「大学院と企業に関するアンケート調査」の結果について(抜粋)
平成7年2月14日(火)から28日(火)にかけて行われた「大学院と企業に関するアンケート調査」(財団法人日本開発構想研究所委託)の結果が取りまとまりましたので、その主な内容をお知らせします。
第1 アンケート概要
- 目的
- 社会が今後求める人材像、職員・社員の再教育の在り方、大学院との研究交流の在り方等の実情を把握する。
- アンケート方法
- 郵送(郵送配付、郵送回答)調査
- 調査対象【( )内の数字は、郵送数】
- 上場企業(1,570)、未上場主力企業(83)、北陸主力企業(133)、シンクタンク(72)、特殊法人(92)、都道府県・政令指定都市等(59)、国機関(26) 合計 2,035社・機関
- 回収状況
- 回答数 281(回収率 13.8%)
第2 調査結果
1 大学院一般について
- (1)過去3年間(平成4〜6年度)における専攻別採用人数の割合
- 修士課程(採用総数 3,553人)
- 電気・情報系 22.6%
- 土木・建築系 17.4%
- 材料・化学系 16.7%
- 機械系 15.0%
- 理学系 6.6%
- その他の工学系 5.6%
- 農学系 4.8%
- 医学系 3.8%
- 社会科学系 1.3%
- 人文科学系 0.8%
- その他 2.1%
- 博士課程(採用総数 87人)
- 材料・化学系 26.4%
- 理学系 16.1%
- 医学系 14.9%
- 電気・情報系 10.3%
- 農学系 10.3%
- 土木・建築系 5.7%
- 社会科学系 3.4%
- その他の工学系 2.3%
- 機械系 1.1%
- 人文科学系 1.1%
- その他 8.0%
- 大学院修了者の今後3年間における採用見通し等
- 採用を考えている 53.1%
- 採用を考えていない 14.1%
- 現時点ではわからない 31.8%
- うち
- 「採用を考えている」とした企業等の専攻分野別見通しを見ると、「電気・情報系」については4割以上の機関が今後増加すると回答し、以下「機械系」の26.7%、「材料・科学系」の24.6%、「土木・建築系」の16.0%、「理学系」の14.4%が同様の傾向を示している。
- また、今後求める大学院修了者の専門分野としては、修士課程、博士課程とも「情報・通信関連分野」が最も高く、以下「新製造技術関連分野」、「環境関連分野」、「エネルギー関連分野」の順となっている
- 大学院修了者の活用方向(複数回答)
- 技術者 82.5%
- 研究者 71.3%
- 企画開発担当者 57.5%
- 調査担当者 17.5%
- 国際機関等担当者 11.9%
- 法律経営実務担当者 10.0%
- 教育者 3.1%
- その他 5.6%
- 今後求める研究者・技術者像(自由意見・抜粋)
- 専門分野に関する高度な知識・技術と幅広い教養を身に付けた人材(鉱業・建設業)
- 研究者・技術者としての基礎的なものができており、新しいテーマについても受容し、開発できる人。セレンディピティがあり、また、創造性豊かに考える習慣のある人(化学工業)
- 専門分野以外の領域においても幅広く勉強し、すべての分野にわたって机上の研究のみならず、実際に手を汚すことに積極的に取り組み、答えのないものにも前向きかつ積極的に計画し、実行する行動力を持った人(非鉄金属製造業)
- 独創的な考えを行動に移して、その独創的な考えをまとめ上げることができる人。吸収した知識を有効に吐き出すことができる人。知識を吸収する能力と知識を使う能力は違うので、両方を備えているような技術者(電気機械器具製造業)
- 自分の研究のみに固執せず、グローバルな視野を持った人材、協調性のある人材を求めており、また、いわれたことをそのままするのではなく、企画力や創造力も兼ね備えている人材(電気機械器具製造業)
- 大学院に対する人材養成への期待(自由意見・抜粋)
- 研究計画をしっかり立てることができ、論理立った文章を書け、課題遂行力に優れた人材の養成(化学工業)
- 創造性豊かで、サイエンスに強く、広い視野でものを見ることができる人材、英文のレポートの提出とか英語でのプレゼンテーション(国内外)を経験しているような人材の養成(非鉄金属製造業)
- 技術的な専門知識が十分にあり、企業への入社後もある程度通用するレベルであること。実験などをよく行い、常に新しいものへの挑戦的課題を自分の中に持っていること。また、成果を特許や論文にまとめる力を持っていること。欧米の大学院生に比べ、科学的な哲学思想が欠ける面が指摘される面もあり、これらを考慮し、人材養成に努めてもらいたい(電気機械器具製造業)。
- 企業としては、研究のための研究ではなく、問題解決のための研究が必要である。したがって研究者・技術者には明確な目的意識とそれを達成するため自ら調べ、方策を考え、検証していく自立的な研究開発能力が必要される。上記意識と能力を有する研究者・技術者の計画的な養成に期待する(精密機械器具製造業)。
- 自分の専門分野だけに固執せず、積極的に他の分野のことも学ぶ意欲を持ち、組織の機動力となる社会性や常識をきちんと身に付けた人材の養成(国機関)
