【Matching Stories】一般財団法人JAIST支援機構 業務執行理事 辻正信 氏
毎年本学が主催しているMatching HUBは、北陸最大級の産学官金マッチングイベントとして、北陸地域をはじめ日本全国で新事業・新産業の「種」を生み出し続けています。今年はKanazawaからHokurikuにさらにパワーアップして、11月11日(木)12日(金)の2日間にわたって開催します。今回はMatching HUBの活用法や魅力、そして経営者視点からの産学連携の重要性について、一般財団法人JAIST支援機構の辻 業務執行理事にお話を伺いました。(以下、敬称略)
― JAIST支援機構とはどのような団体なのでしょうか。
日本の国立大学は、2004年に「国立大学法人」に移行してから、国からの運営交付金以外の自主的な財源確保が求められるようになりました。JAISTも企業との共同研究や競争的資金の獲得などの努力を重ねていますが、「国立大学」という制約のために思うような活動ができないという課題を持っています。そこで、「大学」とは別の民間の法人として、より柔軟な形で産学連携や地域連携、社会人教育などを行うために設立されたのが、JAIST支援機構です。
― 本格的に活動を開始されて1年目とのことですが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。
まずは、大学と地元を中心とした企業や自治体がつながる「場」を創出することを目指して、JAIST産学官共創フォーラムという会員組織を立ち上げました。JAISTをはじめとする地域の国立大学と連携した社会・技術課題などに関する研究会やセミナー、シンポジウムなどを開催することで、産・官・学が一体となった共創を実現する場を提供し、イノベーション・産業振興、人材育成を促進することが当フォーラムのミッションです。具体的には、総会や定期講演会を通じた情報発信や、「セキュリティ人材育成研究会」「イノベーションデザインによるDX推進研究会」「データサイエンス共創研究会」「地域共創研究会」「次世代地熱発電研究会」の5つの研究会での産学交流の促進、会員企業の課題解決のサポート、人材育成などを行っています。
― 辻理事は本学のエクセレントコア推進センター、産学官連携推進センターの特任教授、そしてURAとしてもご活躍されていますが、様々な立場で地元企業との接点を持たれる中で、どのような「課題」や「悩み」を聞くことが多いでしょうか。
それはいろいろです(笑) 経営視点での課題から現場のテクニカルな悩みまで本当に多種多様ですが、中にはボトルネックがどこにあるのか明確にわからないといったケースもあります。そのような場合、例えばJAIST産学官共創フォーラムの研究会の場でアカデミアや他企業の経営者など、違う視点を持った人々と出会うことで、新たな「気付き」が生まれるきっかけになると思います。そういった意味でも、多様なアクターが出会い、気軽に意見交換できる「場」づくりというのは非常に重要ですね。
― 地元を代表するメーカーである株式会社PFUで役員をされていた辻理事ですが、そのご経験から地元企業が大学と連携するメリットについてはどのようにお考えでしょうか。
例えば製品開発や中長期的な技術研究などにおいて、企業の内部リソースだけではどうしてもクリアできない課題に直面するケースがあります。その際の1つの選択肢として「外部と組む」といったときに、最先端の技術やシーズを有する大学と連携することは、とても有意義なことだと思います。株式会社PFUでは産学連携の責任者も務めておりましたが、その経験からも産学連携にはまだまだ課題が残っていると感じています。企業の立場からは、大学内の研究シーズを把握しきれていないという現状があり、「大学とどのように関わっていけばいいかわからない」という悩みも聞こえてきます。そのようななかで、産学双方が歩み寄っていけるような環境作りが、産学連携を推進するうえで重要ではないか思います。
― 大学と企業の間のコミュニケーションにハードルがあることが、産学連携の1つの課題であるわけですね。そのためにも、前出のJAIST産学官共創フォーラムや、本学のMatching HUBなどの交流の「場」が必要になってくると理解しています。
はい、「身近に」交流できる場づくりが重要だと感じています。例えば、現在JAISTでも取り組んでいるDX推進についても、単にテクニカルな問題だけではなく、「経営にどうやって生かしていくべきか」といったより包括的な課題が顕在化しつつあります。「イノベーションデザインによるDX推進研究会」の座長でもある北陸先端科学技術大学院大学知識マネジメント領域の内平教授は、企業のミッション・存在価値から共感できる価値・ビジョンを明確にし、そこを起点にデジタルを活用したイノベーションを設計する「デジタルイノベーションデザイン手法」を開発しました。悩みを持つ経営者と、内平教授のようなアカデミアの第一線で活躍されている教授が気軽に交流できる「場」があれば、企業課題の解決だけではなく、世界を変える大きなイノベーション創出の機会にもなるかもしれません。時節柄、リアルでのイベント開催が難しいという課題はありますが、ざっくばらんにいろいろなことを議論したり相談したりできる場所があるというのは、とても重要なことです。
― 今回JAIST支援機構にも共催いただいているMatching HUBですが、辻理事おすすめの活用法を教えてください!
まずは、「攻めの姿勢」で臨むことが大切です。出展企業も待ちの姿勢ではなく、ぜひいろいろな企業を回って、積極的にコミュニケーションをとってください。自社の業界とはかけ離れているように見えても、「思いがけない出会い」が生まれるのがMatching HUBの魅力だと思います。また、ビジネスマッチングの明確な目的を持って参加される場合には、ぜひJAISTのURAと積極的にコミュニケーションを取り、URAを活用してください。Matching HUBから今年もたくさんのビジネスの「種」が生まれることを祈っています!
― 最後に、JAIST支援機構の今後についてお伺いできますか。
我々が本格的に活動を開始して1年目の今年は、とにかく企業と大学の出会いの場を創出するということに尽力しています。産学双方のメリットになるような出会いのきっかけづくりを通じて、北陸地域を中心により多くの産学間の連携が生まれることに期待しています。また今後は、リカレント教育や社会人教育など、地域や企業の未来を担う人材の育成にも注力していく方針です。
― ありがとうございました!
JAIST支援機構が主催するJAIST産学官共創フォーラムへのお申し込みに関しましては、こちらのサイトをご確認ください。
Matching HUB Hokuriku 2021の出展社募集締め切りは9月17日(金)を予定しています。お申し込みはポータルサイトから。