第8回シンポ 概要一覧

一般講演 1:ダイナミクス 

O1-1:永田 勝也(東京大学大学院工学系研究科),白山 晋
題目:情報と知識の伝播に対するネットワーク生成機構の影響
概要:ネットワーク研究によって,ネットワーク構造とネットワーク上の現象に関していくつもの関係性が示されている.一方,現実世界に存在す る多くのネットワークにおいて生成機構の存在が示唆されている.また,生成機構をモデル化した人工ネットワークの構造との比較によって,その存在が明らか にされている.これらの知見から,生成機構はネットワーク構造に影響し,構造と現象は密接に結びついているものと考えられているが,生成機構と現象の関係 については,わかっていないことが多い.そこで本稿では,生成機構が現象に与える影響について考察する.いくつかの生成機構を用いて人工ネットワークを生 成し,そのネットワーク上で,いくつかの情報と知識の伝播モデルを用いた伝播シミュレーションを行う.新たな分析手法によって,ある伝播に影響を与える主 要な構造の統計的指標を顕在化し,その構造を形成した生成機構と伝播の関係を明らかにする.

O1-2:栗原 聡(大阪大学),白井 嵩士,榊 剛史,鳥海 不二夫,篠田 孝祐,風間 一洋,野田 五十樹,沼尾 正行
題目:Twitterネットワークにおけるデマの拡散と防止のSIRモデルによる推定
概要:ソーシャルメディアでは多くのユーザーが活発な情報交換を行っており、情報が短時間で拡散するという特徴がある。しかし、これらの中に はデマ情報も含まれており、問題視されている。本研究ではTwitterにおけるデマ情報およびデマ訂正情報の拡散に焦点を当て、これらの拡散の過程を SIRモデルを基盤として解析し,早急なデマ拡散の収束の可能性について考察する。

O1-3:池末 成明
題目:情報通信産業のエコシステムの相転移
概要:情報通信産業のエコシステムの動的変動と相転移について、数理生態学のモデルで論じる。このモデルが複雑ネットワークと関連しているこ と、さらには進化ゲームや量子ゲームとの関連の可能性を論じたい。

O1-4:小牧 嵩征, 林 幸雄(JAIST), 松下 貢(中央大学理工学部)
題目:長方形分割モデルを用いた餌探索と正方格子上のLevy Flight餌探索の比較
概要:2次元空間上に餌(ターゲット)が配置されているとき,その餌の効率的な餌探索を考えた.餌の配置方法として,人口に基づき餌を配置す る方法と,それとの比較として一様ランダムに餌を配置する方法を用いて探索効率を調べた.特に,人口に応じて自己組織化された長方形分割ネットワーク上で 乱歩を行い餌探索する方法と,正方格子上でLevy Flightを行い探索する方法の2パターンを比較した.その結果,長方形分割ネットワークの分割回数を制限し,餌を人口に基づき配置した場合,正方格子 でのLevy Flightよりも探索効率が良くなることがわかった.

一般講演 2:ネットワーク指標

O2-1:茂木 隼, 増田 直紀(東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻)
題目:プロテニスプレーヤーの動的なランキング
概要:スポーツにおけるプレイヤーのランキングでは,プレイヤーの強さを数値化しその比較を行う.数値化の方法として,プレイヤーの強さをプ レイヤー間の勝敗関係からなるネットワークの中心性として測る方法が提案されている. ただしこの方法はプレイヤーの強さを全期間において一定と見なしているため, 長期間に適用する場合の妥当性は不明である. 本研究ではこの方法を拡張し,強さの時間的変動を考慮に入れたランキング手法を提案する.男子プロテニスの対戦データに対して提案手法を適用し,試合結果 の予測性能を比較することで,提案手法は既存手法と比べてプレイヤーの強さをより適切に評価できることを示す.

