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第1回COEアドバイザ−委員会

・新田 克己  東京工業大学大学院 総合理工学研究科教授

Law Defined Systemという考え方は構想が大きく面白いアイディアである。従来から、法律を
体系化して知識ベースを作る、という研究構想はあったが、従来はその用途がはっきりしていな
かった。本プロジェクトでは、電子社会を想定して Law Defined System という考えを導入した
ことにより、目的が具体性になり、社会的ニーズにもマッチするものとなった。

以下は細かなコメントである。

(1)イメージの具体化
 Law Defined という用語はさまざまな解釈が可能である。どのような形で住人に利益がある
のかについては、今後、次第に明らかになってくるものと思われる。以下はその一例であるが、
どれを実現するのか、または、全部なのかが、明確になると良いと思う。

  ・何かよくないことをしたときに警告するものなのか。それは、自動的に
   警告するのか、質問したときにのみ警告するのか。 ==> 診断システム
     例)看板を出したときは、撤去せよ。
  ・積極的に市民に手続きを促すものなのか。それは、時期が来たときに、市民に
   どのように知らせるのか。==> 助言システム
     例)2月15日になったので、確定申告をしなさい。
  ・あることをするためにはどのような法律をクリアしたらよいかを
   助言するものなのか。 ==> 計画システム
     例)相続税を減らしたいが、どのような手段が考えられるか。

(2)法律のルール化の問題
 法律は自然言語で書かれているため、構文的にも、意味的にもあいまい性が存在する。法律文
を論理式化するだけで、構文的なあいまい性はなくなり、その判断が形式的に行えるので、法律
の運用を知るためには有意義である。
 自然言語処理の技術を使って、法律文の論理式化を図るのは、現実的な方法である。しかし、
同じ概念が法律文によって表現が異なることがあるので、個々の条文を機械的に論理式に直した
後で、複数の論理式を比較して、表現の統一化(たとえば、引数の数を揃えるなど)を行うこと
が必要である。そのためには、重要な概念については辞書(どのような述語を用い、引数をいく
つ用意するか、その上位概念は何か、など)を作る必要がある。その辞書自体が、役所にとって
も、住民にとっても、有用な情報源となる。

(3)説明のレベル
 住民レベルから見て、アカウンタビリティの機能は非常に重要である。本プロジェクトでもア
カウンタビリティの課題を重視しており、きわめて妥当なアプローチをとっている。ただし、法
律の運用に関するアカウンタビリティの機能はユーザのレベルに適合した機能が必要である。関
連した法律の条文を全部列挙されても、法律の素養がない住民レベルでは意味がわからないかも
しれない。プロジェクトの本質ではないかもしれないが、実用レベルにおいては、説明をするた
めの豊富な機能を持つユーザインタフェースを設計する必要がある。
 原因結果グラフと論理式の対応付けは、実用面でも研究面でも興味ある課題であり、今後の進
展が大いに期待される。(2)で言及した辞書とクラス図が密接な関係にあるのではないかと想定
される。

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