観光の地域ブランディング
-交流によるまちづくりのしくみ-
<学芸出版社から8月30日に出版>《観光地のための「地域ブランディング」の本のご案内》
(編著者)敷田麻実・内田純一・森重昌之(北海道大学)
(著 者)朝倉俊一・岡本健・富岡耕太・稻葉正思・山脇亘一 2,000円+税
この本のテーマである「観光まちづくり」とは、観光によるまちづくりです。最近、観光に対する社会の見方が大きく変わり、観光産業の振興ばかりではなく、地域のために観光が役に立つのではないかと考える人が多くなりました。そこでこの本は、観光まちづくりに、ブランディングとマーケティングを明確に位置づけ、今までの「地域磨き型まちづくり」ではなく、地域外の観光客や消費者を意識したまちづくりを推進するための戦略をモデルと事例を使って説明しています。そのため、観光を使って新しいスタイルのまちづくりを進めようという皆さんに読んでいただきたいと考えています。
この本の特徴・・・・・・・・
【観光の関係性モデルの提案】---まったく新しい地域発の観光のとらえ方
観光の関係性モデルとは、地域で観光を推進して行く際に、地域にある資源と地域外にいる観光客や旅行会社との関係を考えることが重要であるという提案です。
この図の通り、地域資源に付加価値をつけて商品化(①ブランディング)し、それを地域外の消費者や観光客にPRや販売する(②マーケティング)するのが観光です。その結果、地域外から観光客が地域を訪れます(③観光客の受け入れ)。
また今までの観光はそれで終わっていることが多かったのですが、これからの観光は、観光客の来訪で得た利益やメリットを地域資源に還元して、持続可能な観光にする必要があります。それが④「地域づくり」です。
そして、こうした動きを進めるには、中間に関係性をコントロールする「中間システム」を設けることが重要です。
この基本構造がわかっていて、観光地域づくりを進めると、いろいろなものが見えてきます。
【持続可能な観光まちづくりがシンプルなモデルで理解できる1冊です!】
持続可能な観光まちづくりとはいったいなんでしょう。どうすれば実現できるのでしょう。この本は、そのヒントが、地域資源への還元、つまり『④地域づくり:』にあるとして、従来の観光があまり注目してこなかった、さまざまな地域還元、再投資を事例で解説しています。
【観光による社会構造の変化を予測する】
観光によって地域にお金が落とされ、それで地域振興につながる。これまで何度となく言われてきた観光による地域振興の法則です。しかし本当にそうでしょうか。また仮にそうだとしても、経済的な振興で地域はよくなるのでしょうか。
それは福祉や環境でも同じです。一分野がよくなっても、地域全体の住みやすさや魅力が上がるのではないのです。そこでこの本では、観光が地域社会を変えていくこと、そのプロセスを重視しました。今からは「観光で地域を変える」、「地域の社会的課題を解決する観光」が重要になります。
目次
第1章 観光まちづくりの新たな視点
1・1 ブランディングを欠いた観光まちづくりの問題点
1・2 観光まちづくりにおける地域ブランディングの本質
1・3 これからの観光まちづくり
第2章 地域ブランディングとマーケティング戦略への注目
2・1 ご当地カレーに見る地域振興と連携戦略-北海道富良野地域
2・2 温泉地域再生をめざした「はこだて湯の川オンパク」-北海道函館市
2・3 「らき☆すた」に見るアニメ聖地巡礼による交流型まちづくり-埼玉県鷲宮町
第3章 観光振興による地域資源への再投資を進める仕組みづくり
3・1 観光客の声を生かしたまちづくり-山形県置賜地域
3・2 安全なスキーリゾートをめざす地域協働-北海道ニセコ地域
3・3 土地買い取りで湿原保全を進める霧多布湿原トラスト-北海道浜中町
第4章 持続可能な観光まちづくりのためのシステムづくり
4・1地域の人びとのつながりから生まれる観光まちづくり-北海道標津町
4・2 政府観光局による地域マーケティング戦略-オーストラリア・タスマニア州
第5章 観光まちづくりをめざすマネジメントの実践
5・1 観光の関係性モデルで考える観光まちづくり
5・2 地域ブランディングとマーケティングの戦略
5・3 人づくりと地域資源の保全戦略
5・4 中間システムのマネジメント戦略
第6章 観光まちづくりから持続可能な地域へ
1.観光まちづくりの転換
2.適性規模と自律する観光まちづくりへ
3.観光まちづくりにおける関係性の構造転換
4.交流学-交流まちづくりへの希求
著者たちからのメーッセージ
この本は観光による交流が地域を豊かにすることに着目し、観光まちづくりにかかわる皆さんが、それをどう進めればいいのか、何がポイントになるのか、よくわかるように書かれています。観光によるまちづくりは開かれた地域をめざすこれからの時代のまちづくりです。この本を読んで、観光まちづくりに希望と戦略が持てたという気持ちになっていただけることが筆者たちの願いです。