銘板(nameboard) の部品は両端接合部が正確に切断された状態で提供されているが、 長さは約1mm長い。先端部分が次第に細くなっている木片が提供されているの で、これを使って銘板(nameboard) を固定する接合部の「ほぞ」をつくる。もし 銘板(nameboard) が鍵盤部左側面部分(left hand key cheek) と 鍵盤部右側面 (right key cheek) の間に収まるなら、この木片で組み合 わせを調節できる。ただし、もし銘板(nameboard) がこれより長すぎたら、接合部 で調整するか、それとも鍵盤部左側面部分(left hand key cheek) と 鍵盤部右側面 (right key cheek) の間隔を調整しなければなら ない。
鍵盤部左側面部分(left hand key cheek) と 鍵盤部右側面 (right key cheek) の上面角を少し削って、銘板(nameboard) の飾りのある端 と直線に接合する。 (写真22と23参照) 銘板(nameboard) のこの部分は、削り取っ て鍵盤部左側面部分(left hand key cheek) と 鍵盤部右側面 (right key cheek) と平らに接合するよう、長めに取ってある。
元のクラヴィコードでは、銘板(nameboard) の「ほぞ」を垂直方向に対して1.5度の 角度で僅かに傾けることにより、銘板(nameboard) の取り外し・取付を非常に容易 にしている。もし同じようするなら、銘板(nameboard) の両端接合部の背面を下端 で約1mm余分に削り取る。銘板(nameboard) を上面が鍵盤部左側面部分(left hand key cheek) と 鍵盤部右側面 (right key cheek) の上面 と平面になるよう所定の位置に取付けたら、背面から観察して高音部側でどの 程度の間隔を「くさび」で埋めるべきか調べる。「くさび」の先端を合うよう に削ったら、次に銘板(nameboard) 前面と並行になるように後面も削る。もし 銘板(nameboard) 接合部に角度をつけたら、「くさび」の後面にも同じように角度 をつけなければならない。そうしたら「くさび」を所定の位置に接着する。こ れが乾燥したら、今度は低音部側の「くさび」を取り付ける。今回はもう少し 簡単で、「くさび」先端を少しずつ削りながら試行錯誤を繰り返し、 銘板(nameboard) と完全に接合させる。「ほぞ」に角度をつけると、銘板(nameboard) を 取り付けるのが容易になり、また取り外すときも単につまみ上げるだけで済む。 「くさび」の背面は接着剤が乾いた後にノミで削って平らにする。
銘板(nameboard) をしっかりと所定の位置に取り付けたら、余分部分を削り取って 鍵盤部左側面部分(left hand key cheek) と 鍵盤部右側面 (right key cheek) に対して平面にする。そうしたら、鍵盤部側面の飾り に合わせて、木目に沿うように細いヤスリで飾りをつける。慎重にこの作業を 行えば、新しい飾りと銘板(nameboard) 背面に沿う飾りが両接合部で完全につなが る。(写真24)
注記: 薄い板は曲がりやすく、銘板(nameboard) も多少曲がっていることがある が、これは取り付け後に直線にできる。平衡ピン(balance pin) を一本、c#とdの中間に 打ち込めばよいのである。(鍵盤レバー(key) 部分は、このピンと触れないよう、削らなけ ればならない。)この場合、ピンの頭部分が銘板(nameboard) の底辺から約4mm出る ようにする。銘板(nameboard) を直線にして、このピンの上から押し下げて底辺に 印をつける。この印の位置にドリルで穴をあけ、ノミか細いヤスリを用いてピ ンがはまりやすいように適当な角度で溝をつくる。
ここでは平衡ピン(balance pin) を覆う板を銘板(nameboard) と呼んでいるが、これはイギリ スのスクウェア・ピアノからの類比による。しかしながら、昔のクラヴィコー ドは滅多に(訳注：製作者などの)名前をここに書き込むことがなかった。多く の楽器はまったく名前が記されていないが、記されている場合は、大抵、 底板(baseboard) の後部近くか(例えばHass)）、もしくは低音弦系結横木(bass hitchrail) が 平衡横木(balance rail) と接している面、垂直の面に紙ラベルが貼られている(例えば Hubert)。