O2-2:豊田 規人(北海道情報大学)
題目:6次の隔たりに関する閉路の影響とグラフの無秩序さ
概要:6次の隔たりに関する閉路の影響を論じる. 結果,スケールフリーとスモールワールドでは,閉路の影響葉真逆であることがわかった. さらにそれらの中間的ネットワークを考察し,その真相を究明した.結局,6次の隔たり等の情報伝達には,ネットワークの無秩序さが重要な役割りの一端を 担っていることがわかった.

O2-3:滝見 優太(北海道大学 大学院情報科学研究科), 鈴木 育男, 山本 雅人, 古川 正志
題目:類似ノードの特徴量を考慮したネットワーク間距離の提案
概要:近年の複雑ネットワークの研究によりネットワークもしくはそれを形成するノード,リンク等の特徴を表す値として平均最短経路長,クラス タリング係数,媒介中心性といったものが知られている. しかし,二つのネットワークを比較する場合,特徴量の比較だけでは全体としての比較しかできず一部の構造的類似などを考慮していない. 本研究ではネットワーク間の類似度を測る指標としてネットワーク間距離を提案する.各ノードにおいて似た役割を担うノードを各特徴量や周辺ノードの特徴量 やトポロジから推測する.この類似したノード間の差を距離と定義する.また,ネットワークの変化に伴いネットワーク間距離も大きくなるか,指標としての妥 当性を検証した.

O2-4:湯浅 友幸(東京大学大学院工学系研究科),白山 晋
題目:複雑ネットワークに対する新たなノード分類法とその応用
概要:世の中の諸現象の背後のネットワーク構造が明らかにされている.その構造自体を分析する研究や,構造と現象の関係性を分析するものの多 くは,少数の統計的指標(中心性指標を含む)に基づいている.このため,位相構造から顕在化するノードの個性が十分に検討されていない.本研究では,ノー ドの個性に基づいた分類法を構築し,その分類法の応用例を示す.具体的には,ノードに対して,位相構造から複数の属性が算出できることに注目し,属性を ノード上の多変量変数として定義する.この多変量変数を自己組織化マップを主とするデータマイニングによって分類する.分類されたノードの特性や,分類 ノード上での現象の変化を調べることにより,従来研究の違いを明らかにし,提案手法の有用性を示す.

O2-5:鈴木 裕士(東京大学工学部システム創成学科), 白山 晋
題目:リンク予測手法の適用範囲の分析
概要:すべてのネットワーク情報を観測することは,原理的に,あるいは時間や費用の観点から困難である.したがって,観測されていないノード やリンクが存在すると考えるのが一般的である.しかしながら,ネットワーク分析においては,ネットワーク全体が観測されていると仮定して分析が進められる ことは少なくない.多くの対象において,観測量のみでも十分な分析ができると考えられているためである.一方,例えば,観測されていないリンク(ミッシン グリンク)が重要な場合もある.このため,実ネットワークに対するいくつかのリンク予測手法が提案されている.しかしながら,従来研究では,予測指標の提 案が主で,実データに対する予測結果が示されるものの,適用範囲の情報が不足している場合が多い.そこで本研究では,リンク予測手法の適用範囲を明らかに することを目的とする.従来研究では,リンク予測の対象となるネットワークの構造的な性質が十分に調べていないことが問題であると考え,様々な生成機構に よって人工ネットワークを生成し,予測対象のネットワーク構造を明らかにすることから始める.人工ネットワークを用いた予測実験によって,ネットワークの 統計的指標に基づく予測指標の適用範囲について検討する.また,決定木を用いて適用範囲の定量化を試みる.さらに,この結果を実ネットワークを用いて検証 することで,人工ネットワークで得られた知見が実ネットワークに対しても有用であることを示す.

