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Next: クラス特徴の解析手法 Up: 固有空間法と重判別分析による顔画像の個人性と表情の解析 Previous: 目次

はじめに

人間はコミュニケーションにおいて言葉や文字などのバーバルな情報以外に, 顔の表情,ジェスチャ,声の調子などのノンバーバルな情報をも伝達し,コミュ ニケーションの効率化を行っている. 特に,感情の55%は顔の表情で表現されるという心理学者Mehrabianの報告が あるように,顔の表情は重要である[1]. このことから,ネットワークを介した人間同士のコミュニケーションにおいて, 顔の個人性や表情が伝送できれば,より親密かつ効率の良いコミュニケーショ ンができると考えられる. 本研究はこのようなコミュニケーションを実現するために顔画像から個人性及 び表情の解析を行うことを目的としている.

顔画像から個人性や表情を解析する代表的手法として主成分分析 (Principal Components Analysis;PCA)がある [2, 3, 4, 5, 6, 7, 8]. PCAは抽出した特徴ベクトル (ex. 顔画像の輝度値,顔形状,オプティカルフロー,etc) の集合から, 射影成分の分散が大きい射影軸をあらかじめ求めておき, 特徴ベクトルをその射影軸への射影成分(主成分)で表す手法である. しかし,PCAにより求まった主成分は個人性や表情,照明等の様々な影響が混 合した成分である. よって,PCAにより個人性を解析する場合,表情,照明等のばらつきによって 解析結果が大きく影響されるという問題がある.

このような影響を軽減する方法としてフィッシャーの線形識別を多クラスに拡 張した重判別分析(Multiple Discriminant Analysis;MDA)を用いる方法がある [9, 10]. MDAは級内分散と級間分散の比が大きい軸を求める手法である. 本研究では従来のPCAに基づく固有空間法を変形して得た, 級間分散と級内分散の差が大きい軸を求める手法(本稿では本手法のこと をクラス特徴に基づく固有空間法(Eigenspace Method based on Class features:EMC)と呼ぶ)を提案する[11, 12]. そして,EMCとMDAのそれぞれを使用し,任意の顔パターンに対して個人性ま たは表情の特徴を表す軸,すなわちEMC,MDAにおける固有ベクトルを導出す る. その固有ベクトルで顔パターンを変換して得た特徴ベクトルにより個人性と表 情の解析を行う.

本研究では次の項目について検討する.



Takayuki Kurozumi
Sat Mar 27 06:27:54 JST 1999