Bolter'91(Y.Hayashi)

「視知力」とは何か

「視知力」とは, 記号のアイコン解釈力である. それは, 言語的記号であるか絵画的記号であるかを問わない. 全ての記号の解釈における根底である.

言いかえれば, 視覚的に理解して始めて 「わかった」 といえるもの(視覚的思考力).


<視覚的思考と言語的思考における誤解>

例えば, 哲学研究者の沢田充茂の「映像的思考と言語的思考」では,
数や言葉による情報処理と判断は, 直接的知覚像による映像的思考よりも広い範囲 を扱うことができる分, 思考の範囲を広げることができる. もし数や言葉による情報を一切持つことができないならば, 私たちはイヌやネコと 同じレベルにとどまることになる.
と述べられているが, 以下のような誤りがある. つまり, 言葉は, 「概念」にともなう知覚像を想起するきっかけに過ぎない. 又, 言葉で「観念」を呼び起こして「推論」が行なえるように, 直接的知覚像も記号として働き, 「観念」を呼び起す (言葉でなく, 観念の操作(結び付けたり/きったり)によって 推論している). さらに, 言葉は, 頭の中で意味を組み立てるきっかけ/誘い水に過ぎず, 実際のところは, ある状況の中で, ある意味を構築しようと, いわば身構えているところに, ある記号が発せられ て意味が頭の中に呼び起こされる.

<3つの記号の解釈>

  1. 記号のアイコン解釈(直観理解を伴う絵図記号)
  2. 記号のインデックス解釈(状況理解を伴う指標記号)
  3. 記号のシンボル解釈(文脈理解を伴う言語記号)
それぞれは切り離せない. つまり, 体験/直観理解だけで,何の説明も考えもさせることをしないのでは, シンボル解釈を切り離していることになる.

[ 小笠原95 ]より


林 幸雄 (yhayashi@jaist.ac.jp)
「目次」に戻る