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Matching Stories vol.2 北陸地域の100年後の未来を育てたい~“地銀”と大学のコラボレーションを目指して~ 北陸銀行 地域創生部 

Matching Stories vol.2
北陸地域の100年後の未来を育てたい~“地銀”と大学のコラボレーションを目指して~

北陸銀行 地域創生部
シニアフェロー 宮田健章 氏/主査 山上翔平 氏/主任 水上智恵 氏

毎年11月に石川県金沢市で北陸先端科学技術大学院大学未来創造イノベーション推進本部が主催して開催される、Matching HUB Hokurikuには、2日間で延べ1600名近くが参加し、北陸地域の活性化や新産業創出を目指したイノベーションの「種」が数多く生まれています。
今年で10周年を迎えるMatching HUB Hokurikuは、同じイノベーション創出の意志を持ったイノベーターたちが、ビジネスの種を創り芽へと成長させるべく、同じ空間、そして同じ時間に集う「場」として、北陸地域のイノベーション創出をけん引し続けています。
※Matching HUBコンセプトムービーはこちらから

シリーズ「Matching Stories」では、そんな本学の取り組みに賛同し、ご支援をいただいているパートナー企業の皆様に、今後の産学官金連携の在り方や、大学とのコラボレーションの意義についてお伺いします。今回は、北陸銀行 地域創生部の宮田シニアフェロー、山上主査、そして今年から新たに着任された水上主任を訪ねました。

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今回お伺いした、富山県富山市にある北陸銀行は、明治10年の創業以来、富山県をはじめとする北陸地域の経済を支えてきた、老舗の「地銀」です。また、北前船による文化・経済交流によって江戸時代から交流が盛んだった北海道との結びつきを活かし、2004年(平成16年)9月には北海道銀行と経営統合し、「ほくほくフィナンシャルグループ」を設立しました。サービスの多角化やFinTechの波など、金融業界はまさに大転換期のまっただなかにいます。その大きな流れの中で、北陸銀行は北陸地域を中心に培ってきた広域ネットワークを活用しながら「産学官金連携」を軸とした地方創生を目指すという、特色のある取り組みを行っています。

にこやかな笑顔で出迎えていただいた地域創生部の3名は、その取り組みの旗振り役として、日々北陸地方の課題と向き合うフロントランナーたち。そのチームを率いる宮田シニアフェローは、製造業から銀行マンに転身したという異例の経歴の持ち主です。そのバックグラウンドを活かして、独自の視点で地方創生に取り組んでいます。

宮田シニアフェロー(以下、宮田):
「製造業と銀行業の大きな違いは、サービスの差別化の難しさにあると思います。製造業は、アウトプットである製品の品質やスペックで勝負しますが、銀行はサービスの質という「目に見えないもの」の価値を競い合います。金融業ですので、もちろん「お金」というものはサービスの中心にはありますが、それ以外の付加価値がカギを握る業界です。そのなかで、地方銀行として、地域の皆様に寄り添うサービス、具体的には地域の皆様の様々な「お困りごと」の解決に向けて伴走できるサービスづくりというのが、強く求められていると感じます。

宮田:
「例えば、地域経済の中核を占める中小企業にとって、産学連携はハードルが高いと思われがちです。これは、短期的な利益を追求する社会の流れと相まって、長期的な視点で経営を考えられる体力が、大企業と比べて少ないことが理由として挙げられます。ただ、「会社を成長させたい」という想いは、どの経営者様も持っているニーズではないでしょうか。そのニーズを充足する1つの手段として、世界最先端の研究シーズを有する大学が地域に存在するというのはとても価値のあることです。我々がそのニーズと研究シーズのマッチングを仲介することで、例えば他企業とのコラボレーションや資金調達のご相談など、長期的な成長を見据えた足元戦略について、具体的にご提案することができます。それがまさに、銀行が提供できる付加価値と言えるでしょう。地域の経営者様の未来を支える、「ワンストップ相談窓口」としての銀行の機能を、これから拡充していく必要があるのです。」

 

