NMRを使ってタンパク質の構造—機能の相関を解明する研究は、次の図のように幾つかのステップに分かれています。


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それぞれのステップの説明は次の通りです。

  1. タンパク質試料の調製を行います。一般的には、遺伝子組み換え大腸菌などを利用して試料タンパク質を大量に合成します。大量に合成したタンパク質を精製します。このとき、試料の性質に合わせて、クロマトグラフィーや透析など幾つかの生化学的な実験操作を行います。
  2. タンパク質試料を用いて各種のNMR実験を行います。
  3. 取得したNMRデータを解析します。得られた構造情報をもとに立体構造を算出します。また、分子内部の運動性に関連するNMRデータも解析します。
  4. タンパク質の立体構造や運動性に基づいてその機能発現のメカニズムを議論します。類似の機能を持つタンパク質の立体構造や、類似の立体構造を有するタンパク質の機能と比較して議論を深めます。複合体立体構造のモデリングを行ったりもします。仮説を立て、それを立証するための実験をデザインします。
  5. 変異体を設計・調製したり、ターゲット分子を合成・精製します。それらを用いて生理活性測定、熱安定性測定、結合実験、計算機実験などを行います。実験にはNMR以外の装置も活用します。結果をもとに仮説の妥当性を検証します。

 

試料タンパク質そのものに興味を持って研究する場合は、5つのステップを通しで実行することが重要です。一方で、それぞれのステップごとに要素技術を高度化するような研究テーマもあります。この場合は、性質のよくわかっているモデルタンパク質を試料として利用するのが一般的です。

 

当研究室では、タンパク質試料そのものの研究テーマと要素技術高度化のテーマを並行してすすめています。

試料に興味を持って研究を実施した例としては、
  Science (2014) 344, 168-172.   詳しい内容はこちら。
  Nat. Commun. (2011) 2, 152.    詳しい内容はこちら。
などがあります。

また、要素技術の研究例には、
  J. Biomol. NMR (2008) 42, 271-277.
  Sci. Tech. Adv. Mat. (2005) 6, 463-467.
などがあります。