有機EL

1.劣化機構の解明による究極の耐久性の実現

有機 EL ディスプレイは高画質、低電力、薄型軽量、フレキシブルを特長とし、すでにテレビや携帯電話などで実用化されています。有機EL分野では、発光高効率化をめざして様々な発光材料が活発に研究されていますが、青色発光材料の耐久性の向上が特に重要な課題となっています。これまでに、超高真空雰囲気下で作製した蛍光およびりん光EL素子を用いて蒸着中の水分が有機層に混入することによって有機EL素子の長期的な劣化が進行することを明らかにしました。このように、村田研究室では、精密な電子デバイスの作製から緻密な評価まで、一貫して研究を進める体制が整っており、厳密に制御した環境下で作製した有機EL素子の劣化過程を様々な条件下で測定することによって、有機材料を用いた電子デバイスの究極的な耐久性がどこまで到達できるかを明らかにします。

2.有機デバイス中の電気・光化学

有機分子に光が吸収されると一重項励起状態が100%生成します。一方、有機EL素子中では、電極から有機層に注入された電荷が10 nm以下の限られた領域で再結合し励起状態を形成します。この時、生成する励起状態は三重項励起状態が75%、一重項状態が25%であり三重項励起状態が高密度に生成されています。つまり光励起と電流励起を併用すればスピン状態の異なる励起状態の生成比を自由に制御することができます。有機デバイス中で生じている励起状態と電荷の相互作用や励起子同士の相互作用を詳細に明らかにすることで、新物理現象の観測や新しい機能発現に挑戦します。