ラマン散乱分析装置
(HORIBA-JY T64000)
固体や液体のような凝縮体に、単一のエネルギーを持つレーザー光を照射すると、同じエネルギーを持った光が散乱されます。この現象は、レイリー散乱と呼ばれる広く知られた現象です。これに加え、凝縮体による散乱現象には「ラマン散乱」が知られています。この現象は、入射レーザー光により凝縮体の分子振動や格子振動が励起され、そのぶんエネルギーを失った光が散乱される現象です。入射光のエネルギーと散乱光のエネルギーの差は「ラマンシフト」と呼ばれ、励起した分子振動・格子振動などの素励起のエネルギーに対応します。ラマンスペクトル(ラマンシフトに対する散乱光強度分布)を計測する事により、分子振動や格子振動すなわち物質の中での原子・分子のミクロな運動に関する詳細な情報を得ることが可能となります。
【特徴】
一般的に、ラマン散乱光は非常に微弱なため、強いレイリー散乱光に隠されて観測することは出来ません。このHORIBA-JY T64000はトリプルモノクロメーターを装備しています。前置ダブルモノクロメーターでレイリー散乱光を完全にカットし、最終段のスペクトログラフと液体窒素冷却CCDにより、微弱なラマン散乱スペクトルを感度良く測定することが出来ます。波数分解能は約 1.0 cm-1で、ブリルアン散乱並みの 20 cm-1以下の低エネルギーまで測定することが可能です。
励起光源は3台の半導体レーザーです。波長は487.8 nm、532.2 nm および659.5 nmで、目的に応じて使い分けることが出来ます。一般的な半導体や酸化物では 532.2 nmを使用することが多いですが、蛍光を発する試料を測定する場合は 659.5 nm の使用によって蛍光のバックグラウンドを下げることが出来ます。
この装置を利用して以下のような研究が行われています。
- 新規熱電材料のフォノン構造の解明
- アモルファスシリコン系半導体の結晶化過程
- カーボンナノチューブのウォール構造の評価
- ガラス中に析出した不純物結晶の同定
- 金属ナノ粒子を利用した表面増強ラマン実験
- 負の熱膨張係数を持つ酸化物のフォノンモードの温度変化
- 層状化合物の高圧下フォノン物性の研究
- 共鳴ラマン効果を用いたAlAS-AlGaAs HEMT構造の電子励起の研究
- 半導体素子の歪み評価
【仕様】
励起光源 | 487.8 nm、532.2 nm、659.5 nm |
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入射光偏光 | x、y可変 |
散乱光偏光 | x、y、円偏光可変 |
試料室 | マクロ試料室(レーザースポット径:50 μm) |
顕微試料室 | 光学顕微鏡装備(空間分解能およびレーザースポット径:1 μm) |
試料温度 | 室温、クライオスタット装備時:室温 ~11 K |
分光器 | トリプルモノクロメーター(シングルモノクロメーター切り替え可能) |
分解能 | 約 1.0 cm-1 |
測定波数領域 | 20 cm-1 ~ 10,000 cm-1 |
データ形式 | tiff、xyテキスト |
【設置場所】
マテリアルサイエンス系4棟4階