研究活動の検索
研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。「北陸技術交流テクノフェア2025」に出展しました
10月23日(木)から24日(金)の2日間、福井県産業会館(福井県福井市)にて、北陸三県の企業・大学・研究機関が一堂に会する北陸最大級の総合展示会「北陸技術交流テクノフェア2025」が開催されました。
今年は過去最多となる209社が出展し、新幹線沿線からの参加も2年連続で増加しました。大阪・関西万博で話題となった「健康タイムマシン」も登場するなど、会場は多くの熱気と交流にあふれました。
本学からは、超越バイオメディカルDX研究拠点(eMEDX)が「特別企画展:ヒトと企業を輝かせるウェルビーイングテクノロジー展」にブース出展し、健康・医療・ライフサイエンス分野における最新の取り組みや研究成果を紹介しました。会期中は、ライフサイエンス関連の製造業や教育・学習支援業など、幅広い分野の方々にご来場いただき、活発な意見交換が行われました。また、特別展ブースインタビューやメディア(日本テレビ、福井テレビなど)にも取り上げられ、多くの注目を集める機会となりました。ご来場いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
今後もeMEDXは、健康・医療・ライフサイエンス分野における最先端の研究や取り組みを紹介しつつ、未来志向の共創を通じて、産学官連携の新たな可能性を発信していきます。
【超越バイオメディカルDX研究拠点】
https://www.jaist.ac.jp/ricenter/emedx/





令和7年10月31日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/10/31-1.html物質化学フロンティア研究領域の都教授がCell Reports Physical Science編集諮問委員会に就任
物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授が米国Cell Press社が刊行する国際学術誌 Cell Reports Physical Scienceの編集諮問委員会(Editorial Board of Advisors, EAB)委員に就任しました。
Cell Reports Physical Scienceは、物理科学分野と生命科学分野の学際的研究を対象とした国際的ジャーナルであり、特にナノ材料の生物医学応用やライフサイエンスとの融合領域における注目度の高い成果を発表しています。EABは、今後の研究分野の方向性や新進気鋭の研究者の推薦など、学術誌の戦略的運営に助言を行う役割を担っています。
都教授は、ナノバイオテクノロジーやドラッグデリバリーシステム、さらには「リビングドラッグ」と呼ばれる微生物を活用する次世代治療法の開発など、幅広い先端研究を推進しています。すでにCell Press社の国際誌 iScience においても編集諮問委員を務めており、今回の就任はその国際的評価と研究の学際性が改めて認められたものです。
今後も国際的な研究交流と学術誌運営への積極的な貢献を通じて、世界の科学と医療の発展に寄与することが期待されます。
詳細:https://www.cell.com/cell-reports-physical-science/advisory-board
令和7年10月29日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/10/29-3.html第1回超越バイオメディカルDX研究拠点エクセレントコアセミナーを開催
6月3日(火)、本学イノベーションプラザ2階 シェアードオープンイノベーションルームにおいて、「令和7年度第1回超越バイオメディカルDX研究拠点エクセレントコアセミナー」を開催しました。
本セミナーでは、本学に新たにクロスアポイメント教員として着任したHak Soo CHOI 教授(ハーバード大学医学部 放射線腫瘍学講座 教授)を講師に迎え、「Bioengineering and Nanomedicine Program for Cancer Theranostics」をテーマに講演いただきました。
冒頭では、寺野稔 学長による開会挨拶が行われ、CHOI教授の着任に対する歓迎の意が述べられるとともに、今後の国際共同研究のさらなる発展に向けた期待が示されました。
CHOI教授の講演では、がんの診断と治療を同時に行う「セラノスティックス」の実現に向けた最先端の研究成果が紹介されました。とりわけ、独自に開発された蛍光イメージング技術と、薬剤の物理化学的特性と生体内動態の関係性に基づいた薬物設計戦略により、組織特異的な近赤外蛍光プローブの開発が進められていることが説明されました。これらの技術は、がん組織の可視化、画像誘導手術、光線治療などへの応用が期待されており、ナノ医療および分子イメージング分野における今後の展開に重要な示唆を与える内容となりました。
本セミナーは、CHOI教授と本学物質化学フロンティア研究領域の栗澤元一 教授との長年にわたる共同研究を背景に開催されたものであり、国際的な研究連携の深化とともに、若手研究者や学生との学術的交流の促進を目的としています。当日は、参加者との活発な質疑応答や意見交換も行われ、充実した議論の場となりました。
今後も本学では、超越バイオメディカルDX研究拠点の中核的活動として、世界トップレベルの研究者との交流を通じた学際的かつ国際的な研究の推進と、次世代研究者の育成に積極的に取り組んでまいります。


セミナーの様子
令和7年6月5日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/06/05-2.htmlAI設計の次世代ステルス材料と極細硬性内視鏡を開発 ―光熱がん治療の新たな可能性を切り拓く―
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| 国立大学法人東北大学 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 エア・ウォーター株式会社 帝京大学先端総合研究機構 |
AI設計の次世代ステルス材料と極細硬性内視鏡を開発
―光熱がん治療の新たな可能性を切り拓く―
【発表のポイント】
- 血中滞留時間が従来のPEG(注1)の4倍以上で生分解性(注2)を持つ新しい人工タンパク質「IDP1(注3)」を人工知能(AI)を用いて開発しました。
- IDP1でコーティングした光熱変換ナノ粒子(注4)は静脈投与だけで腫瘍に効率よく集積し、正常臓器への分布が少ないことを定量的に確認しました。
- 標準的な注射針に挿入できる極細硬性内視鏡(注5)を開発し、腫瘍内部から直接レーザを照射する「接触型照射システム」を実現しました。
- マウスの大腸がんモデルにおいて、1回の薬剤投与と1回のレーザ照射の組み合わせで腫瘍が14日以内に消失し、40日以上再発しないことを確認しました。
- 観察期間中、明らかな全身毒性は認められませんでした。
【概要】
| 近赤外線レーザでがん細胞を熱で破壊する「光熱療法」は、手術や放射線治療に比べて体への負担が少ない次世代のがん治療として期待されています。しかし、治療薬を運ぶナノ粒子が免疫細胞に排除されて腫瘍へ届きにくいことや、体外からのレーザ照射では深部腫瘍に十分な熱を届けられないことが課題でした。 東北大学 多元物質科学研究所の都 英次郎教授(北陸先端科学技術大学院大学 客員教授)らと、エア・ウォーター株式会社の山下 紘正グループリーダー(帝京大学先端総合研究機構 特任准教授)らは、共同研究によりこれら2つの課題を同時に解決しました。タンパク質構造予測AI「AlphaFold(注6)」を活用して設計した人工タンパク質「IDP1」をナノ粒子にコーティングすることで腫瘍への集積性を高めるとともに、注射針に挿入可能な極細硬性内視鏡を用いた接触型レーザ照射システムを開発し、低出力で高い加熱効果を実現しました。マウス大腸がんモデルでは、1回の治療で腫瘍の消失と長期的な再発抑制を確認しました。 本研究成果は、ナノサイエンス・材料科学分野の専門誌Small Scienceに、2026年7月14日付で掲載されました。 |
【詳細な説明】
研究の背景
光熱療法はがん細胞を近赤外線レーザで選択的に加熱・破壊する治療法で、低侵襲性・繰り返し治療の可能性・免疫活性化効果などから次世代がん治療として世界中で研究が進んでいます。治療薬はナノ粒子に封入して静脈投与されますが、体内の免疫細胞(主にマクロファージ)がナノ粒子を異物として認識し、肝臓や脾臓で回収してしまうため、腫瘍への到達効率が低下するという課題があります。
これを防ぐためにPEGというプラスチック由来の分子でナノ粒子を覆うことが広く行われてきましたが、繰り返し投与によって体がPEGへの抗体を産生し2回目以降の投与では薬剤が急速に排除される「加速血中消失現象(注7)」が起こること、またPEGが体内で分解されず長期的な安全性に懸念が残ることが問題でした。
レーザ照射については、体の外から照射する従来法では皮膚・皮下組織・筋肉などがレーザを吸収・散乱するため、深部の腫瘍に十分な熱を届けるには1 W以上の高出力が必要となり、皮膚熱傷などの副作用リスクが高まります。光ファイバを腫瘍内に挿入する方法も存在しますが、これまでのシステムはファイバが太く、小動物実験への適用や最小侵襲性の観点で課題がありました。
今回の取り組み
研究グループはこれらの課題を以下の2つの独自技術で解決しました。
1つ目は、コンピュータ設計による人工ステルスタンパク質「IDP1」の開発です。血液中に豊富に存在する「ヒト血清アルブミン(HSA)(注8)」は表面に親水性アミノ酸を多く持ち、ナノ粒子への非特異的タンパク吸着を防ぐ性質を持っています。研究グループはまずHSAの立体構造データを解析して水との接触面積が大きいアミノ酸だけを選び出し、得られた改変HSAの立体構造をノーベル賞受賞技術にも貢献したタンパク質構造予測AI「AlphaFold」で予測することで、固有の立体構造を持たない柔軟な領域(固有無秩序領域)を特定しました。この候補配列の中から最も高い親水性と適切な電荷バランスを持つ配列をIDP1として選定しました。AlphaFoldの高精度な構造予測能力があってこそ、従来は困難だった「無秩序な領域の同定」が可能になりました。これらを評価した結果、弱いマイナス電荷を持ち最も高い親水性を示す候補をIDP1として選定しました。IDP1は大腸菌を使って生産でき、マウスへの投与実験では血中滞留時間がPEGの4倍以上(半減期150.5分対17.8分)を達成しました。
2つ目は、エア・ウォーター株式会社との共同研究による注射針サイズの極細硬性内視鏡です。エア・ウォーター株式会社が培ってきたグレーデッドインデックス型プラスチック光ファイバ(GI-POF)のレンズ応用技術を医療応用に展開し、直径0.5 mmのレンズを持つ極細硬性内視鏡を実現しました。この内視鏡は標準的な16ゲージ注射針の内腔に収まり、腫瘍内に直接挿入して808 nmのレーザを照射できます。レーザが皮膚や周囲組織を通過しないため光の減衰がなく、腫瘍全体に均一に熱を届けられます。実験では従来の外部照射(700 mW、ΔT≈40°C)と比べて28%低い出力(500 mW)で同等の温度上昇(ΔT=36.3°C)を達成しました。さらに励起波長785 nm・検出波長810〜860 nmの蛍光観察モジュールを搭載し、薬剤集積のリアルタイム確認と最適照射位置の決定を同一デバイスで行えるシステムを実現しました。
実験結果
細胞実験では、IDP1でコーティングしたナノ粒子(IDP1-CNH/ICG)は免疫細胞であるRAW264.7マクロファージへの取り込みが従来のコーティングなし粒子と比べて大幅に抑制されました。がん細胞(Colon26)に対しては接触型レーザ照射によって濃度依存的な細胞死が誘導され、正常細胞(MRC5)への影響は最小限に留まりました。
マウスを使ったin vivo実験では、投与24時間後に腫瘍部位への強い蛍光集積が確認されました。蛍光解析では腫瘍への集積量が肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺を大幅に上回り、正常臓器への分布が少ないことが定量的に示されました。
がんの治療実験では、IDP1-CNH/ICG投与+接触型レーザ照射群において14日以内に全マウスで腫瘍が消失しました。40日以上の観察期間中に再発は認められませんでした。体重に変化はなく血液検査でも異常は見られず、安全性が示唆されました。腫瘍組織の病理解析ではアポトーシス(細胞の自然死)とネクローシス(壊死)の強い誘導が確認されました。なお薬剤投与なしで接触型レーザのみを照射した群、および薬剤投与+従来の外部レーザ照射群ではいずれも腫瘍の消失には至らず、IDP1-CNH/ICGと接触型照射の組み合わせが治療成功に重要な要素であることが示されました。
今後の展開
IDP1の設計手法はがん治療薬の運搬だけでなく、さまざまなバイオ医薬品の体内での安定性向上(半減期延長)にも広く応用できると期待されます。また接触型光ファイバ内視鏡システムについては、エア・ウォーター株式会社と連携しながら内視鏡が届くさまざまながん種(頭頚部がん、食道がん・乳がん・大腸がんなど)への展開を進める予定です。今後は非臨床安全性試験の実施と早期臨床応用に向けた研究開発を推進します。

