12月某日、私の尊敬する研究者の一人であるN古屋大学のT地立家さんから メールが届きました。
海外での出来事,LAへの意見,最近の出来事や随筆, 研究に関する最近のホットな話題,初心者向けの研究解説,研究や教育 についてのエッセイ,書評,論文の投稿案内などなどについて何か書け、という打診のメールでした。
突然私事になりますが、非常に幸運なことに、私は来年度から駒澤大学の在外 研究制度を利用できることになりました。これを利用して2001年の4月から Canada の University of Waterloo に滞在させてもらうことになっておりま す。そんなわけで、海外「での」出来事ではなくて、海外「への」出来事なら なんとかなるか、、、と思って引き受けさせていただきました。 (つまり今回のタイトルは、現在形ではなく、未来形です。)
私も国際会議や旅行で、短期間滞在した国ならそれなりにあるのですが (数えて見たら、過去8年間で12カ国に足を下ろしてました。 自分では出不精なつもりなのですが、 意外とそうでもないかもしれません)、 そこに『住む』となると、予想外の雑事がたくさん持ち上がりました。 ここでは私がであった数知れない雑事の中から、 他の人にも多少なりとも参考になりそうなことを紹介したいと思います。 経験豊かな諸先輩方から見れば、 単なる見苦しいばかりのジタバタぶりかもしれませんが…。
こうした制度はいろいろな大学にあるかと思いますが、 どれくらい利用しやすいのか、というのは千差万別だと思います。 私が所属している自然科学教室では、 一般教養のサイエンスを教えているので、卒研生や大学院生を持っていません。 ですから、在外研究制度を利用しやすい立場にある、と言えます。 そして『若い人には、どんどん利用させる』という慣習まであります。 ですから『自分でがんばって利用にこぎつけた』と言うよりはむしろ 『周囲の理解の元で自然と利用できた』と言う感じでした。 ですからこの点については単に『ラッキーな職場だった』という以外に、 特に他の方の参考になるような話はありません (学生さんの職場選択の参考にはなるかもしれませんが)。
さて、利用できることが確定したら、行き先を決めなければなりません。 またスケジュールなどもノウハウがまったくないと、見当もつきません。 こうしたことは研究者の先輩に相談するのが一番でしょう。私の場合は、 ごく最近、やはりオランダに行っていたG馬大学のY崎浩一さんに、行き先や 渡航までのスケジュールも含めて、いろいろと相談にのってもらいました。 しかし相談相手をよく見極めることも大切です。私の場合山Z浩一さ んのスケジュールよりも多少前倒しでやるように心がけて うまくいきました :-) 冗談はさておき、当時独身だった山崎K一さんと違って、 幸か不幸か私にはすでに妻子がいるので、 雑事は指数関数的(?)に増えました。 単身で行くか家族で行くか、という点は、 雑事の量でいえばかなり効いてくる、ということを実感しました。
カナダの場合、半年までの滞在ならビザは不要なのですが、私はそれ以上の滞 在になるため、ビザの取得が必要です。さて、こうした場合、どういう種類の ビザを取得すればよいのでしょう。まず駒澤大学の事務に問い合わせたところ 「よくわからない」と言われました。その後、事務の方で調べてくれたよう なのですが、その返事が「あえて言えば就学ビザだそうです」という 謎の返事でした。 しょうがないのでカナダ大使館に行って直接聞いたところ、Waterloo から もらった Invitation Letter をじっくり読んだ担当官によると「就労ビザを 申請して下さい」とのことでした。結局のところ何が決め手で就労ビザになっ たのか、は、今でもわかりません。
さて、ビザの申請には、Invitation Letter 以外にもいろいろな書類が必要で す。またこれらの書類には依存関係があります。最初は必要書類の全容も依存 関係も不明なので、なかなか手間と時間がかかります。私の場合は『駒澤大学 が財源を確保してくれる』という書類を取得するために、 まず『近所の旅行会社に行って旅費の見積りをとる』ことが必要になりました。 おかげで「風が吹けば桶屋が儲かる」の深遠な世界をかいま見ることができま した。
