電機メーカー勤務 技術経営(MOT)プログラム(博士前期) 2009年3月修了,博士後期 2016年9月学位取得
研究テーマ 「プロジェクトマネジメントにおける経験知抽出の取り組み」
-----------------------------------------------------------------------------------------------------内田吉宣さん(以下 内田) 企業ではナレッジマネジメント関連の研究を続けていて、入社した当初から「いつかは博士号を」と漠然と思っていました。職場で、社員を技術経営(MOT)プログラムなどで勉強させようという動きがあり、そこに手を挙げたのが発端で、まずは修士課程を志望しました。30歳を少し過ぎた頃です。
内田 上司や先輩が卒業していたり後に教官に就かれたりで、JAISTについては多少の接点があり興味を持ちました。知識経営の生みの親である野中郁次郎先生が創設されたコースである、ということも魅力でしたし。とはいえ、入学前の説明会と資料だけでは、実際の授業があれほど面白いとまでは想像していませんでした。
内田 会社は応援してくれていましたし、妻にも結婚当初から博士号については納得してもらえていたので周囲の理解については問題ありませんでした。入学直後に長女が生まれたのですが、何とか修了することもできました。時間の制約については、やりくりしていたというより“楽しくて充実していた”記憶が残っています。大変、という感じはなかったですね。
内田 JAISTの場合、働きながら学びやすいように授業が組まれていることがありがたかったです。月~金の夜3時間と土曜日の半日で1ユニット、という集中形式なのです。
内田 週1回の授業を長期間受けて1単位、という通常のスタイルでは頭の切り替えも意外と大変なんです。「この週は忙しい」と腹を括って臨めば、毎日連続の講義は集中もしやすく何とか乗り切れる。もちろん、最優先は仕事ですから、どうしても時間がやりくりできず週後半は受講できずに落としてしまった、という単位も無かったわけではありません。それでも、興味深い授業はとにかく履修しておくよう心がけたこともあり、最終的に単位は間に合いました。
内田 そうです。仕事の都合でどうしても2年で修了できそうにないと判明した場合は、「長期履修制度」を活用したりもできます。追加の授業料を払わずに期間を伸ばすことができる、ありがたい制度だと思います。
内田 社会人コースの場合、1日フルで仕事をした後ですからね。アカデミックな話ばかりの講義主体な授業であれば睡魔に襲われたかもしれません(笑)。しかし、JAISTでは少人数でディスカッションする授業が本当に多いんです。教授の講義をただ聞くだけではなく、こちらからも発言して……というインタラクティブな授業はエキサイティングでした。理解できないことが出てきても、その場で質問してしまえばいい、と。学生たちも社会人として何かしらの問題意識があるので、そこをベースに議論をすることで教授のみならず同級生からも非常に刺激を受けます。新たな価値観を得られたという気がします。
内田 学生たちはバックボーンが異なるし、年齢もまちまち。この会社だとこういう風に対処しているとか、こういう業種でこんなスキルがあるなど活発な議論の中でさまざまな考え方や実情を知ることができました。ディスカッションが盛り上がらなかったら……という懸念は不要。いつも盛り上がりすぎて、なかなか終われないくらいでした。
内田 企業研究をする中で、大学院で学ぶことによってアカデミックな視点でも捉えられるようになったのは収穫です。JAISTでは「問題の本質をまず明確にしなさい」と常に指導され、鍛えられました。社会科学系の研究の場合、「何のために?」ということから考えなければならず。理系出身の私には当初慣れないものでした。理系脳から文系脳へのシフトチェンジと言いますか……。仕事で取り組んできた理系的な視点で捉えていた問題解決のアプローチを、社会科学的アプローチに置き換えて考えることは苦労もありましたが、教官指導による思考のトレーニングで鍛えられ、実になった気がします。プロジェクトマネジメントをテーマにした修士論文は、賞をいただくことができました。
内田 会社でもこうした考え方を必要とする部署にいるので役立っています。「JAISTに通ってから変わったね」みたいなことは社内でも言われました。どこが変わったのは教えてもらえなかったのですが、おそらく考え方やものごとの捉え方だと思います。
内田 個人差はあると思いますが……感覚としては、社会人としての経験が豊富であるほど課題認識もできていることでいい研究ができると思います。一方で、年齢を経るにしたがって、役職が上がったり余力が減ったりで大学にかけられる時間は限られてくる。その反比例の関係性の、どこを自分のタイミングと考えるかが重要な気はします。ただ、JAISTの学生を見ると年齢層は実に幅広いです。それはそれで面白い。いずれにせよ、どこかで「この2年間は頑張ってみよう!」と踏ん切りをつけることが大切でしょうね。いつか行こう、いつか取ろうみたいに思っていると、いつまでたっても踏み出せないかもしれません。
内田 お互いに研究テーマが近い複数の研究室が集まって、勉強会もしていました。研究室間の隔たりが無いのは、JAISTの大きな特徴だと思います。基本的には学生たちの要望から生まれて運営されていきます。また、複数の教官から指導を受けられる「個別ゼミ」はJAISTならではのシステムでしょう。
内田 主に土曜日、この時間帯に3人くらいの先生がスタンバイしているというスケジュールが公開されるので、希望者は事前登録して相談事項などを持ち込むのです。いろいろな視点からの見解を聞けるというのは、とても意味がある気がします。
内田 修士課程を終えて2~3年後に博士課程へ。実際、他校もいくつか調べましたが、結局JAISTを志望しました。 研究テーマに合っていたこと、修士課程で内容に納得していたことなどが理由です。 実は、JAISTの前に別の大学院で修士号を取っていたこともあり、いきなり博士課程への進学も考えたのですが、 まずは修士課程へ進みました。振り返ると、まずは修士課程で論理的思考のトレーニングをみっちり積んだことが 博士課程で活きたと実感しています。
内田 JAISTは学位を取るという他に、自分のベースとなる素養みたいなものを高めることができた場だと実感しています。先生の講義や指導はもちろんですが、学生たちのディスカッションから得られた情報や考え方に刺激を受けたことも大きな糧となっていますから。こうした議論ができる環境は、なかなか得られるものではありません。……と言いながら、私自身もJAISTの魅力は入学してから気づいたことがほとんどですから、皆さんも説明会などに参加してみると、イメージがもう少し湧くかもしれませんね。「こういう研究をしたいのですが」と、先生がたに熱く問いかけていた(後の同級生の)姿なども記憶に残っています。こういう思いで来る人がいるのは楽しいな、などと思いながら。