一般講演 3:SNSとコミュニティ分析

O3-1:小野寺 大地(北海道大学 大学院情報科学研究科), 鈴木 育男, 山本 雅人, 古川 正志
題目:コミュニティ分割問題における動的近傍競合学習を用いた解法
概要:コミュニティ分割問題はネットワーク,グラフ上からコミュニティとなる部分集合を抽出,特性を解析することを目的としている. 既存手法としてGirvan, Newman らによる Modularity を用いた手法 (CNM 法:Clauset Newman Moore) や,”edge-betweenness”を用 いた手法が知られている. しかし,これらの手法はリンク数が多いネットワークや,リンク密度が高い問題に対して,計算時間が大きいことや,コミュニティ間が密に結合している場合に 分割が困難である. 本研究では,これらの問題を解決するために自己組織化マップ(self-organizing map:SOM)に基づく競合学習を用いたアプローチを提案する. 通常SOMと異なり,学習の際のトポロジとしてネットワークのトポロジを採用し,更に学習過程でトポロジを変化させることで,リンク構造を考慮したコミュ ニティ分割を実現する.

O3-3:中村 圭佐(慶応義塾大学大学院), 山崎 由佳, 伊藤 貴一
題目:ブクログの構造化とその解釈
概要:本研究の目的は、ウェブ上に仮想本棚を作成・共有するサービスであるブクログ(http://booklog.jp/)の構造化とその 解釈である。ユーザらはブクログにて、書籍に対し分類のために「小説」「まんが」「ライトノベル」などのタグを自由に付与できる。本棚の登録による書籍の 共起の全体構造を可視化し、そこにタグ情報を加味することで、書籍の読まれ方の違いについて解釈を試みる。

O3-4:細野 文雄(群馬大学),柿本 敏克
題目:仮想世界ゲームにおける社会ネットワークの特徴 -発話状況からみた社会ネットワーク-
概要:仮想世界ゲーム(広瀬,1997)とは南北地域間の葛藤と協調のプロセスをシミュレートするシミュレーションゲームで,40名程度のプ レーヤーが資源格差のある4地域に分かれ,生存や富・権力などを巡って地域内・地域間で競争/協力していく。今回これをコンピュータ上で実施できるように した電子版を用いて行ったゲーム中の発話状況から,社会ネットワークを抽出し,分析して得られた特徴について報告する。

O3-5:松林 達史,西田 京介,星出 高秀,藤村 考(NTT)
題目:リアルタイムグラフ可視化:東日本大震災時のTwitter
概要:Web上で増え続けるBig Data分析においては,データストリームの処理と同時 に,インタラクティブかつリアルタイムに「見える化」することが重要な課題と されている.特に近年では,Twitterやfacebook,Google+などを利用したマイク ロブログの流行などにより,あらゆる企業やブランドが常時,生活者の審判を浴 びているという現状がある.これらのクチコミはコントロールが難しいため、こ れらをいかに傾聴し、リアルタイムに対応するかということが企業のリスク管理 及びCRM・マーケティングにおける重点課題となっている. しかしながら,ソーシャルメディアから抽出した話題語を提供するサービスは既 に多く存在しているが、関連する語がまとめられず、 どのような話題がどのよ うに発生して移り変わっていったのかをリアルタイムに把握することは容易では なかった。そこで我々は,抽出された多数の話題語の関連性をネットワークで表 現し、Webブラウザ上で高速にする描画する技術(リアルタイムグラフ可視化技 術)を開発した。本研究ではストリーミングデータの可視化例として,東日本大 震災時のTwitterデータを用いて,具体例を示しつつデモを行う.

