpercent Local Strains due to the Shapes of Gold Nanorods Revealed by Data-Driven Analysis”, ACS Nano 15 (2021) 12077
- K. Aso, H. Kobayashi, S. Yoshimaru, XQ. Tran, M. Yamauchi, S. Matsumura, and Y. Oshima, “Singular behaviour of atomic ordering in Pt–Co nanocubes starting from core–shell configurations”, Nanoscale 14 (2022) 9842
- J. Liu, J. Zhang, K. Aso, T. Arai, M. Tomitori, and Y. Oshima, “Estimation of local variation in Young’s modulus over a gold nanocontact using microscopic nanomechanical measurement methods”, Nanotechnology 36 (2025) 015703
使用装置
走査透過電子顕微鏡、解析用ワークステーションPC、集束イオンビームつき走査電子顕微鏡、電子顕微鏡用特殊ホルダー、電気化学測定装置、グローブボックス
研究室の指導方針
共同研究を活発に行っています。責任をもって自らの研究を進め、研究協力者も納得できる成果を挙げれば、自信につながります。加えて、自らの好みや賛否にとらわれず、多種多様な考えを受け止める幅広い視野が育まれます。個々の研究内容については、日常的に議論をおこない、必要があれば柔軟に軌道修正します。当初は想像しなかった面白いテーマが見つかるのも魅力です。学生の皆さんが大学院を終えるとき、研究を通して「ベストを尽くし、満足いく成果を挙げ、入学当初は想像もできない良い未来を迎えられた」と思えるよう、最大限サポートします。
[研究室HP] URL:https://www.jaist-oshima-labo.com/
化学と生物の融合による新たな人工タンパク質の創製
化学と生物の融合による
新たな人工タンパク質の創製
人工タンパク質合成研究室
Laboratory on Nonnatural Protein Biosynthesis
教授:芳坂 貴弘(HOHSAKA Takahiro)
E-mail:
[研究分野]
遺伝子工学・タンパク質合成・ケミカルバイオロジー
[キーワード]
遺伝暗号拡張、人工タンパク質、非天然アミノ酸、無細胞翻訳系、蛍光分析
研究を始めるのに必要な知識・能力
タンパク質や遺伝子に興味を持っていること。生物化学・有機化学に関する基礎的な知識や実験技術が必要になりますが、入学後に修得することも可能です。
この研究で身につく能力
遺伝子工学・タンパク質合成・有機合成・蛍光分析などに関する専門的な知識と実験技術を修得することができます。また研究活動を通じて、実験計画の立案・関連研究の調査・実験データの取得と分析・研究成果のまとめとプレゼンテーション、に至る一連の研究プロセスを学ぶことができます。これらの能力は、技術者・研究者としていずれも必要不可欠なものです。
【就職先企業・職種】 化学・生物関連企業、研究機関
研究内容
遺伝子工学・タンパク質合成などの生物化学的手法と、有機合成などの化学的手法を組み合わせることで、新たな人工タンパク質の創製を目指して研究を行っています。具体的には、以下のような研究テーマを進めています。また、研究室で得られた成果を企業と共同で実用化するための研究も行っています。

図1.4塩基コドンを用いた非天然アミノ酸のタンパク質への導入

図2.抗原分子を検出できる蛍光抗体センサーの例
1.遺伝暗号の拡張による非天然アミノ酸のタンパク質への導入
タンパク質はDNAの遺伝暗号に従ってアミノ酸が連なって合成され、それが精密な立体構造を形成することで、高度な機能を発揮しています。しかし生物が使用しているのはわずか20種類のアミノ酸のみです。私たちは、この20種類の制限を超えて、人工的に合成した「非天然アミノ酸」をタンパク質の特定部位に導入することのできる、新たな技術の開発に成功しています。これは、4塩基コドンなどの拡張遺伝暗号に非天然アミノ酸を割り当てる(図1)、という新しい概念によって達成されています。
2.新たな機能を持つ人工タンパク質の創製
上記の技術を利用することで、新たな機能を持った人工タンパク質の創製を進めています。例えば、抗体などの特定の分子を認識して結合するタンパク質に、蛍光分子を付加した非天然アミノ酸を導入することで、蛍光により標的分子を検出できるタンパク質センサーを合成できます(図2)。また、非天然アミノ酸の導入技術を利用することで、新しいタンパク質医薬品の合成も試みています。これらの研究の一部は、企業・研究機関との共同研究により進めています。
3.生物の潜在能力を利用した新たなバイオ技術の開発
非天然アミノ酸のタンパク質への導入技術は、生物がもともと持っている潜在能力を、人工的に引き出して活用したものと言えます。私たちは、そのような生物の持つ潜在能力を新たに見つけ出し利用することで、人工タンパク質などの有用物質を合成することのできる、新たなバイオ技術の開発にも挑戦しています。
主な研究業績
- A. Yamaguchi, T. Hohsaka, Synthesis of novel BRET/FRET protein probes containing light-emitting proteins and fluorescent nonnatural amino acids, Bull. Chem. Soc. Jpn., 85, 576-583 (2012).
- R. Abe, H. Ohashi, I. Iijima, M. Ihara, H. Takagi, T. Hohsaka, H. Ueda, “Quenchbodies”: Quench-based antibody probes that show antigen-dependent fluorescence, J. Am. Chem. Soc., 133, 17386-17394 (2011).
- 芳坂貴弘、非天然アミノ酸のタンパク質への導入技術-バイオメディカル応用に向けて、メディカルバイオ別冊, 72-77 (2010).
使用装置
蛍光分析装置(分光光度計・蛍光寿命測定・蛍光スキャナなど)
遺伝子解析装置(DNAシーケンサー・リアルタイムPCRなど)
質量分析装置
研究室の指導方針
人工タンパク質に関連した研究テーマに対して、実験を通じて新たな成果を挙げるとともに、その研究プロセスを修得することを目標としています。具体的には、各自の研究テーマに対して、実験を試行錯誤的に繰り返す過程を通じて、実験計画の立案、結果の解釈と問題点の把握、次の実験計画へのフィードバック、などを独力で遂行できる能力を鍛錬します。そのために、研究室ゼミでは定期的に研究報告会を開催して、進捗状況の確認と指導・助言を行います。また、研究成果は積極的に学会等で発表する機会を設けています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/hohsaka/






図2. 乾燥界面の移動によってまっすぐなファイバーが蛇行

