「情報不安症」は, 私たちが理解していることと, 理解しなくてはならないと
思っていることとの乖離が, ますます大きくなるところから生じる.
「情報不安症」は, データと知識との間に横たわるブラックホールである.
私たちが知りたいこと, あるいは知る必要があることを, 情報が伝えてくれない
ときに「情報不安症」が生まれる.
具体的には, 以下のような症状が挙げられる.
- 知りすぎ病(不必要な専門細部にこだわる).
- 見かけほれこみ病(美しさと目標達成を混同).
- あいづち症候群(知ったかぶるむなしい努力, 学習を阻害).
- 正確さ過剰信奉症(正確なものほど情報をよく伝えるという誤った信仰).
- 過剰正確さ追求症(不必要な精度の追求).
- ばら色崇拝病(色や飾りたてだけで理解しやすくなるという誤った信仰).
- 中華料理名記憶障害(不必要な情報の詰め込みによる短期記憶の
時間的忘却).
- つめこみ型健忘症
(中華料理名記憶障害における過剰データに対する反応).
- ユーザフレンドリー盲信症(現実のばかげたUI/GUIなど).
- 最初に少しばかり組み立てが必要病(ものを売る側の言い抜け).
- 専門家の意見症候群(専門家の意見を客観的と信じる誤り).
- 結末を教えないで病(理解を阻害し, 不安状態を招く).
- 見せかけの情報病(情報であるかのようで実は無意味なデータ).
- 管理病(管理の細かな点に心が奪われ, 行動の目的を失う,
現代社会の根源に深く巣っている病).
- 豪華絢欄病(立派なビルやぱりっとした報告書が問題を解決すると信じる
誤り).
- 学習についての学習(最初の6年間で教えるべき唯一のコース).
- 質問とその問いかけ方法(よい質問はよい答を得るために最も重要).
- 自分が望むこと(望みはたいてい実現する).
- ある1日(暮らしの1日を細かく学習し, 印象的に理解).
- 時間, その長短(1分/1日/1年/1000年で起こることを調べれば,
理解のため, 情報を分類するための新しい枠組が身に付く).
- 5分半径の円(自分の位置から何が見え, 何ができるか?).
- 5マイル半径の円(社会, 生活などの何が理解できるか?).
- 自分が王様になった世界(もし王様なら, 世界をどう運営し,
変え, 理解し, 情報を交換するか?).
- 人物コース(人についての勉強).
- 失敗は神様(失敗の検証から偉大なブレークスルーは生まれる).
- 持ち時間の活用(時間の有益な使い方).
- お母さんが理解できるような説明のしかた(他人の理解能力の認識).
- 事実と真実の違い(事実は真実でなく, アイデアや体験と結びついた
ときにのみ意味をもつ).
- 当たり前のこと, その捕獲法(答えは当たり前の世界にころがっている).
[R.S.Wurman89]より引用.
林 幸雄
(yhayashi@jaist.ac.jp)
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