ポスター発表

P1:澤井 秀文(NICT 未来ICT研究所)
題目:自己組織化ネットワークを用いた次世代航空網の再編成
概要:ランダムネットワークを出発点にし、擬似的なACO(Ant-Colony Optimization)アルゴリズムを用いて、従来知られている様々な複雑ネットワークに比べ平均経路長が最小となるSmall-World  Networkを自己組織的に構成する方法について述べる。この方法により構築したネットワークを理論的に解析すると共に、地球規模の次世代航空ネット ワークの再編成に応用した結果、地球上の任意の主要都市間での平均航続距離と 平均乗り換え回数を最小化できることを示す。この結果は、航空機メーカー・運航会社にとってのジェット燃料の大幅な節減と平均航続時間の最小化、および利 用客にとっての平均旅行時間の最小化の点で大きなメリットが生まれるだけでなく、地球温暖化を防止する意味でも大変有効であると考えられる。

P2:加藤 紳也,増田 直紀(東京大学情報理工学系研究科)
題目:時空間的相互作用をもつ対数線形モデルに対するパラメータ推定手法
概要:{1, -1} の 2 値をとる確率変数列の時系列は,その中に含まれる時間的,空間的相互作用の種類がそれほど多くなければ,対数線形モデルによって効率よく記述できる.近年 神経科学の分野において, 2 次までの相互作用パラメータをもつ対数線形モデルが,神経細胞の集団活動をうまく再現することが示され,データ解析の手法として注目されている.この推定 過程に使われるアルゴリズムは Boltzmann 機械と等価なものであるが,その学習には細胞数に対して指数的な計算量が必要となり,多数の細胞を同時に扱うことができなかった.また,神経細胞の性質か ら考えて,時間的相互作用や高次の空間的相互作用を考慮する必要性も指摘されている.一方最近になって,統計物理学的な摂動論に基づいて 2 次の対数線形モデルの相互作用パラメータを推定する手法が提案されている.これは対数線形モデルのもつ双対性に基づき,特徴空間における摂動に対するパラ メータの摂動項を求めるものである.この方法では,一度方程式系を導出すればパラメータの推測は簡単な多項式に観測値を代入することに置き換えられるた め,非常に高速に計算することが可能である.本発表ではこの方法を時間相関,あるいは空間的な高次の相互作用を持つ場合について拡張する方法を示すととも に,時間的相互作用を含むモデルの一つに対して,具体的に相互作用パラメータの近似方程式を提示する.また,実際の人工データからパラメータを推定する数 値実験を行ったところ,2 次の時間的相互作用しか持たない場合に限られてはいるが有効性の示されている先行研究とほぼ同等の精度が得られることを示す.

P3:古谷 修平, 増田 直紀(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
題目:ネットワーク上の労働市場モデルの解析
概要: 1973年にGranovetterは有職者が現在の職を得た方法について調査を行い弱い紐帯と呼ばれる社会的つながりの弱い人物からの紹介で職を得る傾 向が高いことを明らかにした。この研究を発端として、職の情報が伝搬する系(労働市場)の研究が行われるようになった。2004年にCalvo- ArmengolとJacksonによって提案されたモデルは無職の期間が長くなると職を得る確率が低くなるという労働市場に特徴的な現象を再現すること ができるモデルであるが、人間関係のネットワークが完全グラフや少人数の場合しか扱っていなかった。そこで、現実の人間関係に近いランダム・グラフやス ケール・フリー・ネットワークに対して労働市場モデルの解析を行った。

P4:Xing Binbin, 林 幸雄(JAIST)
題目:リンク淘汰とパス強化で自己組織化されたネットワークの頑健性に関する丘現象
概要:リンク淘汰とパス強化で自己組織化されたネットワークは、パケットの通る頻度によって頻度の低いリンクを優先的に除去し、良く使う経路 上のノード間にショートカットを加えて強化されたネットワークである。人口分布に応じてパケット送受信要求を考えた時、ランダム故障に対する最大連結成分 以外のクラスタサイズ変化の丘現象について報告する。

P5:松本 英博(鳥取大学大学院工学研究科)
題目:ソーシャルメディアでのリンクやメッセージングの動機メカニズムモデル
概要:ツイッターやメールなど個人がソーシャルグラフで関係を持った相手にリンクを確立し、メッセージを送るメカニズムを個人のソーシャルグ ラフを射影した内的なネットワークモデルを仮定することで解明することを試みる。

