生産性革命
産業革命と呼ばれる世界規模の社会と文明の転換の本質は,
下記の表のような知識に対する考え方の変化による.
革命前(一般教養と専門技能) | 革命後(専門知識) |
私的なもの |
公的なもの |
存在するもの |
適用するもの |
テクネ(秘伝的技能) |
技術, 方法論(techne: 秘技 + logy: 体系) |
師弟制度(経験のみで取得) |
教科書(教え学べるもの) |
挿話 |
情報 |
個人的経験 |
一般的体系 |
当時は途方もなく異端的な考え(分析による方法で仕事をすれば,
熟練労働者と同等以上の賃金を得るに値する)に基づく
F.W.Taylorの仕事の研究以後,
年率3.5-4%(18年で倍増)という前例のない生産性の伸びを実現した.
この生産性はプロレタリアの分け前(生活の質の向上)となって,
資本家との対立を避けることが出来た結果, マルクス主義を失敗に導いた.
しかし, 製造業, 農業, 鉱業, 輸送業における肉体労働者の生産性の向上は,
もはやそれだけでは富みを創造することができず,
知識の知識への適用
が不可欠となる.
補足: かつての知識の意味と機能
- ソクラテス: 自己認識(知的, 道徳的, 精神的成長)の機能のみ,
- プロタゴラス: 知識とは論理, 文法, 修辞,
- 儒教: 何を言うかを知ること(昇進と世俗的成功への道),
- 道教と禅宗: 悟りと知恵の道.
知識の意味しないものは全て共通で, 「行為能力」であった.
林 幸雄
(yhayashi@jaist.ac.jp)
「目次」に戻る