Knowledge Co-creation Award
 

共創賞

『 アート利用ツーリズムサービスにおける知識共有
−金沢クリエイティブツーリズムと紀の国トレイナートの両事例より− 』
Knowledge Sharing in Service Process of Art Projects:
From Both Cases of“Kanazawa Creative tourism”and “Kinokuni Train-art tourism”

坂本 英之 (金沢美術工芸大学)、中村 孝太郎 ((株)イー・クラフト/北陸先端科学技術大学院大学)

【PDF(1.59MB)】

 2016年度知識共創フォーラム「共創賞」は,編集委員会が定めた複数の評価者による厳正なる論文評価のもと,上記論文に対して与えることを決定致しました. 本賞は知識共創フォーラムにおける知識共創を促進させ,論考の質向上はもとより,参加者とともに知識科学を深化させることに大いに寄与したと評価される報告に対し与えられるものです.

 本論文は、アートがツーリズムという形式を取ることによって、地域資源を取り込んだサービス・エコシステムを形成し、幅広いステークホルダーを巻き込んだ社会的価値共創の核となりうる可能性を明らかにしている。
研究の方法については、学際的な先行研究レビューに基づき、2つの特徴的な事例分析に取り組み、先行研究と事例分析に基づく新たな仮説モデルを提示しており、事例研究の方法論に立脚した妥当性ある研究が遂行されている。
 知識共創フォーラムでの議論を踏まえた改訂によって、全体としてとても意欲的で、理論的にも実証的にも読み応えのある論文に仕上がっている。サービスサイエンスとソーシャルイノベーション、さらには地域研究やアートの社会学をも含めた学際的なアプローチにも成功したことで、共創による知識科学の深化に貢献しており、共創賞にふさわしい優れた論文と言える。
 一方、様々な要素を取り込みすぎ、限られた字数にまとめる作業において、文章表現や内容構成がまだ練り切れていない部分が見受けられる。特に、本論文の主題である文化都市と過疎地の対比の論述については、文化都市・過疎地の定義と事例の代表性をより明確にしたうえで、それを踏まえて事例の観察や調査の論述を洗練することによって、より優れた論文になるものと思われる。
 今後の研究において、既存モデルを基礎にした仮説設定という段階から、著者ら独自のモデルを創出する段階に進めていただき、知識科学研究の新しい潮流を生み出していただくことを期待して、共創賞を授与するものである。