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鍵盤レバー(key)

鍵盤レバー(key) の製作はクラヴィコードの機構にも外観にも影響する重要な作業である。 製作時間のかなりの部分を占めるが、組織的に取り組めば満足のいく結果がえ られる。また望むなら、接着剤が乾くのを待っている間に少しづつ行える作業 でもある。

最初の作業は鍵盤レバー(key) がまだグループごとにつながったままの状態でおこなう。 同じ厚さの板を二枚用意し、作業台の上に20mm間隔で設置する。(板が取り外 し自由の棚があればそれを利用すればよいだろう。) 鉛筆でひいた線を目印に すべての鍵盤レバー(key) を正しい順序に並べ、20mmの隙間の上に平衡ピン穴(balance hole) が位置す るように置く。正面は正確に一直線に並べ、動かないよう角材などを置いた上 からクランプで固定する。そうしたら設計図にあるように鍵盤部に4本の線を ひく。

  1. 第2線の前7mmの位置(訳注:後ろ側の平衡ピン(balance pin) の背後、銘板(nameboard) に並行の線)
  2. 作動部分の最前端(訳注:手前から二本目、銘板(nameboard) に並行の線)
  3. 作動部分の最後端(訳注:手前から三本目、右上がりの線)
  4. 第3線の後7mmの位置(訳注:手前から四本目、右上がりの線)

昔のクラヴィコードにはすべてこれらの線がひかれており、しかも定規か直線 の木材を使って取っ手付き線引き具でしっかりと彫り込まれている。線引き具 は、円柱形の木材の端に平衡ピン(balance pin) ピンを打ち込み、ピン先をヤスリで鋭く 削って製作するとよい。これらの線は、装飾の重要な部分を占める。各鍵盤レバー(key) には設計図にあるように、第2と第3線の間にさらに別の線を引くが、この線は 一方の側からもう一方の側へと鍵盤レバー(key) を斜めに横切るように引く。元になった 楽器はこの魅力的な模様で装飾されており、18世紀のかなり初期の時代から採 用されていた。それ以前にはクラヴィコードの鍵盤レバー(key) は、作動部分の中央に線 が引かれていた。これらの線ははっきりとわかるように引かなければならない。 失敗したら熱湯にひたした布で拭けば線が消える。

次に各鍵盤レバー(key) ごとに平衡ピン(balance pin) が入る「ほぞ穴」をあける。穴は特殊な器具 を用い、その先端を打ち込んであける。その際、先端が正確に木材の木目に沿っ ていなければならない。そうでないと鍵盤レバー(key) が割れてしまうからである。それ ゆえ鍵盤レバー(key) の側面に対して直線になるように注意すること。金属用ノコギリで 器具の上端に、ほぞ穴と平行になるように線を引くとよいだろう。穴の途中ま で先端を打ち込んだらまず一度取り外し、木目との関係を調べ、大丈夫だった ら、鍵盤レバー(key) の表面にうっすらと円形の跡がついて下側からわずかに先が出るま で(20mmの隙間はこのためにある)打ち込む。写真25を参照。器具を取り外すに は、単に「ほぞ穴」に沿って前後に少しづつ動かせばよい。

それが済んだら今度は、鍵盤レバー(key) を固定したまま、各黒鍵レバー(sharp key lever) の前面端に沿っ て、径1.3mmの穴を4つか5つ、互いにほとんど接するくらいの間隔であける。 そうしたら台から取りはずし、ひとつづつ鍵盤レバー(key) 部分を押さえながら黒鍵レバー(sharp key lever) 部分を引き上げて折り、部品から切り離す。もしこれが非常に困難だったら、 1/4'' のノミで穴の線を強く押して、その部分をさらに脆くするとよいだ ろう。取り外した黒鍵レバー(sharp key lever) は順番通りに並べておく。もっともたとえ順番が 入れ替わってしまっても第3線と第4線の角度で容易にわかるのだが。 黒鍵レバー(sharp key lever) をすべて切り離したら各黒鍵レバー(sharp key lever) の正面を約3mm削り取って面を 滑らかにする。ただし鍵盤レバー(key) はまだそのままにしておき、後の工程で処理する。

鍵盤レバー(key) の各側面は「帯のこ」で切断されたままになっているので、紙ヤスリを かけてきれいにする。ノコギリ跡を完全に消し去る必要は全くなく、目の粗い 紙ヤスリで素早く処理すればよい。一番よいのは、約 150mm × 25mm × 12mm の木片に紙ヤスリを巻いたものを用意し、片手に鍵盤レバー(key) 、もう一方 の手にこの木片を持って直線部分をこする方法である。それが終わったら、ひ とつづつ鍵盤レバー(key) を平衡ピン(balance pin) に組み込んでみて、問題なく上下に動くかどう か確認する。この段階ではまだガイドタング(guide tongue) はないから、もし何か引っかか りがあったとしたらそれは平衡ピン(balance pin) のほぞ穴に原因がある。この作業には、 円柱形の木材の端に高さ8mmになるように平衡ピン(balance pin) を打ち込んだものが便 利である。このピン部分を鍵盤レバー(key) の下からしっかりと差し込み、取っ手を傾け てゆっくりと円を描くように動かすと、上面でスロットを傷つけたり、底面で 穴を傷つけたりすることなく「ほぞ穴」を広げられる。(付録第3図) こうして 鍵盤レバー(key) と平衡ピン(balance pin) の間に隙間を作れば、クラヴィコードの軽い鍵盤レバー(key) にちょ うど良い「あそび」ができる。

もし鍵盤レバー(key) がまだ動かしにくいようだったら、平衡ピン(balance pin) に取り付けたまま、 鍵盤レバー(key) をゆっくりとまず高音側にそれから低音側に押し、そっと穴を広げる。



Tsutomu Fujinami
Wed Dec 8 11:06:30 JST 1999