スパコンを活用した計算科学と情報学の
融合による革新的物質設計
本郷研究室 HONGO Laboratory
准教授:本郷 研太(HONGO Kenta)
E-mail:
[研究分野]
マテリアルズ・インフォマティクス、計算科学、データ科学
[キーワード]
ベイズ統計、機械学習、統計的学習、第一原理電子状態計算、物質・材料科学シミュレーション
研究を始めるのに必要な知識・能力
研究遂行上の必須条件は唯一つ、コンピュータに「アレルギーがない」ことです。研究分野の基礎知識は、大学程度の数学、物理学、化学ですが、必須ではなく、あればベターといったところです。
この研究で身につく能力
本研究は、マテリアルズ・インフォマティクスという、物質科学と情報学(インフォマティクス)の融合を目指す、生まれたばかりの学問分野です。まだまだ発展途上で、手探りの状態ではありますが、逆に言えば、大きく成長する可能性を秘めています。本研究では、国内外の様々な研究者との共働を通じて、新たに問題・課題を発見し、既存の知識体系に囚われず柔軟に、幅広い視野で、問題解決に取り組みます。
研究活動を通じて、問題発見・解決能力、プロジェクト管理能力、コミュニケーション能力といった指導的立場の人材に要求される基本的素養が身につきます。また研究活動を通じて知らないうちに、ブラインドタッチ、タイピングスキルが格段に向上します。その結果、研究活動の効率化が加速し、新たな「時間の創出」に繋がります。この時間が新たな知識・スキル獲得に繋がります!
【就職先企業・職種】 住友電工、オークリッジ国立研究所
研究内容
「マテリアルズ・インフォマティクス研究」と「物質科学シミュレーション研究」に関して、競争的資金の獲得実績を多数経て研究基盤を確立しています。現在、複数の競争的資金を獲得して当該研究を発展させるとともに、企業との共同研究を行い、産学連携にも積極的に取り組んでいます。
【マテリアルズ・インフォマティクス研究】
本研究プロジェクトは、JSTさきがけ(H28-31年度)、JSTイノベーションハブ構築支援事業(H27-30年度)、科研費基盤B(H27-30年度)・C(R1-5年度)等の支援を受け研究基盤を確立しました。現在、国内外の共同研究者とともにMI研究を展開しています。
ベイズ統計とビッグデータを活用した「ベイズ物質探索法(業績1)」は、天文学的規模の物質群の中から目標となる物質を効率的に探索する新しい方法論で、当該手法を用いた新奇物質の探索に取り組んでいます。現在、有機・無機化合物系に加えて、バイオメディカル材料の探索にも取り組んでいます。
【物質科学シミュレーション研究】
本研究プロジェクトは、科研費新学術研究「複合アニオン化合物の創製と新機能」(H28-32年度)、科研費新学術研究「ハイエントロピー合金」(R1-2年度)の支援を受け研究基盤を確立しました。現在、学術変革A「超セラミックス」(R5-6年度)の支援を受け、国内外の研究機関とともに、これらの課題を発展させるべく共同研究を継続しています。
日本有数のスパコン設備を有する本学の強みを活かし、大規模な物質科学のシミュレーションを行っています。複合アニオン(業績2)やハイエントロピー合金と呼ばれる全く新しい物質群を対象として、その合成可能性や物性を第一原理計算(量子力学に基づく電子状態シミュレーション)により明らかにします。また、生体分子や分子結晶等の分子間力に支配される物質系(業績3)の第一原理計算に取り組んでいます。
上記以外にも、産業応用上重要な半導体電極形成や不均一触媒反応の第一原理計算研究、分子動力学計算による生体分子系の構造ダイナミクス研究などで、国内外研究者と共同研究をしています。
主な研究業績
- H. Ikebata, K. Hongo, T. Isomura, R. Maezono, R. Yoshida, ‘Bayes-ianmolecular design with a chemical language model’, Journal of Computer-Aided Molecular Design 31, 379-391, (2017).
- D. Kato, K. Hongo, R. Maezono, M. Higashi, H. Kunioku, M. Yabuuchi, H. Suzuki, H. Okajima, C. Zhong, K. Nakano, R. Abe, H. Kageyama, Valence Band Engineering of Layered Bismuth Oxyhalides toward Stable Visible-Light Water Splitting: Madelung Site Potential Analysis', Journal of the American Chemical Society 139, 18725-18731 (2017).
- K. Hongo, R. Maezono, 'A Computational Scheme to Evaluate Hamaker Constants of Molecules with Practical Size and Anisotropy', Journal of Chemical Theory and Computation 13, 5217-5230 (2017).
使用装置
JAIST 並列計算機群(Dell PowerEdge)、研究室所有サーバ(Fujitsu FX700, PRIMAGY[NVIDIA A100])
研究室の指導方針
期限内での学位取得を目標に据え、学位論文執筆と学位審査発表を着実にこなせるような、知力・体力・コミュニケーション力を養うために、段階的、系統的、戦略的に、日々の研究指導を積み重ねていきます。特に、既存研究プロジェクトに参加してもらうことで、最先端の研究の面白さを体験し、そこを入り口として次第に、自身の研究の位置づけを理解し、研究に対する責任感を養い、研究のモチベーションを維持できるように努めていきます。最後に、研究分野に関してですが、マテリアルズ・インフォマティクス研究は、物質科学とインフォマティクスの融合研究という性格上、「新しい概念の導入」に目を向けがちです。しかしその一方で、「巨人の肩の上に乗る」とよく言われるように、物質科学研究では膨大な知の蓄積があり、既存概念を知悉した上での概念導入でなければ、真の成功・発展・展開は望めないと考えています。
[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/~hongo/