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研究テーマ

金子研究室では、天然分子の複雑性を巧みに操る「バイオマスサイエンス」と「高分子設計・合成」を展開し、以下の研究を遂行しています。

バイオプラスチックの設計と合成

 プラスチックなどの高分子材料は巨大分子から構成されています。これらの巨大分子が協同的に機能することで低分子化合物には無い性質が出現します。プラスチックが柔軟性や加工性を持つのは巨大分子の特徴が生かされた結果です。中には鉄よりも遥かに軽くて強いプラスチックが存在します。しかし、これらのプラスチックの取り扱いを誤れば深刻な環境問題を引き起こします。当研究室では、植物や光合成微生物が作る天然物質を用いて環境に適応できるプラスチックを開発しています。また、これらの生分解条件を追求し、環境中や生物の体内で自然に消滅するプラスチックの開発も目指しています。

適時適所分解性バイオナイロン
~海洋分解性バイオプラスチックの開発を目指して~
(プロジェクト:ERCA、ムーンショット事業、科研費挑戦的萌芽)

水中で高圧水銀灯を照射 → 光誘起水溶化分解を発見

水中で太陽光に含まれるUV-A や UV-B 照射を行うこと水溶化しながら分解することが分かった。これは、海洋における強烈な太陽光照射により軟化分解することを示唆している。

超高耐熱バイオプラスチックの開発 ~史上最高耐熱へ~
(プロジェクト:SIP2(NARO)、CREST、科研費基盤Bなど)

セルロースを消防服の素材などの超高耐熱ポリマーへと変換する分子設計(東大、筑波大、神戸大と共同)

ポリベンズイミダゾールは最高耐熱を誇るポリマーであるが、それは剛直構造に加えて強い水素結合を示すことが理由である。最近、DFT計算によりイミダゾール環の芳香族性が共鳴効果により高まり、これは水素結合を弱めることを見出すとともに、この欠点を克服する分子設計を行った。その結果、水素結合力を高める新概念を提案し、史上最高耐熱のフィルムを得るに至った。

分子バネ構造を含有する高性能透明樹脂の開発
(プロジェクト:ALCA、COI、科研費基盤Bなど)

筑波大、神戸大が共同で4-アミノ桂皮酸を生産
光二量化によるモノマー合成
(初めてのバイオ芳香族ジアミン)

超高靭性ポリアミド
実用技術化ステージ前の当初のポリイミドの構造(世界初のバイオ由来ポリイミドとして学術的に注目された)

100種類近くのサンプルを作製し「水溶性ポリイミド」や「クモ糸を超える超高靭性のポリアミド」など今までにない革新的材料を開発してきた。

ガラス代替を行い輸送機器を軽くする

電気自動車等

光メカニクス機能を持つバイオフィルム
(プロジェクト:若手NEDO、科研費、その他多数の民間助成)

天然高分子の材料化

植物や微生物が作る天然物質を用いて環境に適応する材料や生医学的応用を目指して研究を進めています。中でもラン藻由来多糖であるサクランは実用化にも至った注目するべき素材です。

Aphanothece sacrum 由来多糖類「サクラン」の機能素材としての開発
(プロジェクト:若手NEDO、シーズ顕在化、科研費「挑戦的萌芽」など)

「サクラン」の実用化研究
(プロジェクト:A-step、GSM社との共同研究など)

バイオ高分子の縮合系高分子としての機能開発
(桶葭研、渡辺研(東工大)、三俣研(新潟大)、M. Zrinyi(Semmelweis大学)などとの共同研究)

世の中には多くのバイオ高分子があります。それらの物理現象に関して様々な研究室と共同研究をすすめ次々と新たな事実を発見してきました。

サクランの超螺旋構造形成過程(桶葭研との共同)
ベトナムのラン藻から抽出した多糖(左)とその金属吸着型ゲル形成の様子(右)(ハン博士(ベトチー工業大学)との共同)
ヒドロキシプロピルセルロースが示すクリスチャンセン効果(渡辺研(東工大)との共同)

生物由来機能物質の利用

金子研究室で行ってきた今までの研究成果は広く認められ、生物学者が新しい物質を見つけた時にそれの利用価値や付加価値を見出すために声をかけてくれることが良くあります。つまり、あらゆる微生物由来物質の高付加価値化のメッカとなっています。これは非常に自負するべきことです。一方、その物質の持つ潜在力を見出してあげることは生産微生物の存在意義を認めることにもなり、新しい産業を作り出すための重要な出発点の構築にもつながります。これは、大きな責任と重圧と感じる研究であり誠実に共同研究を進めています。一方、物質の付加価値を見つけることが出来た時の喜びは計り知れません。