表裏一体の情報のvulnerability(ひ弱さ)と力
<揺らぐ希少性と所有権>
(何回使っても減らず, コピー可能な)情報は「無限」に存在しうるのであるから,
資源として情報をみたとき, 「限られた資源を競って手に入れることで優位性を確保
する」という, これまでのアプローチをとる必要がなくなる可能性がある.
また, 資金や物品を「もつもの」と「もたぬもの」に区分することでできる序列に
よって経済秩序をつけるという従来の考え方も, これまでのような妥当性を失う可能
性が出てきた.
さらに, 情報は, 「与えることで, 与えられる」という特性を持っている.
われわれが
「動的情報」
と呼んだ考え方によれば, 情報の意味や価値は, 情報を隠すことからは生まれず,
情報を積極的に開示し, 相手とのつながりをつける
ことによってしか, 発生しないから.
但し, 自分から情報を提供することは, 人を他人から攻撃されやすく, 傷つきやすく
する「vulnerability」を持つが, それは情報の力と表裏一体となる.
<企業と情報>
実際の経済を動かし, 企業活動を有効なものにしているのは, 企業がその統制下に
収めている静的情報ではなく, 企画, 製造, 販売などの
実際の場面で, ことにあたる「当時者が」が,
他の人びとや状況の中で獲得する動的な情報なのである.
情報を内部化し, 蓄積することでは, 動的情報は得られない.
動的情報を発生させるには, すべての要素を内部に取り込むことではなく,
企業の外部とのダイナミックなつながり,
つまり, ネットワーク, を形成してゆくことが必要である.
企業活動によって本質的なのは, したがって,
静的な情報を権限によって支配することではなく,
動的情報を発生させるネットワークプロセスの渦中に, 自らかかっわてゆく
ということである.
<ネットワークとは>
- 動的情報を発生させるプロセス
- 相互作用の中での意味形成のプロセス
- 自発性を基礎にする関係形成のプロセス
- 関係変化のプロセス.
[金子92]より引用.
林 幸雄
(yhayashi@jaist.ac.jp)
「目次」に戻る