| 図1. 本研究の概要。ヒト血清アルブミンからコンピュータで設計した人工タンパク質IDP1でコーティングした光熱変換ナノ粒子(IDP1-CNH/ICG)を静脈投与し、注射針サイズの極細硬性内視鏡を腫瘍内に挿入して直接レーザを照射することで、効率的な光熱がん治療を実現した。 |

| 図2. IDP1の優れたステルス性能。(左)静脈投与後の血中濃度の変化。IDP1(赤線)は従来のPEG(水色線)と比べて4倍以上長く血液中に留まることが示された。(右)がん細胞(Colon26)および免疫細胞(RAW264.7マクロファージ)へのナノ粒子の取り込み量の比較。IDP1でコーティングしたナノ粒子(薄紫)は、コーティングなし(濃紺)と比べて取り込みが大幅に抑制された。 |

| 図3. マウスを用いた光熱療法の治療効果。(左)近赤外線サーモグラフィによる腫瘍部位の温度分布。注射針サイズの極細硬性内視鏡を用いた接触型レーザ照射(右下)では、照射開始から5分後に腫瘍内温度が約67.7°Cに達した。体外からの従来照射(右上)では温度上昇が限定的であった。(右)各治療群における腫瘍体積の経時変化。IDP1-CNH/ICGの投与と接触型レーザ照射を組み合わせた群(黒丸)でのみ、マウスの腫瘍がレーザ照射の14日以内に消失した。他の治療群では腫瘍の増大が確認された。データはマウス5匹の平均値±標準偏差を示す。 |
【謝辞】
本研究は、科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(JPMJSF2318)、JSPS科研費(JP23K17209、JP23H00551、JP25K21827)同 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(JPJS00420230006)、文部科学省先端研究基盤共用促進事業(JPMXS0440200021)の支援を受けて実施されました。また、極細硬性内視鏡の開発にあたってはエア・ウォーター株式会社、帝京大学先端総合研究機構から実験的・技術的サポートをいただきました。
【用語説明】
石油由来の水溶性ポリマーで、ナノ粒子を免疫細胞から守るため医薬品分野で広く使われてきた材料です。しかし繰り返し投与によって体が抗体を産生し薬剤が急速に排除される問題や、体内で分解されないという長期安全性の課題が知られています。(ポリエチレングリコール)
体内の酵素や化学反応によって自然に分解される性質のことです。IDP1はアミノ酸から構成されており、体内のタンパク質分解酵素によって最終的に無害なアミノ酸に分解されます。プラスチック由来のPEGが体内で分解されないことと対照的な特長です。
本研究で新たに開発した人工タンパク質です。通常のタンパク質は決まった立体構造を持ちますが、IDP1(内在性無秩序ポリペプチド1)は形が決まらず水の中で柔軟に揺らめく「無秩序な」構造を持ちます。この柔軟性と水との強い親和性が、免疫細胞から認識されにくいステルス効果の源となっています。約100個のアミノ酸から構成される比較的小さなタンパク質で、大腸菌による大量生産も可能です。
本研究で開発したナノ粒子の正式名称です。直径約200 nmの脂質ナノ粒子の内部にカーボンナノホーン(CNH、炭素製の光熱変換材料)とインドシアニングリーン(ICG、FDA承認の蛍光色素)を封入し、表面をIDP1でコーティングしたものです。近赤外線レーザを照射すると効率よく熱に変換され、がん細胞を破壊します。(IDP1-CNH/ICG)
エア・ウォーター株式会社と共同開発した極細の硬性内視鏡です。グレーデッドインデックス型プラスチック光ファイバ(GI-POF)という、光を効率よく伝える特殊な素材を活用したレンズを使用しています。レンズ径わずか0.5 mm、標準的な注射針(16ゲージ)の内腔に挿入して腫瘍内に刺し込むことができ、腫瘍内部から直接レーザを照射できます。同時に腫瘍内の蛍光画像をリアルタイムで観察できる機能も搭載可能なデバイスです。
英国のDeepMind社(現Google DeepMind)が開発したタンパク質の立体構造を予測する人工知能(AI)プログラムです。アミノ酸の配列情報だけから、タンパク質がどのような三次元構造を取るかを高精度で予測できます。この技術は生命科学に革命をもたらしたとして、2024年のノーベル化学賞の受賞対象となった研究に深く関連しており、世界中の研究者が無償で利用できます。本研究では、ヒト血清アルブミンの改変配列がどのような構造を取るかを予測し、形が決まらない「無秩序な」領域を特定するために使用しました。(アルファフォールド)
PEGでコーティングしたナノ粒子を繰り返し投与した際に、免疫系がPEGに対する抗体を産生することで2回目以降の投与では薬剤が急速に排除される現象です。がん治療では複数回投与が必要な場合が多く、PEGベースの薬剤送達システムの重大な課題として広く認識されています。IDP1はタンパク質由来であるため、この問題が起きにくいと考えられます。(ABC現象)
血液中に最も多く含まれる主要タンパク質で、体重60 kgの成人では血液中に約200 gが存在します。脂肪酸・ホルモン・薬物を全身に運ぶ輸送役を担うほか、表面に親水性アミノ酸を多数持ち免疫細胞からの認識を受けにくい性質があります。本研究ではHSA全体ではなく、そのステルス性に寄与する部分の配列だけをコンピュータで特定・抽出しました。
【論文情報】
| タイトル | Intrinsically Disordered Polypeptides-Based Stealth Materials Enable Enhanced Photothermal Cancer Therapy Using an In Situ Fiber-Based Penetrating Laser System |
| 著者 | Kei Nishida, Hiromasa Yamashita, Akira Takahashi, and Eijiro Miyako* *責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 都 英次郎 |
| 掲載誌 | Small Science |
| DOI | 10.1002/smsc.70342 |
| URL | https://doi.org/10.1002/smsc.70342 |
令和8年7月21日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/07/21-1.htmlやさしくつかみ、触って感じるロボットハンドを開発 ―ゾウの鼻先に着想を得たソフトグリッパ「EleTac」―
やさしくつかみ、触って感じるロボットハンドを開発
―ゾウの鼻先に着想を得たソフトグリッパ「EleTac」―
【ポイント】
- 把持機能と触覚センシング機能を一体化したソフトロボットグリッパ「EleTac」を開発しました。
- 物体をやさしくつかみながら、接触位置、接触程度、自身の姿勢を同時に認識できます。
- 包括的な把持・知覚実験により、EleTacが有効に機能する物体や条件を明らかにしました。
- 視覚情報が得にくい環境での探索や繊細な物体操作など、人と協働するロボットへの応用可能性を実証しました。
- CADデータやシミュレーション環境、学習済みモデルなどを公開し、研究の再現性と技術発展に貢献します。
| 北陸先端科学技術大学院大学 AI知性研究領域のHo Anh Van(ホ アン ヴァン)教授と、英国キングス・カレッジ・ロンドンのShan Luo准教授が共同で主導する研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学のNguyen Tai Tuan博士研究員、キングス・カレッジ・ロンドンのXuyang Zhang大学院生(博士後期課程)、米国パデュー大学のLuu Khanh Quan博士研究員とともに、把持機能と触覚センシング機能を一体化したソフトロボットグリッパ「EleTac」を開発しました。 ソフトロボットは、人や壊れやすい物体に安全に触れられることから、家庭や医療、サービス分野での活躍が期待されています。しかし、物体をやさしくつかみながら、接触位置や力、自身の形状変化を同時に把握することは難しく、より器用なロボットの実現に向けた課題となっていました。 今回開発したEleTacは、ゾウの鼻先に着想を得た柔軟な構造と、視覚ベースの触覚センシング技術を組み合わせることで、この課題を解決しました。EleTacは、多様な物体を傷つけずに把持するとともに、接触位置や力、物体形状、自身の姿勢を単一のカメラで推定できます。砂の中から物体を探し出す作業や食器洗いなどの家庭内作業でも高い把持・知覚性能を実証しており、家庭や病院、食品ハンドリングなど、人と協働するロボットへの応用が期待されます。 |
【1.研究の背景】
ソフトグリッパは、柔軟な材料や構造、駆動機構を利用した新しいロボットハンドです。硬いロボットハンドと比べて、周囲の環境や人と安全に接触できるため、食品や壊れやすい物体を扱う用途で注目されています。
一方で、ロボットが器用に作業するためには、物体をつかむだけでなく、「どこに触れているか」「どのくらいの力が加わっているか」「物体の形状はどうなっているか」といった情報を取得する触覚センシング機能が重要です。
しかし、柔らかい材料は大きく変形するため、グリッパ全体に触覚センサーを組み込みながら、高い把持性能を維持することは容易ではありませんでした。
【2.研究内容】
研究グループは、この課題を解決するため、視覚ベース触覚センシング機能を備えた空気圧駆動型ソフトグリッパ「EleTac」を開発しました(図1)。
EleTacは、ゾウの鼻に着想を得た柔軟な構造を採用し、空気圧によって閉じることで、多様な形状の物体をやさしく把持できます。また、内部に配置した単一のカメラにより、エラストマー全体の変形を観察し、接触位置や接触程度、物体形状、自身の姿勢など複数の触覚情報を同時に取得できます。
包括的な把持・知覚実験の結果、EleTacは物体操作と触覚センシングを一つの設計で高いレベルで両立できることが確認されました。著者らの知る限り、視覚ベース触覚スキンで全面を覆い、自己受容感覚[*1]と外受容感覚[*2]、さらに把持機能を統合したソフトロボットグリッパはEleTacが初めてです。

