サービスの視点でトランスフォーマティブ
知識経営のフロンティアを開拓
白肌研究室 SHIRAHADA Laboratory
教授:白肌 邦生(SHIRAHADA Kunio)
E-mail:
[研究分野]
ウェルビーイング志向のサービス研究
[キーワード]
サービスマネジメント、サービスイノベーション、組織論、技術経営
研究を始めるのに必要な知識・能力
関心のある事象に対しては、まず既存理論で説明がある程度できそうなものなのか考える癖をつけるとよい。そのためには日々の鍛錬を通じて特定の理論について習熟するか、あるいはなるべく多くの理論の引き出しを用意しておくことが必要。加えて、状況を図解できる能力があるとよい。複雑な現象でも何が主たる要素なのか自ら判断し要素間の関係性について考えていくことは研究において極めて役にたつ。これは研究室教育でも重視している。
この研究で身につく能力
社会・経済・環境に存在する様々な人類にとって重要な課題を見出し、現象の理解や状況改善のためのアプローチを考える。この過程で、現場の知を変革する知識経営および組織学習、消費や価値共創を分析視点に社会の仕組み作りを考えるサービスマーケティング、科学技術と社会の調和的関係を進める責任ある未来志向のイノベーションのあり方について学ぶ。研究室ゼミでは知識経営(とりわけ知識の共有、移転、隠蔽回避のマネジメント)、マーケティング(とりわけ消費者行動、サービスマーケティング)、技術経営(とりわけリーダーシップ、モチベーション等のミクロ組織論、新制度派の議論、ロードマッピング)について知ることになる。最も重要なのは知り得た情報を基に自ら考え・行動できるかである。学外での様々な交流をすることで、実践的な知識展開力を身につけることを目指す。
【就職先企業・職種】システムコンサルティング、インターネットサービス、製造業、行政職員、大学教員など
研究内容
我々は、ウェルビーイング(WB)、サステナビリティ、インクルーシブ社会、といった人類にとって重要な概念について考え、よりよい社会に向けた知識創造を以下の4点から研究している。そしてこれらを総合し、人々(生活者)にとって何が価値あるものなのかを考え、実践していくためのトランスフォーマティブ知識経営のフロンティアを開拓する。
ウェルビーイング・マーケティングの研究
マーケティングの根は顧客ニーズの理解・洞察にあり。企業と顧客の間の対話や資源統合を通じた価値提案への応答が、その根の恵みとなり、マーケティングの実りを豊かにしていく。改めてニーズとは何かを見直し、消費者のウェルビーイング形成を可能にするマーケティングアプローチを、戦略、場やインタラクションのデザイン、主観・客観的なウェルビーイング評価、の観点から研究している。
組織的知識共有の研究
組織内知識共有は容易にあらず。むしろメンバー同士が重要な知識を敢えて隠す「知識隠蔽」が往々にして起こり組織の有効性を下げる。加えて、企業と消費者というレベルでも、時に欺瞞的知識交換やミスコミュニケーションが意図しない結果を双方にもたらす。こうした知識共有・移転の暗黒面に目を向け、そこから転換するための方策を社会心理学および環境心理学の視点を活かし研究している。
組織的未来リテラシーの研究
未来リテラシーとは「未来に備え、ありたい未来を構想する」ための基礎能力である。これまで、戦略ロードマッピングのアプローチを基盤に、産学連携を通じて未来リテラシー形成を進めてきた。弱いシグナルを如何に把握するか、未来アイデア創造はどのような問いかけであれば活性化するか、シナリオ分析やプロトタイピングは未来アイデアへの納得感を如何に高めるか、等について研究している。
持続可能性とサービスシステムの研究
人間は自然と共に在ることを陽に認識し、日頃から両者が価値共創していることを意識することは、持続可能なサービスシステムあるいは循環経済を考究する起点となる。我々は地球環境に影響を及ぼしうる具体的な課題の現状調査、および卓越事例の分析を通じて、コミュニティアプローチの重要性を認識してきた。そして、参加アクターを如何に選定すべきか。コミュニティ内ルール形成(或いは生成)はどのようにあるべきか、民間の活動はこのアプローチをどのように活性化するか、等を研究の問いとしている。研究を通じ、自然資源アクターと人間との応答関係の維持、アクター間の価値共創促進のインセンティブ、スケール化のためのサービス設計について有用な知見を出すことを目指している。
主な研究業績
- Shirahada, K. and Zhang, Y. (2021) “Counterproductive Knowledge Behavior in Volunteer Work: Perspectives from the Theory of Planned Behavior and Well-Being Theory”,
J. Knowledge Management, DOI: 10.1108/JKM-08-2021-0612 - Ho, B. and Shirahada, K. (2021) “Actor transformation in service: a process model for vulnerable consumers”,
J. Service Theory and Practice, DOI: 10.1108/JSTP-04-2020-0083 - Kozanoglu, D., Abedin, B., and Shirahada, K. (2021) “The Role of Employees in Digital Transformation: A Preliminary Study on How Employees’ Digital Literacy Impacts Use of Digital Technologies”,
IEEE Trans. Eng. Mgt., DOI: 10.1109/TEM.2021.3087724
研究室の指導方針
研究室ゼミは対面と遠隔の双方のチャネルで実施。ゼミでは定期的に研究進捗を報告し、議論を通じて自分の考えを相手に説得することや、良き意見があればそれを基に一段高いレベルに議論を深めていくことを学ぶ。自分とは異なるアプローチやテーマでも、相手の研究進捗にプラスになるような貢献ができるよう聞き手は意識し、準備することを勧める。加えて学びの場は大学だけにあらず。課題を抱える現場を歩き・関係者と対話することにより観察力・洞察力を高め人間力をもって現場改善に資することを目指す。最近はネット空間に常設の研究室を置き、アバターを通じて議論可能にしている。
[研究室HP] URL:https://www.shirahada-lab.info/