11/13 お湯を沸かすのって大変

眠れなくて深夜5時半にこの記事を書いているのですが、外はとにかく寒いですね。研究室の中でもコートを着とかないと冷えるくらいです。

今日の朝になったら暖房が解禁されるようなので、あと少しの辛抱です。

今回の題名を見て、なんのこっちゃと思った読者もおられるでしょう。ちょっと考え事をしていたら、ある事実に気づいたというお話です。

研究室の先輩と雑談をしていたときに、お祭りで屋台を出したいという話が出ました。先輩は工作したものを売りたいと言っていて、僕は食べ物とか飲み物を売りたいなあとか返していたのですが、ひとまず来年はほんとに出店したいねという話に落ち着きました。

屋台を出すときの手続きやら許可やらを調べてみたところ、縁日のときだけ出店するなら簡単な書類を役場や消防署に提出するだけでよく、大した労力はかからないみたいです。ただし条件もあって(年4回以下、5日以内、簡単な調理のみなど)、お祭りに出店している人はそこ辺ちゃんとしているのか気になりました。

また、必要な設備(テント、軽トラ、調理器具など)についても調べてみたのですが、全部レンタルしようとすると結構かかることが分かりました。特に発電機やポータブル電源は、1日借りるだけで1万円以上するみたいです。「たかっ!」って思わず言っちゃいました。

そこで僕は、調理器具や電源設備を自分で作ったらいいんじゃないかと思いました。例えば甘酒を売るとしたとき、必要になるのはヒーターだけなので、電熱線と自動車用のバッテリーを組み合わせれば作れるなと思ったわけです。自動車のバッテリーなら中古や廃棄物で安く手に入るし、ニクロム線ならホームセンターで数百円ほどです。これで済むならわざわざ高いポータブル電源を借りる必要ないし、ずっと使いまわせて経済的ですよね。

これはかなり良いアイデアだと思い、安い原付の鉛バッテリーでどれくらいのお湯が沸かせるのか計算してみることにしました。

一般的な原付のバッテリーは12[V]で3[Ah]程度なので、12[V]×3[A]×3600[s]=129600[J]≒130[kJ]のエネルギーを出力できることになります。当初、僕はこれだけあれば十分じゃん!と思いました。キロジュールってなんか凄そうですし。

しかし、これはとんでもない思い違いでした。

水の比熱は4.2[J/(g*K)]。つまり1グラム(1[mL])の水を1℃温めるのに必要な熱量が4.2[J]なのです。ということは1[L]の水を”たった1℃”温めるだけで4.2[kJ]も必要なんです。

そうなると10℃の水を80℃まで上げたい場合、必要な熱量は4.2[kJ]×(80-10)[℃]=294[kJ]!なんと原付バッテリーの出力を超えてしまうんです。3[Ah]のバッテリーの場合、0.44[L]ほどしか温められないことになります。3人分の甘酒を作ったら終わりです。

これは衝撃でした。鉛バッテリーって見た目がごついし、固いエンジンの軸を動かせるくらいだから10リットルくらいのお湯は軽く沸かせるだろうと思っていました。それがたったの0.44リットル。考えてみれば、エンジンのスタートなんて一瞬だから大した電気容量は必要ないんですね。

お湯を沸かすだけでそんなにエネルギーがいるのもびっくりしました。「1リットルのお湯を沸かすエネルギー」である294[kJ]は、「1.5トントラックを20メートル引き上げるエネルギー」に匹敵します。電気ケトルをつかえばあっという間にお湯が作れてしまうので、「お湯は早くできる」=「必要なエネルギーが少ない」と勘違いしていました。あれはかなりの電力を消費して時短にしているだけだったのです。

自動車用とかトラック用のバッテリーになると50[Ah]を超えるものもありますが、高いしデカくて部屋に置いとけません。

ちなみに、レンタルできるポータブル電源は驚異の1600[Ah]。単純計算で235[L]のお湯が沸かせます。さらにAC電源も付いており、ケトルもIHも使用可能。これを自分で買うと20万円弱かかりますが、レンタルなら1万円ちょっとで済みます。レンタル業者はありがたい存在ですね。

今回の件で、自分の認識が誤っていないかしっかりと確認することが大事だと分かりました。こういった、エネルギーとか物理現象に対する感覚は、理系学生として当たり前に身につけていきたいものです。

そろそろ夜が明けてきました。きっと今日から暖房がガンガン効き始めるでしょう。電気の存在に感謝しながら、ぬくぬく過ごしたいと思います。

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