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ブリッジ(bridge)

ブリッジ(bridge) の部品は、ブリッジ・ピン の位置を正確に印せるよう、設計図通り正 確に切断されており、あとは面取りだけすればよい状態で提供されている。

まずブリッジ(bridge) の両端に両面テープを貼って設計図を上から固定し、針で ブリッジ・ピン の位置を慎重に突き刺して印をつける。道具はコンパスの針などでよ く、穴は後で正確にドリルできるくらいに深めにあける。そうしたら設計図と テープをはがし、あけた穴を観察する。もし位置がずれている穴があったら修 正する。ほかの穴の線からずれていたり、間隔が均等でない穴は修正しなけれ ばならない。水を数滴垂らせば穴はほぼ元通りになるので、もっと良い位置に もう一度穴をあければよい。穴の間隔をよく見ると、下の方の組ほど長くなっ ているのがわかるだろう。(訳注:弦は2本で一組である。)穴の位置を勝手に 変えてはいけないが、各組の弦の間隔は等しくする。穴の間隔が決まったら、 穴の線から1.5mmの距離で並行する線を引く。やり方としては親指と人差し指、 鉛筆で簡単に寸法を取って引く。(写真18) 不要な木材で練習すれば、指で寸 法を取りながら線を引くのは非常に容易である。もう一方の側にも同じように 1.5mmの距離で線を引く。こうして二本の線を3mm間隔で引く。

この段階でブリッジ・ピン にピン用の穴をドリルであける。支柱付きドリルか、 台付き電動式ドリルがあればもっとも良く、整然と穴があけられる。まず、写 真19に示したように、正方形の合板と二枚のV字型板で小型のドリル台を組み 立てる。そしてドリル台の上左から下右方向に対角線を引く。必要に応じてず らしながら、この線に合わせてブリッジを置き、低音部から穴をあけていく。 穴は決して慌ててあけてはいけない。ドリル穴は正しい位置にあけなければい けないからである。1.0mm径のドリルを使って、それぞれの穴を6mmの深さであ ける。順序は下から上へあけていく。ブリッジ(bridge) は直線部分が台上の対角線に沿 うように固定する。これは曲がっている高音部に穴をあける際にも守らなけれ ばならない。もし支柱付きドリルがなければ、手動ドリルを使ってもよいが、 その場合は誰かに補助を頼んで、ブリッジを対角線に合わせて穴をあけている 間、ドリルが垂直になっているかどうか確認してもらうこと。

ピンの穴あけが済んだら、設計図の部分図にあるようにブリッジ(bridge) の両終端に線 をひく。小刀でその部分を削って成形し、ヤスリか目の粗い紙ヤスリを巻いた 木片で仕上げる。この時点では、まだ(側面に)角度をつけない。

共鳴板(soundboard) を共鳴板保持材(soundbar) の両終端が凹部に収まるようにケース(casework) の中に置き、 ケース(casework) との間隔を覚える。そうしたら共鳴板(soundboard) をまた取り出し、同じ 厚さの板二枚を共鳴板保持材(soundbar) の幅だけ離して置き、その上から共鳴板(soundboard) を置 いて水平にしっかりと支えられるようにする。これらの板は共鳴板保持材(soundbar) の高さ よりも厚く、7mm以上なければならない。この時点で共鳴板(soundboard) の表面を目 の細かい紙ヤスリを巻いた木片できれいに仕上げる。次に設計図を 共鳴板(soundboard) の上に置く。この時、端は覚えておいたケース(casework) との間隔に正 確に比例する位置にする。ブリッジ(bridge) を設計図の上から指定されている位置に置 き、動かないように押さえながら四隅を尖ったもので刺して共鳴板(soundboard) に穴 をあける。設計図を取り除き、あけた穴をさらに鉛筆で印して見つけ易くする。 ブリッジ(bridge) を接着する前に、以前にあけた300mm間隔の穴を調べる。共鳴板(soundboard) が左右に伸張し、共鳴板保持材(soundbar) がある中心部では収縮しているかもしれない。も しそうなっていたら、必ずもう一度収縮させる。

共鳴板(soundboard) を前述したように二枚の板の上に置いた状態で、ブリッジ(bridge) を接着 して上から重石する。このとき、ブリッジ(bridge) に塗る接着剤の量をよく考えて、十 分に、かつ拭き取る分は最小になるようにする。まずブリッジ(bridge) を前後に少し動 かして余分な接着剤を拭き取り易くし、四隅を正確に目印の穴と合わせたら手 を離す。重石は4つか5つ、均等に置く。もし重みが一方に集中的にかかったら、 他方から接着剤を速やかにボロ布で拭き取る。たとえば鍵盤側に重みがかかっ たら、調律ピン板(wrest plank) 側の接着剤を拭き取る。そうしたら、1つづつ重みを一方 から他方へと移動させて調律ピン板(wrest plank) 側に重みがかかるようにし、鍵盤側の接 着剤を拭き取る。このとき調律ピン板(wrest plank) 側は板で支えられている。なお表面に 見える部分から接着剤は注意深く拭い取らなければならない。そうしないと後 で共鳴板(soundboard) を塗装した時にくっきりと跡が残ってしまう。

