略図
略図とは, 現実世界を操作できるように単純化したモデルの,
ある視点(切り口)における関係構造
を表したもので, 要素的に分節化されない互いに密接に関係した
全体的なシンボル(絵図記号)
で1つの意味をなす.
略図のメリットは,
- 多様な再解釈を誘発すること,
- 本質を浮き彫りにすること,
- 新しい可能性やさまざまな吟味が可能なこと
である(現実からの省略部分が多様性を持つ).
もちろん, 現実からモデル化された対象の変形操作性や,
多様な視点からの立場を探る時に, 予感や期待をこめて描かれた略図は個人的な
ものであるが, 他人が共感できる思いめぐらしの入口でもある.
略図を探索の入口として人間が「わかった」と実感できる時は, 「わかることの原点」
としての下図の様な
「根源的表象系」
において, 現実世界と可能的世界,
モデル的世界, 略図的世界, 記号的世界の相互の「表象のし直し」ができる時である.
「わかる」と「できる」のジグザグ運動
ものごとがある程度わかると, 「とりあえず, わかったこと」にして先に進み, 当
面「できる」ことを利用してさらに吟味する.
そこで, また再びわかり直すというような, 「わかる」と「できる」のジグザグ運動を
通じて, 「理解」の深まりと広がりがダイナミックに変化する.
これは, 解き方ではなく意味のわからない事態に対して, 表現形式の操作と意味の変化
に対応する
記号と略図の2つのシンボルを並用
して, 仮説と検証を繰り返しているのである.
このような「わかる」と「できる」のジグザグ運動を駆り立てる人間の本性として,
以下の3つが指摘されている.
- 論理性: 根源的表象へと誘う, 自分自身の説得過程を駆り立てるもの.
- 機能性: 目的と手段の関係を操作して, 「わかる」を「できる」に結び
付けるもの.
- 社会性: 他人に伝える為に「わかりたい」という人間の基本的欲求.
[佐伯86]より
林 幸雄
(yhayashi@jaist.ac.jp)
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