1. 音響信号の情報表現:
本研究では、物理量として振幅スペクトルと位相に着目し、これらが聴覚フィルタ群で処理されることを模擬する。 聴覚フィルタ群は、基底膜の特性をより良く模擬しているgammatoneフィルタを利用した聴覚フィルタバンクとする。 また、これらの物理量を用いて、二つの信号波形を厳密に分離できるように定式化を行う。
2. 聴覚処理の制約条件:
本研究では、四つの発見的規則を、信号分離問題を解くための制約条件として利用する。 また、自然界に存在する単純な音の分離問題から、より複雑な音の分離問題へと拡張し、制約問題を定量的に検証する。 そのため、分離対象となる信号を(1) 純音、(2) AM音、(3) AM調波複合音、(4) FM音、(5)音声信号の順に拡張し、この信号分離問題に取り組む。
1.、2.を議論した結果から、雑音中から望みの信号を分離・抽出する問題における情報表現と制約条件を明らかにする。 このとき、制約条件は十分条件であるため、聴覚が音を分離するときの「入力、出力、処理過程」を示したにすぎない。 そこで、この結果から必要十分条件を導き出すことで、雑音中から音声などの信号を分離・抽出する際の聴覚の計算理論を構築することが可能となる。
Masashi Unoki(unoki@jaist.ac.jp) Apr 14, 1995