P6:小林 文理, 田中 敦(山形大学大学院理工学研究科情報科学専攻)
題目:重複を許すネットワーク分割法による大学生向けSNSのコミュニティ構造の変化
概要:近年,SNS(Social Networking Service)やBlog,Twitterなどを利用したインターネット上におけるコミュニケーションの手段が増加している。このような大規模なネット ワークはいくつかのコミュニティを形成し,その中で独自の繋がりを持っていることが明らかにされている。しかし,これまでのコミュニティ分割の手法として よく用いられてきたGN法やCNM法といった手法では,重複するコミュニティの抽出や,コミュニティが形成するネットワークを分析するのは困難であった。 そこで我々はCPM(クリークパーコレーション法)に従い,時間的に発展していく小規模SNSを元に,重複するコミュニティの抽出を行い,コミュニティが 形成するネットワークがどのように成長していくかを明らかにした。さらに,小規模SNSにおけるコミュニティの構造とそのダイナミクスをこれまでの分析手 法によるものと比較考察する。

P7:岡本 洋(富士ゼロックス(株)研究技術開発本部)
題目:ページランクアルゴリズムのベイズ定式化
概要:パーソナライズドページランクアルゴリズムがベイズの枠組みで定式化できることを示す。さらにこの定式に基づき、ネットワーク上のマル コフランダムプロセスをクラスタリングする方法を導く。

P8:山崎 景太(山形大学工学部), 田中 敦(山形大学大学院理工学研究科)
題目:ユーザ視点による映画間ネットワークの構造とその分析
概要:本研究は、映画についてのレビューや評価等の情報が記載されているYahoo映画の作品推薦ページ、実際に映画を購入できる Amazon.com等の映画の同時購入のデータを基にして、ユーザ視点のネットワークを作成し、各ネットワークの特徴について分析を行う。さらに、「推 薦」や「購入」といった特徴の異なる2つのデータソースから得られた2つのネットワークを比較・分析する。本発表では、その成果について報告する。

P9:花房 真理子, 熊坂 賢次, 伊藤 貴一(慶應義塾大学政策・メディア研究科)
題目:おいしさの探求―ブログのテキスト解析によるおいしさの意味世界の可視化―
概要:本研究では、意味づけ論の観点から、筆者の感じる「おいしさ」という意味世界を明らかにすることを試みた。この研究では、個別の単語の イメージ調査ではなく、筆者が日々更新してきた食べ歩きブログのテキストを分析データとし、そのデータを用いてテキストマイニングを行っている。分析で は、テキスト内の単語と単語の共起関係をネットワークとして可視化している。これにより、単語同士の関係性から、筆者の感じるおいしさという意味世界の構 造をとらえるという試みを行った。  このとき、機械の合理的な計算によって算出された複雑なネットワークを読み解くのではなく、分析者の問題意識を反映したネットワーク図が描けるように、 分析者がネットワークの生成プロセスに関わることを可能にしたHipparu-McSというツールを用いて分析を行っている。  分析の結果、筆者の感じるおいしさという意味世界について、(1)おいしさは「味」「香り」「食感」の3要素から構成される、(2)「味」「香り」「食 感」はそれぞれ3階層から構成される、(3)「食感」のおいしさは「食感」の対比関係によってもたらされる、ということが明らかになった。

P10:長谷川 雄央(東北大学大学院情報科学研究科), 今野 敬太, 根本 幸児(北海道大学大学院理学研究院)
題目:感染が引き起こすネットワークのパーコレーション転移と次数相関の影響
概要:複雑ネットワーク研究において、ネットワークの故障に対する頑健性と故障対策は重要なトピックの一つである。従来の研究ではランダム故 障や選択的攻撃が主に考えられていた。一方、ネットワークへの脅威として、コンピュータウイルスや感染症等リンクを通じて感染状態が伝播する過程を考える ことができる。今回、この種の伝播過程に対するネットワークの頑強性を議論する。モンテカルロシミュレーションを行い、ネットワークの構造と頑健性の関 係、さらに次数相関の影響について明らかにする。