| 図1 EleTacグリッパの概念図。(a)ゾウの鼻に着想を得た構造。(b)空気圧によってソフトグリッパが閉じることで、やさしく多様な把持を実現します。(c)視覚ベースセンシングにより、外部物体との接触と自己形状の両方を知覚できます。 |
【3.応用例と今後の展開】
EleTacは、やさしい物体操作と触覚知覚の両方が求められるさまざまな場面で有効性を示しました(図2)。
柔軟な構造により、豆腐や果物など壊れやすい物体を傷つけることなく安全に把持できます。また、触覚フィードバックを活用することで、食器との接触状態を確認しながら行う食器洗いなどの家庭内作業や、視覚情報が得られにくい砂の中から物体を探し出す作業にも応用できます。
今後は、家庭、病院、公共空間など、人と近い距離で安全に協働するロボットへの応用が期待されます。接触を感じながら適切な力で作業できることで、高齢者支援や介護、サービスロボット、これまで自動化が難しかった繊細な作業への活用も期待されます。
また、本研究ではCADデータ、シミュレーション環境、開発パイプライン、データサンプル、学習済みモデルを公開し、研究コミュニティ全体での技術発展や再現性向上にも貢献します。

| 図2 EleTacの応用例。柔軟なソフトグリッパにより壊れやすい物体を安全に把持できるほか、統合されたセンシング機能によって自動食器洗いや視覚情報が限られる環境での探索作業を支援します。 |
【用語説明】
ロボットが自分自身の形状、位置、動きなどを把握する能力。
ロボットが外部の物体との接触や相互作用を通じて、周囲の環境を把握する能力。
【論文情報】
| 論文タイトル | EleTac: Elephant Trunk Tip-Inspired Soft Gripper with Vision-Based Tactile Sensing and Proprioception |
| 日本語タイトル | ss視覚ベース触覚センシングと自己受容機能を備えたゾウの鼻先着想型ソフトグリッパ「EleTac」 |
| 著者 | Tuan Tai Nguyen, Xuyang Zhang, Quan Khanh Luu, Shan Luo, and Van Anh Ho |
| 掲載誌 | IEEE Transactions on Robotics (T-RO) |
| 掲載日 | 2026年6月26日 |
| DOI | 10.1109/TRO.2026.3706568 |
【研究資金】
本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)(課題番号:JPMJCR2554)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費(課題番号:25KJ1365)、および英国UKRI EPSRC Open Fellowship UKRI3438の支援を受けて実施されました。
令和8年7月7日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2026/07/07-1.html両生類・爬虫類の腸内細菌から画期的ながん治療細菌を発見!
両生類・爬虫類の腸内細菌から画期的ながん治療細菌を発見!
【ポイント】
- 両生類・爬虫類の腸内から採取した天然細菌が、一度限りの投与でがん組織を完全に消失させることを実証
- 細菌による直接的ながん細胞殺傷と、免疫系の活性化による間接的攻撃の両方を実現
- 既存の化学療法や免疫療法を上回る治療効果を示しながら、正常組織への悪影響なし
- 多様な固形がんへの適用が期待され、新たながん治療法開発への道を拓く
| 北陸先端科学技術大学院大学 物質化学フロンティア研究領域の都 英次郎教授の研究チームは、ニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)、アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)、カナヘビ(Takydromus tachydromoides)の腸内から計45株の細菌を単離しました。これらの細菌を系統的にスクリーニングした結果、9株が抗腫瘍効果を示し、中でもニホンアマガエルの腸内から単離した細菌Ewingella americanaが、マウスのがんモデルで一度限りの投与により腫瘍を完全に消失させる極めて強力な抗がん作用を持つことを発見しました。 近年、腸内細菌とがんの関係が注目されていますが、これまでは主に腸内細菌叢全体の調整や糞便移植などの間接的アプローチが中心でした。本研究では、これとは全く異なるアプローチとして、腸内細菌を単離・培養し、直接静脈投与することで、がんを直接攻撃する革新的な治療法を開発しました。 本研究成果は、国際学術誌Gut Microbesに掲載されました。 |
【研究の詳細】
・驚異的な治療効果
マウスを用いた大腸がんモデルにおいて、E. americanaをたった一回静脈投与するだけで、腫瘍が完全に消失し、100%の完全奏効[注1]率(CR率)を達成しました(図1)。これは、現在標準治療として使われている免疫チェックポイント阻害薬[注2](抗PD-L1抗体)やリポソーム化ドキソルビシン(化学療法剤)を大きく上回る治療効果です。

図1. 抗がん効果:Ewingella americanaと従来治療法との比較
| 腫瘍応答:E. americana単回静脈内投与(200 µL、5 × 10⁹ CFU/mL)、ドキソルビシン(DOX)または抗PD-L1抗体4回投与(200 µL、2.5 mg/kg/回)、PBSを対照として使用。データ:平均値 ± 標準誤差(n = 5)。****、p < 0.0001(スチューデントの両側 t 検定) |
・二重作用による抗がん効果
E. americanaは以下の二つのメカニズムでがんを攻撃します(図2)。
- 直接的殺傷効果:
通性嫌気性細菌[注3] であるE. americanaは、低酸素状態のがん組織に選択的に集積し、がん細胞を直接破壊します。腫瘍内での細菌数は投与後24時間で約3,000倍に増加し、効率的にがん組織を攻撃します。 - 免疫活性化効果:
細菌の存在が免疫系を強力に刺激し、T細胞、B細胞、好中球などの免疫細胞ががん組織に集結します。これらの免疫細胞が産生する炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)がさらに免疫応答を増幅し、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