宮田:
「今、地方の活性化というのは、まさに国全体で取り組むべき課題として認識されています。中央集権化、東京への一極集中が進むなか、人口減少による地方の衰退が喫緊の課題となっています。わたしたちが日々向き合っている地域の「お困りごと」のなかでも、事業承継の問題など、地域の人口減少や経済規模の縮小によるものが少なくありません。北陸地域を支える地方銀行として、地域の経済の衰退は直接当行の事業の衰退を意味します。そんな危機感も相まって、銀行のサービスの1つとして地方創生に取り組んでいます。」

「産学官金連携」は、北陸銀行のサービスの中心に位置づけられています。大学とのコラボレーションは、銀行の目指す地方創生にどのように貢献するのでしょうか。その鍵は「時間軸」であると山上主査は熱く語ります。

山上主査(以下、山上):
「一番のポイントは、「長期的な」視点から、企業のコアの部分である経営的課題に向き合えることです。銀行のサービスの中にも企業同士のビジネスマッチングというものがありますが、どうしても足元の、短期的な課題解決に注目してしまいがちです。一方で産学連携は、すぐにリターンを求めるというよりは、より長期的な視点に立って経営の今後を考えるお手伝いができます。長期的な視点に立って短期的には何をすべきかを見出すことができると考えており、そういった本質的な課題について、じっくりお客様と話すことにこそ、銀行が注力する意義があると思います。」

山上主査にとっての銀行員として働く魅力は、有形の商品ではなく、「目に見えない」サービスを地域のお客様に提供することにあります。その視点から、地域貢献についてはどのようにお考えなのでしょうか。

山上:
「もともと私が銀行員を志したのは、業務を通じていろいろな方と出会うことができることに魅力を感じたからでした。銀行業は、製造業のように有形の商品で差別化を図ることが難しいため、銀行員としての自分の「質」が、提供する価値に直結します。そのなかで、銀行員として地域に貢献できるのは、やはり「つながり」の醸成だと考えています。地域の自治体や大学など様々なステークホルダーのシーズと、お客様のニーズをマッチングすることで、地域経済全体の持続可能な発展を実現したいと考えています。」

 

そんな地域創生部に今年1月より着任された水上主任。それまでは、事務部門の社内DXや改善などの企画に従事されていました。

水上主任:
「地域活性化や、その文脈において銀行があるべき姿というのは、現在まさに模索しているところです。これからこのチームで業務をしながら、少しずつ学んでいきたいと考えています。地域と一口にいっても、そこには様々なステークホルダーやお客様がいらっしゃいます。「新しい風」として、今までのバックグラウンドや女性としての視点を活かしながら、地域に寄り添ったサービスづくりをしていきたいと思っています。」

こうした「新しい視点」は地域創生においてとても重要なポイントだと宮田シニアフェローは語ります。

宮田:
「地方創生はまさに長期戦。地域経済の持続的成長には、長い時間軸を持った戦略が必要です。また、決して一人では成しえないことだと思います。仲間を作って、地域全体で取り組んでいく必要があると思います。その中で重要なのが、まさに新しい視点、外部からの視点だと考えています。100年後の未来を考えるとき、現状からの変化、変容は必要不可避です。ですから、「本流」から一歩進んだところにこそ、企業や地域の未来があるのではないでしょうか。その一歩を踏み出す時に、大学とのコラボレーションは大きな意義を持ちます。産学連携は、今までなかった“気づき”を双方に与えるものだと思っています。地域のお客様とともに、今まで見えなかった世界を一緒に見に行く、そんな存在でありたいと思っています。」

最後に、北陸銀行にとっての北陸先端大学(JAIST)の魅力をお伺いしました。

宮田:
「JAISTとは、いい意味で「大学っぽくない」付き合いができると思っています。Matching HUBの取り組みをはじめ、産業界のニーズに寄り添ってくれる、とても社会に開かれた大学だと思います。例えば、我々のような金融機関と一緒に企業を訪問して、相談や悩みごとをヒアリングする協業活動もJAISTならではの活動です。これからも地域の未来を創るため、一緒に取り組んでいきたいです。」

宮田シニアフェロー、山上主査、水上主任、お忙しいところありがとうございました!
次はあなたの会社にもお伺いするかもしれません!リクエストや感想については、
ぜひ下記までお寄せください。

北陸先端科学技術大学院大学 未来創造イノベーション推進本部
産学連携プロモーションチーム
Email: jaist-net@ml.jaist.ac.jp
Tel: 0761-51-1070