有機太陽電池

1.有機薄膜太陽電池のモルフォロジー制御による高効率化の実現

有機薄膜太陽電池は、(1)光吸収による励起子生成、(2)励起子の拡散、(3)電荷分離界面における励起子の解離、(4)生成した電荷の電極への移動、(5)電極での集電という5つの過程を経て発電します。有機太陽電池の効率向上には、大きな吸収係数を持ち電荷移動度の大きな活性層材料の開発が重要です。同時に、励起子の生成から電荷の移動に至る各素過程を効率よく行うために有機薄膜中のモルフォロジー(組織構造)制御が重要です。

最近、我々はナノ界面構造や濃度傾斜構造を有機薄膜太陽電池の活性層に組み込むことで素子特性の向上に成功しました。これらのナノ構造はπ共役系分子の示す分子間相互作用に基づいた自己組織的相分離によることが分かってきました。活性層のモルフォロジーを分析するために、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いる事を提案しました。

さらに、低分子化合物の蒸着膜を用いた太陽電池では、分子の配向制御をおこなう事で、太陽電池の変換効率が大幅に向上することも明らかにしつつあります。

2.有機薄膜太陽電池の超低コスト製造プロセスの開発

大気圧下でのロール・ツー・ロール(RtR)プロセスによって有機太陽電池を製造するための製造プロセス開発に挑戦しています。高効率の有機薄膜太陽電池や有機EL素子を有機薄膜から電極形成にいたる全ての工程で真空蒸着法を全く用いらずに製造することで超低コスト製造を実現にしたいと考えています。

3.分子配向を考慮したデバイス設計による太陽電池の高効率化

結晶性の高い半導体ポリマーを発電層に用いたOPV素子を改善することで、従来6%程度であった変換効率を10%まで向上させることに成功しました。また、大型放射光施設「SPring-8」にて、改善した発電層のX線構造解析を行ったところ、OPV素子の上部電極と下部電極付近で半導体ポリマーの分子配向が異なり、素子の上下方向で電荷の流れやすさが異なることが分かりました。さらに、この構造の素子では、光吸収により発生した電荷が流れやすい方向に合うように陽極と陰極が配置されており、これが効率向上の鍵であることを解明しました。

この研究はNature Photonics (Impact factor: 29.95)に掲載されました! プレスリリース記事はこちら別刷りをご希望の方は村田までメールにて御連絡ください。