図2. Ewingella americanaの抗腫瘍メカニズム
・腫瘍特異的な集積メカニズム
E. americanaは、がん組織に選択的に集積し、正常組織には全く定着しません。この驚くべき腫瘍特異性は、以下の複合的メカニズムによるものと考えられます。
- 低酸素環境:がん組織特有の低酸素状態が嫌気性細菌の増殖を促進
- 免疫抑制環境:がん細胞が発現するCD47[注4]タンパク質により局所的免疫抑制が生じ、細菌が生存しやすい環境を形成
- 異常血管構造:がん組織の血管は穴が多く、細菌が容易に侵入できる
- 代謝異常:がん特有の代謝産物が細菌の選択的増殖を支援
・優れた安全性プロファイル
詳細な安全性評価により、E. americanaは以下の特徴を示しました。
- 血中から急速に除去(半減期約1.2時間、24時間後には完全に検出不能)
- 肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓などの正常臓器に細菌の定着は一切なし
- 一過性の軽度炎症反応のみで、72時間以内に正常化
- 60日間の長期観察でも慢性毒性なし
【今後の展開】
本研究により、天然細菌を用いた新しいがん治療法の可能性が実証されました。今後は以下の研究開発を進める予定です。
- 他のがん種への適用拡大:乳がん、膵臓がん、メラノーマなど、多様ながん種での効果検証
- 投与方法の最適化:分割投与、腫瘍内投与など、より安全で効果的な投与法の開発
- 併用療法の開発:既存の免疫療法や化学療法との組み合わせによる相乗効果の検証
本研究は、未開拓の生物多様性が新たな医療技術開発の宝庫であることを示すとともに、難治性がん患者に新たな治療選択肢を提供する可能性を秘めています。
【用語解説】
治療により腫瘍が完全に消失し、検査で確認できなくなった状態。
がん細胞による免疫抑制を解除し、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬剤。
酸素がある環境でも無い環境でも増殖できる細菌。がん組織の低酸素領域で選択的に増殖できる。
細胞表面に発現する「食べないで」信号を出すタンパク質。がん細胞はこれを過剰発現して免疫細胞による攻撃を回避する。
【論文情報】
| 掲載誌 | Gut Microbes |
| タイトル | Discovery and characterization of antitumor gut microbiota from amphibians and reptiles: Ewingella americana as a novel therapeutic agent with dual cytotoxic and immunomodulatory properties |
| 著者 | Seigo Iwata, Nagi Yamasita, Kensuke Asukabe, Matomo Sakari, Eijiro Miyako* |
| 掲載日 | 2025年12月10日 |
| DOI | 10.1080/19490976.2025.2599562 |
【研究資金】
本研究は、以下の研究資金の支援を受けて実施されました。
日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(A)(課題番号:23H00551)
同 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)(課題番号:22K18440)
同 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(課題番号:JPJS00420230006)
科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(課題番号:JPMJSF2318)
同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2102)
令和7年12月15日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/12/15-1.html本学発ベンチャー企業「BioSeeds株式会社」と学生の加藤さんが「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2025」で最優秀起業家賞・優秀起業家賞を受賞
10月28日(火)、石川県地場産業振興センターで開催された「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2025」において、本学発ベンチャーであるBioSeeds株式会社が最優秀起業家賞を、学生の加藤裕介さん(博士後期課程3年、物質化学フロンティア研究領域、松村和明研究室)が優秀起業家賞を受賞しました。
本コンテストは、革新的な技術や独自性のあるビジネスプランをもとに石川県での起業を促進し、将来の成長が期待される起業家を認定するもので、平成19年から毎年開催されています。これまでに、バイオテクノロジー、IT関連など独自の技術を持つ企業や、地域活性化などをテーマとした企業など、ユニークなビジネスプランを含め、数多くのスタートアップ企業が誕生しました。
※参考:ISHIKAWA START UP!
■受賞年月日
令和7年10月28日
■最優秀起業家賞
新型RNA/DNA分析装置「BioMuRun(バイオミューラン)」の開発・製造そして世界への販売
BioSeeds株式会社 ビヤニ マニシュ氏
概要:
バイオミューランは、進化分子工学や電気化学などの技術を駆使して開発した装置です。新型コロナウイルスの流行時に浮き彫りになった、「高価な装置がないと検査ができない」「変異株が見分けられない」「大量の検査が困難」といった課題を解決する装置で、本体は1辺が12センチメートルのサイコロ型で、使い捨てのカートリッジをセットし、パソコンやタブレットに接続すれば、わずか5分で10検体を同時に検査が可能です。PCR検査と同等の高い精度を誇り、変異株の特定も可能。コロナだけでなく、インフルエンザやノロウイルス、結核などの検査など感染症に対応できます。
装置本体だけでなく消耗品のカートリッジで収益を上げるビジネスモデルを採用し、装置は石川県内の企業、カートリッジはインドで製造します。特許も取得済みで2026年に人口14億人を抱えるインド市場で、大学や研究機関向けに販売を開始。その後、日本市場でも販売を計画しています。2028年からは医療用途へも展開し、インドと日本、日本と世界の架け橋になろうと意欲を燃やしています。
受賞にあたって一言:
日本に来て28年目になります。BioMuRunは 2001年からコンセプトを創り、プロトタイプ1号から6号まで製作し本年やっと完成しました。インドと日本の合作で生まれた装置で、感染症の検査のみならず、DNA、RNAの分析など幅広く使用が可能です。
ポータブルで安価なこの装置をPCRなど大型機器を備えることのできない発展途上国などに普及し、将来のパンデミックに備えることを目指しています。ISICO主催のスタートアップビジネスプランコンテストで最優秀賞起業賞を頂き、その名に恥じぬよう石川県から世界に羽ばたく企業になるべく全力を尽くして参ります。引き続き皆様のご支援を期待しております。
バイオシーズ株式会社 社長 ビヤニ・マニシュ
バイオシーズ株式会社 社長 ビヤニ・マニシュ氏
■優秀起業家賞
新規凍結保存法を用いた豚精液の凍結保存事業
北陸先端科学技術大学院大学 博士後期課程3年 加藤裕介
概要:
本事業では、未だ実用化に至っていない「豚凍結精液」の確立を目指します。豚凍結精液は、現在広く普及している豚人工授精に多くの利点をもたらすだけでなく、豚精液の国際流通や付加価値の高い精子の販売といった、養豚業界の新たな市場を開拓する可能性を秘めています。
受賞にあたって一言:
このたびは優秀起業家賞を頂き、大変光栄に存じます。ファイナリストの中では唯一の学生でしたが、チームとして評価をしていただいたと思っております。本事業の共同研究者であり、指導教員である松村和明教授に、この場を借りて心より御礼申し上げます。また、本事業のブラッシュアップに多くのご助言をいただきました、株式会社SAKU代表取締役の谷沢鷹続様と石川県産業創出支援機構の皆様に、深く感謝いたします。
北陸先端科学技術大学院大学 博士後期課程3年 加藤裕介
博士後期課程3年 加藤裕介氏(右)
令和7年12月11日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/12/11-1.html「BioJapan 2025」に出展
10月8日(水)から10日(金)までの3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて「BioJapan 2025」が開催されました。会期中の来場者数は22,167名(前回比141%)にのぼり、会場は多くの熱気と交流にあふれました。
本学からは、超越バイオメディカルDX研究拠点(eMEDX)がブースを出展し、都 英次郎教授によるプレゼンテーション「複合細菌AUNを用いた固形がん治療法」を行いました。会期中は、eMEDX会員をはじめ、ライフサイエンス関連の製造業や教育・学習支援業など、幅広い分野の方々にブースや出展者プレゼンテーションへお立ち寄りいただき、活発な意見交換が行われました。ご来場いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
今後もeMEDXでは、健康・医療・ライフサイエンス分野における最先端の研究や取り組みを紹介しながら、未来志向の共創を通じて、産学官連携の新たな可能性を発信してまいります。
【超越バイオメディカルDX研究拠点】
https://www.jaist.ac.jp/ricenter/emedx/




