松村研究室

学生の意思を尊重した、自由度の高い研究ができるのも「松村研究室」の魅力。いろんな分野から人が集まってくるので、幅広い知識やスキルが吸収できる!

  • 松村和明教授

    松村和明教授

    大阪府出身。物質化学フロンティア研究領域。生体機能の制御を目的とした機能性高分子バイオマテリアルの研究を行なっている。
  • 廣瀬智香さん

    廣瀬智香さん

    2019年入学

    北海道出身。博士後期課程。北見工業大学工学部卒。研究テーマは「Temperature responsive polymers」。
  • 田岡裕輔さん

    田岡裕輔さん

    2019年入学

    徳島県出身。博士後期課程。岡山理科大学工学部卒。研究テーマは「PVA hydrogel and spinning」。
  • 加藤裕介さん

    加藤裕介さん

    2021年入学

    群馬県出身。博士前期課程。北里大学理学部を中退し、JAISTに飛び入学。研究テーマは「臓器・個体レベルの凍結保存を可能とする凍結法の開発」。

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の松村研究室を選んだ理由は?

田岡さん

大学では医療系の学科で、臨床工学技士になるための勉強をしていました。そこで人工臓器をはじめとする生体材料について学び、ゆくゆくは新しいバイオマテリアルを開発する仕事がしたいと考えるようになりました。これには僕の父親が人工関節を入れていることも関係していて、4年間にわたって研究を進めてきた今は「もっと痛みや不便さを伴わない、画期的な人工関節を開発してあげたい」という思いが強まっています。松村研究室は、大学の指導教員に紹介していただきました。実際にJAISTまで足を運び、先生の人柄に触れたときに「のびのびと研究ができる」と感じたのが、この研究室を選んだ一番の理由です。

廣瀬さん

大学時代に友人が白血病で亡くなったことをきっかけに、医薬品を適切な量で、必要な時間、必要な場所に届けるドラッグデリバリーシステムの研究をしたいと思うようになりました。松村研究室を選んだのは、生体材料以外にも幅広い分野を研究対象とする、アカデミックな部分に惹かれたからです。ここであれば様々な分野の知識を吸収できると同時に、これまで学んできた工学領域の学問も生かせると思いました。

加藤さん

専門は低温生物学。大学時代に「臓器や個体レベルで凍結保存を行う研究」に興味が芽生え、研究室を探しているときに、低温生物工学会に所属する松村先生の存在を知りました。先生がこれまで進めてきた細胞凍結保存の研究が、臓器や個体などの生物にも応用できるのではないかと思い、松村研究室への配属を志望しました。

松村研究室の魅力を教えてください。

加藤さん

自分がやりたい研究を、好きなだけやらせてくれる。研究室の研究テーマに縛られるようなことはなく、自由度の高い研究ができるのも魅力です。松村先生は誰に対しても、本人がやりたいことを尊重した上でアドバイスしてくれる。学生の主体性を大切にしているのが伝わってきます。

廣瀬さん

先生との距離が近い所です。研究にちょっとした進展があったときも、気兼ねなく報告できる雰囲気というか、忙しいはずなのに親身になって対応してくれるんです。先生のアドバイスが新たな気づきや発見につながることも多いですね。実験が上手くいかず、方向性を見失いそうになったときも正しい方向に導いてくれるので、とても心強いです。

田岡さん

化学、医学、生物学、機械工学といった、幅広い領域を研究対象としているのが松村研究室の特徴。学ぼうとする意欲さえあれば異分野の知識を身に付けることができます。とくに毎週行われるラボミーティングは貴重な場で、自分にはない視点からの意見を聞くことができます。

学生のどんな部分を伸ばしたい、サポートしたい?

松村教授

一人前の研究者、とくに博士になるためには、自主的に問題を見つけて、解決する力が必要になってきます。そうした点からあえて詳細なアドバイスをせず、本人の主体性に任せた指導を心がけています。もちろん、そのような指導が合うか合わないかは学生次第なので、それぞれの個性を見極めながら、将来的に独り立ちできるような人材を育成していきたいと思っています。

研究をする上で、心がけていることは?

