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受賞

元本学共創インテリジェンス研究領域助教の黒川先生が日本動物行動学会の2024年度日本動物行動学会賞を受賞

 元本学共創インテリジェンス研究領域助教の黒川瞬先生(現大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授)が日本動物行動学会より2024年度日本動物行動学会賞を受賞しました。

 日本動物行動学会(Japan Ethological Society)は動物行動学の発展を図ることを目的として設立されました。行動生態学、生理学、動物社会学、心理学、遺伝学、進化学、数理生物学など、動物の行動に関するあらゆる分野に開かれた学会です。
 日本動物行動学会賞は研究者の全業績を評価する賞ではなく、1つのよくまとまったテーマに関するものだけを選考の対象としており、研究者の年齢やキャリアを問わず表彰するものです。

※参考:日本動物行動学会 (受賞理由)

■受賞年月日
 令和6年11月3日

■研究題目、論文タイトル等
 嫌がらせ行動の進化と利他行動の進化の比較に関する理論研究

■研究者、著者
 黒川瞬

■受賞対象となった研究の内容
 自分の適応度を下げて相手の適応度を上げる利他行動、自分の適応度を下げて相手の適応度を下げる嫌がらせ行動は、共に自分の適応度を下げる行動である。そのため、長い年月を経た今観察されることは、自然選択の観点からすると不思議である。利他行動の進化は先行研究により精力的に取り組まれてきたが、嫌がらせ行動の進化は、利他行動ほどには研究がなされてこなかった。今回、嫌がらせ行動の進化に関して理論的な研究を行い、次の2つのことを発見した。1つ目は、相手が利他的に振舞ったら利他的に振舞い、相手が利他的に振舞わなかったら利他的に振舞わない、という報復的な条件付き利他行動が進化しえる一方で、相手が嫌がらせを行ったら嫌がらせを行わず、相手が嫌がらせを行わなかったら嫌がらせを行う、という反報復的な条件付き嫌がらせ行動が進化しえることである。「やられたらやり返す」という報復的な行動は進化しやすい、とこれまでは考えられてきたが、それが成り立つ範囲は限定的であることをこの結果は意味する。2つ目は、嫌がらせ行動の進化は利他行動の進化ほどには起こりにくいことである。この結果は、嫌がらせ行動が利他行動ほどには観察されない、という観察結果と一貫している。

■受賞にあたって一言
 今回の賞の表彰対象は、Kurokawa 2024 Anim. Behav. 209: 143; Kurokawa 2024 Theor. Popul. Biol. 156: 131; Kurokawa 2024 Theor. Popul. Biol. 158: 109の3本の論文です。ぼくは、2013年博士号取得後、企業で働いており、研究を一時中断しています。2015年に博士研究員としてアカデミアに戻ってきた後、研究に打ち込んできましたが、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻に修士課程の大学院生として在籍していた時に書いたKurokawa & Ihara 2009 Proc R Soc B 276: 1379を超える論文がずっと書けないでいます。このことは確かに残念なことだと認識しています。しかし、今回、Kurokawa & Ihara 2009 Proc R Soc B 276: 1379を含めない研究で賞を頂けたこと、本当に嬉しく思います。アカデミアに戻ってきた意味があった、と言ったら言い過ぎでしょうか?賞の表彰対象となった3本の論文はいずれも、着想含めてJAISTに着任してからの研究ですので、JAISTの研究環境に感謝したいと思います。

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授賞式の様子

令和6年12月16日

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