令和7年10月24日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/10/24-1.html10月30日(木)~11月1日(土) T-Messe2025富山県ものづくり総合見本市に出展
10月30日(木)から11月1日(土)までの3日間、北陸最大級の産業展示会「T-Messe2025富山県ものづくり総合見本市」が富山産業展示館(テクノホール)にて開催されます。本展示会は隔年開催され、工作機械・産業機械、電子・電機、IT、プラスチック、アルミ、繊維、医薬品、化学など、多彩な分野の先端技術や製品が集結する場として、国内外から大きな注目を集めています。
本学からは「超越バイオメディカルDX研究拠点」がブース出展し、健康・医療・ライフサイエンス分野における最新の取組や研究成果を紹介します。未来志向の共創を通じて産学官の新たな連携の可能性を発信し、社会に新しい価値を創出する取り組みを広く紹介します。
ご来場の際には事前登録のうえ、ぜひ本学ブースへお立ち寄りください。
(来場案内)https://www.toyama-tmesse.jp/
※事前登録:無料
| 日 時 | 令和7年10月30日(木)~11月1日(土) 10:00~17:00(最終日は16:00まで) |
| 会 場 | 富山産業展示館 (テクノホール)(〒939-8224 富山市友杉1682番地) |
| ブース出展 |
【ブース名】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点 【ブースNo.】 E-53 |
詳細はこちらをご覧ください。
・T-Messe2025富山県ものづくり総合見本市 公式ホームページ
[11/26]JAIST-OIST 第2回共同シンポジウム「先端科学技術×Gendered Innovation」
本学(JAIST)と沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、昨年度より、両大学間における共同研究の発展と促進を目的として共同シンポジウムを開催しており、第2回となる今回は、下記のとおり、「先端科学技術とGendered Innovation(ジェンダード・イノベーション)の融合」をテーマに開催します。
性差や多様性への視点を研究の初期段階から取り入れることにより、科学の質と価値の向上が期待されるとともに、より包摂的で持続可能な社会基盤の構築にもつながります。本シンポジウムでは、第一線で活躍する研究者らによる講演や、実践事例の紹介を通じて、研究にジェンダー視点を取り入れることがいかに新たな発見や社会的インパクトをもたらすかを探っていきます。
世界水準の研究を進めているOISTの研究者や学生が本学に一堂に会するまたとない機会です。研究者としての視野を広げ、多様な知見に触れていただけることを期待しています。皆様の積極的なご参加をお待ちしています。
| 開催日時 | 令和7年11月26日(水)10:00~19:30 |
| 会 場 | 石川ハイテク交流センター(能美市旭台2-1) |
| 対 象 | 両大学の教職員・学生 |
| テーマ | 先端科学技術×Gendered Innovation |
| 言 語 | 英語 |
| 参加費 | 無料 |
| 参加申込 | 参加は事前来場登録制としていますので、必ず下記よりお申込みください。 https://forms.cloud.microsoft/Pages/ResponsePage.aspx?id=ix6edBLiak-3euULCFd3xZm_Pi-N6A9CtEfOyCZ414pUOTBHVFNLMlRXWVVONEZKU1BCQzZOSFdFNy4u&lang=en-US |
| プログラム | 10:00~ 開会挨拶:JAIST 寺野学長、OIST Markides 学長 10:20~ 基調講演 *各講演45分 ① Dr. Sowmya Swaminathan(Springer Nature, Director, DEI, Research)
<Title> How publishers can support progress on gender representation
<Abstract> Women's representation in research has increased significantly in the last two decades. Recent data from the European Commission shows that women globally represent 34% of corresponding authors. There is variation by discipline and region with women representing 40-60% of researchers in some regions and disciplines. Nevertheless, across all global regions and disciplines, the gender gap increases with seniority with lower representation of women. I will speak about how Springer Nature is taking a data-informed approach to understand gender representation in the groups of researchers we work with, in the context of peer review and in the research we publish.
② 佐々木成江教授(東北大学DEI推進センター) <Title> Advancing Gendered Innovations in Research and Education: Toward Excellence in Science & Technology
<Abstract> In many fields of research and development in science and technology, men have often been taken as the standard subjects, while women have tended to be overlooked. Gendered Innovations is an approach that integrates sex and gender analysis into the design of research and technological development. This approach stimulates creativity and leads to new discoveries and innovations. In recent years, intersectional analysis has also been emphasized, taking into account multiple attributes, including sexuality, age, ability, race, ethnicity, geographic location, and socioeconomic status. Internationally, funding agencies and peer-reviewed journals are increasingly encouraging or requiring the consideration of sex and gender differences in grant applications and manuscript submissions. In Japan, such requirements are likewise expected to influence publications and international collaborations. In this lecture, I will present case studies of Gendered Innovations, discuss trends in Japan and abroad, and explore the role of higher education and research institutions.
11:55~ 講演者によるパネルディスカッション (12:30~14:00 昼食休憩) 14:00~17:00 テーマ別セッション *3会場で同時開催 ① 人類の未来とこれからの知性-多様性に根差した新しい知の構築に向けてー (RRI+AI×Gendered Innovation) ・セッションチェア:JAIST 白肌教授 ・司会:JAIST 中分准教授 ・発表:JAIST 白肌教授、岡田教授 OIST 銅谷教授、Dr. Menezes Carvalho ② MedTechの進化と包摂的未来-性差・多様性を取り入れた医療技術開発へー (eMEDX×Gendered Innovation) ・セッションチェア:JAIST 松村教授 ・司会:JAIST 小泉教授 ・発表:JAIST 松村教授、鄭教授、都教授 OIST Dr. Toledo Patino, Dr. Yamamura ③ 量子研究と社会的インパクトー包摂的テクノロジーとしての量子技術を問うー (量子×Gendered Innovation) ・セッションチェア:JAIST 大島教授 ・司会:OIST Dr. Fischer ・発表:JAIST リム教授、髙木准教授 OIST Dr. Kurecic, Dr. Lo Piparo 17:15~19:30 学生フラッシュトーク、交流会 |
| 学生フラッシュ トーク |
JAISTとOISTの学生がそれぞれ自分の研究内容を90秒で発表するイベントです。詳細はこちら 。 JAIST側の発表者を募集しますので、発表者としての参加をご希望の方は下記URLからお申し込みください。 https://forms.office.com/r/TBgxpyYpcq |
| 基調講演者に 対する質問 |
基調講演者のお二人に対する質問を広く募集しますので、下記URLから送付ください。 https://app.sli.do/event/a2BvajdAkKs9ewURRxwgwf |
| 本件問合せ先 |
研究推進課 学術研究推進係 TEL:0761-51-1907 / 1912 E-mail:suishin@ml.jaist.ac.jp |
10月23日(木)~24日(金) 北陸技術交流テクノフェア2025の特別企画展に出展
10月23日(木)・24日(金)、福井県産業会館で開催される北陸三県の企業・大学・研究機関が一堂に会する地区最大級の総合展示会「北陸技術交流テクノフェア 2025」の特別企画展に、超越バイオメディカルDX研究拠点が出展機関として選抜されました。
「ヒトと企業を輝かせる ウェルビーイングテクノロジー展」と題されたこの特別企画展では、個人の生活の質向上にとどまらず、企業の生産性向上や社会の持続可能な発展に寄与する技術やソリューションを紹介。健康経営、環境対応、リスクマネジメントなど、多様な分野の最新技術を結集し、未来の可能性を探るとともに、新たな価値創造やイノベーションのヒントを提供する場となっています。
超越バイオメディカルDX研究拠点では、健康・医療・ライフサイエンス分野における最新の取組や研究成果を紹介するとともに、未来志向型の共創を通じて産学官連携の新たな可能性を発信していきます。
ご来場の際には、ぜひお立ち寄りください。
(来場案内)https://www.technofair.jp/
※事前登録:無料(当日の来場登録:無料)
| 日 時 | 10月23日(木) 10時00分~17時00分 10月24日(金) 10時00分~16時00分 |
| 会 場 | 福井県産業会館(〒918-8135 福井県福井市下六条町103) |
| ブース出展 |
【ブース名】 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 超越バイオメディカルDX研究拠点 【小間番号】 S-3 |
詳細はこちらをご覧ください。
・北陸技術交流テクノフェア2025 公式サイト
特殊なダイヤモンドの針を開発し超高速で変化する電場の局所計測に成功
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| 国立大学法人筑波大学 国立大学法人 慶應義塾大学 |
特殊なダイヤモンドの針を開発し
超高速で変化する電場の局所計測に成功
NV中心と呼ばれる格子欠陥を導入したダイヤモンドを原子スケールの空間分解能を持つ原子間力顕微鏡(AFM)の探針(プローブ)に用い、二次元層状物質の表面近傍の電場をフェムト秒(1000兆分の1秒)・ナノメートル(10億分の1メートル)の時空間分解能で計測することに成功しました。
| ダイヤモンドの結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがあります。これをNitrogen-Vacancy(NV)中心と言います。そして、NV中心を導入したダイヤモンドに電界を加えると、その屈折率が変化するようになります。これは電気光学(EO)効果と呼ばれる現象で、ダイヤモンド単体では実現していませんでした。 本研究チームはこれまでに、NV中心を導入した高純度ダイヤモンドに1000兆分の1秒という極めて短時間だけパルス光を放出するフェムト秒レーザーを照射し、ダイヤモンドのEO効果を計測することで、ダイヤモンドの格子振動ダイナミックスを動的に高感度に検出することに成功しています。このことは、ダイヤモンドが超高速応答するEO結晶として利用可能で、電場を検出する探針(ダイヤモンドNVプローブ)となり得ることを示しています。 そこで本研究では、NV中心を導入したダイヤモンドの超高速EO効果と、原子スケールの空間分解能を有する原子間力顕微鏡(AFM)技術とを融合し、フェムト秒(fs=1000兆分の1秒)の時間分解能とナノメートル(nm=10億分の1メートル)の空間分解能で局所的な電場のダイナミックスを測定できる、時空間極限電場センシング技術を開発しました。そして、このセンシング技術を用いることで、二次元の原子層が層状に重なった二次元層状物質であるセレン化タングステン(WSe2)試料の表面近くの電場を500 nm以下かつ100 fs以下の時空間分解能でセンシングできました。 ダイヤモンドNVプローブはスピンや温度の変化にも感度があるため、本研究成果は、電場の検出に加え、磁場や温度を検出するためのセンシング技術としても展開されることが期待されます。 |
【研究代表者】
筑波大学数理物質系
長谷 宗明 教授
北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアル・デバイス研究領域
安 東秀 准教授
慶應義塾大学理工学部
ポール フォンス 講師(研究当時、同大学同学部電気情報工学科教授)
【研究の背景】
ダイヤモンド中の不純物には窒素やホウ素などさまざまな種類があります。その中でも、点欠陥に電子や正孔が捕捉され、発光を伴う種類のものはダイヤモンドを着色させるため、「色中心:カラーセンター」と呼ばれます。色中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、温度や電場を読み取る量子センサー注1)として用いられています。
量子センサーの中でも、ダイヤモンドに導入した窒素―空孔(NV)中心注2)と呼ばれる複合欠陥を用いたセンサーは、まだまだ発展途上の技術ですが、高空間分解能・高感度が要求される細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーへの応用など、新しい可能性が期待されています。
本研究チームは、フェムト秒(1000兆分の1秒)の時間だけ近赤外域の波長で瞬くフェムト秒超短パルスレーザー注3)を用い、NV中心を導入したダイヤモンドの電気光学(EO)効果注4)を実時間分解計測することで、ダイヤモンドの格子振動ダイナミックスを動的に高感度に検出することに成功しています参考文献 a)。このことは、ダイヤモンドが超高速応答するEO結晶になり、電場検出の探針(プローブ)となり得ることを示すものです。
これまでもダイヤモンドを原子間力顕微鏡(AFM)注5)と組み合わせた電場センシングの試みはなされていましたが、局所ダイナミックスを動的に評価できる手法はほとんどありませんでした。特に時間分解能に関しては、発光測定に基づく従来の手法ではナノ秒程度が限界であり、ピコ秒以下の超高速時間分解能に関しては、全く開拓されていませんでした。
【研究内容と成果】
本研究では、量子光学(フェムト秒超短パルスレーザーを用いたダイヤモンドのEO効果)と走査プローブ顕微鏡(SPM)の一種である原子間力顕微鏡(AFM)技術を融合することで、光の回折限界を超える空間分解能に加えて、今までの検出限界を超える超高速時間分解能で局所的な電場計測を実現することを目指しました(図1)。
極めて不純物が少ない高品質のダイヤモンド結晶の表面近傍(深さ40nm)に、密度を制御したNV中心を導入し、そのダイヤモンド結晶をレーザーカットおよび集束イオンビーム(FIB)技術注6)を駆使することで、先端径が500 nm以下のダイヤモンドNVプローブに加工することに成功しました。このダイヤモンドNVプローブを、フェムト秒超短レーザーを組み込むことが可能な、ピエゾ抵抗効果注7)に基づく自己センシング方式注8)のAFMのカンチレバーに取り付けました(図2)。
このシステムを用いて、まずガリウムヒ素(GaAs)半導体基板の表面電場を調べました。フェムト秒超短パルスレーザーの出力光をビームスプリッタで約10対1に分岐し、強い方を励起のためのポンプ光、弱い方を探索のためのプローブ光とします。電子が電流を運ぶn型GaAs試料は高強度のポンプ光で励起され、プローブ光はダイヤモンドNVプローブに入射されます(図3a)。まず、ダイヤモンドNVプローブの有無による時間分解EO信号の検出感度を確認するため、ダイヤモンドNVプローブを用いないマクロ計測により時間分解EO信号を計測したところ、励起直後(Time delay=時間遅延0 ps)に立ち上がり、数ps(ps=1兆分の1秒)以内に緩和しポンプ光を当てる前に戻る信号が得られました(図3b)。またNVセンターを導入したダイヤモンドNVプローブを通じて、n型GaAsの表面電場を検出することに成功しました(図3c)。ダイヤモンドNVプローブの導入によりEO信号の大きさは約1/42に減少しましたが、局所計測に成功したと言えます。
さらに二次元層状物質注9)であるセレン化タングステン(WSe2)単結晶をシリコン基板上に転写した試料を用いて実験を行いました。このWSe2試料では、場所によって結晶の厚さが異なっていますが、光学顕微鏡で銀白色のバルク(Bulk)結晶(厚さが10原子層以上の結晶)を見つけ、このバルク結晶と接する紫色の単層(1 ML)部分との界面に着目しました(図4a)。この厚さの異なる界面を用いて、局所的な表面電場の計測を行ったところ、単層部分とバルク部分のキャリア特性を反映した表面電場信号を、500 nm以下かつ100 fs以下の時空間分解能でセンシングすることに成功しました(図4a,b)。また時間分解EO信号の減衰を指数関数を用いてフィッティング(モデル化)したところ、単層部分では約200フェムト秒で緩和する成分のみが観測されました。一方、バルク部分では、この成分に加えて、約2psで緩和する遅い成分の寄与があることが分かりました(図4c)。このことは、単層部分では電場は基板との相互作用などで高速に緩和するのみなのに対し、バルク部分では、表面電場と結合したキャリアのバンド内緩和やバレー間緩和注10)が寄与していることを示しています。n型GaAsの時間分解EO信号による電場検出感度を見積もると、約100 V/cm/
(Hzは周波数)となりました。これは発光測定に基づく従来の手法で得られたマイクロ秒時間領域でのDC(直流)電場センシングと同等の検出感度を達成したことになります。最近のマイクロ秒時間領域でのAC(交流)電場センシングに関する検出感度には2桁及びませんが、本手法ではDC(直流)電場センシングと同等の検出感度で500 nm以下かつ、100フェムト秒というマイクロ秒を遙かに凌ぐ高い時空間分解能が得られることが示されたと言えます。
【今後の展開】
今回開拓した時空間極限センシング技術は、例えば炭化ケイ素(SiC)などのパワー半導体材料や燃料電池材料内での局所電場検知、トポロジカル絶縁体における局所電場検知など、基礎物理・化学のための基盤技術となることが期待されます。また、NV中心を含むダイヤモンドNVプローブはスピンや温度の変化にも感度があるため、本研究のアプローチは、電場の検出に加え、磁場や温度を検出するためのセンシング技術としても展開可能であると言えます。例えばレーザー医療や分子レベルでの細胞の計測や制御を通じて、癌の治療をはじめとする量子生命科学の分野にも波及しうる革新的な展開が期待されます。
【参考図】