無理矢理まとめてしまうと、必要になるビザや書類はケースバイケースで、 あちこちでつっかかる、ということでしょうか。 このあたりは早めにおさえておいた方がよいです。
私の子どもは小学生なので、義務教育を受けさせなければなりません。 こういうことは現在子どもが通っている学校の先生に言えばそれでいいのか、 と思ったら、そうではありませんでした。担任の先生には「必要な書類を指定 してくれれば用意します」と言われて、それでおしまいでした。う〜む、、、。
そこでいろいろと調べてみると、海外子女教育振興財団という財団法人を 見つけました。どうもここに連絡をするとよさそうです。 さっそく連絡してみると、カナダで日本人の子どもを受け入れている 学校の一覧が送られてきました。 そしてどうもこちらもそれでおしまいのようです。う〜む、む、む。
…というわけで、この一覧の中からめぼしい学校を見つけて、 その学校の校長先生に問い合わせの手紙を出したのがつい先日のことです。 その返事はまだありませんので、この話はここでペンディングになっています。
このあたりが確定しないと、住む場所も決められないというのに、 これについてはぎりぎりまで悩まされそうです。 どなたかもっとよい方法をご存知の方、教えて下さい…。
(付記) この原稿を送る前にインターネットでいろいろと調べてみたとこ ろ、 海外子女教育振興財団のホームページを見つけました。 このページをみると、電子メールによる相談受け付けなど、 いろいろなサービスがあるようです。 単なる私の調査不足だったのかもしれません。
私がいない間に私の授業を担当してくれる非常勤講師を探さなければなりませ ん。私の場合、
妻子は英語がほとんど話せないので、一家そろって英会話スクールに通うこと にしました。特に今は「教育訓練給付制度」というありがたい制度が使えて、 レッスン料の80%(上限20万円まで)のお金が 国(ハローワーク)から返ってきますから、 習い事をするにはもってこいのチャンスです、、、 と思っていたのですが、思わぬ事態に足元をすくわれました。
実は私は雇用保険に入ってないそうで、 給付の対象外なのでした。 はずかしながら、N本大学のT聖一さんに聞くまで知りませんでした。 でも英会話スクールの事務の方も知らなかったそうですし、 おそらく多くの方はその事実を知らないのではないでしょうか。
端的に言えば、私たち (実は「私たち」がどこまでを指すのか、 詳しいことは知らないのですが…。 日H大学の谷S一さんはよくご存知のようなので、興味のある方は 聞いてみて下さい。でも自分の所属組織の人事部に聞いた方がいいですね :-) は失業しても、ハローワークで失業保険がもらえないのです。 今回の件で初めて知りました。思わぬ勉強になりました。
しかし、、、今後大学が淘汰される時代になると『職を失った元大学教員』が ハローワークで初めてその事実を知って愕然とする、 という光景が見られるのでしょうか…??
私が今感じていることを総括すると、
それから特に『自分で手をあげて行く場合は、誰も助けて くれない』ということも強く実感することができました。 役所や銀行など、あちこちの窓口で「企業の方なら、 普通は会社の方でやって くれるんですけどねー」と言われながら、 私の場合は自分でやらなければならない、ということが何度かありました。
たぶんこうした苦労も、半年もすればすっかり忘れて、海外での研究生活を 楽しんでいることと思います。 そのために、こうした経験は本来は蓄積されずに、 ごく個人的な話で終わってしまっているのかもしれません。 こんな駄文でも『この時期だからこそ書けるノウハウ』として、 多少なりとも若い方のお役にたつことができれば幸いです。
Last modified: Fri Nov 8 16:42:30 EST 2002
by R.Uehara (uehara@jaist.ac.jp) |