工学部で化学や物理の勉強をする一方で、文系の社会科学的な世界にも興味があり、大学院ではそういった領域の知識を深めて自分の幅を広げたいと考えていました。そんな学部時代に出会ったのがJAISTで初代の知識科学研究科長を務められた野中郁次郎先生の『知識創造企業』という著作。これに感銘を受けたのが同研究科を目指したきっかけです。入学後は同書のキーワードである「ナレッジマネジメント」にも関連するテーマとして、社寺を専門とする宮大工の知識や技術がいかに伝承、習得されていくかについて社会学的なアプローチを行いました。着任されて間もない文化人類学の伊藤泰信先生の研究室に第1期生として入ったのですが、テーマの選択も自由であり、のびのびと研究を進められる環境だったと思います。また、知識科学研究科では隣り合う研究室でも全く違った分野を扱っていて、自身の研究を離れた交流も非常に面白かったですね。いま、仕事をしていても感じますが、一つの世界にのめり込んでいると頭が固くなってしまいがちです。その点で、多彩な研究が一体となったJAISTは刺激的で自分の枠からはみ出るアイデアも生まれやすい、恵まれた環境だったと思います。
現在は医療機器メーカーのプロダクトマネジャーとして、担当する心臓系カテーテル製品の開発から販売までのプロダクトマネジメントを任されています。医療に貢献する先端機器を全国の病院に広めていくという仕事はダイナミックであり、責任も重大ですが、今後は外資系企業の一員としてよりグローバルに仕事をしていきたいと考えています。