P11:高頭 和輝, 長谷川 智史, 穴田 一(東京都市大学 大学院工学研究科)
題目:免疫系のネットワークモデル
概要:免疫系は、生物が生きる上で重要な役割を担っている。免疫系にみられる現象は、解明されていないものが多く、現在も盛んに研究が行われ ている。その現象の1つに免疫記憶がある。免疫記憶とは、1度体内に侵入した抗原が再び侵入してきた際に、以前の抗原侵入時と比べ短時間で抗原を除去する 現象である。この現象を解明するために様々な説が提唱されており、その中にJerneのイディオタイプネットワーク説がある。本研究では、この説を基にB 細胞と抗体のネットワークモデルを提案し、免疫記憶の再現を試みた。その結果、免疫記憶を再現することはできなかったが、B細胞と抗体量に興味深い振る舞 いが見られた。

P12:岩井 淳哉, 佐々 真一(東大院総合文化)
題目:ランダムネットワークにおける不特定感染を考慮した SIR 模型の解析
概要:れまで物理で研究されてきたネットワーク上の感染症モデルは,性感染症やコンピュータウィルスなどを想定しており,エッジで繋がれるこ とで感染経路が特定されたモデルになっている.一方で飛沫感染を起こす感染症は,特定の濃密な接触をする人間から直接的に伝搬するのはもちろんだが,公共 の場所など不特定の人間が集まるところでの伝搬が感染症拡大に大きな影響を与えているのではないかと疑われる.そこで,従来のネットワーク上の感染症モデ ルに感染者数に比例する平均場的な感染レートを導入することで不特定感染を考慮した感染症モデルを作り,解析した.本発表ではこの解析内容について,また 今後の展望についても議論したい.

P13:江田 章吾(山形大学工学部情報科学科), 田中 敦(山形大学大学院理工学研究科)
題目:実データを用いたスモールワールドシミュレーション
概要:本研究では、日本の各都道府県の人口比、移転率を用いて、47のエリアに割り振り、一定の確率でリンクをつなぎ小規模な人の繋がりの ネットワークを作成し、その特徴量から大規模な人の繋がりのネットワークを考える。この簡略モデルからの分析により,実世界における広く認められているス モールワールド性の発生メカニズムにについて考察する.

P14:千田 孟, 津谷 篤, 田中敦(山形大学大学院理工学研究科)
題目:SNSネットワークの視点から見た日本酒のネットワーク構造とその分析
概要:日本酒は様々な地域で生産されているため種類も多く、SNS上では日本酒に関するコミュニティも目立つ。 また製造法によりその独自性が出しやすいことから,地域活性化の担い手としても注目されている. 本研究では代表的SNSであるmixiを利用し、日本酒のコミュニティ同士の繋がりから日本酒のネットワークを 作成しその分析を行った。さらに,近年様々な地方で生産されている地ビールについても同様に解析し,日本酒のネットワークとの比較を行った。本発表ではそ の成果について報告する。

P16:宮崎 修次, 田中 健太(京都大学情報学研究科)
題目:大偏差統計を用いたネットワーク解析
概要:Random walk on a graph is analyzed on the basis of the statistical-thermodynamics formalism to find phase transitions in network structure in some cases. Each phase can be related to a characteristic local structure of the network such as a cluster or a hub. For this purpose, the generalized transition matrix is introduced, whose largest eigenvalue yields statistical structure functions. The weighted visiting frequency related to the Gibbs probability measure, which is useful for extracting characteristic local structures, is obtained from the products of the right and left eigenvectors corresponding to the largest eigenvalue. An algorithm to extract the characteristic local structure of each phase is also suggested on the basis of this weighted visiting frequency.

