JAIST Nishimoto Laboratory

クラシック音楽の愛好者を増やしたい!でも,なかなか聞いてもらえない.

バッハやベートーベン,ブラームス,ショパンなどに代表されるクラシック音楽は,人類が誇るべき珠玉の芸術作品です. それゆえ,もっと多くの人々に愛聴されてしかるべきだと思うのですが,実際にはクラシック愛好者はあまり多くありません. 特に20代以下の若年層では,クラシック音楽を聞くという人の割合が2割を切っている(大学生にいたっては1割未満!)という報告もあります. 若者に人気があるポピュラーミュージックなどと比べて, クラシック音楽は一般的に演奏時間が非常に長く,しかも楽曲構造が複雑で難解なことが多いため, 日常生活の中でクラシック音楽が演奏されることはほとんどありません. 意図的に鑑賞しようとしない限り,クラシック音楽に触れる機会が生じないため,クラシック音楽になじみを持てないという人々が多くなるのだと考えられます.

この問題を解決するために,Audiroty Stamp では単純接触効果に着目しました. 単純接触効果とは,特定の対象とただ単に繰り返し接触することで,その対象に対して次第に好意を感じるようになるという心理学的効果です. Audirory Stamp は,クラシックの楽曲の中から,いわゆる「聞かせどころ」を3秒程度切り出し, これをパソコンの警告音や通知音などとして再生することにより, パソコンを使った作業の間にクラシック音楽の断片と頻繁に接触する機会を創り出します. 被検者実験によって,Auditory Stamp を用いることにより,クラシック音楽への抵抗感が軽減される可能性が示唆されました.

一色 優孝:単純接触効果を応用したearconによるクラシック音楽への好意度向上手段に関する研究,修士論文,北陸先端科学技術大学学院大学,2017年3月.
一色優孝,西本一志:Auditory Stamp:Earcon との単純接触効果を利用した音を伴う事物への好意度向上手段の検討 -クラシック音楽を題材として,インタラクション2017論文集,2-6F-03,pp. 423-424,情報処理学会,2017.
一色 優孝,西本 一志:earcon化された楽曲断片との単純接触の有無によるクラシック楽曲への好意度の変化,情処研報,Vol.2017-HCI-172, No.13, pp.1-7, 2017.