| 図1 本研究で行なった実験の概要図 ダイヤモンドNVプローブを用いた超高速ポンプ・プローブ電場センシング測定の概略図。試料上の各指定点においてAFMプローブを垂直に接近・後退させる「ピンポイントモード」で測定を行った。また試料はピエゾスキャナーを用いてx-y方向に走査される。 |

| 図2 本研究で作製したダイヤモンドNVプローブ概要図 (a) FIBで作製したダイヤモンドNVプローブ(探針)の走査型イオン顕微鏡像。マイクロメートルサイズに加工されたダイヤモンド結晶の一部が探針となっている。(b) ダイヤモンドNVプローブの探針部分のフォトルミネッセンス画像。赤色の部分から探針の直径が500 nm以下であることが分かる。(c)カンチレバーに取り付けたダイヤモンドNVプローブの光学顕微鏡像。カンチレバーは自己センシング方式用の回路部分の上部に位置しており、その先端に探針部分を含むダイヤモンドNVプローブが取り付けられている。 |

| 図3 ダイヤモンドNVプローブを用いたn型GaAs表面の電場センシング (a)ダイヤモンドNVプローブ先端近傍の表面バンド曲げと接触モードの配置図。表面状態はフェルミエネルギー(EF)を示すベル形状の破線で表され、下側のバンドは電子(-)で占有されている。VBは価電子帯、CBは伝導帯を示す。(b)ダイヤモンドNVプローブを用いないマクロ計測によるn型GaAsウェハーからの時間分解電気光学信号。(c)ダイヤモンドNVプローブを用いたn型GaAsからの局所的時間分解電気光学信号。(b)のマクロ計測の場合に比べてEO信号の大きさは約1/42になっているが、検出感度が十分であることが確認された。 |

