JAIST Nishimoto Laboratory

フィールドワークで多様な視点から取りこぼしなく情報収集するには,どうすればいい?

「地方創生」政策に代表されるように,地域活性化が近年注目を集めています. 「地域おこし」や「まちづくり」などと呼ばれる地域活性化のための活動の中では,フィールドワークがしばしば実施されます. 調査者が実際に現地に赴き,その現状を観察・体験することによって,その地域が持つ特徴や問題点を明らかにしていく作業が,フィールドワークです. 特にグループフィールドワークでは,複数の調査者が調査に携わることにより,調査対象の網羅性を高めるとともに, 各調査者が持つそれぞれに異なった視点を活かすことで,得られる情報の多様性を高めることが可能になると言われています. しかしながら,現実のグループフィールドワークでは,各調査者はそれぞれ個別に調査を行うことがほとんどです. このため,ある調査者が担当する範囲では,その調査者の視点のみに基づいた情報しか得られないため,十分な多様性が獲得できるとは言いがたい事態が生じます.

Fieldsonarは,このようなグループフィールドワークの持つ問題点を解消するシステムです. Fieldsonarを用いたグループフィールドワークでは,調査者を1名のマクロ・ビューワーと,それ以外のミクロ・ビューワーとに役割分担します. ミクロ・ビューワーは,従来のグループフィールドワークにおける調査者と同様,実際に地域に出向き,担当範囲に関する情報をそれぞれの視点から収集します. 収集した情報は,即座に携帯デバイスに入力し,Fieldsonarのサーバーにアップロードします. こうして,従来はフィールドワークの終了後に集約されていた情報を,フィールドワークの実施中にリアルタイムに集約していきます. マクロビューワーは,収集されていく情報を順次チェックするとともに,この情報を多変量解析(本研究では双対尺度法を用いました)によって分析することにより, さらに調査すべき調査対象や,考慮すべき視点を判断し,それぞれ該当する調査者に通知します. これにより,グループフィールドワークを実施している最中に不足している情報をどんどん補完していくことができるので, 最終的に必要な情報の取りこぼしを大幅に削減することが可能となります.

小泉 亮眞:グループフィールドワークでの情報収集の網羅性向上を目的とした支援手法の研究,修士論文,北陸先端科学技術大学学院大学,2017年3月.(学内のみ公開)
小泉亮眞,西本一志:FieldSonar: 大局的視点の提供によりデータ収集の網羅性を高めるグループフィールドワーク支援システムの研究,インタラクション2017論文集,1-405-58,pp. 314-317,情報処理学会,2017.
小泉亮眞,西本一志:データ収集の網羅性を高めるグループフィールドワーク支援システムの提案と検証,情処研報,Vol. 2017-GN-101, No. 18, pp. 1-8, 2017.