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受賞

特別研究員の酒匂さんとトランスフォーマティブ知識経営研究領域の内平教授の論文が産学連携学会2024年度論文賞を受賞

 特別研究員の酒匂孝之さん(特別研究員、トランスフォーマティブ知識経営研究領域、内平研究室)とトランスフォーマティブ知識経営研究領域の内平直志教授の産学連携学会誌「産学連携学」に掲載された2つの論文が、NPO法人産学連携学会の2024年度論文賞を受賞しました。

 産学連携学会は産学連携学の確立及び産学連携自体を発展させることにより、日本の学術や技術の発展を促進し、もって地域が特色ある活動を活発に行う豊かで個性と活性に富んだ社会をつくりあげることに寄与することを目的としています。
 産学連携学会論文賞は、同学会論文集に投稿した論文等が特に優秀であり、もって産学連携活動全般に貢献した個人・グループを表彰するものです。
 今回受賞対象となった2論文は、いずれも酒匂さんが本学博士後期課程在籍時の研究成果を投稿した論文です。

※参考:産学連携学会

■受賞年月日
 令和6年7月13日

■研究題目、論文タイトル等
 ①概念実証の観点から見たスタートアップ企業の設立のためのアカデミアとベンチャーキャピタル間の知識共有の分析
  (産学連携学 2023 年 20 巻 1 号 p38-50, 2023 年 1 月公開)
 ②概念実証の観点から見た研究成果事業化のための知識共有の分析
  (産学連携学 2021 年 17 巻 2 号 p91-101, 2021 年 8 月公開)
 
 本研究グループは論文①の発表に先立つこと2年前、2021年に「産学共同研究において事業化の成功に到る要因は何か?」という問いに対して「概念実証の獲得を通じて情報の非対称性を解消している」という仮説の下、論文①と共通する手法で事例を分析し論文②を発表しました。すなわち論文①と②は、「個々の事例の分析により他にも応用可能な理論を導く」という産学連携学のアプローチを一歩進め、異なるプレイヤー/セクター間の相互作用を一つのコンセプトに基づく手法により分析し、学術的な成果を得たものと考えられます。幾つかの論文を積み重ねることで1つの価値(到達点)を示したという観点での表彰があっても良いという考えから、今回この2論文に論文賞が授与されました。

■研究者、著者
 酒匂孝之、内平直志

■受賞対象となった研究の内容
 アカデミアの研究成果を事業化するにあたっては、研究者、産学連携部門、共同研究先企業、ベンチャーキャピタル、ファンディングエージェンシーなど多くのステークホルダ間での知識の共有が必要となるが、情報の非対称性、粘着性、不確実性など様々な理由で知識の共有は円滑にはすすまない。
 研究①は、アカデミアの研究成果をスタートアップ企業の設立を通じて事業化する場合において重要となるアカデミアとベンチャーキャピタルの間の知識共有について、スタートアップ企業の設立に向けて検証する4つのプロジェクトを対象に、概念実証(PoC)を獲得するためのプロセスをフレームワークとして分析した。分析の結果、アカデミアとベンチャーキャピタルが一体となってプロジェクトを実施することで、情報の非対称性の解消に貢献し、プロジェクトの結果としてPoCを獲得することが不確実性の解消に貢献し、スタートアップ企業の設立やファンド投資に影響を及ぼすことを明らかにした。
 研究②は、アカデミアの研究成果を既存企業との産学連携による共同研究を通じて事業化するにあたり、アカデミアと共同研究先企業の間の知識共有について、2つの共同研究プロジェクトを対象に、研究①と同様に、PoCを獲得するためのプロセスをフレームワークとして分析した。分析の結果、共同研究を開始するにあたっては、第一にビジネス上の課題を起点として目標を設定し、それらを元に研究目標を設定することや、ビジネスの目標と研究の目標の両者をステークホルダ間で共有することが事業化の促進には有効であることを明らかにした。

■受賞にあたって一言(酒匂さん)
 今回、博士論文の骨格をなす2つの論文が学会において論文賞を受賞したことはこの上ない喜びです。これもご指導賜りました内平直志教授をはじめとする先生方、様々な観点で議論させていただいた研究室の皆さま、さらには私の研究のためのインタビューに快く応じていただいたベンチャーキャピタルの皆さまや研究者の皆さまのお陰です。この場を借りて深く御礼申し上げます。
 多くのアカデミアの研究成果は重要なイノベーションの種であり、その成果を事業化を通じて社会還元することは大学、研究機関の重要な使命と考えております。引き続きより多くのアカデミアの研究成果が社会還元されイノベーションが活性化するためのメカニズムの研究を進め、学術的にも実務的にも社会に貢献できるよう精進して参ります。引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

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令和6年8月8日

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