| 図4 WSe2のEO信号の時空間測定 (a) ダイヤモンドNVプローブを用いた60 µm ×60 µm領域のトポグラフ画像。色の薄い部分がバルク(Bulk)結晶である。左上の挿入図は光学顕微鏡像であり、銀白色の部分はバルク(Bulk)結晶である。 局所計測では、単層(1ML)領域(P4)からバルク(Bulk)領域(P11)までを500 nmステップで計測する。(b)ダイヤモンドNVプローブを用いて得られた局所的な時間分解電気光学信号。P4からP11に行くに従い、単層(1ML)からバルク(Bulk)領域を測定している。図(b)の黒実線は、単一指数関数(単層=1ML領域のデータについて)または二重指数関数(バルク領域のデータについて)を用いたフィッティング(モデル化)を示す。(c) P4からP11の異なる位置における500 nmステップで得られた時間分解電気光学信号へのフィッティングにより得られた緩和時間定数。エラーバーは標準偏差を示す。 |
【用語解説】
量子化した準位や量子もつれなどの量子効果を利用して、磁場、電場、温度などの物理量を超高感度で計測する手法のこと。
ダイヤモンドは炭素原子から構成される結晶だが、結晶中に不純物として窒素(Nitrogen)が存在すると、すぐ隣に炭素原子の抜け穴(空孔:Vacancy)ができることがある。この窒素と空孔が対になった「NV(Nitrogen-Vacancy)中心」はダイヤモンドの着色にも寄与する色中心と呼ばれる格子欠陥となる。NV中心には周辺環境の温度や磁場の変化を極めて敏感に検知して量子状態が変わる特性があり、この特性をセンサー機能として利用することができる。このため、NV中心を持つダイヤモンドは「量子センサー」と呼ばれ、次世代の超高感度センサーとして注目されている。
パルスレーザーの中でも特にパルス幅(時間幅)がフェムト秒(1000兆分の1秒)以下の極めて短いレーザーのこと。光電場の振幅が極めて大きいため、2次や3次の非線形光学効果を引き起こすことができる。
物質に電場を加えると、電場の強度に応じて物質の屈折率が変化する効果のこと。
先端が鋭い探針で試料の表面を走査し、探針と表面との間に働く微少な力を測定して表面構造を原子スケールの高分解能で観察することができる顕微鏡のこと。AFM探針は、バネのようにしなるカンチレバーの先端に取り付けられており、コンタクトモードでは、この探針と試料表面を微小な力で接触させ、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針・試料間距離をフィードバック制御しながらX―Y方向(水平方向)に走査することで、表面形状を画像化できる。
イオンビーム(荷電しているイオンを高電界で加速したもの)を細く絞ったものである。物質の微細加工、蒸着、観察などの用途に用いられる。
半導体材料などに機械的なひずみ(力による変形)を与えたとき、材料の電気抵抗が変化する効果のこと。
通常のAFMでは、レーザー光をカンチレバー背面に照射し、反射したレーザービームの位置変化を位置センサーで計測することで、カンチレバーのたわみ量(表面構造によりたわんだ量)を読み取る。カンチレバーのたわみ信号を光で読み取ることから、これを光てこ方式と呼ぶ。一方、自己センシング方式のAFMでは、光てこ方式のようにレーザーと一センサーを必要とせず、ピエゾ抵抗効果などのカンチレバー自身の物理量の変化からカンチレバーのたわみ量を読み取ることができる。
共有結合が二次元方向だけに伸びている結晶のこと。原子一層レベルの二次元原子層が、ファンデルワールス力で積層して三次元結晶を形成している。炭素の二次元原子層であるグラフェンが積層したグラファイト、近年盛んに研究されるようになった遷移金属カルコゲナイドなどがある。本研究で調べたセレン化タングステン(WSe2)も遷移金属カルコゲナイドである。
半導体などにおいて、バレーとは電子バンドの極小点を指す。異なるバレー間にキャリアが散乱(遷移)することでエネルギーを失う緩和過程をバレー間緩和と呼ぶ。
【研究資金】
本研究は、科研費による研究プロジェクト(25H00849, 22J11423, 22KJ0409, 23K22422, 24K01286, 24H00416, 23H00264)、および国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「ダイヤモンドを用いた時空間極限量子センシング」(研究代表者:長谷 宗明)(JPMJCR1875)の一環として実施されました。
【参考文献】
a) T. Ichikawa, J. Guo, P. Fons, D. Prananto, T. An, and M. Hase, 2024, Cooperative dynamic polaronic picture of diamond color centers. Nature Communications. 15, 7174 (10.1038/s41467-024-51366-x).
【掲載論文】
| 題名 | An ultrafast diamond nonlinear photonic sensor. (超高速ダイヤモンド非線形光センサー) |
| 著者名 | D. Sato, J. Guo, T. Ichikawa, D. Prananto, T. An, P. Fons, S. Yoshida, H. Shigekawa, and M. Hase |
| 掲載誌 | Nature Communications |
| 掲載日 | 2025年9月25日 |
| DOI | 10.1038/s41467-025-63936-8 |
令和7年9月26日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/09/26-1.html本学教員がEurekAlert! Feature Storyに掲載されました
AAAS(アメリカ科学振興協会)が運営する世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」ウェブサイト内の「Feature Story」に、上原教授、岡田教授、栗澤教授および谷池教授が紹介されました。この「Feature Story」は、世界中の大学や研究機関の研究成果について、研究の背景や意義、研究者の視点や社会への影響などを深堀して、わかりやすくまとめた内容となっています。
それぞれの記事は、以下からご覧ください。
- 上原隆平教授(コンピューティング科学研究領域)
"Unfolding patterns: The computer science behind origami, puzzles, and games"
折り紙・パズル・ゲームに潜む計算複雑性を理論コンピューターサイエンスの視点から解析。最適な折り手順を導くアルゴリズムの開発が、太陽電池の設計やドラッグベクター(薬物輸送体)などへの応用にも期待されています。
https://www.eurekalert.org/news-releases/1093788
- 岡田将吾教授(人間情報学研究領域)
"Bridging the emotional gap in human-AI communication"
視線・身振り・声の抑揚などのマルチモーダル情報から感情を認識し、より人間に寄り添うAIの実現を目指すアフェクティブ・コンピューティング(※)研究。教育や精神医療への応用にも期待が広がります。
※Affective Computing:人間の感情や情動を計算論的に理解・指定・活用する学際的研究領域
https://www.eurekalert.org/news-releases/1093782
- 栗澤元一教授(物質化学フロンティア研究領域)
"Toward multitasking drug carriers that do more than just deliver"
緑茶成分「EGCG」を活用し、ドラッグキャリアそのものに治療効果を持たせたナノ粒子を開発。高い薬物搭載率と長寿命を両立し、がんや白血病の治療効果向上に貢献する革新的DDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)が注目されています。
https://www.eurekalert.org/news-releases/1093781
- 谷池俊明教授(物質化学フロンティア研究領域)
"Accelerating materials design with high-throughput experiments and data science"
機械学習とハイスループット実験(※)を組み合わせ、材料探索を飛躍的に加速。未知の反応や触媒の発見が可能となり、資源循環・化学プロセスの革新、持続可能な社会づくりに貢献する研究基盤を構築しています。
※ハイスループット実験:多数のサンプルや条件を同時に、または短時間で処理する実験手法
https://www.eurekalert.org/news-releases/1093790
令和7年8月19日
出典:JAIST お知らせ https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2025/08/19-1.html糖鎖による抗体ダイナミクスの制御機構を解明 ~分子経絡が抗体医薬設計の新たな鍵に~
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| 大学共同利用機関法人 国立大学法人 東京科学大学 公立大学法人 名古屋市立大学 ⼀般財団法人 国立大学法人 大阪大学 国立大学法人 |
糖鎖による抗体ダイナミクスの制御機構を解明
~分子経絡が抗体医薬設計の新たな鍵に~
自然科学研究機構(生命創成探究センター)の谷中冴子 准教授(現 東京科学大学 准教授)、加藤晃⼀ 教授(生命創成探究センター、名古屋市立大学)らは、抗体の糖鎖修飾、特にガラクトース付加が、抗体分子の構造と動態に及ぼす影響を原子レベルで解明しました。
本研究の成果は、国際科学雑誌 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」に掲載予定です。論文は日本時間2025年8月5日の週にオンライン公開される予定であり、DOIおよび掲載URLは公開後に付与されます。
【発表のポイント】
私たちの体には、病原体から身を守るための免疫システムが備わっています。その中心的な役割を担うのが「免疫グロブリンG(IgG)」注1) と呼ばれる抗体です。IgGは、特定の抗原を認識して結合するだけでなく、Fc受容体や補体といったエフェクター分子との相互作用を通じて、様々な免疫応答を誘導します。本研究では、IgGのFc領域 注2) に結合した「糖鎖」の修飾が、IgGの動的な構造変化を制御し、その結果として免疫機能が調節されるメカニズムを、計算科学と実験科学を融合したアプローチで明らかにしました。特に、本研究では、糖鎖修飾による影響が、あたかも私達の体の中に張り巡らされた経絡のように、分子レベルで伝播していく「分子経絡」注3) の重要性に着目しました。
【研究の背景】
治療用抗体は、がんや自⼰免疫疾患など、さまざまな疾患の治療に用いられています。抗体の効果は、標的抗原への結合だけでなく、Fc領域を介したエフェクター機能 注4) の発揮によっても大きく左右されます。Fc領域の糖鎖修飾 注5) は、抗体のエフェクター機能を調節する重要な因子であり、そのメカニズム解明は、より効果的な抗体医薬品の開発につながると考えられています。
【本研究の手法と成果】
研究グループは、遺伝子工学的手法と酵素反応を組み合わせることで、糖鎖構造が異なるIgG1-Fcを調製しました。これらについて、安定同位体標識NMR分光法 注6) を用いてFc領域の動的構造を解析するとともに、分子動力学シミュレーション 注7) によって糖鎖修飾がFc領域のコンフォメーション変化に与える影響を評価しました。また、動的ネットワーク解析を用いて、「分子経絡」を同定しました。NMR分光法と分子動力学シミュレーションの結果から、ガラクトース 注8) 残基は糖鎖の動きを止める「錨」およびFc領域全体の動きを抑える「楔」としてはたらき、フコース 注9) 除去は特定のFc受容体との結合に関与するアミノ酸残基の動態を変化させることが明らかになりました。これらの結果は、糖鎖修飾がIgGのFc領域の動的構造を制御し、エフェクター機能を調節するメカニズムを原子レベルで理解する上で重要な知見となります。特に、「分子経絡」の存在は、糖鎖修飾の効果がFc領域全体に伝播する様子を示唆しています。

| (図)(A)糖鎖のガラクトース残基での構造変化がFc分子内を伝わる様子を示している。(B)ガラクトース残基は糖鎖(黄色の丸)の動きを止める「錨」およびFc領域全体の動きを抑える「楔」としてはたらき、エフェクター分子との相互作用を助けている。 |
【成果の意義および今後の展開】
本研究成果は、治療用抗体の開発において、Fc領域の糖鎖修飾を最適化するための合理的な設計基盤を提供します。今後は、糖鎖修飾と抗体の構造・機能相関に関するさらなる研究を進めることで、また「分子経絡」の操作という新たな視点を取り入れることで、より効果的かつ安全な抗体医薬品の開発に貢献できると期待されます。
【用語解説】
【論文情報】
| 掲載誌 | Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America |
| タイトル | Exploring Glycoform-Dependent Dynamic Modulations in Human Immunoglobulin G via Computational and Experimental Approaches |
| 著者 | Saeko Yanaka, Yoshitake Sakae, Yohei Miyanoiri, Takumi Yamaguchi, Yukiko Isono, Sachiko Kondo, Miyuki Iwasaki, Masayoshi Onitsuka, Hirokazu Yagi, Koichi Kato*(*責任著者) |
| DOI | |
| 掲載日 |
【著者情報】
東京科学大学 総合研究院 フロンティア材料研究所)
名古屋市立大学大学院薬学研究科)
【研究サポート】
本研究は、文部科学省科学研究費助成事業(JP20K15981 および JP23K24018 谷中冴子、JP19H01017 および JP24H00599 加藤晃⼀)、日本医療研究開発機構(AMED)(JP21ae0121020 および JP23ak0101209 谷中冴子、JP21ae0121013 加藤晃⼀)、文部科学省研究大学総合研究育成事業:研 究大学強化促進事業(CURE)課題番号JPMXP1323015488(Spin-LプログラムNo. spin24XN014)、生命創成探究センター共同利用研究(24EXC901、25EXC603)、および科学技術振興機構(JST)戦略的 創造研究推進事業(CREST)(JPMJCR21E3 加藤晃⼀)の助成を受けたものです。また、本研究は文部 科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(分子・物質合成)、大阪大学蛋白質研究所共同利用・共 同研究拠点 NMRCR-16-05, 17-05, 18-05, 19-05, 20-05, 21-05、計算科学研究センター(24-IMS-C197)、文部科学省先端研究設備共用促進事業(コアファシリティ構築支援プログラム)JPMXS0441500024、国際・産学連携インヴァースイノベーション材料創出(DEJI2MA)プロジェクト、およびヒューマングライコームプロジェクトの支援を受けて行われました。
令和7年8月5日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/08/05-1.htmlパターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証
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北陸先端科学技術大学院大学 科学技術振興機構(JST) |
パターン形成:分割現象における「対称性の破れ」を実証
【ポイント】
- 水の蒸発によって現れるパターン形成「界面分割現象」の新たな特徴を発見
- ポリマー分散液の蒸発界面が複数に分割するとき、「対称性の破れ」が現れることを実証
- 生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に有用
| 北陸先端科学技術大学院大学(学長・寺野稔、石川県能美市)サスティナブルイノベーション研究領域のグエン チキムロク大学院生(博士後期課程)、桶葭興資准教授らは、ポリマーが水に分散した粘性流体から現れる散逸構造[用語解説1]「界面分割現象」において、対称性の破れ[用語解説2]を実証した。これまで、界面[用語解説3]で起こる幾何学変形が、時間とともにどう進んでいくかは、不明な点が多かった。今回、明確な境界条件のもと、確率統計を通した解析を進めた結果、分割時に現れる核の位置に、空間的な「対称性の破れ」が生じることが明らかになった。これは、生体組織など自然界に見られる非対称なパターン形成の理解に有用である。 |
【研究概要】
自然界には様々な幾何学パターンがあり、例えば雪の結晶の形は、気温と水蒸気の量で多様に変化する。また、乾燥環境は水の蒸発を引き起こし、生物であればその成長過程で非対称なパターンをつくる。これまで、この幾何学性や非対称性について、数理的な解釈がなされてきたものの、物理化学的実験に基づいた再現はなされてこなかった。一方、桶葭准教授らの研究グループはこれまでに、ポリマー水分散系の蒸発界面に着目し、散逸構造「界面分割現象」を報告してきた (※1)。これは、ポリマー水溶液などの粘性流体を明確な境界のある有限空間から乾燥環境下におくと、一つの蒸発界面が複数の界面に分割される幾何学化現象である。ここで、空間軸の一つを1ミリメートル程度の隙間にすることで毛管現象[用語解説4]の物理条件が制御された空間となる。さらに、一定温度下で水の蒸発を一方向になるよう設定すると、蒸発界面直下の濃密なポリマーの密度がゆらぎ、複数の特異的位置でポリマーが析出して界面分割する。具体的には、多糖[用語解説5]の水溶液を乾燥環境下におくと、まるで界面から芽が出るようにセンチメートル単位で多糖が析出し界面が複数に分割される。ここでは、ミクロ構造の秩序化と同時に、マクロなパターンが現れることが分かっていた。しかし、非平衡で開放的な蒸発界面から引き起こされる実際の分割現象は、核形成位置の平均的情報は得られるものの、その不確定さのため複数の核形成メカニズムについては未解明な特徴が多かった。
※1. https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2023/09/22-1.html

