先端科学技術研究科 博士後期課程2年 馬場 竜希さん
留学先機関名:カリフォルニア大学サンタバーバラ校(University of California, Santa Barbara)
留学期間:2017年8月21日~2017年11月22日
本学の研究留学助成制度を利用して、8月下旬から11月下旬までのおよそ3ヶ月間、アメリカにあるカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のSusannah L. Scott先生の研究室の下で副テーマ研究実施のための留学する機会を頂きました。
私が海外での研究留学について本格的に考え始めたのは本学への入学後、研究留学助成制度があることを知ってからでした。グローバル化が謳われている現代社会では、英語能力の習得が必須の時代となっていますが、学部生の時点までは英語に触れる機会がほとんどありませんでした。そこで、大学院では自分が最も興味のある触媒化学を深く学べ、なおかつ海外からの留学生が多い研究室に身を置きたいと思い本学に進学するに至りました。入学時は英語に対する苦手意識を持っていましたが、日々の研究生活で留学生の方々と接するうちに自然と英語でのコミュニケーションにも慣れ、研究留学助成制度を活用してみたいと考えるようになりました。
海外研究留学の行き先は、折角の機会だから思い切って英語圏の国でハイレベルな研究を行っている環境で挑戦してみたいという思いから、UCSBで様々な触媒化学の研究を行っているScott先生に打診したところ快く引き受けて下さったため、念願だったアメリカ留学が実現することとなりました。UCSBは年間を通して気候が温暖なカリフォルニア州にあり、閑静なリゾート地といった土地柄のためとても快適な生活を送ることができました(研究留学というよりもバカンスに来たような感覚さえしました)。研究内容については、以前から興味を持っていたオレフィンメタセシス反応を促進する固体触媒に関する研究テーマを頂き、とても楽しく取り組めました。また留学準備は大変でしたが、これまで幾つかの研究室で経験を積んできたためか、不慣れな海外という新しい環境での研究も大きな抵抗感はなく、充実した研究生活を送ることができました。
アメリカ生活の中で良い意味でカルチャーショックを受けたことは、フレンドリーでオープンマインドな気風が強いことです。アメリカの大学では海外からの留学生や研究者など様々なバックグランドを持つ人々を積極的に受け入れているためか、色々な意見や考え方に対して寛容な印象を受けました。また日常生活においてもそのような風潮は強く、例えば買い物の際にも全く面識のない店員さんとも気軽に会話が始まるくらいでしたので、普段の生活から笑顔で対応できるよう心のゆとりを持つことがアメリカでの生活では大切だと感じました。一方で、滞在中にアメリカ国内で何度か悲惨な事件が発生し、訪問するまで知らなかった社会問題や情勢を知ることもありました。これらの経験から、伝聞としてではなく自らの実体験として知ることの重要性を痛感し、イメージや偏見で物事を判断しないためにも、色々なことに興味や関心を抱く姿勢を大切にしたいと改めて認識することにつながりました。
また、研究留学中に強く実感したことは、留学生の多いJAISTでの研究生活は国際感覚を自然に養うことができる素晴らしい環境にあることです。海外の方と良好な人間関係を築くためには英語の使用はもちろんですが、相手のことを尊重できる文化的素養が伴っていないと成立しないと思います。Scott先生の研究室でもアジア圏を中心としたアメリカ国外からの留学生や研究者の方々も多く在籍していましたが、物怖じせずにコミュニケーションを取れたのは、普段から留学生の方々と接する機会に恵まれているからだと感じました。海外での研究留学は専門知識の裾野を広げることも勿論大切ですが、その国の歴史や文化を実際に触れて自分の経験として消化することで本物の教養を習得するチャンスでもありますし、海外に出るからこそ日本の長所・短所を客観的に考える機会にもなります。JAISTでは英語に対する苦手意識を持っているとしても、積極的に取り組む努力さえ怠らなければ国際感覚をきちんと身につけることができるため、その成果を是非海外で試して欲しいと思います。
最後に、UCSBでの研究留学という貴重な経験の場を与えてくださったScott先生と研究室の方々、また研究留学の全面的なご支援をくださった本学の関係者の皆様に感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。