P17:田村 肇(筑波大学図書館情報メディア研究科)
題目:質的産業連関表とネットワーク中心生
概要:産業連関表の質的化において、どのネットワーク中心生が頑強であるかを、情報通信産業連関表を素材に明らかにした。

P18:高口 太朗,中村 光宏(東大院情報理工学系研究科),佐藤 信夫,矢野 和男(日立中研),増田 直紀(東大院情報理工学系研究科)
題目:社内ネットワーク中での会話相手選択パターンの予測可能性
概要:携帯電話の位置情報データを用いた先行研究において,人の空間移動パターンの高い予測可能性が示された.その手法を元に,本発表では会 話パターンの予測可能性についての分析結果を示す.ここでは個人の予測可能性を前回の会話相手が誰だったかを知ることにより次の会話相手が誰なのかを予測 できる度合いと定義する.ある日本企業のオフィスにおける対面の会話データを分析した結果,個人の会話パターンは一定程度予測可能であることが判った.こ の予測可能性の主な原因は行動時間間隔のバースト性であるが,その影響を除いてもなお会話パターンには有意な予測可能性が見られる.また,個人の予測可能 性とその社会ネットワークにおける位置との相関についても述べる.

P19:松林 達史(NTT),蛭田 愼也(慶応),藤村 考(NTT)
題目:WebCLを用いたインタラクティブ・グラフ可視化の高速化
概要:従来,大規模グラフ可視化の研究において,並列処理や近似手法を用いた高速化の研究は多数行われてきた.グラフ可視化手法における問題 の一つは,最適なパラメータや収束条件が,手法によって大きく異なり,ユーザーは経験則によりパラメーターの推測を行う必要性があるということである.し かしながら,大規模データの解析においてはパラメータ推定に多くの時間を費やし,かつ収束条件などが曖昧であった.また,並列分散処理を用いた高速化で は,特殊サーバを用意し,かつ同時アクセス制限を設ける必要性があった.そこで我々は,HTML5の最新機能を用いることにより,インタラクティブかつ高 速なグラフ可視化手法を考案した.HTML5のcanvas機能を用いて,オンライン処理による動的なパラメータ調整を可能とし,また,WebCLを用い て,クライアントPCのGPUにより200倍を超える高速化を実現し,数万ノードを超える大規模なグラフ可視化処理を可能とした.ポスターセッションでは 実際にノートPCによる高速化の実演デモを行う予定である.

P20:津谷 篤, 金子 輝,小見 裕明,田中 敦(山形大学)
題目:ウィキペディアの集合知を活かした音楽プレイリスト作成
概要:近年,集合知という言葉が注目を集めている.集合知とは複数の個人の知識が何らかの相互作用により自己組織化され,1つの知識として利 用可能となったものであり,インターネット上には現在集合知を用いて運営しているサービスが多数存在している.その中にインターネット上の百科事典である Wikipediaも含まれる.Wikipediaが持つ記事は多岐にわたり,音楽に関する記事も豊富に存在している.  本研究では,Wikipediaの音楽に関する記事から集合知をネットワークとして取り出し,それを音楽プレイヤーにおいて楽曲演奏曲順を綴ったもので ある「プレイリスト」の作成に活かすことを試みる.

P21:今井 佑, 長谷川 智史, 穴田 一(東京都市大学大学院工学研究科)
題目:認知的バランス理論を用いた孤立化する人間のモデル
概要:近年、学校や会社において、人間関係の構築を円滑に行う事ができない人が増えている。このような人は、いじめを受ける対象者となりやす く、最悪の場合自殺してしまう事がある。そのためいじめは重大な社会問題の一つとして捉えられ、心理学、教育学など様々な分野で研究が行われている。 社会心理学に、対人関係を表した認知的バランス理論がある。これは、対人関係が自分と相手と対象となる物や人の3つの関係によって、変化していくという理 論である。本研究では、この理論を基に人間関係のネットワークが形成されていく過程でいじめの対象者がどのように発生するかコンピュータシミュレーション によって再現する。

P22:安藤 僚祐, 須鎗 弘樹(千葉大学大学院融合科学研究科)
題目:ツイートの感情極性を用いたドラマ視聴率の上下予測
概要:近年,ツイートの感情極性を用いて経済の動向を予測する研究などが発表され,その精度の高さが話題となっている.本研究は,日本のテレ ビドラマに関するTwitterのつぶやきを用いたドラマ視聴率の上下予測について検証する.

