Best Paper Award
 

優秀論文賞

『 グローバル経済化の伝統的知識 』
A Traditional Knowledge in the Global Economy

北九州市立大学
廣川 祐司

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2012年度FoKCs最優秀論文賞受賞論文は編集委員会が定めた複数の評価者による厳正なる論文評価のもと,上記論文に対して与えることを決定致しました. 本賞は知識科学研究の発展に大いに寄与することが期待される論文に対し与えられるものです.

この論文は,先住民の社会で育まれた伝統的知識を,グローバルな経済下においていかに保護するかをテーマにしています.先住民が培ってきた伝統的知識は,生物多様性維持や地球環境資源の持続的利用において極めて有用であり保護しなければならない財産といえます.現在,先進国が中心となり多国間の枠組みの中で知的財産として保護しようとする動きがありますが,これはあくまで近代国家主義と経済原則に基づくやり方です.筆者は先住民の伝統的知識を「文化資源」として捉え,知財化とは別のやり方で保護していかなければ十分ではないと,クリエイティブコモンズの議論を基に指摘します.具体的には,先住民集団の文化権・生存権という基本的人権の枠組みで保護すべきであるという考え方です.こうした問題点の指摘および代替案の基本的な考えは,根本的で重要なものと言えます.本論文で論考されている「知識の保護や継承」は環境問題に関わらずグローバル経済化の下では潜在的課題が多いと考えられます.こうした課題に気付かせ,新しい知識科学研究の地平を切り開いた功績は高く評価できます.