廣瀬さん

工学部出身ということで、ほかの学生よりも化学や生物学の知識が足りていない自覚があります。そうした部分を少しでも補えるように、わからないことはすぐに調べたり、周りの学生や先生に聞くなどして、その場で疑問を解決するように心がけています。また、バイオマテリアルは幅広い分野で応用されるので、たとえば私が研究しているドラッグデリバリーシステムに関しても、分野の枠組みを超えた知識が必要とされます。専門的な知識や技術を磨いていくのも大切ですが、私自身は、化学、生物学、医学、工学など、あらゆる知識を総動員して研究していく過程に楽しさを感じています。そのためにも、新しい知識を吸収するためのアンテナは常日頃から張り続けていたいですね。

田岡さん

僕も廣瀬さんと同じく、バックグラウンドは工学系。高分子化学について大学で専門的に学んだわけではありませんでした。化学系の学部出身の人よりも、知識量が足りていないと感じたのも同じですね。それを補うために、馴染みのない専門的な言葉をインターネットで調べたり、教科書や論文を読んだり、空いている時間は極力座学に費やしています。

加藤さん

研究をはじめる前に実験の結果を想定しながら仮説を立てるのですが、「自分の理論がそう簡単に上手くいくはずがない」という疑いの目は、常に持つようにしています。頭で導き出した理論よりも、目の前の実験結果と真摯に向き合う気持ちが大切。予測しなかった結果と対峙しながら、どうすれば問題を解決できるのかを考えているときが一番楽しいですね。今は自由に研究ができる環境下で、研究者としての土台をしっかり固める。重要な時期にいることを意識しながら研究に励んでいきたいです。

研究を通じて、どんな力を身につけて欲しいですか?

松村教授

実験計画をしっかり立てて、自らの意思と判断でそれらを遂行していく主体性です。仮説とは違う結果が出ることもありますが、大きな発見というのはそういった所に隠されています。予想とかけ離れた実験結果が出たときに「面白いな」と思えるような感性は、いつまでも持ち続けて欲しいですね。

それと先ほども話に出たように、私の研究室には化学や生物学だけでなく、医学、工学、さらには情報系や文系など、あらゆる分野の学生が集まってきます。自分の研究テーマとは関係ない分野でも、ここで得た知識が今後の研究に生かされるかもしれない。分野の枠組みを超えた環境下にいることを意識しながら、色々な知識を身につけて欲しいですね。

研究室に入って成長したこと、学生の成長を感じる瞬間は?

廣瀬さん

生体材料に関する基本的な知識や、研究テーマであるドラッグデリバリーシステムに関する知識や技術が身についたと実感しています。JAISTは研究設備が充実しているので、ほかの大学にはないような高精度な装置の操作の仕方を、実際に使いながら学べるのも大きいですね。それとJAISTには副テーマ研究(※)という制度があり、ほかの大学で新しい材料の合成方法について学ぶなど、これまでにない経験をすることができました。

加藤さん

研究と実験の積み重ねによって、課題発見力と問題解決力が身につきました。出身が生物学ということで、どうしてもそちらに意識が向きがちになりますが、さまざまな分野の人たちとディスカッションすることで、別の分野の手法を取り入れてみるなど、自分の専門外の領域にも意識を向けられるようにもなりました。これからもっと広い視野で、より良い手法を選択できるようになればと思っています。

田岡さん

高分子を測定する機器など、学内にある多くの装置を扱えるようになったことで、研究に対する視野が広がりました。色々な装置が使えるようになるとアプローチできる選択肢が広がり、研究内容にも幅が出るんです。それと少しずつですが英語力も身につきました。松村研究室にはたくさんの留学生が在籍しています。もともと英語は苦手でしたが、積極的にコミュニケーションを図った成果だと思っています。

松村教授

学生たちは週1回のラボミーティングで研究結果を報告し合うのですが、入学当初は的外れなことを言っていても、経験を積むことで次第に核心をついた発言ができるようになります。日に日に成長しているのを感じますね。それと学会発表に立ち会うときは、子供の成長を見ているような気持ちになります。学会参加者からの質問に対して自分が答えたくなるのを我慢して、ドキドキしながら見守っています。

※副テーマ研究:JAISTでは専攻分野に関する主テーマ研究のほか、主テーマ研究とは異なる、隣接または関連分野の基礎的な概念、知識、能力等を身につけることができるように、副テーマ研究を実施しています。

卒業後の進路について。将来はどのような研究者になりたいですか?

加藤さん

博士後期課程への進学を見据えたブログラムを選択したので、最低でもあと3年は松村研究室で研究を続ける予定です。その後は、凍結保存の未来を切り拓くつもりで研究を続けながら、松村先生のような研究主宰者(PI)を目指して、キャリアを築いていきたいです。

廣瀬さん

アカデミア志望です。ドラッグデリバリーシステムの研究や松村研究室で得た知識をもとに、自分でやりたいことを専門的に突き詰めていけるような研究者になりたいです。

田岡さん

ここで学んでいる研究の仕方や幅広い分野の知識が、今後のキャリアの土台になると思っています。将来の目標は、それらを生かしたアカデミックな視点をもった研究者になることです。