P23:飯田 沙緒里, 須鎗 弘樹(千葉大学大学院融合科学研究科)
題目:複数の重みをもつネットワークモデルに対するsuper-stable nodeの出現とその検証
概要:Twitterのネットワーク構造の再現を意図したシミュレーションモデルを作成し、super-stable nodeの出現について検証する。

P24:原田 恵雨,鈴木 育男,山本 雅人,古川 正志(北海道大学大学院情報科学研究科)
題目:食物網における流れの入出の区別に基づく部分種集合の分類
概要:生態系は,多くの種が互いに関係しあい全体を保っている系である.生態系の働きを理解する上で,従来より食物網の解析が数多く行われて いる.食物網の俯瞰的な種関係を観察するために,コミュニティ抽出が行われている.しかし,従来方法では,リンクが蜜に存在している集合しか抽出できず, その部分種集合が全体にどう寄与しているのかの推定には限界があった.そこで本研究では,リンク先と元を区別したコミュニティ抽出の組合せより,栄養の流 れの入出の区別に基づく部分種集合の分類を行う.複数の生物群集における食物網に対する適用結果の比較,また同手法における他有向グラフに対する結果との 比較も行う.

P25:村松大輝, 松塚耕, 井庭崇(慶應義塾大学 総合政策学部)
題目:多言語のWikipediaの記事編集におけるコラボレーションネットワーク
概要:本論文では、Wikipediaでの記事編集のコラボレーションのパターンについて分析し、複数の言語でのWikipediaの類似性 を明らかにする。 そのため、私たちはWikipediaの記事数、上位20位までの計13言語のWikipediaについて、記事ごとに編集者のコミュニケーションのつな がりをコラボレーション・ネットワークとした。 そのネットワークの平均経路長と編集者の数をもちいて分析をおこない、すべての言語で、編集者数が増加すると平均経路長はより長くなるが、編集者数がある ピークを迎えると平均経路長が徐々に減少する特徴が現れた。 この特徴の要因の一つを、記事の編集における匿名性と秀逸な記事の特徴から示した。

P26:吉澤 康介, 三宅 修平(東京情報大学)
題目:日本語の文章から生成したネットワークの視覚化に関する研究
概要:ある一定量の文章から、「同一文中に出現する名詞には相互に関連がある」という単純なアルゴリズムでネットワークを生成し、それを視覚 化する事を試みた。しかし、最初の状態では、文章の構造とあまり関係のないノードやリンクが多数生成されてしまい、意味のある視覚化が難しい事が判明し た。ところが、複雑ネットワークの構造を解析するために利用される中心性などの指標を用いて、対象となるネットワークを「刈り込む」事で、文章の構造を示 す視覚化が出来る場合がある事が分かってきた。

P27:川原 正人(旧所属:沖電気)
題目:大次数効果
概要:複雑ネットワークを含め、 一般に大規模なネットワークでは、 ネットワークを構成しているノードのうち最大の次数を持つノードが、 ネットワーク全体が持つ性能や性質に及ぼす影響が大きいと考えられる。 ノード数Nのネットワークで、 最大次数を持つノードの次数をkmaxとしたとき、 最大次数カバー率Γ=kmax/(N-1)により、 インターネットを初め複雑ネットワークやランダムネットワークで、 ネットワーク全体が示す頂点間平均距離や ネットワーク帯域(Xeff)などが 統計的にどのような傾向を持つかを示す。

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