胴横木(belly rail) の部品は中心部にドリルで4つの穴があけられている。この穴の 間を削って一つの長い穴につなげなければならない。この穴は俗にネズミ穴と も呼ばれている。(写真12および13) 小刀などで穴の間を削り取り、丁寧にあ けること。決してノミで乱暴に削り取ろうとしてはならない。木目にそって部 品が割れてしまうからである。穴がうまくあけられたら、金ヤスリなどで表面 を滑らかにする。
胴横木(belly rail) は、必要な部分はすべて正確に定められた角度に切断してあるが、 対角補強材(diagonal brace) との半接合部は、削り取って正確に合わせるよう、少な目に 切断してある。まず平衡横木(balance rail) を取り外す(このためにまだ接着しなかった わけである)。よく研いだノミで半接合部を慎重に削り、組立開始時に印した 位置で対角補強材(diagonal brace) と組み合うようにする。胴横木(belly rail) が削れたらとり外 し、平衡横木(balance rail) を再度取付けてからまた取り付ける。胴横木(belly rail) が 底板(baseboard) とぴったり接するよう、平衡横木(balance rail) の角は多少削り取らなけれ ばならない。まず平衡横木(balance rail) に削り取るべき角度で線を引く。(写真14) 平衡横木(balance rail) を取り外し、作業台上で慎重に削り取る。もう一度取り付けて 正確に組合わさるかどうか確認し、うまくいくまで繰り返す。
部品の接着・固定は、まず平衡横木(balance rail) 、次にケース前面補強材(case-front reinforcement) の順でおこなう。 平衡横木(balance rail) を固定するには、丈の長いクランプを用い、さらに必要に応じて数本 の平衡ピン(balance pin) を打ち込んで線に合うように固定する。乾燥したらクランプを 取り外し、鍵盤右側面 を取付・接着する。方法は鍵盤左側面 の取付けと同じである。乾 燥したらよく研いだノミですべての接合部をきれいに掃除し、それから 胴横木(belly rail) を取付・接着する。胴横木(belly rail) をクランプで固定するのは難しい ので、重いものをいくつか上から載せる。本や金属製品などがよいだろう。
注記: 平衡横木(balance rail) を固定するには二、三本の平衡ピン(balance pin) で底板(baseboard) に打ち付けるとよい。平衡ピン(balance pin) は作業後ペンチなどで容易に引き抜ける。
胴横木(belly rail) は、取り付け前に「くぼみ」をつけておくと作業が容易になる。この 「くぼみ」は共鳴板(soundboard) をよく鳴らす効果がある。具体的な方法については 第15章第2パラグラフを参照のこと。