マテリアルズインフォマティクス国際研究拠点

研究内容Research


インフォマティクスの原資は、「規模の大きく」「適切に分散した」「一貫した」データである。マテリアルズインフォマティクス(MI)の根本的な問題は、このようなデータが、多くの場合で既存しないことに在る。例えば、過去に蓄積されたデータは、時代や研究者個々の興味や実験方法を強く反映しているため、無制限に収集してしまうと一貫性に問題が生じる。収集する対象に制限を設けると、今度は規模や分散に限界が生じてしまう。また、実験データをデータ科学的に解析する場合においても、どのような説明変数(記述子)を設定すればデータの傾向を適切に捉えることが可能となるのか、対象とする現象ごとに異なる視点から検証する必要がある。このような困難を踏まえた上で、本拠点では、MIやその要素技術に専門を有する5研究室が以下の研究テーマを実施する。また、テーマ間の連携により、「データ自製」「予測モデルの構築」「知識抽出」「検証」という上流から下流までを貫通させたMI研究を実施する。

ハイスループット実験

MIの醍醐味の一つは、データが制限された状況において、如何に予測や知識抽出を実現するかであるが、データの制限が研究やその成果を大きく制限することもまた事実である。ハイスループット実験の目的は、データに掛かるあらゆる意味でのコストを低減することである。谷池研究室では、材料合成や物性評価において、様々なハイスループット実験装置やハイスループットな実験プロトコルを日々開発している。例えば、
・20個の触媒の性能を一連の条件で完全自動取得可能な装置
・高分子の酸化劣化耐性や酸化触媒の性能を多検体その場同時測定可能な化学発光イメージング装置
・各種並列合成装置
これらの装置やプロトコルを用いてMI研究に必要な材料ビッグデータを短期間で自製する。

MIを駆使した触媒化学研究

ハイスループット実験(HTE)やデータ駆動型研究の展開応用には、装置設計やビッグデータ統合システム開発に長けた人材育成が必要である。
西村研究室では、反応評価や分析手法に基づくバックグラウンドを活かし、触媒化学におけるMIの展開利用に取り組んでいる。従来的な触媒化学の研究手段とデータ科学を相互利用することで、反応条件最適化、反応経路描写、触媒探索などの目標を達成する。さらに、MIやHTE等より得られた知見を現実の材料開発研究に翻訳し展開利用する役割を果たす。


不均一系オレフィン重合触媒は、大気敏感な物質の使用と形態制御の必要性のため、合成面において最も難しい触媒系の一つである。繊細かつ煩雑な合成プロセスは体系的なデータ取得を困難にしている。チャミンクワン研究室では、チューニングされた担体や触媒を効率的かつ正確に合成するための機器やプロトコルを開発している。触媒ライブラリとデータ駆動型アプローチにより構造性能相関を明らかにし、系統的な触媒開発を実現する。