環境・エネルギー領域の中野助教が第14回 物性科学領域横断研究会(領域合同研究会)において最優秀若手奨励賞を受賞
環境・エネルギー領域の中野 晃佑助教が第14回 物性科学領域横断研究会 (領域合同研究会)において最優秀若手奨励賞を受賞しました。
物性科学領域横断研究会は、物性科学に関連した6つの新学術領域研究が合同で開催する研究会です。各領域の研究内容を専門外の研究者や大学院学生に対し解説し、領域間のシナジー効果を高めると共に、物性科学のホットな話題を2日間で概観することを目的に開催されます。
若手奨励賞は、物性物理の将来を担う若手研究者(学部4年生から学位取得後5年以内までの若手研究者) の研究を奨励し、今後の発展研究への動機付けと物性科学の5~10年後のさらなる活況に貢献する人財育成の一助とすることを目的として、次の4つ視点からの審査を経て授与されます。
1. 発表内容の重要性や魅力がよく表現されていること
2. 多領域・専門外の研究者にとってもわかり易く明瞭な説明がされ、質疑応答に優れていること
3. プレゼンテーションの完成度が高く、審美性にも優れていること
4. 独自性が認められ、今後の発展が期待できること
* 参考 第14回 物性科学領域横断研究会
■受賞年月日
令和2年12月5日
■研究題目
第一原理量子モンテカルロ法コード「TurboRVB」の開発と応用
■発表の概要
近年の大型計算機の発展に伴い、材料科学分野、特にナノテクノロジー分野でも、数値計算を実験の代替とし、研究開発を加速させる取組に注目が集まっている。材料のミクロな物性は電子によって決定づけられ、多体シュレーディンガー方程式を解くことによって原理的には予測可能である。しかし、原理確立後100年近く経った今でも、多体相互作用を含むこの方程式を経験的なパラメタなしで解くこと (i.e., 第一原理電子状態計算)は未だ難問である。変分原理に基づき多体波動関数を数値最適化し、厳密な基底状態を求めることが可能な第一原理量子モンテカルロ法は、この難題を打破する決定打と目されて久しいが、要衝である多体波動関数の微分量が有する解析的特異性故に、その実装と実用化は至難の技である。TurboRVBはイタリアのトリエステに位置するInternational School for Advanced Studies (SISSA)に所属するSandro Sorella教授が中心となって開発している第一原理量子モンテカルロ法の計算コードであり、自由度の高い波動関数の最適化や物性推算の要衝となる「微分量算定」に強みを持つ。本発表では、第一原理量子モンテカルロ法の計算コードTurboRVBに、発表者らによって最近考案/実装された新規計算手法やその応用例を紹介した。
■受賞にあたって一言
この度は、伝統ある物性科学領域横断研究会におきまして、このような賞を頂戴させていただいたことを大変光栄に思います。本研究の遂行にあたり協働した多くの海外の共同研究者、及び、本学においては、ご多忙の中ご指導いただきました前園涼教授、本郷研太准教授、また、日々の研究業務をサポート頂いている研究補助員の方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。また、本研究は、大型並列計算機なしには遂行できない研究プロジェクトです。本学の計算機環境を構築し、安定的に運用頂いている情報社会基盤研究センターの方々にも、この場をお借りして御礼申し上げたいと思います。
令和2年12月9日