研究室紹介About Us


篠原研究室の紹介(学生向け) (PDF file 7.6 MB).

篠原研究室の紹介(企業向け) (PDF file 1.8 MB).

はじめに

1個の分子が力を発生させてこれが駆動源となって動いたり、ものを変形させたりすることが可能になれば、微小空間で物質を輸送する分子モーターや、高感度で環境の変化を高速に検出して分子の形を自在に制御することで情報を表現する、情報処理デバイスが出来ます。

生体では既にこれらの機能を実現しているだけでなく、様々な機能を高度に組織化しています。この結果、私たち生命体は生かされています。もし、この生命 体の驚くべき卓越した機能の一部でも持つ材料を作れたら、全く新しい設計思想に基づく機械やコンピューターが出来ることでしょう。現在の最先端の生物学で は、生体高分子であるタンパク質の機能発現の機構や動作原理を明らかにしつつありますので、この概念を合成高分子(ポリマー)の設計に適用すれば、生体高 分子に匹敵した刺激や負荷などの環境変化に柔軟に対応して特性を自在に制御できる「しなやかな」合成高分子を創製できるのではないかと私は考えました。こ の合成高分子は、生体高分子タンパク質にはない実用可能な耐久性を有するだけでなく、有機合成技術に基づく分子設計に応じて、性能の制御が容易になりま す。

本研究室では、この様な考えに基づき、機能性高分子の合成から1分子構造と機能のイメージング装置の開発と観測まで、一貫したポリマー1分子の基礎研究 を行い、光と熱ゆらぎで駆動する「1分子モーター」や光で出力する「1分子情報デバイス」の実現を目指します。現在、その基盤を築くために、高分子1本の 基礎化学の開拓と生物を超えるしなやかな機能と原理の発見に挑んでいます。

私が目指している、光と熱をエネルギー源とする1分子デバイスは、無尽蔵のクリーンエネルギーである太陽光の直接的利用を可能としますので、人類の存亡をかけた世界共通の危機「エネルギー・環境問題」の解決に大きく貢献します。

キーワード

1分子 / π共役高分子 / 超分子 / ポリロタキサン / らせん / キラル / 光機能 / 熱ゆらぎ / 分子モーター / 分子機械 / 分子デバイス / モータータンパク質 / 有機合成 / 走査トンネル顕微鏡 (STM) / 原子間力顕微鏡 (AFM) / 全反射型近接場蛍光顕微鏡 (TIRFM) / 1分子イメージング装置開発 / メカトロニクス / 機械工学 / 電子工学 / ナノテクノロジー / エネルギー・環境問題 / ソフトナノマシン / 人工筋肉

関連学術分野

高分子化学 (π共役高分子の合成と物性) / 生物物理学 (モーター蛋白質のバイアスブラウン運動) / 応用物理学 (走査プローブ顕微鏡と近接場顕微鏡)

篠原研究室 研究・教育基本方針

研究基本方針

近い将来、エネルギー・環境問題がついには限界に達し、人類は存亡の危機に直面すると予測されている[1-3]。 かけがえの無い地球と人類の幸福のために、この問題を先送りすることなく抜本的に解決し、人類が21世紀以降もこの地球上で、文明を継続的に発展させる為 には、高効率でクリーンなデバイスの創出が急務である。この高効率性を究極まで突き詰めると、要求される機能発現単位のサイズはナノメートルスケールに到 達する。このサイズで機能する物質は分子であることから、分子素子という概念の元に近年この分野が急速に進展している。本研究では、分子性物質の中でも機 能材料として有用な高分子(ポリマー)に注目し、特に無尽蔵のクリーンエネルギーである太陽光そして熱エネルギーを駆動源とする革新的な分子システム、すなわち人工生命機能の創出を目指して機能性ポリマーを1分子レベルで取り扱う。

平成29年1月29日  篠 原 健 一

References
[1] 国連ホームページ:http://www.unic.or.jp/
[2] 経済産業省資源エネルギー庁ホームページ:http://www.enecho.meti.go.jp/
[3] 書籍:例えば、森田清三著、「はじめてのナノプローブ技術」、工業調査会刊 (2001) など。

*以下の文章は、読者の理解促進と参考の為、上記文献[3]第2章より抜粋した。

快適で豊かな暮らしを追い求める人類は、膨大なエネルギーを大量に消費してきた。このエネルギーの消費を加速しているのが人口増加で、現在約57億人の 世界人口が、2020年頃には地球で生活できる最大の人口である75億人に達すると推定されている。......(中略)......その結果、食料危機 や資源枯渇が発生する。また、増大するエネルギー消費に伴う化石燃料の大量消費は二酸化炭素の排出量の増大を伴い、地球の温暖化や海水温度の上昇をもたら し、砂漠化や海面上昇の原因となる。......(中略)......まさに、地球の危機、人類の危機であり、これらの危機のピークが2020年頃にやっ てくる。(以 上)

教育基本方針

地球規模の人類共通 の危機として山積している地球環境・エネルギー問題等を鑑みて、私心-私利私欲-に囚われることのない、科学技術に携わる者としての自覚と誇り、そして豊 かな人間性の上に崇高な自己犠牲の精神を宿すことが選良たる研究者・技術者の重要な要件と確信する。そのために、学生が教官から与えられたテーマとして受 動的に研究するのではなく、一日も早く自らのものとして研究テーマをとらえることのできるようなアクティブな研究室の運営を基本方針とする。
具体的には、学生とのコミュニケーションを積極的とり、学生の能力に応じて可能な限り意思を尊重して自主的に実験を遂行させ、自ら問題を見付けてこれを 解決する能力を養わせる考えである。これら一連の過程を繰り返すことにより、研究とは如何なるものなのか等の基本的かつ重要な問の答えが各々学生なりに得 られ、ひいては人類の幸福に資することができる、将来の優れた研究者・技術者としての自覚につながると期待する。

平成14年6月1日  篠 原 健 一

研究風景

高分子鎖一本の高速AFM
イメージング実験

高分子鎖一本の高速AFM
イメージング実験

新規機能分子の有機合成実験
研究室内の実験台にて

研究成果を学会にて発表
高分子学会にて

全世界に向けて研究成果を公表
ソウル(大韓民国)での国際会議にて