| 図. 界面分割現象における「対称性の破れ」: A. 空間軸の一つとしてセル幅を大きくしていくと、分割現象の特徴が現れる概念図。界面がゆらぎ、対称性が破れ、そして水中に分散していたポリマーが析出する核を非同期に形成する。B. 同一条件で得られる異なる分割(二分割、もしくは三分割)と、セル幅に対する核形成位置のデータ。C. 対称性の破れを加味した分岐モデル。核1と核2とは、タイミングがずれて発生する(時間的に同期していない)。 |
そこで今回、ポリマー分散液の一つの蒸発界面が、二つ、もしくは三つに分割される空間条件に焦点をあて、その核形成位置を詳細に検討した(図A)。確率統計論を通した界面科学的な解析から、それぞれの分割数に対して、「対称性の破れ」と「非同期性」が現れ、相互に関係し合う特徴であることが分かった。核の位置については平均化による統計評価ではなく、結果に対する場合分けを通し、特徴的な「ずれ」を評価した(図B)。すると、分割点の位置には偏りがあり、セル幅に対して均等に半分、もしくは均等に三分の一に分割するわけではない、という基本原理が明らかになった。実際、二分割される場合、核はセル幅の中心ではなく、中心からずれた位置に形成される傾向となった。この「ずれ」は、セル幅を少しずつ大きくすると顕著に現れ、三分割される場合、2番目の核形成が起こるタイミングや位置に大きく影響し、非同期性として現れた。この「対称性の破れ」と「非同期性」は、時間発展の現象理解に重要である(図C)。
また、この核間隔は、ポリマー水溶液の液相と空気の界面における毛管長が影響する。今回の実証実験では、粘性流体として多糖キトサン[用語解説6] の水分散系を用いており、5~8ミリメートル程度の間隔であった。これまでにいくつかの多糖でも分割現象は実証されており、研究グループは現在、様々な化学種・物質群への拡張や現象の特徴的メカニズムの解明を進めている。これらを通して、自然界にも通ずるパターン形成の普遍的理解が期待される。
本成果は、2025年6月4日に科学雑誌「Advanced Science」誌(WILEY社)のオンライン版で公開された。なお、本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR201G)、日本学術振興会科研費 基盤研究B(JP23K21136)、日本学術振興会科研費 新学術領域研究(JP22H04532)、および公益財団法人旭硝子財団 若手継続グラントの支援のもと行われた。
【今後の展開】
生物を含め自然界には多様な散逸構造が在り、対称性の破れを明確に扱うことは重要である。パターン形成に関する歴史的研究にはチューリングパターン[用語解説7]などがあり、ソフトマテリアルを題材とした研究例も多い。これは、生物における自己組織化の理解や実空間におけるマテリアル設計に重要なテーマと認識されているためでもある。今回のような実検証を通じたパターン形成の理解が進めば、今後、高分子科学、コロイド科学、界面科学、材料科学、流体力学、非平衡科学、生命科学などの分野への進展に留まらない。実時空間と仮想時空間を通した数理科学、シミュレーション、データサイエンスなどとの融合によって、パターン形成の理解と材料設計に有用と期待される。
【論文情報】
| 掲載誌 | Advanced Science (WILEY) |
| 題目 | Symmetry breaking in meniscus splitting: Effects of boundary conditions and polymeric membrane growth |
| 著者 | Thi Kim Loc Nguyen, Taisuke Hatta, Koji Ogura, Yoshiya Tonomura, Kosuke Okeyoshi* |
| DOI | 10.1002/advs.202503807 |
| 掲載日 | 2025年6月4日 |
【用語解説】
令和7年6月4日
出典:JAIST プレスリリース https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2025/06/04-1.htmlナノマテリアル・デバイス研究領域のHO教授のチームがRoboSoft 2025 Competitionにおいて優勝
ナノマテリアル・デバイス研究領域のHO, Anh Van教授のチームが、8th IEEE-RAS International Conference on Soft Robotics (RoboSoft 2025) Competitionにおいて、Manipulation Challenge 1st placeを獲得しました。
RoboSoft 2025は"Interdisciplinarity and Widening Horizons"をテーマとして、令和7年4月23日~26日にかけて、スイス(ローザンヌ)にて開催されたソフトロボティクスに関する国際会議です。同会議では、研究者、業界の専門家、学生が一堂に会し、最先端の進歩を探求し、様々な分野における知見を共有しました。
同会議と併催で行われたコンペティションは、実際のロボットアプリケーションに焦点を当てたシナリオで構成され、「管内移動」、「デリケートな果物の収穫」、「医療スクリーニングと介入」という3つの具体的な課題が提示されました。HO教授のチームは「デリケートな果物の収穫」の課題に参加し、最も高い得点を獲得しました。
※参考:RoboSoft 2025(Competitions)
■受賞年月日
令和7年4月26日
■研究題目、論文タイトル等
ROSE: A Rotation-Based Soft Gripper Harnessing Morphological Computation for Adaptive and Robust Manipulation
■研究者、著者
Khoi Thanh Nguyen, Nhan Huu Nguyen, and Van Anh Ho
■受賞対象となった研究の内容
このコンペティションでは、ラズベリーのような繊細な果実を収穫する際のソフトロボットグリッパーの有効性を評価します。果実の遮蔽状態の変化、密集、動きによる乱れといった実際の農業現場に見られる課題を再現することで、現実的な収穫条件をシミュレーションしています。
フィールドに即した環境を再現することで、この競技は、実用的な果実収穫において柔軟性(コンプライアンス)と力の制御を効果的に両立できるソフトグリッパーの設計を明らかにします。
この結果は、農業分野におけるソフトロボティクスの重要な役割を強調し、グリッパー技術の現在の進展を示すとともに、自動化かつ繊細な作物収穫システムに対する大きな成長可能性を示唆しています。
提案されている課題は以下の通りです:
・課題1:ロボットが単体のベリーを摘み取る
・課題2:ロボットが密集しているベリーを摘み取る
・課題3:葉に部分的に隠れた単体のベリーを摘み取る
・課題4:葉に部分的に隠れた密集したベリーを摘み取る
・課題5:動いている単体のベリーを摘み取る
当チームのソフトグリッパー「ROSE」は、すべての課題を8分未満で成功裏に完了しました。
■受賞にあたって一言
今回のコンテストは、非常に意義があり、必要な取り組みであると感じました。競技シナリオは、距離制限、葉や枝といった障害物の存在、果実の揺れ、さらには果実の柔らかさまでも再現されており、現実の環境を非常によく模倣していました。そのため、同コンテストは、ベリーの収穫能力を評価するための優れたベンチマークとなります。
また、他のチームの興味深い設計を直接見られる場でもあり、それらの実際の効果を確認できる貴重な機会でもありました。さらに、アイデアを交換したり、将来的な共同研究の可能性について議論したりするための交流の場としても、とても良い機会になりました。
今回、Holabの収穫アームが1位を獲得できたことを非常に嬉しく思っています。この成果により、多くの人に私たちのアームを知ってもらうことができ、JAISTの存在も広く認識されるようになりました。同コンテストを通じて、自分たちの技術の実力を再確認するとともに、現時点での課題も明確になり、今後の改善に向けた大きなヒントを得ることができました。
令和7年5月20日
出典:JAIST 受賞https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/award/2025/05/20-1.html