- (2)大学との研究交流の実施状況(複数回答)
- 教授等からの指導、助言 55.9%
- 大学との研究・情報の交換 47.0%
- 研究者等の大学への派遣 42.0%
- 大学との共同研究 41.6%
- 教授等への意見等の委嘱 40.2%
- 以上の5項目が4割以上の機関において実施されている研究交流であり、これら以外の形態(「大学への委託研究」及び「大学の研究施設・機器の利用」)については、やや少ない傾向がある。
- 研究交流の相手先(複数回答)
- 研究交流を行った機関のうち、上述の7つの形態いずれの場合においても8〜9割が国立大学と実施したことがあると回答し、次いで私立大学、公立大学、海外の大学の順で実施したとしている。
- 大学との研究交流の見通し
- 上述の7つの形態別に積極的に行うとした項目は、「大学との研究・情報の交換」が29.4%と最も多く、次いで「教授等からの指導、助言」26.6%、「大学との共同研究」20.6%と続いており、これら以外の形態(「教授等への意見等の委嘱」、「大学への委託研究」、「研究者等の大学への派遣」及び「大学の研究施設・機器の利用」)については、やや少ない傾向がある。
- 研究交流に対する大学への期待(自由意見・抜粋)
- 本質の研究、原理・原則の探求を目指した基礎研究に期待したい。また、企業側が取り組みにくい理論解明、新理論を生み出す研究等にも期待したい(石油製品・石炭製品製造業)。
- 得意とする研究・技術分野並びに実績の公表・周知。対応窓口(組織体制)の明確化。研究交流条件の明確化。産学共同の精神に立脚した柔軟な体制が研究交流拡大に必要である(その他の製造業)。
- 大学の授業に民間企業の見学等も取り入れ交流を密にする。大学側も研究内容や設備を公表する機会を設けて欲しい(その他の製造業)。
- (3)教育訓練の形態(複数回答)
- 社内及び関連会社による教育 85.2%
- 行政又は民間セミナーに出席 62.9%
- 大学・研究機関へ派遣 30.0%
- 海外の大学等研究機関への派遣 27.0%
- 大学院へ学生として派遣(修士) 22.8%
- 大学院へ学生として派遣(博士) 16.5%
- 大学へ学生として派遣 11.0%
- 教育訓練の内容
- 教育訓練の内容を「企業経営」、「政策企画立案」、「研究開発」、「ハイテク新技術」、「システムエンジニア」、「OA技術」、「営業」、「国際化」、「その他」に分類したところいずれの場合においても「社内及び関連会社による教育」、「行政又は民間セミナーに出席」の2つの形態によって大部分が占められているが、「政策企画立案」、「研究開発」、「ハイテク新技術」にあっては、「大学・研究機関へ派遣」、「大学院へ学生として派遣」の割合が高くなっている。
- 教育訓練に対する大学院への期待(自由意見・抜粋)
- 現在の日本の教育システムは欧米に比較して、実戦的な面で欠けている。どんどん宿題を出して、添削して生徒に返し、学生の理解度を把握しながら教育すべき。米国では、入学当初は素人でも学期末には最先端の技術を理解できるところまでレベルアップしてくれる(鉄鋼業)。
- 先端技術に対する知識・技術の習得とともに、その知識・技術を様々な分野で活かせるような実務型教育(情報サービス、調査、広告業)
- 研究員のスキルアップ、リフレッシュ、ブラッシュアップの場として大いに大学院教育に期待している。現状のビジネススクール、社会人レベルとは異なる新しい教育訓練の場として、大学院の受入体制の拡大・拡充を望む(情報サービス、調査、広告業)。
2 本学について
- (1)本学の認知
- 知っている 48.0%
- 知らない 46.7%
- 無回答 5.3%
- 業種別内訳
- 電気機械器具製造業 24.4%
- 情報サービス、調査、広告業 13.3%
- 化学工業 8.9%
- 鉱業・建築業 7.4%
- 一般機械器具製造業 5.2%
- その他の製造業 5.2%
- 国機関 4.4%
- 繊維業 3.7%
- 金属製品製造業 3.7%
- その他 23.8%
- (2)認知理由
- 学生募集案内等で知った 43.0%
- 業界団体等で知った 10.4%
- 学生を派遣している 6.7%
- 学会等で知った 2.9%
- その他 34.1%
- 無回答 2.9%
- (3)魅力的な大学院について(自由意見・抜粋)
- 創造的人材が育成され、企業人として生き生きと自主的に仕事に取り組む気質が形成されること(化学工業)。
- 基礎的なことに重点を置き、企業ではできないような研究をして欲しい。また、研究成果については、単なる研究発表で終わるのではなく、見える形にして欲しい(電気機械器具製造業)。
- 一つの技術、研究のみならず幅広い学問を選択できる大学院であって欲しい(電気機械器具製造業)。
- 「人間のためになる」という視点を常に忘れない精神で学問、研究を追及する場であって欲しい(その他の製造業)。
- 現代においては、比較的マルチなスキルを持った人材が最も企業(社会)に通用すると考えており、専門知識の教育とともにビジネス精神の教育も重要である(その他の製造業)。
平成7年10月2日
北陸先端科学技術大学院大学総務部庶務課企画広報係