乾燥したらブリッジ(bridge) の鍵盤側に共鳴板(soundboard) 表面から1mm離して鉛筆で線を引 く。このときまでには指で寸法を測ることにも慣れていることだろう。 3/4'' のノミでブリッジ(bridge) を削って角度をつける。最後に目の細かいヤスリ で仕上げる。(共鳴板(soundboard) に当たるのを防ぐため取っ手は外す。)

この時点で共鳴板(soundboard) に装飾を施すかどうか決めなければならない。仕上げ 塗装に影響するからである。元の楽器では装飾は施されていないが、多くのク ラヴィコードは装飾されていたし、外見が大変良くなる。アーリー・ミュージッ ク社では共鳴板(soundboard) 装飾セットを扱っており、説明書とデザイン、材料が入 手できる。また個人的にMrs. Sheila Barnesに装飾を依頼してもよいだろう。 このマニュアルに載っている共鳴板(soundboard) の装飾は彼女の手になるものである。 費用については、エディンバラの自宅に電話していただきたい(+44 131 229 8018)。また実際に依頼した場合は輸送用の箱が送られてくる。その場合、 共鳴板(soundboard) は未塗装でかつピンを打ち込む前でなければならない。もし装飾 キットを使って自分で装飾するなら、セラックの薄片が提供されるので、装飾 前にはこれだけを塗る。共鳴板(soundboard) を装飾するのは接着してからにした方が 良いだろう。いうまでもなく、もしMrs. Sheila Barnesに装飾を依頼するなら 接着前でなければならない。

もし装飾しないなら、ブリッジ(bridge) と共鳴板(soundboard) を目の細かい紙ヤスリでヤスリ がけする。必ず木目に沿ってヤスリがけし、決して目を横切るようにかけては いけない。そして接着剤の跡と鉛筆の線を完全に取り去ること。そうしたら、 一層か二層、薄くラッカーをかける。ツヤ消しポリウレタン塗料がよく、それ をうすめ液でやや薄める。最初の層が乾燥したら木目がやや立っているから、 もう一度使い古した目の細かい紙ヤスリでヤスリがけする。ほこりを全部ぬぐ い去ったら、第二層を塗る。塗装の目的は、共鳴板(soundboard) を振動しやすくさせ る一方、ほこりやゴミから守ることである。

乾燥したら、十分注意しながら共鳴板(soundboard) を作業用板の上に置く。その際、 共鳴板保持材(soundbar) が直接作業台に触れないよう注意すること。ドリルであけた穴に ピンを差し込み、表面に2.5mmの長さでピンが残るように打ち込む。そうした ら目の細かいヤスリで(取っ手は取り外しておく)ピンの頭を削って水平にし、 図に示してあるように、すべてのピンが表面から2mmの長さになるように揃え る。もしかなり長かったら頭の方をペンチなどで切りとってもよい。注意事項 としては、ピンを打ち込む際、共鳴板(soundboard) がしっかりと支えられていること である。ピンの並びを点検し、線からずれているものがあったら曲げて修正し、 美しい曲線を描くようにすること。(写真20)

いよいよ、共鳴板(soundboard) を指定された位置に接着する。接着剤は余分につけな いようにするが、共鳴板保持材(soundbar) が固定される凹部分にはたっぷりとつける。圧力 が分散するように共鳴板(soundboard) の端の方に不要になった木片をいくつか置いて、 その上から特製クランプで押しつける。側面からも締め付けて共鳴板(soundboard) に 下向きに圧力をかける。ねずみ穴(訳注:胴横木(belly rail) 中央の穴)にも一つか二 つクランプを差し込み、その周辺で共鳴板(soundboard) をしっかり押し下げる。乾燥 したらクランプを取り外し、胴横木(belly rail) からせり出している余分な部分を削 り取る。この部分は紙ヤスリを巻いた木片でヤスリがけして平らに仕上げる。


訳注: 設計者であるバーンズ氏は、ここに説明されている方法よりももっ と手軽なやり方でピン穴をあけていた。ただし器具はやや特別なものが必要で ある。原理を説明すると、片手で握れるくらいの大きさの長方形の金属片を用 意し、その下側面にピン穴の角度と深さに合わせて針をとりつける。針の太さ はドリルと同じものと、それよりも細目のもの二種類を用意し、器具も二つ製 作する。これで指定された向きになるように注意しながら、針が完全に ブリッジ(bridge) に隠れるまで器具を押し下げる。最初は細目にあけ、つぎに太い方を 使う。多少、力をかけなければならないが、これで穴の深さと角度、太さは指 定どおりにあけられる。バーンズ氏はさらに工夫して手前下辺を斜めに切断し、 その部分に針を取り付けていた。こうすると持ち易く、針先もよく見えるとい う利点がある。ドリルよりも手軽だが、問題はそのような道具を自作できるか どうかであろう。もし金属を正確に加工できる器具が手元にあるなら、自作し てみることをお薦めする。



Tsutomu Fujinami
Wed Dec 8 11:06:30 JST 1999